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「女子大生と考える〜遺伝子組換え食品はなぜ嫌われる?」開かれる

10月15日(土)神戸女学院大学文学部第1別館21号室において、NPO法人近畿バイオ振興会議、神戸女学院の共催により140名の参加者を得て、標記フォーラムが開かれました。くらしとバイオプラザ21では、3年前に近畿バイオ振興会議と共催で大学生をパネリストに迎えるフォーラムを始め、今回は後援として協力させていただきました。今年は、4大学から5グループの学生さんが遺伝子組換え食品を切り口にした研究発表を行いました。その後、「スギ花粉症に対する食べる免疫療法」という講演を東京慈恵会医科大学斎藤三郎先生から頂きました。コメンテーター伊藤潤子さん(コープこうべ)、司会佐々義子(NPO法人くらしとバイオプラザ21)を交え、全体討論を行いました。
各学生グループの発表の後発表者は会場へ質問を投げかけ、参加者はブルー、ピンクの紙を掲げて回答しました。


1.食のライフスタイルと遺伝子組換え食品への意見の関係

神戸女学院大学人間科学部心理・行動科学科
295名(女子大生)に対してアンケートを行い、分析。専攻によってGMへの好意度は異なるかを調べたところ学年差なし。環境や栄養を学ぶ学生の好意度は高かった。新しい食物志向が高い人、便利さ(スープの素を使う等)を重視する人ほど遺伝子組換えへの好意度が高く、規則的・健康的な食習慣を持ち、農薬使用を避けるなど健康志向の強い人ほど、遺伝子組換えへの好意度が低い。

まとめ:
・遺伝子組換えへの態度は食のライフスタイルのひとつ
・組換え研究では研究者への信頼が、組換え食品においては厚生労働省への信頼が高い
・保守的な人は伝統的価値観につなげ、健康志向の強い人には遺伝子組換えによる健康へのプラス効果を伝える等、相手によって柔軟な態度で説明すると理解が進むのではないか。

会場へ質問:大学の先生は信用できると思いますか  yes 8割


自分のことばで語られた学生グループの発表 各グループは会場に質問を投げ、会場からは赤・青の紙で意思表示



2.遺伝子組換え食品がもたらす栄養面のメリット・デメリット

武庫川女子大学生活環境学部食物栄養学科
一般に、遺伝子組換え技術は品種改良の一種という意味で使われていない。
品種改良には、実験室で細胞を融合させる方法、放射線化学物質で突然変異を誘発する方法がある。このように品種改良は自然に起こらず、人為的に遺伝子を変化させることなので、遺伝子組換え技術は品種改良のひとつと考えられる。遺伝子組換え作物と従来の品種改良によってできた作物との最も異なる点は、遺伝子組換え作物が厳しい検査に合格していることである。
 遺伝子組換え作物は検査の義務があるので、どんな成分が入っているか明確だが、従来の品種改良でできた作物には検査義務がない。                                   
遺伝子組換え技術では、高オレイン酸ダイズ(従来の大豆の4倍)やゴールデンライス(カロテンを含む)のように高い栄養価を付加し、高栄養価の食品を作ることや、米アレルギーの人やタンパク質摂取量を制限されている人のための低アレルゲン米や低タンパク米など、ある成分の含有量を下げることもできる。
まとめ:遺伝子組換え食品は健康増進や食生活に制限を受けている人の食の幅を広げられるというメリットがあり、栄養面では安全性審査があるため、デメリットなし。あえていうならば、一般の人に知られていないことがデメリット。

会場への質問:栄養を付加した遺伝子組換え食品なら食べますか? Yesがほとんど



3.遺伝子組換え食品の安全性チェックについて

神戸女子大学家政学管理栄養学専攻
遺伝子組換え食品の安全評価は「食品安全委員会」が、食品衛生法、CODEEXの基準に従い、挿入遺伝子の安全性の確認、対象作物、新しく合成されるタンパク質などについて調べている。アレルギーの評価では、人工胃液、人工腸液による酵素処理反応、加熱処理による性質の変化、既知のアレルギーとの類似などを調べる。 
栄養成分の変化は現在、様々な方法で調べられているが、独立行政法人食品総合研究所が栄養成分のデータベース構築を進めている。
組換えたDNA、タンパク質が食品に残留していないものは対象外で、分別生産流通管理がされたかどうかで、不使用の任意表示が行われる。

