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銀座トリコロールバイオカフェ
「食と健康から見た循環型社会」レポート

2007年3月3日(土)、銀座トリコロールにおいてバイオカフェを開きました。お話は西野徳三さん(東北生活文化大学)による「食と健康から見た循環型社会」でした。始まりは今村さんと寺井さんによるバイオリンとチェロの演奏で、春の訪れにちなんで「パピオン(蝶)」(フォーレ作曲)などテンポの速い曲などが演奏されました。

いつも楽しい今村さんの曲の紹介 西野先生のお話


お話の概要

京野菜のおこり
野菜は千年の歴史のある肥えた土で生まれた。東京の練馬の大根も同じ理由で美味しくて有名。それは、江戸という100万人都市から出る下肥が、葛飾、練馬の土にまかれ、土が肥えたから。下肥を肥料にするのは仏教伝来とともにやってきた知恵で、下肥を入れた土からはおいしい野菜がとれることを人々は知っていた。

下肥は貨幣価値があるものとして売買され、金肥とまで言われ、畑に大事に運んで、発酵させてから、畑に入れていた。
身分により、生活のレベルや食生活が異なるので、売買される下肥の値段も大名屋敷、武家屋敷、商売人、町民、牢屋と低くなっていき、5倍の開きがあった。江戸時代のトイレから出たものの分析データはないので、本当に5倍の開きが出るほど栄養分が異なっていたかどうかはわからない。
明治時代のお抱え研究者ケンネルのデータによると、ヨーロッパ人の排泄物にはたんぱく質、有機物が多かった。日本では、兵士、学生は窒素、リン酸が多くたんぱく質を多く食べていたことがわかり、農民はカリウム、食塩が多く、野菜を多く食べ、労働するために食塩を取っていたことがわかる。一方、ヒトの尿では、たんぱく質の摂取量により約5倍の開きがあったというデータがある。
いずれにしても、江戸時代に成分分析はできないから、肥料として使ってみて5倍の価値を認めて、その値段をつけて取引をしたと考えられる。

日本は昔、循環型社会だった
記録によると、安政の5カ国条約で日本は外国と条約を結んだが、ドイツも日本と条約を結びたいために使節団を送った。その中にマロンという農学者がおり、その報告書(1860年)に「私たちの目の前には自然の力のすばらしい循環があり、連鎖の輪が欠けることなくつながっている」という記述がある。
一方、欧州はそのころどうだったか。1830年ごろイギリスの銅版画に、2階の窓からおまるの汚物を捨てている絵がある。窓から下を歩く人に断れば捨てていいことになっていた。
1854年、イギリスでコレラの感染拡大の調査をスノウが行い、コレラの発生した家を地図に記入したところ、井戸ごとにコレラが広がっていたことがわかった。感染が起こった井戸はロンドンの町中の川から取水しているが、上流から取水した井戸からはコレラが発生していなかった。当時の川には何でも捨てて、そこから井戸をひいてきて、その水が使われていた。
川の水を砂で浄化する技術が使われたのはもっと後のこと
ユーゴのレミゼラブルに下水道に汚物を流してしまい、肥料として活用しないのはお金を捨てているようなものだという記述もでてくる。
同じころ、江戸は吉宗の時代で、江戸の町は100万人の人が住んでいたが、下肥として利用されていたので非常に衛生的に暮らしており、清潔であると同時に資源がリサイクルされていたことがわかる。

4大文明や世界の状況
4大文明はどれも豊かな川の恵みから生まれたが、今はどうなっているでしょう。

  • メソポタニア文明:現在のイラク。サマワの傍は塩害に見舞われて農業のできない土地になってしまった
  • エジプト文明:ナイルは毎年氾濫し、そのたびに肥沃な土地が形勢されていた。しかし、アスワンダム及びアスワンハイダム建築で農業が滅んだ
  • インダス文明 森林伐採による川の氾濫で一番速く滅んだ
  • 中国文明:今も文明は続いているが、農業をするには水不足。黄河の水が海まで到達しない時期が1年の3分の1くらいあるらしい
砂漠化
現代の例としてアメリカの穀倉地帯について考える。化学肥料を大量に使って、徹底的にトウモロコシなどを収穫したため10年たって塩害、砂漠化が起こってしまった場所がある。有機質を使い切ってしまった。
スーダンでは、過放牧によって、多くの家畜が草を食べつくしてしてしまい、砂漠化が起こる。
これらの状況は自然の循環を絶ったために起こってしまった。自然の循環以上に酷使してはいけない。堆肥として土に戻すことが大事。微生物が使いやすい形に変えてくれる
一方、温室で水耕栽培も行われている。そのトマトは肥料液を毎日分析して不足した成分を加えて栽培され、10ヶ月間収穫し続ける。しかし、10ヶ月でトマトの木も根も廃棄してしまう。
土から離れた植物は循環型でないので、10ヶ月で終わることになる。

土の力、微生物の役割
動物は動けるが植物は動けない。植物は消化器官がない。植物も栄養がないと生きられない。植物は二酸化炭素と太陽光があれば光合成ができるが、土から微生物が作ってくれた栄養分を吸収する必要がある。
土にすむ微生物は植物の消化器官といえるのではないか。
ツルニンジンの収量と品質の関係で、ビタミンEの含有率を調べてみると、土の栄養が吸い取られてしまうことがわかる。チョウセンニンジンを7-8年かかって栽培すると、その後の土地は作物が作れないくらいにやせてしまうという。また、化学肥料で窒素を加えるとツルニンジンは大きくなるが、中身が伴わないといわれる。
路地栽培よりハウスものは有効成分が比較的少ない。土から養分をしっかり取っていないから。
また、京都や練馬のように豊かな土にはバランスのとれた栄養があり、肥料では足すことができない微量元素も含まれているのだと考えられる。微生物の共生する環境が大事。

