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バイオカフェ(岐阜県)レポート
「遺伝子組換え技術について・花粉症緩和米について」

7月4日(火)、岐阜県民ふれあい会館14階、レストラン「エトワール」で岐阜県健康福祉部と共催でバイオカフェを開きました。スピーカーは田部井豊さん(独立行政法人農業生物資源研究所)です。
第一、二部ともにはじまりは、松原宣子さんのバイオリン演奏。金華山などの山並を見渡しながら奏でられた「ふるさと」の演奏が印象的でした。

参考サイト:岐阜県

松原宣子さんのバイオリン演奏 農場見学会などいつもお世話になっている田部井豊先生


第一部「遺伝子組換え技術ってどんな技術?」

作物の品種改良
品種改良は、育種目標の設定→遺伝資源の探索(形質をさがす)→目的にあった形質をつくる(放射線照射や遺伝子組換えによる変異の拡大)という手順で行われる。必要な形質は、植物ジーンバンク(10万点の品種の種が保管されている)にある植物の持つ形質の中から評価し、いい形質があれば使う。
交配によるお米の品種改良には10年、トマトは10年、お茶は25−30年くらい時間がかかる。また、トマトとトマトは交雑できるが、トマトとナスは同じナス科であるが、トマトにナスの花粉をかけても交雑させることはできない。
交配できない生物の形質を利用するとき、細胞融合の方法を使う。キャベツと白菜からカンランが作られ、カラタチの耐寒性をオレンジに入れる目的でオレンジとカラタチの細胞融合でオレタチが作られたりした。
放射線照射により作られたものに、白いエノキダケ、変わり咲きキクなどがある。ガンマフィールドでは照射時だけ、土中よりガンマ線源が出てきて、人間がいない状態で照射を行う。

DNAの働き
役に立つ遺伝子はDNA配列の5%くらいで、ポツポツと存在しており、情報はATGCの4文字を組み合わせて並んだもの。イネには4万個の遺伝子がある。

遺伝子組換え技術の誕生
細胞融合では、よくない性質も残るが、遺伝子組換えではよい性質だけを取り出して使え、種の異なる生物の遺伝子も利用できる。
1977年にアグロバクテリウムの性質を利用して、遺伝子組換え技術ができた(遺伝子組換えはアグロバクテリウムの知恵をまねしている)。遺伝子組換え作物の9割ではアグロバクテリウム法が使われおり、残りの1割はパーティクルガン法で900−1300気圧の高圧ガスで遺伝子を植物細胞に打ち込む。

遺伝子組換え作物の安全性
遺伝子組換え体の安全性評価(環境への影響、食品としての安全性、飼料としての安全性)は、法律で行われている。環境への影響は第2種利用(閉鎖系温室、特定網室)、第1種栽培(隔離圃場、一般圃場での試験栽培)の二段階の評価を経て、一般圃場での商業栽培に至る。
環境影響では、1)周辺の野生の動植物を駆逐しないか、2)組換え体がつくる物質が周囲の生物に影響しないか、3)交雑によって周囲の植物に影響を与えないかを調べる。
以上のすべに合格しないと世の中には出てこない。
食品の安全性では、導入した遺伝子がつくるたんぱく質がアレルギーを誘発しないか、毒性成分はないかなどを調べる。私たちは数万種類のたんぱく質を食べているが、食べて分解してアミノ酸になれば栄養になってしまう。アレルギー誘発性は、分解しやすさで調べる。例えば、除草剤耐性によってできるたんぱく質が、人工胃液では15秒で分解し、人工腸液では100分で分解してしまい、とても短時間で分解されることが実験で示されている。栄養成分などの違いは最低3箇所以上で栽培したものを用いて比較する。

商品化されている組換え農作物
世界の耕作面積は21カ国で9000万ヘクタール。こんなに増えたのは農家にメリットがあるから。特に除草剤耐性ダイズの利用が多い。
除草剤耐性、害虫抵抗性のほかに、組換えパパイヤ、青いカーネーション、青いバラ、ゴールデンライス(ビタミンA不足のこども22.5億人。50万人が失明、100−200万人が栄養不足で死亡)などがある。