今後の課題:
・長期低摂取に不安を感じる人が多いので慢性毒性試験、追跡調査が必要ではないか。
・アレルゲン性の試験では乳幼児や高齢者など被験者にあった試験が必要
・安全性への理解を広めるためには、わかりやすい情報提供、大きい表示(小さい表示はマイナスイメージを与える)、見分けやすいロゴマークを作る
・一般市民の安全性評価への参加
・将来を担うこどもへの教育活動が必要

会場への質問:安全性チェックは十分だと思いましたか Noが半分より多い



4.遺伝子組換え食品がもたらす環境へのメリット・デメリット

神戸女学院人間科学部 環境・バイオサイエンス学科
インターネットで検索すると、オオカバマダラ(蝶の名前)の幼虫の44%が遺伝子組換えトウモロコシの花粉で死亡というニュースなどネガティブ情報が多かった。詳しく調べると、実験室の条件が適切でなかったり、蝶を絶滅させるほどの影響はないこと、不捻種子(メロンなど)、優性不捻など次世代に種を残さない技術があることがわかった。
北陸研究センターの見学の報告
 棚田をはじめ、私たちの周りは人工的な自然が多い。遺伝子組換え農作物では農薬の量を減らせたり、環境条件の悪いところでも栽培できることがわかった。隔離圃場を見学したところ回りの農家への配慮から、厳重にネットなどをかけていた。これも反対派の人にわかってもらうために厳重な設備をしているとのこと。

まとめ:
思っていたよりも遺伝子組換え食品は特別なものではなかった。今後必要になる技術なので、根本から理解できれば、遺伝子組換え技術は必要性が理解できる。インターネット検索では、「組み換え」は反対派のサイトに多く、「組換え」は推進派のサイトに多かったので、試してみて下さい。

会場への質問:農薬使用量が減らせることをしっていましたか  Yesが8割



5.農業従事者・食品開発者。流通業者 一般消費者からみた遺伝子組換え食品

大阪樟蔭女子大学学芸学部食物栄養学科
生産から消費までの各段階で遺伝子組換え技術や食品への認識の違いを生産者100名、企業202名、流通45名、消費者65名に対して、30の設問に7段階で回答してもらい分析。
消費者は組換え技術より食品に、企業は組換え技術に関心が高い。遺伝子組換え技術の利益や有害性では、生産者、消費者は有害性を、企業、流通は利益を重くみている。遺伝子組換え技術を有害だと思っているのは、生産者 消費者、流通、開発者の順で高い。
情報源は、新聞、厚生労働省、農林水産省、大学研究者。消費者は新聞を信用し、企業は逆の傾向。消費者として本学保護者に回答して頂いたせいか、大学研究者への信用は高い。
自由記入欄には、安全性確立されていない、正確な情報がほしい、食品がなくなれば食べるだろうなどの意見があった。

まとめ:フリーの立場のNPO、研究者の仲介が重要であり、正確な信頼できる情報提供?を発信する責任がこれらの立場の人々にはあると感じた。

会場への質問:食べるものがなくなったら食べますか 全員がYes




6.講演「スギ花粉症に対する食べる免疫療法」

東京慈恵会医科大学 DNA医学研究所 分子免疫学研究部 助教授 斎藤三郎 氏

スギ花粉症の根治療法をめざす
スギ花粉粒子の大きさは約30〜50ミクロン。主要なアレルゲンが2つある。
アンケートでは、私のいる大学の学生の42%が花粉症で、知的レベルの高い人に多く、ストレスなどの要因もあるらしい。花粉症は単独のアレルギー疾患であるが、花粉症の人80%の家族にも花粉症があることから、遺伝の関与も考えられる。
花粉症は人間ばかりでなく、餌付けされた野生のニホンザルの約7%が花粉症といわれ、花粉症のために群れから離れてしまったサルもいる

アレルギー反応
アレルゲンが生体内に入るとマクロファージや樹状細胞などの抗原提示細胞に取り込まれて断片化され、ヘルパーT細胞に抗原が提示される。これを認識したT細胞は活性化してB細胞からのIgE抗体産生を促進する。このIgEは肥満細胞に結合する。肥満細胞に結合したIgEは再びアレルゲンに出会うと架橋(アレルゲンタンパク)をつくり、肥満細胞はやがて脱顆粒する。この顆粒の中には、血管の拡張、透過性さらにはかゆみなどを引き起こすヒスタミンなどが含まれており、アレルギーの症状が出る。
花粉症モデルマウスの鼻粘膜を抗IgE抗体で染色すると、IgEの結合している肥満細胞が多数存在するのが観察される。くしゃみ、はなみず、はなづまりや皮膚にふくらみができる皮内反応は、肥満細胞に結合したIgEにアレルゲンが架橋すると生じる。

