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加熱調理された食品中のアクリルアミドについて
 10月31日に厚生労働省では、薬事・食品衛生審議会食品衛生分科会毒性部会(公開)を開催し、「加工食品中のアクリルアミドについて」の検討を行いました。

厚生労働省

 その経緯を調べてみると、4月、スウェーデン食品庁が、炭水化物を多く含む食材を高温で加熱して製造した食品(たとえばポテトチップス、フライドポテト、ビスケットなど)に、アクリルアミドいう化学物質が高濃度(最高でポテトチップ1Kg中3.5mg 国立医薬品食品衛生研究所調査結果)に含まれていると世界ではじめて発表しました。
 当初の報告では「炭水化物を多く含む食品」にアクリルアミドが含まれていた、ということでしたが、その後の研究からアスパラギン(アミノ酸のひとつ。アスパラガスから見つけられたのでこの名がつきました)とブドウ糖などが高温で加熱されたときに反応してアクリルアミドを生成することがわかりました。たとえば茹でたじゃがいもなど、揚げ物ほど高温で調理しない食品の場合には検出されていません。

食品総合研究所
国立医薬品食品衛生研究所による測定結果
食品総合研究所「食総研における分析結果」

アクリルアミドのヒトへの影響
 アクリルアミドとは化学物質の名前で、多数の分子がつながって固まる性質があるため、ダムなどの地下工事で土壌凝固材、漏水防止剤などとして使用されています。私たちにはアクリルアミドを食品として摂取した経験がありませんが、アクリルアミドを用いる作業者に対して以下のような症状が現れることが確認されています。

短期暴露(作業者が吸入や接触などによって化学物質に触れること)影響
眼、皮膚、気道を刺激する。
長期又は反復暴露影響
神経系に影響を与え、末梢神経を損傷することがある。
人に対しておそらく発がん性を示す。
人に対して子孫に影響するような遺伝子損傷を引き起こすことがある。
中枢神経系に影響を与えることがある。

滋賀県健康福祉部 医務薬務課

アクリルアミドの発がん性
 動物実験データやその生理学的な影響の調査より、アクリルアミドは、国際がん研究機関(IARC)による発がん性分類で、「人に対して発がん性がある」を「1」として、1,2A,2B,3の中で2番目に発がん性のある2A(人に対しておそらく発がん性がある)に分類されています。現在、ヒトにおけるガンの発生は確認されていません。ちなみに「分類1」にはコールタール、アスベストなど、「分類3」にはカフェイン、お茶などがあります。
 体重50キロの人が50μg(マイクログラムは100万分の1グラム)のアクリルアミドを一生涯毎日摂取し続けた場合の発ガンリスク(1μg/kg体重/日)は、世界保健機構(WHO)で計算された結果によると10,000分の7となっています。50μgのアクリルアミドとは、ポテトチップス(アクリルアミド濃度1,200μg/Kg)にあてはめてみると42グラムに該当します。このように高濃度のアクリルアミドが含まれる食品を毎日食べ続けると発ガンリスクが高くなると思われます。

住まいの科学情報センター


海外での報告と世界保健機構(WHO)の対応
 スウェーデンと同様の結果がイギリス、ノルウェー、スイス、アメリカなどからも報告されています。WHOは、6月25日から27日まで、スイスのジュネーブで専門家会議を開催し、食品中のアクリルアミドに関する情報を収集・作成し、食品中のアクリルアミドを減らす方法を探すとともに、今後の対処方針を検討しました。
 10月28日から30日に米国イリノイ州ローズモントで「米国JIFSAN(*1)/NCFST(*2)合同開催『食品中のアクリルアミド:科学的事項、不確かさ、研究戦略』」が開催され、アクリルアミドの生成機構、分析法、暴露評価とバイオマーカー、毒性と代謝、リスクコミュニケーションに関して研究の現状、問題点抽出、今後の研究の方向について議論が行われました。日本からは独立行政法人食品総合研究所の研究職員が参加し、以下に報告が掲載されています。

食品総合研究所

*1 JIFSAN (Joint Institute for Food Safety and Applied Nutrition) 食品安全性応用栄養協同研究所:FDAの機関
*2 NCFST (National Center for Food Safety & Technology) 国立食品安全性技術センター

私たちが気をつけることは
 どのような食品にどの程度のアクリルアミドが含まれ、毎日どの程度摂取しているのか、などについては十分なデータはありません。

炭水化物の多い食品を焼いたり、揚げたりする場合には加熱し過ぎないこと
十分な果実、野菜を含む様々な食品をバランスよく取り、揚げ物や脂肪食の過度の摂取を控え、バランスの良い食事をとること

に注意するようにと、厚生労働省のHPでは忠告しています。

厚生労働省「加工食品中アクリルアミドに関するQ&A」第4問



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