くらしとバイオプラザ21

くらしとバイオニュース

HOME
What's New

くらしとバイオニュース

バイオイベント情報

やさしいバイオ

リンク集

バイオカフェ

くらしとバイオプラザ21とは

「バイオを話そう」in大阪 開催される
会場風景
 くらしとバイオプラザ21は11月27日(水)、アピオ大阪小ホールにておよそ80名の参加者を得て「バイオを話そう」in 大阪を開催しました。
会場風景

基調講演「くらしとバイオとコミュニケーション」 小出五郎(NHK解説委員)
情報の伝達では、F:ファクト(事実の整理)、T:タイミング(時宜)、S:ソフトウェア(わかりやすく上手に伝える方法)を選び、受け手の理解水準により情報の質と量を考慮しなくてはなりません。

納得の重要性:将来を選択するのは「普通の人たち」なので、知識を伝えるだけでなく、相手に納得してもらうことが大事な時代になりました。混乱を招くことを恐れて情報発信を制限すると事態は悪化します。

リスクの容認と意思決定:選択にかかわる重要な問題のひとつはリスクであり、リスクが容認できるものかどうかが重要です。自分も巻き込まれるものとして危機を感じ取る欧米人に比べ、日本人は社会的リスクがあっても自分には降りかからないと思いやすいようです。けれど、阪神大震災などからリスクの捉え方が変化してきて、意思決定過程に参加したいと思うようになっています。
 危険は確率で話さないとコミュニケーションが成り立ちませんが、現代は因果関係が複雑ではっきり見えないことがよくあります。
 バイオコミュニケーションでは、何がどこまでわかっているのか、をしっかり示さないと納得のあるコミュニケーションはできません。たとえば、抗がん剤の開発において、コミュニケーションに失敗するとよい薬の実用化の可能性が抹殺されてしまうこともあり得ます。
リスクの判断にはサイエンス、生物学だけでなく、ビジネスや国益も影響します。例えば、遺伝子組換え作物はビジネスと切り離して議論できません。
 究極の目的は納得なので、色々な「普通の人」がいっぱい集まってよく考え、議論していくことが大事です。日本型のコミュニケーションがあるかもしれません。

日本の教育:日本の生物学教育はメンデルの法則で終わるなど、生徒に教える知識量が少なく不十分なところがあり、これではバイオコミュニケーションにおける納得まで届きません。日本の生物学の教育の問題は深刻です。


パネルディスカッション「なぜ今、バイオコミュニケーションが必要か」
パネリストの皆さん 座長の中村さん
パネリストの皆さん座長の中村さん
座 長 中村雅美(日本経済新聞編集委員)
パネリスト 伊藤潤子(コープこうべ理事)
  具嶋 弘 (山之内製薬葛Z術顧問/潟oイオフロンティアパートナーズ)
  藤田正憲(大阪大学大学院工学研究科教授)

中村さんのお話
 21世紀のキーワードは成熟社会、量より質へ、健康、環境、交流(教育を含めた)、自己決定や自己選択のための情報公開や説明責任、シェアードコンセントなどです。自己決定にはリスクコミュニケーションが必要であり、その基礎になる情報はF(ファクト)T(タイミング)S(ソフトウエア)とL(リテラシー:受け手の理解)を配慮して伝えられるべきです。しかし、コミュニケーションにはバイアス(偏見)がかかりやすいもので、ひとりひとりが持つバイアス、楽観主義などがあります。また報道面では情報のエンターテイメント化の傾向、見えない危険をどう伝えるか、わかりやすくしようとすると正確さを欠きやすい、情緒的報道など報道のあり方の問題もあります。

伊藤さんのお話
コミュニケーションの企画の重要性
 政府のBT(バイオテクノロジー)戦略大綱を見ると、日本はバイオ立国をめざし、国として「バイオは国を豊かにする」と考えていますから、問題が生じたときも走りながら修正をかけていくことになります。そのためにバイオコミュニケーションを継続的に、順を追って企画していくことが大事です
 医療は病気の時だけですが、食品は日々の生活と結びついています。食品では、95年秋の遺伝子組換え食品導入時のコミュニケーションのつまずきが今日まで影響し、食品安全行政への根深い不信につながっています。遺伝子組換えの不安については話し合われていますが、倫理、気持ちの悪さ、法整備などさまざまな問題がいっしょに論議されているので、論点を整理し、異なる意見の中から何か創り出そうとする歩みよりが大事ではないでしょうか。今後はコミュニケーションリテラシー(コミュニケーションに対応する能力法)が、重要です