花粉症への対処
花粉症に対する治療は、一般的に対症療法である薬剤療法が中心である。抗ヒスタミン剤は肥満細胞から分泌された顆粒の中に多く含まれており、これを抑えることで症状を緩和する。根本的な治療法として抗原特異的な減感作療法があるが、治療期間が長いことや注射しすぎるとアレルギーを起こすことがあり、普及しにくい。

ペプチド療法
アレルゲンの中のペプチドだけを使うとIgEと結合して架橋を作ってアレルギーを作る心配がない。そのペプチド混合液を注射したサルは、症状はよくならなかったが、T細胞が増えなかった。これは治療するペプチドをうまく選択すると効果が期待できるが、その選択が難しいことを示唆している。
現在、花粉症に効果が期待される7箇所のペプチドを連結したハイブリッドペプチドをコメに発現させたスギ花粉症緩和米を作製して、臨床応用に向けて研究開発している。
皮下投与は患者に苦痛だが、経口投与だと、経口免疫寛容も働き有利である。

ペプチドを遺伝子組換え技術でコメに導入
蛋白質や医薬品を安価に量産するには分子農業で植物を生産の場所にするのが適切。イネの研究では日本は世界の最先端を歩んでおり、最近の技術的進歩により量産できるようになった。その結果、低価格で供給できる。花粉症緩和米のペプチド発現量は非常に安定している。コメ1粒のペプチド含有量は50μg。1合だと500mg。実験用の精製アレルゲンの価格は50μgで28,000円で市販されている。これと比較すると、米1合で生産できる量は価格的にも量的にも大変なものであることが分かる。このペプチドは、我々が食べる米の胚乳の部分に発現しているのが抗体を用いて観察できた。このように、米は蛋白質の生産の場としてはきわめて優れている。

できた米を使った試験
マウスに4週間、コメを食べさせ、次に花粉アレルゲンで点鼻感作して、免疫反応を調べると普通の米を食べさせたマウスに比較して、T細胞の反応が抑制されたことから、花粉症緩和米の予防効果が確認できた。
マウスに点鼻して花粉症状態にしてからこの花粉症緩和米を食べさせるとIgE抗体産生が抑制されることから、花粉症緩和米の治療効果も確認できた。

花粉症の食べる免疫療法の進み方
今年、300Kgの米を収穫し、安全性試験(環境影響と食品としての安全性評価)を行う。対象はラット、マウス、カニクイザル(体重は約4Kg)。環境影響評価試験は今年行われ、花粉飛散性、昆虫への影響、土壌への影響を調べる。いろんな人の意見を入れながら、試験を進め、市場にでてからも追跡調査も必要。

会場からの質問:
スギ花粉症米と薬剤を比較するとどうか。
→デメリットはない!と言いたい。生産性が高く、安い。精製加工不要。ウィルスの混入の心配がない。

斎藤先生のお話。
始まりは花粉症のニホンザルのお話から
全体討論
会場風景


全体討論
( → はパネリストの発言)

*学生パネリストと会場の赤・青紙の写真をみながらふりかえる
(1)のグループ:予想以上に研究者への信用が高く、特に女子大生の信用は高いが、社会の信頼は低いと思った。
会場参加者3:私のいる団体で調査したところ、大学の先生への信頼は低く、53点だった。
(2)のグループ:昨年、一昨年は聴衆としてこのフォーラムに参加していた。私の情報提供でと組換え技術をいいと思って下さった方が多かったとすると発表は成功だったかなと思う。
(3)のグループ:安全性チェックは安全ですかと尋ねたところ、Noが多かった。一般の人々の中では疑っている人の方が多い。検査の内容が知られていないのではないか
(4)のグループ:食べることには興味があると思ったが、農薬使用量が減らせることをこんなに多くの人が知っていると思わなかった。今日集まっている人には確かに知っている人が多いと思うが、一般の理解も高まっていると思う。
(5)のグループ:全員が食糧難なら食べるという回答だったが、日本は飽食だから、選んでいるだけだと思う。安全性から安心を深めていってほしい。

会場参加者1:プロバイオティクスで花粉症を緩和することはできるか。→ヨーグルトが効くという話があると売り切れたりするが、それで花粉症はなおらない。科学的根拠はない。ヨーグルトによってより健康になって花粉症に効くことはあるかもしれない。 
会場参加者2:スギと交差することはないのか。→学生の調査は限られているが、交差は全体としては少ないとみていい。

