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第5回個人遺伝情報保護三省合同委員会が開かれました


11月2日(火)厚生労働省において第5回個人遺伝情報保護三省合同委員会が開かれました。本委員会で検討されていたヒトゲノム・遺伝子解析研究に関わる倫理指針の見直し案はすでに、意見公募が始まっていますが、今回は議論が足りなかった論点整理の続きと、法制化についての検討が行われました。

この委員会には、主に3つの異なる立場の委員が参加しています。「個人遺伝情報にの取扱いについてのルールのあり方によっては研究の発展が妨げられると考える」研究者、「研究の自由とあわせて、個人情報の保護のルールをしっかりするべきだという」法律学者、「個人遺伝情報の扱いや保護の仕組みをわかりやすく、安心できるものにしてほしいと思う」市民の立場です。時間が制限され、議論不足であるといわれ続けている委員会ではありますが、7月からタイトなスケジュールで集まりを重ねるうちに、相手の言い分が理解できたり、互いの立場への理解が生まれてきたように、筆者は感じています。出来る限り有効な議論が展開され、きちんとした記録が残され、将来に続く議論の場で活かされるような意見交換になるように願っています。

1. 研究の進展などに伴う見直しの論点整理の続き

今回の意見公募には反映させられなかったものについても、積み残しとして整理して次の議論の機会に生かせるようにして残すことになりました。

(1) 遺伝カウンセリングについて

遺伝カウンセリングの必要性
  • 遺伝情報を調べることが、将来、本人のメリットになるかどうかわからないときに遺伝カウンセリングが必要になる。
  • 必要ならば、遺伝カウンセリングを受けられる仕組みができていて、病気でなくても、試料提供者の不安を取り除くケースを入れたほうがいい。

遺伝カウンセラーについて(資格、育成など)
  • 遺伝カウンセリングは必要だが、定型的な答えができないケースには医学よりもむしろカウンセリングを学んだ人があたるべき。
  • 遺伝カウンセリングはどういう資格を持って、誰がやるべきなのか、についても論点の中に述べておくほうがいい。
  • 非医師でも遺伝カウンセラーという資格として認定することや、その場合の名称についても決めなくてはならない。新しい医療職として認められるようにしたい。現在はかなりレベルの高い人材を学会認定の形で認めている。
  • 信州大医学部、北里大カウンセリングの大学院、お茶の水女子大にも遺伝カウンセラー養成課程が設置されている。医学系出身者は心理学を追加履修し、心理学系出身者には医学をさらに学ぶように配慮されている。

今後のこと
  • カウンセリングのインフラ整備の必要性についても委員会で出たことを、論点として記録にのこしてもらいたい。
  • 実績が広がって、社会に認知されることも大事。カウンセリングの方法も開発されるとよい。


(2) ヒトゲノム・遺伝子解析研究に資するバンクのあり方について

バンクの定義
  • バンクを問題にするときには何をもとに規制するのか。採取、配分も視野に入れて論ずるべき。
  • 欧米では治験の試料を10年間保存して使えるようにしている。
  • バンクの定義が必要。細胞、試料を蓄積しているところがバンク。

汎用性のあるバンクについて
  • OECDの議論ではバンクに入れることが第一の目的で、その先はいろいろに利用できる汎用性を認めたほうが研究はやりやすいといわれている。保管するからバンクではないはず。
    バンクに入れることは、その先にいろいろに使えるような形で保存し続けるようにすること(目的外使用、二次使用)が今後使いやすいものになるだろう。どの段階で試料と試料提供者を連結可能、不可能とすればいいのかを議論すればいいのではないか。
  • 疾病をみるためには連結可能にして、どうやって管理していくかが大事。バンクの場合は個人遺伝情報保護のための安全策がとられていれば、利用目的に関して包括的にインフォームドコンセントをとり、また連結可能で管理きるようになればいい。

バンクにおける試料採取の承諾について
  • 試料採取時に、包括的なインフォームド・コンセントをとることが重要である。そうすれば、適正な医学研究に使ってほしいという意思は明確だから、適正な医学研究に使えるはず。)現在はそれを倫理委員会に投げている。包括的な承諾を認める大きな体制づくりが必要。
  • 連結可能なバンクが今後必要で、医療の発展に有用というのが世界の考えになってきている。
  • ブランケットコンセント(幅広い包括的な同意)には抵抗もあるが、しっかりと個人情報保護の枠組みがある中でコンディションされた中で研究に使うようになるのが望ましい。茫漠としたブランケットコンセントではなく、コンディションドユースがいい。今後の考え方の方向が大事。

そのほか
  • バンクに3つくらいの類型を考えてはどうか。汎用型(連結不可能)、目的限定型(限定された会員のみへの提供。連結可能あり)、複合型。それぞれに異なる形のインフォームドコンセントを考える。やがて使いやすい形にシフトいくだろう。
  • 一般の人にバンクが何かをわかるようにしてほしい。同意や説明が大事。
  • バンクは永続性があるべき。維持の予算がなくなることもあるのだから、バンクを閉じるときの条件も考えるべき。バンクの必要が高まればバンクのバンクも必要になるかもしれない。国としてのバンクも考えていくべき。


2.付帯決議の遺伝情報保護の法制上の措置についての討論

法律をつくることが必要かどうかのフリーディスカッションになりました。

  • 研究の発展や柔軟な対応が阻害されそうで心配。
  • 今は法制化を結論すべき時期でない。
  • ガイドラインなら見直せるが、法律は決めると変えられないと思ってきた。
  • 医療情報全般についてのありかたを考えて、研究がその上にのるような議論が必要。
  • 医療情報はどこで扱うのか→診療を含めると厚生労働省になる。(事務局回答)
  • 学問の自由、個人の人格の尊重もともに憲法で保障されているので、両方の利害のバランスが必要。
  • 遺伝情報に基づく差別をなくすということを国民が理解できる状況作りが必要。そのためには遺伝情報で個人を差別してはいけないという法律があるといい。
  • 差別禁止を表に出した法律を作ってほしい。
  • ガイドラインの根拠になる法律が必要ではないか。生命倫理基本法(差別禁止などの理念に近いもの)のようなもの。
  • 生命倫理基本法のようなよりどころが必要。指針には罰則がないので、問題が生じたときに基礎がないと困る。
  • 基本原則を定め、個人遺伝情報全体をカバーする法律が必要。
  • 拙速な法制化は困るが、問題がおきてからの対応はだめ。
  • 基本法とはどんなものか→基本法は日本は特別で20いくつの基本法がある。教育基本法などで理念、原則をうたっている。基本法で守られるという考え方によっている。(堀部委員回答)

その他の意見
  • 「法のスタンス」に対する認識が研究者と法学者で異なるのを感じる。
  • 分野ごとに縦割りで対応することのマイナスが出ているのではないか。
  • 研究者と法律関係者のコミュニケーション不足だったことを感じる。遺伝情報の理解を進める社会の教育の必要。




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