「ジョウ」という漢字から、タイムスケールを考える
譲る へりくだる。譲る ことばだけ 瞬間
醸  材料は均一にする。醸す 週単位
穣  月か半年単位で実りが得られる
嬢  手塩にかけて育てた娘という意味だから10年単位
壌  土壌の材料が数十年から数百年かかって豊かな土地になる。だから、これは「大事に使いましょう」という意味にもなる。
日本は循環型社会を守ってきたお陰で、100年もつ土、欧州は数十年はもつ土だといわれている。


会場風景1 会場風景2


話し合い
  • は参加者、→はスピーカーの発言
    • 家庭菜園をしているが、食べられない部分も生ゴミに出さず土にかえすようにしている→ひとつの地球に住んで太陽エネルギーを使いまわしていくには循環型が大事
    • 都市型養豚は、臭いの問題などから、施設内で廃棄物などを処理してしまい、循環型にはできない→欧州には、廃棄できる場所があるが、日本では北海道もできなくなってしまい、運搬も難しい。東京の自給率は数%。都市に入ったものはそこで循環を絶たれる。
    • 食物を輸入している日本は土壌や水も輸入していることになる
    • 昔、欧州で排泄物を廃棄していたことと、ハイヒールは関係があると聞いたが→ハイヒールで踏まないようにしていたそうだ。マリーアントワネットのスカートが拡がっているのもおまるが使えるためで、男性のマントや山高帽子は窓から棄てられたものをかぶらないため。
    • ベルサイユ宮殿もそういう環境にあったのか→ベルサイユは1650年、オペラ座が増築されたのが1750年。この当時はトイレがない暮らしだった。「花摘みに行く」というのは、用を足しにいくという意味で使われていた。日本は循環型社会の先進国。
    • キューピーの水耕栽培のレタスを食べている。洗わないでいいというが、大丈夫だろうかと思うことがある。またスペインは自給率が90%だそうで、日本でもよいリサイクルができないだろうか→食品リサイクル法で食品業界に網をかける方法があり、リサイクルの率は17%から22%に上がってきている。家庭から出るゴミのリサイクルが難しく、石油を使って焼却処分しているのが現状
    • 中国の野菜は農薬を使っているというが大丈夫だろうか。なぜ安いのか→作物の栽培には農薬は必要で、実際に6−7割の野菜が虫食いで廃棄されている。人件費の問題で安いが、売れないと困るので、中国は日本に売る野菜に対して農薬基準を守っている。
    • 水耕栽培野菜は安全だろうか→日本の技術は高い。
    • 循環型の野菜の食べ方は→旬の野菜を食べること。1年中にいろいろな野菜を食べて豊に暮らしたいと思うと循環型は難しくなるかもしれない
    • アメリカの砂漠の再生法はあるのか→析出した塩は洗い流すしかないので、今は堆肥作りの指導が始まった。米国はそれぞれの週でコンポストスクールを作っている。4.5日のコースで、年に4回実施。塩が析出した砂漠にならないようにすることが大事
    • アメリカがそれでも生産できるのは土地があるからか。塩害の塩は食用になるのか→タイでは塩田を作っている
    • なぜ過放牧が起こるのか→換金家畜を増やして生活を豊かにするため。肉食が増えて生活のレベルが上がったことも関係している。
    • 中国の9億人の食生活は豊かとはいえない。彼らに生活レベルを上げるなといえない。日本の自給率が上がっても、中国がアメリカの作物を買い入れるので、アメリカの砂漠化は止まらないだろう。アメリカは砂漠で農業をするのに地下水をスプリンクラーでまいており、コロラド川は使った水を川に戻すので河口近くの水は塩辛くフィルターなどを使用して脱塩してメキシコに流しているほど。
    • 産業と循環型社会は矛盾するのでは→自由主義経済には資源枯渇という前提がない
    • 江戸時代は鎖国で閉じた社会。地球を閉じた社会とし人口、水、土壌を考えたらどうか。
    • そうなるともうひとつの地球が必要になり、3つ目も必要なるかもしれない→地球は閉じた系だと粘り強く訴えていくしかない。家から出すゴミを減らす。裏紙を使う。地球には太陽からのエネルギーしか来ない、バイオエタノールはサトウキビを発酵して作る。これを食用にするか、燃料にするかという問題が出てくるだろう。日本には太陽エネルギーで作られた木材やその廃材を使って燃料を作る技術があるが、この方が高くつくことが問題。現在まだ石油の3倍になる
    • 中国13億、インド10億と人口が増加し、石油が高騰する。北海油田の産油量は減っている。→バイオエネルギーへの期待が高まる。鹿児島では、日産5Klのアルコールを作っている。ブラジルでは4割がアルコール車。それで食用トウモロコシも値上がり。1Kgの牛肉を得るのに10kgのトウモロコシ飼料が要る。発展途上国で肉食、自動車利用が広がり不足が生じる
    • 粗食が体によく、肉食は寿命が縮まるらしい→動物はネズミからサル、チンパンジーへと進化するほど、草食をするようになる。ヒトはそこから進化したのに雑食である。チンパンジーを見習い草食で、粗食がいいのではないか
    • 粗食と腹八分目を守るのがいいと思いつつ。。。。
    • 今まで話をうかがっていると、地球でうまく活きていくのにはやはり科学技術で解決していくしかないという気持ちがした。研究者の方にこういう話をしていただきたいと思う。



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