会場参加者3:慢性毒性試験が行わないことが、安全性への信頼を低めているのでは、という発言について。慢性毒性試験はコストがかかるので、科学的に不要ならば業者はしたくない。私自身は放射線の方を不安だと思う。どうして組換えは嫌われるのだろう。
白根:慢性毒性試験の必要はなくても、人間は長く食べていかなくてはならないので、試験をしてほしい気持ちは理解でき、試験をした方がいいのではないかと思う。
会場参加者4:従来の品種改良より組換えの方が精度が高いことがわかったが、ランダムに遺伝子が入る確率はゼロでない。そこまで厳しく試験しなくてもいいのではないか
会場参加者5:東京のある生協は不使用表示をやめたそうだ。安全を求めるあまり慎重になりすぎて息苦しいなあと感じる。
会場参加者6:6−7年前につくばを見学し、知れば問題はないと感じたが、遺伝子組換え技術では種の壁を越えるものを入れることがあることに不安を感じている。
伊藤:今まで発言から3つに質問について会場の専門家に回答してもらったらどうか。
@慢性毒性試験の必要性について 会場の専門家の回答
→実験方法として、例えばご飯を10倍食べると死んでしまうので、試験とはできない。実質的同等性という考え方をとった。新しく入れた物質だけについて試験をする方法。食経験のないが、食物に付着している微生物を入れているので、まったく未知のものが組換えで体内に入るわけではない。食経験のあるもの同士を用いている
豆科では、根粒バクテリアは自然に起こる組換えで根に入ってくる。枝代わりで食べている作物もアグロバクテリアのお世話になっている。
慢性毒性試験の実施は非常に難しく、今、食べられている物にも行われていない
→科学技術リテラシーの調査をした経験からいって、会場の専門家の説明で一般の人はわかるか疑問を感じている。
「ランダムに遺伝子が入ることは特有なことか」 会場専門家の回答
→遺伝子組換えでどこに遺伝子が入るかは完全にはわからないが、どこにどんな遺伝子が入ったかが調べてある。隣の遺伝子配列がわかって本当に安心かという議論もあるので、手間をかけたから安心というレベルかなと私は考えている。放射線で誘発させているときには、遺伝子の変化は調べていない。従来育種では遺伝子のすべての変化はわかっていない。
B「種の壁を越える」 会場専門家の回答 
→DNAは化学物質で由来は種によらず、由来が何でも機能してしまう。DNAは生命情報で、根源はひとつであることを示している。
会場参加者8:組換えはいいものだなあと感じた。嫌われる原因は3つあると思う。
@米国の特許で、翌年芽を出さない種が作られ毎年買わなければならない。→日本の農家も品質のいいものは一代限りの種を毎年買っている。作り続けると機能が落ちる
A栄養素を変えられる技術ということだったが、間違って食べてしまうと心配、もっと勉強しなくてはならない→スギ花粉症緩和米は医者の介入のもとにパック米で出す予定。乳幼児に食べさせると問題があるかもしれない。慢性毒性試験は調べる必要があると思うが実施は難しい。医薬品と同じように出回ってから追跡調査が必要だと思う。
食物に動物のものを入れても問題はないということだったが、豚肉の赤みをきれいにするのに、トマトの遺伝子を入れると聞いたが、そこまで必要かと思う。


コメンテーター 伊藤潤子さん(コープこうべ理事)によるまとめ
毎年企画がよくなっており、学生、教師、企画者に敬意を表する。
遺伝子組換え食品では、安全・安心の区別がされないまま議論されているが、よりみんなが安心できるように!安全には厳しい議論を!やがて、安全と安心が近くなるといい。
今日の発表がわかりやすかったのは、みんなのわかりにくいことに重点を置いたから。信頼度をあげるのは先生方のこれからの課題。
組換えでは、価値観、倫理は安全と分けながら進めるべきで、これからは社会科学的なアプローチが必要。研究を進めることへの賛成は一致しているが、安全性の議論には市民を入れて進めや多様な意見がでることが大事。相手の考え方を知る、理解を深める、これが、リスクコミュニケーション。このような機会には何人か必ず新人が入っているので、よりたくさんの人がくるように、企画を進化させながら続けよう。


主催者による閉会の辞

近畿バイオインダストリー振興会議 遠山専務
今回は3年目だが、男性参加者、一般参加が多くてよかった。関心が高い人ばかりが集まっても仕方ないという意見もあるが、ここでしかやっていない企画なので、必ず続ける!



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