まとめ
作物の生産力が病気、冷害などで落ちているので、品種改良で生産力をあげたいと思っている。私たちは作物を食べたり、燃料にしてエネルギーを使ったりしているわけだが、これは光合成で植物が作り出しているエネルギーの10分の1。残りのエネルギーを利用できないものか。


3箇所で紙芝居を見せる 会場風景1


質疑応答

  • は参加者の発言、→はスピーカー
    • 組換えてないという表示があるが、まやかしだろうか→ダイズの場合、420万トンの輸入のうち、320万トンは飼料、加工品になるだろうから、これらは組換え原料を用いていると考えられる。納豆、豆腐は国内産で大体カバーできているようだ。
    • 豆腐を買うと、ほとんどに国産ダイズ使用と書いてあるが、本当に国産ダイズは十分にとれているのか。国産ダイズはどのくらい収穫されているのか→自給率は3−5%、10数万トン、国産ダイズ使用は4−5割、わずかにまじっているのが−4割(5%以下なので表示のルール上は問題なし)
      →遺伝子組み換え大豆が使用されていても表示の必要がないものがある。例えば、サラダ油の原料(ダイズ、ナタネ)は、まず遺伝子組換え又は不分別のものが使われている(表示の必要はありません)。また、県では、「遺伝子組み換えでない」と表示がされている豆腐を買ってきて遺伝子組換えダイズの混入検査をしている。ほとんど検出されないが、5%の範囲で検出されることはある。(岐阜県庁 臼井)
    • デルモンテのウィルス抵抗性の苗は組換えか→世界で組換えトマトは商品化されていない
    • 除草剤耐性の野菜の残留農薬はどのくらいあるのか→ダイズの場合、多く散布する場所と少なくてよい場所があり、その中間をとるとすると、組換えダイズへの散布は1回。だから、残留農薬の心配はないし、基準値は守られている。一般的に、最近使われている農薬は食べても塩(180グラムの塩を取ると成人男性の半分は死ぬ)よりも安全なくらい。よく枯れるということと、ヒトへの害の大きさは別のこと。除草剤の植物を枯らす仕組みは植物のアミノ合成回路を阻害することによっている。
    • バクテリアは自然に近いイメージがあるのですが、遺伝子銃は危険度が高い気がする。技術も安全性の高い方法の開発はあるのか→遺伝子銃が危険というわけではない。細胞が増えるときに金粒子は残していき、不要なものは捨てていくので、最終製品の安全性は同じ。今までのやり方は遺伝子のどこに入るかわからないので、特定の場所に遺伝子を入れる技術を開発している。
    • 導入する遺伝子ひとつひとつが安全でも消費者が利用するときには、いくつも一緒に取り込むと思う。複数の遺伝子を摂取しても大丈夫なのか→体内に入れば、すぐに分解されるので、それらが組み合わさって、何かの働きをすることはない。
    • 農薬が使用されている非遺伝子組換え作物と、農薬が使用されていない遺伝子組換え作物、どちらがリスクが高いですか→遺伝子組換え食品は厚生労働省が安全性を確認した。
    • 化学繊維の衣服のアレルギーがあるが、遺伝子組換えワタを使った衣服のアレルギーはあるのだろうか→組換えワタから作られた木綿によるタンパクの影響は考えられない
    • 人類は技術を取捨選択して生きてきた。その中では組換えは小さいことのような気がする。遺伝子組換え技術も自然淘汰の歴史の中の1コマではないか



    第2部のバイオリン演奏 質疑応答


    第2部「遺伝子組換えで作られた花粉症緩和米」

    組換え植物の分類
    遺伝子組換え作物を形質ごとに分けると主に以下の3つになる。
     第一世代 農業生産性に役立つ(除草剤耐性、環境ストレスに強い、病害虫抵抗性)
     第二世代 花粉症緩和米、健康機能成分
     第三世代 工業原料、バイオ燃料、環境修復

