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クローン技術をめぐる国内外の動きについて

 クローン人間誕生のニュースが年末話題になっていたところに、2月14日クローン羊ドリーの安楽死が伝えられました。ドリーは1997年7月世界で始めて体細胞を用いてクローン技術によって生まれました。羊の平均寿命は11-12歳ですが、ドリーは6歳でした。昨年1月には重い関節炎になっていることがわかり、クローン技術が関節炎の原因かどうか検討が必要であるとされていました。今後の解剖などを経て研究が行われることになっています。
 クローン技術についてはいろいろな検討がある一方、再生医療をはじめ人類への恩恵も考えられることから、この技術をめぐる国内外の動きについて調べてみました。

 クローンって何?


クローンベビーの動き

 一方、2002年12月28日新興宗教団体の関連企業クローンエイド社(スイス)は世界初めてのクローンベビ−の誕生を発表し、2003年1月末までに続けて更に2人の誕生を報告しました。同社は1997年ラエリアンムーブメントという世界84カ国に60,000人以上の会員をもつUFO関連非営利団体指導者のラエル氏により設立されました。誕生したクローンベビーについては、遺伝子診断を行うまでは確認できないとする科学者も多く、真偽の程は定かではありません。この他、ケンタッキー大学ザボス教授はイタリアの著名な不妊治療専門医セベリノ・アンティノリ氏らと協力し、クローンベビーの誕生計画を進めており、2002年4月、アンティノリ氏は不妊症患者の1人がクローニングされた人間の胎児を身ごもっているとも発表しています。


ヒトクローンに対する世界の動き

 このような状況の中で2001年、国連の場で独・仏が「クローン人間をつくることは禁止されるべきであると多くの国が賛同しているが、クローン技術を応用した胚の取り扱いについては多様な考えがあり、見解の集約までに時間がかかることから、クローン人間禁止に限って検討する」ことを提案しました。2002年2月から国連本部で「クローン個体の生成を禁止する国際条約に関する特別(アドホック)委員会」が動き始めていますが、米国、バチカン、スペイン、コスタリカ等の「クローン技術を応用した胚も生命であるとして、その作成も禁止すべき」と主張している国々と、日本を始めとする英、蘭、ノルウェー、中国、韓国等の「まずヒトクローンだけ禁止してからクローン技術については考える」という多くの国の対立が続いています。

 人クローン個体の生成を禁止する国際条約に関するアドホック委員会について


ヒトクローンに対する日本の動き

 日本では、「クローン人間の産生禁止について(平成13年2月20日付け)」が科学技術政策担当大臣、文部科学大臣名で発表されています。

 クローン人間の産生禁止について

 しかし、クローン技術は臨床面で心筋梗塞等で壊死した組織を補う臨床研究、特定の細胞を体外で増幅させ様々な再生医療に応用する研究等が行われており、再生医療や新しい治療法の開発・研究においては、期待されている技術でもあります。
 文部科学省では「特定胚及びヒトES細胞研究専門委員会(平成13年7月11日設置)でクローン規制法に基いて、申請される研究計画の妥当性の確認が行われています。文部科学省生命倫理・安全部会のホームページでは同部会や関連する専門委員会の議事録や配布資料を見ることができ、一般傍聴の案内も出ています。

 ヒトに関するクローン技術等の規制に関する法律(法律第146号)
 生命倫理・安全部会

 厚生労働省では、2002年1月科学技術部会ヒト幹細胞を用いた臨床研究の在り方に関する専門委員会が設置され、「ヒト幹細胞等を用いる臨床研究に関する指針」を策定しており、その審議は大詰めを迎えています。傍聴の案内や議事録は以下で見ることができます。

 厚生労働省関係審議会議事録等

 文部科学省の規制は主にヒトに関するクローン技術研究に対して、厚生労働省の規制は主にヒトクローンに関する技術を応用した再生医療などの臨床研究に対してつくられています。


農業への応用の動き

 クローンとは生物学的には遺伝的に同一な個体と細胞の集合を意味します。植物細胞には「分化全能性」(根、葉、花等の様々な組織になる能力)が備わっているので、植物クローン技術は古くから品種改良等に用いられ、ラン、カーネーション、イチゴ等の生産に応用されてきました。これに対して動物の細胞は皮膚、筋肉等に分化してしまうので、その細胞を培養しても同じ細胞しか作り出すことができず、動物クローンはなかなか作られませんでしたが、今では受精卵クローンと体細胞クローンを作る技術が確立されています。
 すでに羊、牛、マウス、ヤギ、豚等のクローン動物が誕生しており、日本ではこの技術を用いた家畜クローンの研究も行われ、受精卵クローン技術で作られた292頭の牛が、平成14年11月の時点で、売却されていることが発表されています。

 家畜クローン研究の現状について


 クローン人間を作ることについては、多くの人がその人権など倫理的な問題を感じていますが、この技術を用いた臨床研究に対しては、期待している人たちもいることでしょう。いろいろな考え方があることを踏まえてのルール作りがもっとも重要ではないでしょうか。子宝に恵まれないカップル、臓器移植以外に治癒の可能性の低い患者やその家族の痛みが反映されるように、専門家ばかりでなく様々な人達の間に討論の輪が広がることが必要です。この技術は臓器移植の問題、脳死の問題など、ひとりひとりに必ずかかわってきます。
 まず、ヒト胚、クローン技術、生殖医療、再生医療などに対して認知が高まること、規制や説明はわかりやすいことばで伝えられることがはじめの一歩であると思います。





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