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「ゲノムDNAの抽出と遺伝子情報の解析〜ALDH2遺伝子の多型」
が開かれました(その2)

6月22日(木)〜23日(金)、福島県立福島明成高校で行われた「ゲノムDNAの抽出と遺伝子情報の解析〜ALDH2遺伝子の多型」の授業と3省倫理指針との関係については、「その1」で既にお伝えしたので、具体的な授業の流れについてお知らせします。他の教科の先生も見学、参加されるなど、全校あげて支援する姿勢が感じられました。


第一日
午前  講義1 自分のゲノムDNAについて
実験1  ゲノムDNAの簡易抽出とペンダント作製
講義2  エタノールを分解する酵素とその遺伝子について
作業1  確認書1記入
午後 実験2  口腔粘膜よりゲノムDNAを抽出・PCR増幅
第二日
午前 実験3  制限酵素処理
  講義3  自分のDNAの持つ意味について復習、確認書1にそって
午後 実験4  電気泳動
  実験5  電気泳動ゲルの銀染色
  作業2  塩酸を用いて自分のDNAの含まれる試料を加水分解、確認書2記入と実験結果の検討とまとめ

* 確認書1とは、ヒトの遺伝子についての講義の内容をもとにした簡単なクイズ(プレテスト)と、実験に自分のDNAを用いることの意味を確認し署名する用紙。確認書2とは、1と同じクイズ(ポストテスト)と、DNA処理に関する作業の実行をチェックする用紙。
http://www.life-bio.or.jp/topics/topics152.html



授業の流れ

1. 講義1. 自分のDNAについて
@ヒトゲノムとは
3週間前には遺伝子組換え実験の経験済みの生徒に、ゲノムDNAを知っていた生徒を尋ねると5名。
ゲノムとは、その生物が持つ遺伝子の1セットという概念(または、のこと)で物質としては染色体上のDNA。ゲノムDNAという。人間のゲノムをヒトゲノムと呼び、ゲノムDNAの塩基配列情報(遺伝子の情報)は個人情報となる。また、個人によってDNAの配列が異なることを「多型」という。特に1塩基の違いを1塩基多型(SNP)という(後述)。今日は各自の口腔粘膜の細胞の中からゲノムDNAを取り出し、ひとつの遺伝子を選んで調べてみる。
「3つのことばの整理をする。「ゲノム」とは、遺伝子の1セット。「遺伝子」は染色体上にあるDNAに存在する。ゲノムの実態は「DNA」という化学物質(ゲノムDNA)」
私のゲノムDNAは父親の染色体(23本)にのっているゲノムDNA、母の染色体(23本)にのっているゲノムDNAからなる。受精4−10週間で心臓、神経系、腕、目、足、口などができて、それ以後は胎児となる
これは、約2.2万種類のヒトの遺伝子情報が、発生の時期に応じて使われる(これを遺伝子発現という)ことにより様々な組織や器官が作られるためである。

A遺伝子の配列の部位
ゲノムDNA上にはタンパク質の情報をコードした遺伝子ばかりでなく遺伝子の発現を調節しているプロモーター配列(調節配列)、遺伝子砂漠(タンパク質合成の情報を持つ遺伝子がない)、遺伝子密林(タンパク質合成の情報を持つ遺伝子が多くある)、偽遺伝子、反復配列などがある
ゲノムDNAの中に入っている遺伝子の数は、ヒトで、2−2.5万個、シロイヌナズナ 2.5万、ショウジョウバエ 1.3万、大腸菌 4,000個。遺伝子の数がわかっても全ての役割はわかっていない。一般に個人個人の塩基配列は0.1%違い、チンパンジーとヒトでは約1.3%の違いがあるといわれている

Bゲノムにのっている情報とは
○遺伝病やがんなどの病気の情報
病気とDNAは関係があることがわかっている。タバコに入っている成分がDNAに傷をつける(変異を起こさせる)。これはA、T、G、Cの塩基配列に変化が起きていることになる。
肉を多く食べる国では大腸がんの確(罹患)率が高い。また、米国に渡った日本人1世、2世になると日本人に多い胃がんよりも大腸がんの(罹患)率が高いというデータもある
このように、病気の発生には遺伝的要因と環境的要因がからみあっている
○肥満しやすいなどの体質の情報
太りやすさに関係のある遺伝子、アルコール代謝にかかわる遺伝子を調べると、その人の体質や太りやすさの傾向などがわかる。日本人や中国人にはALDH2の違いでお酒に弱い人が多い傾向がある。
○個人の違いにかかわる情報(だから親子鑑定ができる)
繰り返し配列(遺伝子でないが、繰り返しの数が人によって異なる:例えば"CA"を単位とした繰り返し配列など)における繰り返しの回数によって、電気泳動で両親との関係がわかる。

Cヒトゲノムと国内外の規制の関係
ユネスコの「ヒト遺伝情報に関する国際宣言」では、ヒト遺伝情報を、個人にかかわる特別なものと位置づけている。それは、1)遺伝的な病気に関する体質を予見できる可能性がある。2)子孫や家族に影響を与える可能性がある。3)今後、新たな情報が見つかる可など予期できないことが起こりうる。
日本では、3省指針(ヒトゲノム・遺伝子解析研究に関する倫理指針)で研究に対する規制が行われている。



試薬を加える DNAだけを吸い取る
家庭科の先生方も参加して 冷たいエタノールを加える

2.実験1.ゲノム簡易抽出とペンダント作製
@はじめに
DNAが分解しないようにする:DNA分解酵素が混ざらないように手を洗い、実験台はエタノールでふく。使用する水や器具は滅菌済み。
個人遺伝情報の意味:ペンダントは他人に渡さないこと(粗抽出なのでヒストンタンパクが混ざっていて、そのまま情報は読むことはできない)
A手順
溶解液(油の膜を壊す)の入ったチューブに頬と口の中の天井の部分の細胞をブラシでこすりとって入れる。プロテアーゼ(タンパク質分解酵素)を加え50度で10分暖め、反応を行う。塩を加え、エタノールをゆっくり加え、5分静置。アルコール界面にDNAが見えてくる

