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くらしとバイオプラザ21とは

生命誌研究館特別見学会が開催されました
 くらしとバイオプラザ21は11月28日(木)、生命や生物の根幹である生命誌について研究しているJT生命誌研究館(大阪府高槻市)において「生命誌研究館特別見学会」を開催しました。一般希望者と当プラザのスタッフ合わせて24名の参加者を得、中村館長及び当プラザの真山専務理事の講演後、ご説明いただきながら館内を見学しました。

講演1 「生命誌とバイオ」 JT生命誌研究館 館長 中村桂子

21世紀は生命と水の世紀

中村館長の講演
中村館長の講演
 20世紀が化石燃料などを用いて機械産業が発達したことを「機械と火の世紀」と考えるなら、21世紀は「生命と水の世紀」と言えるのではないでしょうか。21世紀以前も生物を利用していましたが、これは生命として捉える21世紀とは異なるものです。
 20世紀の後半に分子生物学が生まれ、科学的に生物を見て、活用していくことが21世紀のバイオテクノロジーに求められており、このような考え方をすると「機械と火の利用」だけでは超えられない限界を超えるかもしれません。


生命誌とは何か

 生命を利用していく考え方が生命科学であるのに対して、生物利用の時代の流れの中で生命を見つめる考え方が生命誌です。
 生命科学は構造や機能を調べ、これは機械の部品を組み立てるのに似ています。ところが、生物は部品を集めて作るものではなく親からもらってくるものです。ヒトの起源も38億年前の生命の始まりに戻ることができ、DNAはこの歴史を語ってくれます。 
 当館の入り口にある生命誌を一枚の絵で表した扇形の図を見ると生物の太古からの歴史と、異なった生物種どうしの関係がわかります。生命誌は生物のすごさを見せてくれます。


 生命誌とは…

生命誌研究館は科学を演奏するホール

 科学を理解してもらいたいと思うときには、論文を読ませるだけでは不十分です。音楽家が音楽を演奏するように、科学も演奏しなくてはなりませんし、いかに演奏するのがよいかを研究し続けなくてはなりません。

生きもの感覚

 豊かさと便利さを否定はしませんが、これを続けていくだけで、地球の将来はすばらしいでしょうか。古来、ヒトが持ってきた生きもの感覚(生きものが好き。くらしの人)を分子生物学で得られた知識と合体して考えていくべきでしょう。

質疑応答の概要

 化石燃料を使いすぎた20世紀の反省と同時に、内なる自然である人の内側も大切ではないでしょうか。たとえば、クローン人間や心が壊れることも内なる自然を侵害していることになります。効率を優先するとスピードが必要になり、生物のあるべき時間を超えて内側の自然を壊してしまうという弊害が生まれます。
 遺伝子組換え農作物については原子力と同じで、メリットとデメリットの折り合いをつけることになると思いますが、生物の進化を振り返ると遺伝子とは本来組み換わるものなのだから、遺伝子組換え技術を否定するところはやめましょう。重要なのは使い方です。


講演2「くらしとバイオテクノロジー」
 くらしとバイオプラザ21 専務理事 真山武志

1.発酵産業におけるバイオテクノロジー

真山専務の講演
真山専務の講演
 発酵・醸造は菌、カビ、酵母などの微生物の働きを活用しています。発酵と腐敗は同じ事象をさしますが、後者は人に都合が悪い場合をいいます。
 バイオテクノロジーは1980年に出た言葉で、これ以前をオールドバイオテクノロジー、これ以後をニューバイオテクノロジーといいます。遺伝子組換え技術はニューバイオです。
 オールドバイオの例をあげると、納豆の糸はガンマポリグルタミン酸からなっていて、免疫力を高める働きがあります。納豆はわらの中の納豆菌によって作られています。また、お酒は、米・麹菌・酵母とよい水によって造られます。ふぐの卵巣にはテトロドトキシンという毒がありますが、これを塩漬け、粕漬けにして石川県では珍味として用いています。テトロドトキシンが解毒されるのも発酵過程での微生物の働きです。


海外からやってきた発酵食品

 チーズは入れ物にしていた動物の胃袋の酵素で固まってできたという起源がある、バイオの食品です。
 麦芽から造られる飲み物は麦芽の含有量によりビールと発泡酒の区別があります。このためビールと発泡酒では税金が異なり、酒税の差を利用して安い発泡酒は庶民の人気を得ています。


抗生物質・うまみ成分

 菌の繁殖を抑える働きのある化学物質を微生物で作ったときに抗生物質、化学的に合成したときに抗菌剤といいます。抗生物質は赤ちゃんの死亡や若い人の結核を減らすのに貢献しました。うまみ成分のグルタミン酸も微生物が作り出しています。

ニューバイオテクノロジー

 ニューバイオテクノロジーには、1.細胞融合技術、2.遺伝子組換え技術、3.細胞大量培養技術、4.バイオリアクターなどがあります。
 1953年 ワトソン、クリックの「DNAの二重らせん構造」の発見でニューバイオの説明がしやすくなりました。育種では偶然、遺伝子に傷がついたり、遺伝子が変化して人にとって都合のよい形質が生まれた場合、それをそのまま育てることでよい品種を作ってきました。このような従来の栽培、育種についてもDNAの発見から説明ができるようになりました。


自然界に起こる遺伝子組換え

 ベラドンナ(ツリガネ草)は土壌微生物に感染すると葉の形が変わります。また、アズキゾウムシの染色体の中に微生物のゲノムがみつかりました。

 共生微生物から宿主昆虫へのゲノム水平転移の発見

 これらのことから、微生物から植物へ、細菌から昆虫へと自然界で遺伝子が移っていくことがわかります。


遺伝子組換え食品について

 食の安全性を考えるときには食経験が重要であり、既存の食べ物と同等かという考え方が用いられています。

医薬品・医療

 医薬品では副作用を含めて、リスクの考え方が取り入れられています。またリスクについての研究によると、自発的に発生するリスクやゆっくりおこるリスクの方が受け入れられやすいなどの傾向があります。リスクについて考えるときには、意見交流、コミュニケーションが重要です。

館内見学

 生命誌研究館の渡辺さんに説明をしていただききながら、館内を回りました。
「見えて来た進化の姿〜オサムシの研究から〜」では宝石のように美しいオサムシの標本が目を引きました。「骨の形」ではいろいろな生物の発生における骨の発達から生物に進化について標本を用いて説明をいただきました。「脳の生命誌」では、いろいろな生物の脳や消化器官の標本を用いて食べる物の種類や動物のくらしから脳についての考え方が示されていました。
この他にも展示やビデオを見たり文献を調査したりするスペースがあります。生命誌研究館は、ゆったりと生命や進化のことをひとりひとりが考えたり思ったりできる空間でした。


 生命誌研究館





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