くらしとバイオプラザ21

くらしとバイオニュース

ホーム
What's New

くらしとバイオニュース

バイオイベント情報

やさしいバイオ

リンク集

バイオカフェ

くらしとバイオプラザ21とは


一般向けバイオテクノロジー実験講座開催レポート

平成18年10月21日(土)〜22日(日)、茨城大学遺伝子実験施設にて、同施設、同大農学部と共催で、標記実験講座を開きました。今年で4回目になります。今年は、中学生から年配の方まで、24名が参加しました。講義、実験(光る大腸菌をつくる、納豆菌からのDNA抽出、電気泳動)、ラボツアー、バイオカフェと盛りだくさんの2日間でした。


講義1「バイオテクノロジーの基礎」

茨城大学遺伝子実験施設長 久留主泰朗氏

DNAの発見
1953年ワトソン、クリックがDNAの二重螺旋構造を発見しました。
微生物から私たちのような高等生物にいたるまで、生命活動はDNAにコードされた情報に従って行っています。DNAはとても小さいので、私たちはこれを直接見ることはできません。DNAに書かれた遺伝情報は4種類の塩基の配列によって表されており、遺伝情報の解読とは、配列を調べることをいいます。DNA合成酵素はDNAの相補性によって、DNA鎖を伸張してコピーを作ります。3つの塩基の並びはアミノ酸をコードしています。遺伝子の始まりはメチオニンをコードするATGです。

組換えDNA技術の誕生
1973年、組換えDNA技術はボウヤーとコーエンが発見し、特許をとりました。スタンフォード大学は特許料で研究所を建てることができました。DNAを切ったりつなげたりするには、実際には酵素反応を使います。大腸菌の懸濁液にカルシウムイオンをいれると、組換えプラスミドを取り込みやすくなります。これは、今日の実験では、蛍光たんぱく質を作る遺伝子と抗生物質耐性遺伝子を取り込ませる時に行います。
組換えたんぱく質の大量生産は大腸菌を用いると非常に効率的です。例えばヒト細胞の有用遺伝子が1個あるとき、大腸菌のプラスミドにそれを組み入れると、1個の細胞に10個の有用遺伝子が入ります。1ml中にヒト細胞は約106個の細胞数が上限ですが、大腸菌では1ml中に109個の細胞数まで増やせます。従って、ヒト細胞を用いた場合は1mlの懸濁液中に106個のたんぱく質分子が出来ますが、大腸菌の場合には、1mlの懸濁液中に10個たんぱく質分子が生産されることになります。

遺伝子組換え生物の利用と規制
遺伝子組換え生物の利用には、第1種使用 開放系(拡散防止措置なしに野外利用する)と、第2種使用(閉鎖系)があります。遺伝子組換え生物の使用とは、食用、飼料用、加工、保管、運搬、廃棄、実験、育成(飼育、栽培、培養)をさし、規制を守る必要が生じます。

 
久留主先生の講義風景  

講義2「次世代型組換え植物」

茨城大学遺伝子実験施設 安西弘行氏

種無しの果実を作る
種無し果物は植物のバイオテクノロジーを利用して作られています。例えば、種無しスイカは染色体が2倍体の普通スイカを倍化(コルヒチン処理)させ4倍体とし、2倍体と交配して得られる3倍体を利用し、種無しブドウはジベレリンというホルモン処理をして作ります。三重の試験場で種無しビワ(コルヒチンとホルモン処理)を開発しているそうです。

細胞融合
交雑しようとしても種がとれない植物の組合せがあり、細胞をくっつけてしまうこの技術は、種の壁をこえた技術のひとつ。キャベツとハクサイをあわせてハクランのように製品に至ったものもあれば、ジャガイモとトマトをあわせたポマトや、寒さや病気に強いカラタチと甘いオレンジをあわせたオレタチなどはそこまでいきませんでした。

遺伝学の歴史
20世紀の生物の大発見である、1865年メンデルの法則の発見は遺伝の形質を要素として捉えたところが、画期的でした。その後、1953年、ワトソン、クリックは、DNAの二重螺旋構造を発見しました。遺伝には親から子に伝わる遺伝と細胞から細胞に伝わす遺伝があるので、区別する必要があります。

身近な食物の中のDNA
DNAを食べたことはないという人がいますが、私たちが食べる食物は生物ですから、みなDNAを持っています。ブロッコリーのように細胞が多い組織からは、台所道具を使ってDNAを取り出すことができます。こうして取り出すと、私たちがDNAを食物として食べてきたことを実感できます。

発光のしくみ
ケミカルライトは2つの液を混ぜたときの化学反応から出る光です。雷は電気現象。生物の発光のひとつにはホタルがあります。ホタルは酵素のルシフェラーゼと、ルシフェリンとATPで光ります。今は、ルシフェラーゼを作る遺伝子を組換え、7種の光を出す酵素が大腸菌によって作られ、商品とされています。ルミノール反応も鉄イオンがあると光る発光のひとつです。

ゲノムサイズ
ヒトのゲノムの大きさは30億、大腸菌は464万なのに、遺伝子の数はヒトが3万、大腸菌は4289個。 ヒトゲノムは大きさの割に遺伝子の数が少ないので、この分野には隠されたメカニズムがまだまだあるはずです。

