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理科系教師のための組換えDNA実験教育研修会開かれる

8月18-9日岐阜大学・生命科学総合研究支援センターにおいて、同センターと岐阜県生命科学教育コンソーシアムの主催により、標記研修会が中・高校教師29名が参加して開かれました。8月8-9日には高校生を対象とした、ほぼ類似した内容の研修会も開かれています。今回の研修会の中では、光る大腸菌を遺伝子組換え技術を用いてつくる実験とPCR法(特定の遺伝子を増やす装置)を用いて自分の口腔粘膜の細胞の中のALDH2遺伝子とPV92遺伝子座のAlu 配列を増やし電気泳動で検出する実験の2種類が行われました。教育目的で行われる「自分のゲノムDNAを用いる実験」の事例として福島明成高校に続いて取材しました。

福島明成高校のレポート http://www.gifu-u.ac.jp/~lsrc/dgr/kouen/05student.html
当サイトのレポート topics152.html、 topics153.html

岐阜大学学長の黒木先生は、ヒトゲノム倫理指針の見直しにおいても、「ライフサイエンス研究におけるヒト遺伝情報の取り扱い等に関する小委員会」の座長をされ、直接、高校生や市民に話しかける活動に深い理解を示しておられ、今回も講義をされています。
topics117.html


講義の主な内容

1.「遺伝、遺伝子、そしてゲノム〜君達は何故親に似ているのか」 岐阜大学学長 黒木登志夫氏
メンデルの遺伝学に始まりワトソンとクリックがDNAを発見する歴史の流れの中で、遺伝子はたんぱく質を作る情報を持っていて、ひとつの遺伝子から何種類ものたんぱく質を作り分ける機能があるがわかってきました。DNAとは、遺伝子を構成している化学物質のこと。分子生物学やゲノム生物学は多くの可能性を持っている学問分野ですが、生物の持つ全遺伝子情報のことであるゲノムの持つ情報は、究極の個人情報であるために生命倫理の問題としても考えていかなくてはなりません。

2.「組換えDNA実験〜法律・安全確保・コンセンサス」 同センター助教授 鈴木徹氏
学校での法律的な手続きは教師の負担ですが、使いやすいフォーマットのCDもあるので、使ってほしいし、普通高校でそろえにくい道具についてはセンターからの貸し出しも可能なので相談してください。
実際に広く行われているGFP遺伝子を用いた大腸菌の形質転換では、危険な微生物や試薬は使っていませんが、廃棄処理や必要なときの手袋着用などを通じて、適切な扱い方、劇薬に触れてしまったときの対処方法を学ぶことも大事。危険なものをすべて避けてしまうことが教育ではないと考えています。

3.「遺伝病と生命倫理について」 同センター教授(併)附属病院小児科 下澤伸行氏
フェニルケトン尿症、筋ジストロフィーなどの病気がヒトのひとつの遺伝子のどのような変化によって起こるのかが説明されました。また、このような病気の子供が学校生活を送るには、私達は遺伝子と病気の関係をどのように考え、一緒に生活していけばいいのか、患者さんの家族が学校の施設(階段を使わないと教室に行かれない、歩いて登校できない、和式トイレは使えない等)を含む受け入れ体制とどのように折り合いをつける努力をされてきたのか、というお話に発展しました。「生命倫理を科学の教育の中から理解できる人間を育てて下さい」という結びのことばに、参加された先生方から拍手が起こりました。



熱心にお話を聞く先生たち パネルディスカッション


パネルディスカッション

「教育における遺伝子組換え実験〜岐阜県におけるこれまでの実践報告」
岐阜県教育委員会の杉原茂男氏の司会により、パネリストから実践状況が報告され、会場を交えてディスカッションが行われました。くらしとバイオプラザ21も活動について説明する時間をいただきました。

「研修会の目的」岐阜県教育委員会 杉原茂男氏
この4年間に遺伝子組換え実験の教員研修を行い、岐阜県内に受けた教員数が200名に達する予定。教員の自己研鑽に終わらせず、生徒に還元していただいて、教員研修は実る。
たとえ、組換え実験を高等学校ではできなくても、先端技術にふれた感想を生徒に伝えていただくだけでも意味がある。高校生が遺伝子組換え技術を先端技術であると同時に危険であると考えていることがアンケートからわかった。

「デジタルコンテンツ」を利用した組換えDNA組換え実験の実践
岐阜県立岐阜総合学園高等学校 尾関功身子
SPP事業の一環として岐阜大学の支援を受けて実施した。実施するときに不安に感じたことは実験器具の不備、培地やスターター作り、1クラスを教員と助手の2名でみること。センターから器具をレンタル、TA(実験助手)にセンターから来てもらう。教員用の手続き書類のデジタル化、動画を使った実験指導風景の教材、生徒用と教師用のテキスト(バイオラッド社のものを改良)、手元のデモンストレーションは見づらいので、拡大した写真を作り、映し出せるようにした。文系の生徒と理系の生徒で授業内容のレベルを工夫。アンケートによると、遺伝子組換え技術に対する不安の減った生徒が多かった。この技術を身近な技術として理解していかなくてはならない状況になっていると答えた生徒もいた。
http://www.gifu-u.ac.jp/~lsrc/conso/manual/index.html

学校現場で実施したときの課題と対応
岐阜県立関有知高等学校中濃校舎 河田雅幸氏
平成14年に岐阜大宅で研修をうけて、授業で実践している。受講当時、生徒からの授業の評価は感動がない、といわれていたので、この実験を取り入れることにし、試験問題にも取り入れている。感動した高校生は光る大腸菌の写真を写メールで友達に送っていたのが印象的。