3.講義2. エタノールを分解する酵素について
エタノールはADHという酵素によりアセトアルデヒドになりALDH2という酵素により酢酸になり、最終的に水と二酸化炭素に分解される。アセトアルデヒドは毒なので、体内でできてしまったら早く分解した方がいい。
ALDH2は酵素タンパク質で、その作り方は遺伝子に書かれている。
作り方を示す配列の中に、GAA(グルタミン酸)という配列がAAA(リジン)という配列の人、AAAやGAAの両方を持っている人がいる(これは、1塩基の違い(GかA)による多型であり、SNPという)。
私たちの遺伝子は両親からもらって1対になっているので、両方からGAAをもらった人、片親からGAAをもらった人、AAAしかない人もいる。AAA型の人は不活型なので、酵素が作用せず、アセトアルデヒドを分解できない。
ALDH2のSNPは、お酒のアルコール代謝に関係することで有名。AAA型の人はお酒に弱い。
参考サイト http://www.life-bio.or.jp/school/school4.html

昼休みも確認書に記入 暖めて細胞を壊す


4.作業1 確認書1の記入
講義を振り返り、確認書1に記入してから自分のゲノムDNAを用いる実験に臨む

5.実験2.口腔粘膜からのゲノム抽出と増幅
各自、口腔粘膜の細胞を取り出し、遺伝子を増幅される装置に入れるところまでが第1日目の作業
@手順
生理食塩水でうがいして口腔粘膜の細胞をとり、熱処理でDNA分解酵素を壊し、インスタジーンという抽出試薬を入れる。
ポリメラーゼ・チェイン・リアクション(PCR)を始める。DNAを増幅したいときには細胞培養による方法が使えるが、ある形質(お酒に強いかどうか)ある遺伝子など特定のDNA断片を調べるにはPCRにより1晩でDNAの必要な部分だけを増やせばいい。
94度(15秒間)でゲノムDNAは一本鎖になる。58度(45秒間)でプライマー(鎖の始まりになる短い1本鎖DNA)が1本鎖ゲノムDNA上のターゲットとなるDNA配列に結合する(アニーリング)。72度(1分間)で酵素(耐熱性DNAポリメラーゼ)がとりついて、原料(dNTP)を使ってDNA合成が起こる。鎖は倍加(2倍になる)する(2倍になる)。これを40回繰り返す(特定のDNA配列に結合するプライマーさえ作れれば、ほしい断片を増やせる。プライマーを作る会社もある)
MboIIという制限酵素(特定の塩基配列を認識して切る酵素)はGAAだと切るが、AAAだと切れない。MboIIで切って、電気泳動に流すと、DNAはマイナスに荷電しているので、プラスに引かれる。断片は小さい方が下まで流れる。GAA型を持つ人のDNAでは、MboIIで切れて小さいバンドができるので、下にバンドが現れる。



庄司先生 鴫原先生 伊藤先生


24日(金)

6.実験3. 制限酵素処理
昨晩、増幅した自分のDNAにMboIIという制限酵素を加え37度で90分反応させて増幅したDNAを切る。

7.講義 自分のDNAについての復習
昨日書いた確認書1を各自に返却し、昨日のヒトゲノムDNAの持つ意味や働きを復習し、チェック用紙に空欄のある生徒も一緒に意味を考え、書き直し、加筆して、再び集める。
どの遺伝子が発現するかで、細胞は分化するところがわかりにくいので、よく復習(PC は、ゲームソフトを立ち上げるとゲーム機に、ワープロを立ち上げるとワープロになるのに、似ている)する。

電気泳動を説明する大藤先生 「見えない世界で実験はうまくいっているのか」誰しも不安に 大成功!

8.実験4. 電気泳動と、ゲルの銀染色
MboIIは塩基配列を認識してそこに取り付き、その先の部分の塩基配列を切る(とりつく酵素はひょうたんのような形をしている)。分子生物学の実験は目に見えないので、実験していても不安がいつもある。これは組織培養などと異なっている。
電気泳動を終えたゲルに、銀染色溶液中のAgの陽イオンがマイナスの核酸につき、還元液をいれると銀として見えるようになる。DNAがゲルから抜けないように、固定液で、ゲルの網目を閉める。20分、交代しながら手動振とう。純水に変えながら10分ずつ4回交代で手動で振とうして水洗。

9.作業2 確認書2の記入、サンプルの加水分解、実験結果の検討
染色を待つ間に1規定塩酸をスポイトで加えることにより自分のサンプル(5本のチューブ)に含まれるゲノムDNAを全て分解した。さらに実験をふりかえり、確認書2に書き込み、サンプルを分解して個人遺伝情報も失われたことを確認。
電気泳動で現れたバンドを確認して、大藤道衛先生に判定していただく。
G/G型は両親から活性型のALDH2遺伝子をもらっており、G/A型の人は父親、母親どちらかから活性型のALDH2遺伝子をもらっている。
一方、A/A型は両親から不活性型のALDH2をもらっているか、両親がともにG/A型だったとき。各自のバンドを確認。
38人中バンドが出た人が29人。バンドがでなかった9人のうち、4人は電気泳動が途中でとまってしまった。残りの5人はDNAがとれなかったか、PCR増幅が上手くいかなかったと考察した。

実験の手順1(大藤先生作成)
実験の手順2(大藤先生作成)


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