具嶋さんのお話
医療の進歩とQOL(quality of life:生活の質)の向上
 感染症は抗生物質が制覇し、潰瘍は手術で治せるようになり、C型肝炎にはインターフェロンが有効。QOLの向上に抗生物質の発見などの貢献度は高いけれど、エイズのような難治性の病気はまだ多くあります。よく効いて副作用の少ない薬を!ということで、日本人の薬物動態関連酵素の遺伝子多型の研究のための血液集めが行われました。東京女子医大でボランティア1000人を募って血液を集め、血液からわかる情報を名前などの個人を特定できる情報から切り離す処理(連結不可能化)をしてから調べ、来春にはデータベースが完成する予定です。

 ファルマスニップコンソ−シアム

 ヒトゲノムや遺伝子解析研究への理解を促す活動に参加した経験を紹介します。平成12年秋にヒトゲノム研究を考えるコンセンサス会議が開催されました。これらの研究を行うときの障害になるものは何か、リスクとベネフィット、やってはいけない研究は何か、倫理の問題について話し合い、コミュニケーションの重要性を体験しました。


藤田さんのお話
 環境分野で利用されているバイオテクノロジーには汚水処理や、不法投棄などで汚染された土壌や地下水を微生物の力できれいにする「バイオレメデイエーション」、汚染物質の評価や測定をするモニタリング、河の魚の分布調査から環境を評価するインデックス(生物を目印として利用する)などがあります。さらに食べ残しなど有機性の廃棄物に手を加えて有効な資源をつくり、「循環型社会」を目指す「バイオリカバリー」もバイオの力によっています。
 たとえば、タンカーの転覆により石油で汚染された海を微生物がきれいにするという利用もありますが、活性汚泥から微生物が生分解性プラスチックを作りだすなどの積極的に利用するケースもあります。チェルノブイリでは植物を利用した放射性物質の汚染浄化も考えられています。


パネルディスカッション
 会場から集められた質問とフロアからのご意見を交えて活発なディスカッションが展開されました。概要は以下のとおりです。

 コミュニケーションの背景である教育、マスコミ、情報を仲介するメディエーターの重要性が語られる一方、それらを支える自治体の企画、資金面での支援(米国のELSI予算:Ethical Legal Social Issue;研究開発費の3%に該当する予算が倫理的、法的、社会的な問題のために使われる)の重要性が指摘されました。
 コンセンサス会議も日本ではまだ十分に定着していませんが、意見交換の場が一つ定着すると考えれば有効ではないでしょうか。最近は情報公開が進んでいますが、大学のつくる出版物が一般の人には難しすぎるなど、まだまだわかりやすく伝える工夫が必要です。
 遺伝子組換え食品には依然として強い拒否反応がありますが、85%にあたる人がノーと回答したといっても、理解した上でのノーなのでしょうか。食品安全委員会ではリスクアセスメント(リスクの評価)が始まるので遺伝子組換え食品も評価されるのは期待できると思います。
 コミュニケーションというものはベネフィットと受けとめる人にもリスクと受けとめる人にも必要なもので、バイオのコミュニケーションを通じてリテラシーが育っていくと思います。病気の人との対話と同じように、将来の人類全体に貢献していくという立場からみるとすべての人にコミュニケーションが必要です。
 私たちはバイオを支持するのかどうかの前提として、まずコミュニケーションが必要だと考えていますが、同時にバイオというものは支援がないと育たないことも伝えるべきだと思います。

 「意見の異なる参加者が歩み寄る姿勢が重要」という意見は研究者にとっても、「今なぜバイオコミュニケーションなのか」を問い続けているくらしとバイオプラザ21にとっても力強いエールになりました。さらにこの問題に取り組んでいきたいと思います。東京同様、参加者の声を交えたレポートを今回も作成します。完成時には当ホームページでお知らせします。



トピックス一覧



ご意見・お問合せ メール bio@life-bio.or.jp

Copyright (c) 2002 Life & Bio plaza 21 All rights reserved.