    スギ花粉症とは
    2−5月のスギ花粉飛散時に起こり、3000億円の医療費がかかり、患者には苦しい症状が生じる。治療法は鼻水を止める薬を服用するなどの対処療法が中心で根本治療ではない。減感作療法では、非常に薄くしたアレルゲンの注射を継続的にするが、時間的制約、苦痛が伴い大変。
    そこで、お米の中にアレルギーを起こす原因物質を作らせて、体を慣らしてしまう方法が考えられた。この方法の利点は、腸管では免疫寛容という働きがあって異物でもアレルギー反応が起こらなくなること、お米の中で合成されるアレルゲンの一部は消化されてアミノ酸になってしまう。

    花粉症緩和米の安全性評価
    遺伝子組換え作物の安全性は、環境、食品、飼料について行う。

    @隔離圃場での栽培の目的
    ・試験場内の一般圃場に出すためのデータ収集
    ・とれたお米を使ってカニクイザルの実験をするため

    A生物多様性に対する試験の内容
    交雑性:同心円状にモチゴメの鉢をおいて中心に遺伝子組換えされたうるち米鉢をおく。交雑するとモチゴメが半透明になる現象(キセニア)を利用して、交雑が起こるか検討した。1メートル離れたら交雑はなかった
    花粉の比較:非組換えと組換えの花粉の違いはなし
    形態:穂の長さ、穂の数、草丈、などを調べる、一穂あたりの粒数、一粒の大きさ。組換えは穂数が少ないが、1穂あたりの粒数が多い(これは今年2回目の試験をやっている)
    土壌微生物への影響:細菌、糸状菌、放線菌の変化
    土壌に分泌する物質:植物の根から他の植物の生育を阻害する物質を出していないかを調べた。非組換えと組換えで差はない。
    休眠性:雑草の種は、いろんな環境を生き延びるためにいっせいに発芽しない戦略を持っている。
    脱粒性:粒の落ちやすさ
    越冬性:寒さに強くなっていて、越冬して雑草化しないか
    飛んでくる昆虫:虫取り網で飛んでくる昆虫の種類、数を調べる。差はなかった
    イネの実を吸う昆虫への影響:クモヘリカメムシ12頭を放したら、2週間で組換えも非組換えも半分死んだ

    B食品としての安全性
    マウス、ラット、カニクイザルの試験を行い、変異原性、慢性毒性、急性毒性、催奇形性を調べて、問題があればその時点で、試験や研究開発は中止となる。今年は2期作して500キロ作る予定 ヒトの試験もできるかもしれない

    C交雑防止措置
    農水省第1種栽培使用規程による交雑防止措置に従って試験を行う
    ダイズは3メートル以上離れたら交雑しない。イネは5メートル以上花粉が飛ばない(25メートル離れた記録があるので、30メートルを隔離距離として定める)
    情報提供の実施(県庁、市役所に訪問説明。情報報告、田植えの見学回、地元説明会)

    まとめ
    反対する人たちも来ますが、花粉が試験場の外に出ないようにしている(防止措置)。理解してもなんとなくいやだという人もいて当然。民主主義だから、嫌な人は食べないというのも、栽培をやめてというのも自由。これからは、共存の考え方が取り入れられつつある。欧州は共存ガイドラインを進めている。組換えも有機も配慮しあうことを定め、実際の規制は各国に任せている。デンマークでは2004年にGM共存法ができた。進めたい人と慎重な人が理解しあいながら共存していくのが、大人のやり方だと思う。