遺伝子組換え実験の実践 
岐阜県立多治見北高等学校 田中誠二氏
遺伝子組換え実験を2001年に体験(筑波大学)した時、自分で理解するのが大変、生徒に理解させるのはもっと難しいと思った。今年で3回目の実験を行う予定。1955年のワトソン・クリックの論文の講読会を2年で行い、実験を実施。時期としては、3年の生物IIの終了時で行うべき実験内容だと思う。スタータープレートの作成を生徒有志と行った。彼らが各実験台にひとりずつ入って指導の手助けをした。温度の管理がよくないのか、光るコロニーのできる確率はまだ高くない。生徒からは「遺伝子組換え食品は誤解されているが、よく理解しなくてはならない」という感想。同時に、リテラシーを得て意思決定への関心を示し始める生徒がいる。この実験から出発したリテラシーに対する取り組み、意思決定力の育成の必要性と現在の日本の生物教育の貧弱さを感じている。

活動報告
岐阜県先端科学技術体験センター(サイエンスワールド) 後藤稔治
 先端科学技術を支えつつ、サイエンスワールド(年間8万人が入館。ほとんどが小学生)として子供たちと実験をする活動を行っている。今後もそれを続けたい。

質疑応答

  • 50分授業は短いということだが、時間延長はどの程度したか。→50分授業は変えられないので、アラビノースによる発現機構の実験などの内容を減らして対応した。
  • 器具、費用の心配は→今まで実践報告をした学校では器具を岐阜大学やセンターから借用している。学校長の許可、費用、器具がそろえば遺伝子組換え実験はできると回答した学校は13校。岐阜大学では、17年度は10数キット用意しており、アドバイスも行う。(鈴木先生、須賀先生)
  • 教育委員会に、岐阜大学のセンターに機材借用のための出張命令を出してほしいという要望があるが、旅費を伴わない出張命令が出せないので、年休で対応してほしい。時間が許せば機材運搬は行う。(杉原氏)



    電気泳動のバンドを見つめる アルコールのパッチテスト


    ヒトのゲノムDNAを用いる実験について

    PV92遺伝子座のAlu配列の検出実験
    DNA配列の中のイントロン(特定のタンパク質の合成する情報が書かれていないDNAの部分)と呼ばれる領域には、小さな配列の繰り返しがあります。Alu配列はこのような繰り返し(反復配列)のひとつ。ヒトでは50万回くらい、繰り返されていますが、その働きはわかっていません。Alu配列は、持っている人と持っていない人がいて、Alu配列の有無が人種の特徴を現しているという研究もあります。
    今回は、Alu配列の有無を自分の細胞を用いて、電気泳動を行って調べました。Alu配列を持っている人のDNA断片の長さは941bp(*)になり、持っていない人は641bpになります。差の300bpがAlu配列に該当します。
    働きがわかっていない配列なので、この配列を持っているかいないかがわかっても、個人に不公平が及ぼされる心配はないとして、教育目的の実験で用いることはかまわないという考え方のもとに、教育用の実験キットが販売され、今回も利用されました。日本の学校で学ぶ生徒はほとんどが日本人ですが、海外には多様な人種の生徒の集まっている学校もあります。そのために、クラスの結果をインターネットのデータベースを使って、すでに行われた生徒や学生の実験結果を比較したり、出身地に関する考察を行っている学校もあるそうです。一方、今後、この配列の持つ働きがわかったときに、他の人に知られたくない情報が含まれているかもしれないという不安から、まだ教育の場で用いるのは早すぎるのではないかとする考え方をしている教育関係者もいます。
    bpはbase pair(塩基対)のことでDNAの長さを示す単位

    ALDH2遺伝子の検出
    本実験では、アルコールのパッチテストも併せて行いました。パッチテストは7分間、腕の内側にアルコールをふくませたバンドエイドをはって赤くなるかどうかを調べ、更に10分たって調べます。7分で赤くなる人はマイナス、マイナス、10分で赤くなる人はプラス、マイナスだそうです。この結果が電気泳動の結果と一致するかを確認しました。皮膚が弱いと刺激だけで赤くなることもありますから、これが万能ではありません。日本人はプラスプラスが5割強、マイナスマイナスが1割、残りがプラス、マイナスだそうです。しかし、ALDH2遺伝子の検出やパッチテストを未成年に行うことは、未成年の飲酒を促進しないかという意見もあります。毎年、急性アルコール中毒で亡くなる方が実際にありますから、成人になる前に自分はアルコールを分解しにくい体質かどうかを知り、それを互いが知っておくことは、適切なお酒の飲み方のできる社会人として必要かもしれません。

    自分のゲノムDNAを用いることへの理解
    同センターでは、実験を行う前に、保護者に手紙を書いて、実験の趣旨を詳しく説明した上で、保護者と参加者本人の了解の署名を得ています。試料は処分の方法を説明してセンターで一括して処分します。これに対し、福島明成高校では、本人の了解を得て実験を行い、自分自身で塩酸を用い個人遺伝情報が含まれる試料を分解して終了します。
    大腸菌の形質転換実験は現在、高等学校、科学館などで広く行われるようになりましたが、実験者が自分のゲノムDNAを用いて、学習のための実験を行う事例はまだほとんどありません。今後、自分のDNAを用いた実験が、DNAに対する理解を深める教育手法として有効であると認められ、先生方、生徒、保護者がある合意のもとでこれらの学習の取り組めることが望ましいと思います、そのためには、事例の紹介、情報や意見の交換が行われることが、ガイドライン整備の必要性が生じたときのために必要であると思います。

    参考サイト ALDH2遺伝子の検出は、授業として福島名成高校で行われています。
    http://www.life-bio.or.jp/topics/topics152.html
    http://www.life-bio.or.jp/topics/topics153.html




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