宇宙船地球号
穀物の消費は、肉食が進むと、家畜の食べる分も増えていきます。人口が増え、人々がより豊かな食生活を追求すると、当然、食糧(ヒトの分、家畜の分)が不足します。
土壌にいる植物の病原菌は植物に遺伝子組換えを起こしていました。病原菌が運ぶ遺伝子の部分に有用遺伝子をつなぎ合わせて、植物体に入れるのが遺伝子組換え技術(アグロ感染法)。除草剤耐性とは、除草剤を工夫して使わなくても、除草剤防除ができます。害虫抵抗性では、低農薬で、殺虫効果、殺菌効果を出すことができます。遺伝子組換えでウィルス抵抗性を付与したのは、パパイヤです。ウィルス対策は非常に難しいので、とても遺伝子組換えパパイヤはよく成功した例です。イネの栽培には、適切な農薬の使用が大事ですが、遺伝子組換え作物を組み合わせると、農薬の使用量を減らすことができます。この他に、色変わりの花つくりにも遺伝子組換え技術が使われていて、これは、色素のできる回路を操作しています。

世界の遺伝子組換え作物の耕作
米国、カナダ、ブラジル、アルゼンチン、中国を筆頭に世界に耕作面積は増加中。ダイズでの組換えの割合は特に高いです。

次世代の組換え作物
消費者にメリットがある遺伝子組換え作物の開発が進められています。米国では、バナナやトマトにワクチンを作らせ、食べるワクチンとしての研究が進んでいます。イネの品種改良にも遺伝子組換えが使われています。遺伝子組換えは、前の研究者の業績をもとに、次の段階に進めているので、効率に行うことができます。
私はラクトフェリンの入ったコメの研究をしています。ヤーコンはフラクトオリゴ糖が多くできるので、これをテンサイに入れてフラクトオリゴ糖を多く作らせる研究もしています。このように遺伝子の働きを利用して行う品種改良を、植物の分子育種といい、1)農作物の改良(耐塩性、病害虫耐性など)、2)環境浄化(汚染土壌の浄化など)、3)物質生産(医薬品、糖類、燃料など)を目指した研究・開発が行われています。


先ずはマイクロチップの使い方から 光る大腸菌の実験
若さあふれる実験風景 電気泳動実験:寒天ゲルにサンプル注入

実験

「光る大腸菌を作る」、「DNAをはさみで切る」、「納豆菌を培養する」、「DNAを見る」、「DNAを取り出す」の5つの実験と観察とまとめが行われました。

安西先生の実験説明風景 ラボツアー

遺伝子実験施設見学

参加者は、久留主先生と安西先生の案内で、1日目に20分間施設を見学、設備として、植物培養器や低温実験室など、機器として、DNAの塩基配列を決めるキャピラリー型DNAシークエンサー、DNAを増やすPCR装置、超遠心機などの説明を受けた。



バイオカフェ

すべての講義と実験を終了して、バイオカフェを行い、みんなで2日間の感想などを話し合いました。今回は同大の受験を目指す頼もしい高校生が数名参加し、参加者全員で、将来の日本のバイオへの貢献をお願いしました。

参加者の全員写真 修了証書の授与
実験後のバイオカフェ風景 質問する参加者

好評だった白衣着用

  • 白衣を着られて楽しかった(高校生)
  • 白衣を着て本格的ができた感じ(高校生)
  • 白衣を着ると立派な人間になった気がする(高校生)
  • 白衣を着たとたん緊張したけれど、翌日から元に戻ってしまうと思う
専門的な器具などにふれて
  • 恐ろしかった。緊張した。
  • 器具を使うときが緊張した
  • 実験の機械がすごかった。DNAシーケンサーなど
感動の瞬間
  • 納豆菌のDNAがもやもやと出てくるところが見られてよかった
  • 納豆菌のDNAがもやもや出てきたときに、納得感動した
  • 光る大腸菌が見られて感動した。実験の過程が重要である
  • 最先端技術に触れた!という感じがした。
  • いつもは化学系の実験をしているので、生物系の実験をするといつも違う緊張があった。
その他
  • 実験はひとりずつでやってもよかった
  • 実験をするのは中学生以来。いくつか並行してやっているので、途中で何の実験だかわからなくなることがあった。安西先生の講義がよかった
  • 理科の勉強だと化学式が出てくることが多いが、楽しく実験ができた。準備が大変だったと思う。自分たちも準備に参加できればよかったと思う。
  • 楽しかった。実験が好きなのに、普段は学校であまりできないので。
  • 今日、取った納豆菌のDNAを、職場である学校で見せたい。安西先生が紹介された「簡単な実験」もやって見せたい。
  • 実験の結果が翌日になるまでわからないので待ち遠しかった。
  • 会社へのレポートつくりに悩んでいる。
  • 遺伝子組換えが自分でもできるとは思わなかった。
  • 食品の衛生検査の仕事をしていたが別の角度からDNAの勉強ができて、これからの参考になる。
  • 保護者からの組換え食品についての質問について、何とか答えられそうな気がした。
  • もっと組換え食品のことを勉強しようと思う。
  • 体験することの影響の大きさを感じました。みなさんの目によく現われていました。難しい
  • 話も体験を通すことで入っていってもらえると思いました。



copyright © 2006 Life Bio Plaza 21 all rights reserved.
アンケート投票 ご意見・お問い合せ