    質疑応答

  • は参加者の発言、→はスピーカー
    • いつごろ苗がでるか→10年はかかる
    • 今にも出荷されるという報道もあるが→農林水産省の宣伝しすぎもあるが、今作っているのは試験用。抗生物質耐性マーカー遺伝子を除いた品種で商品化したい。
    • 抗生物質耐性マーカーとは何か→抗生物質耐性や除草剤耐性を目印として遺伝子を入れる。遺伝子を消す技術で、日本の会社の特許
    • 麦でも遺伝子組換えはおこなわれるのでしょうか→麦は難しい。メキシコに世界の麦の研究機関があり乾燥に強い麦があるが商品化は先のこと
    • 健康に役立つ遺伝子組換え品種はあるのか→ダイズの主要たんぱく質はグリシニン。グリシニンは中性脂肪を下げる。ダイズのグリシニンをつくるお米をつくる研究が行われている。
    • 花粉症はスギだけか→アレルギーを起こすたんぱく質の部分(エピトープ)を7種類つなげた花粉症緩和米で日本人の花粉症の9割をカバーできる。一部のエピトープはヒノキに似ているので、スギ花粉症以外にも効果があるかもしれないが、今回は日本に2000万人いるスギ花粉症が対象。3ヶ月間、ご飯1膳で5年花粉症が抑えられる。
    • 米のたんぱく質に反応するアレルギー対象ではないのですね→そうです。今回は花粉症。
    • お米アレルギーの方には→1994−5年。民間企業は低アレルゲン米を作った。商品化できなかった。ある物質を抑えると、他の物質が増えたりしたため。放射線照射でできたアレルゲンの少ない米があり、食品として出している。対象になるアトピー性皮膚炎患者が1万人いて、そのひとのためのお米は病者用食品となる。花粉症緩和米も薬事法に従うと、医者の診断が必要になるかもしれない。お米を食べて花粉症が出てしまってはいけないので、十分なデータが必要。医者の管理のもとで食べると、摂取する段階での管理はよくできるようになる。
    • バイオは嫌い。以前、大学の先生にバイオに携わると短命になると聞き、お豆腐を 買うときもいつも気をつけている→バイオの草分けの先生は90歳を越えられた今も、 お元気にご活躍ですよ(笑)
    • 岐阜クリーン農業研究センターで水耕栽培トマトを見た。健康でない食べ物だと感 じた。露地栽培の野菜は健康的だから、水耕栽培は好ましくないと思っており、スポ ンジがついた野菜は選ばない。→レタスは水耕栽培でも生育期間が短いので、余り影 響がないと思う。水耕栽培のトマトに1万個実がついたこともあるし、発酵もバイオ なので、身近なところにバイオはあると私は思っている。
    • 養液栽培は不自然な感じで疑問を感じている →水耕栽培などいろんな技術やいろんな考え方があり、技術の多様化が起こっていると思う。消費者の理解が追いつかないと混乱してしまうのかもしれない。イチゴの養液栽培をしている農家では、腰への負担がなくて喜んでいる(岐阜県庁臼井さん)。
    • 土壌汚染も起こっているというので養液栽培の利点もあるのではないか
      →養液栽培の欠点は病気が広がると全滅するので、殺菌剤を使わないといけないこと。土壌にはいろんな成分が含まれていて病気には強い。養液栽培では連作障害は回避できる。それぞれに利点があり、土には確かに自然の力があり、病気の蔓延を抑えることもある
    • 農業全体を考えて、その中のひとつひとつの技術として捉えるという考え方を知ることができてよかった。特に、共存という考え方が新鮮だった
    • このバイオカフェではみんなの発言で勉強できてよかった。去年は偉い先生の講演も聴いた。これからは、岐阜県の森林と河川を考えに入れた農業が大事だと思う。
    • 国民に情報を出してもらわないといけない、こういう話は大きな会場で多くの人に知らせてほしい→情報提供の仕方が難しい。農水省にいたときには、なんで質問してこないのかと思っていた。ほしいヒトにほしいときに入手できるようにしないといけない。インターネットは利用価値が大きい。小さい会場のメリットは会場の発言しやすいところにある。会場の広さによるメリットとデメリットがそれぞれある
    • 食物がなくなったときに、日本のバイオ技術が助けてくれるかもしないと思えて、今日は少し安心しました。こどもの将来を心配しているので、もっとこういう技術のことを知らせてほしいと思う
    • 日本はカロリーベースでは40%の自給率で、飼料の自給率はもっと低い。今の農業をどうするのかが本当に重要だと思った。


    会場から積極的な発言 広い青空に金華山がよく見えて



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