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遺伝子組換えイネなどの野外試験栽培に関する説明会がひらかれました

5月9日(水)から12日(土)の4日間、1日に2回(定員10名/回で、各日、10時からと14時)の「平成19年度遺伝子組換えイネ等の第一種使用に関する説明会」が計画され、結果的には申し込み制で4回開かれました。9日の第1回目の説明会の報告をします。


初めに、遺伝子組換え研究推進室長 田部井豊さんより、「遺伝子組換えイネの野外試験栽培の説明会を過去2年間行ってきたが、「一部の参加者ばかりが発言してしまう」「もっとじっくり意見交換をしたい」という声があった。そこで、今年度はしっかりした意見交換を行うことになった」という説明がありました。
農業生物資源研究所ホームページ http://www.nias.affrc.go.jp/press/20070427/

開会の挨拶の主な内容(佐々木理事)
本研究所はイネゲノム解析という世界に誇れる研究成果をあげており、遺伝子組換え技術を用いたメロン、トマト、イネなどの研究も行ってきた。野外での試験栽培に対しては花粉飛散を懸念する生産者、不安を感じる消費者がおられるので説明会を行う。説明者はわかりやすいことばを用いる努力するので、遠慮せずに活発に質問して意見交換をして下さい。

説明者の方々 説明する高木研究員


遺伝子組換え農作物の世界の常用と安全性評価の概要及び情報提供について

遺伝子組換え研究推進質主任研究員 土門英司 氏

世界の遺伝子組換え作物と日本の輸入量
世界22カ国で遺伝子組換え作物が耕作されており、米国、アルゼンチン、カナダの順。スペイン、インド、中国などアジアやヨーロッパでも作られている。日本に輸入されている作物について輸入量と輸出国における遺伝子組換え農作物の栽培面積の割合から遺伝子組換え原料の含有量を推定すると、輸入されているダイズの場合、90%程度が遺伝子組換えダイズと考えられる。飼料用及び加工用トウモロコシの場合、日本では生産していないので、組換えの割合は50%以上。ナタネ、ワタも同様に推定できる。

遺伝子組換え作物の安全性評価
環境、食品、飼料の安全性評価は、カルタヘナ法、食品衛生法、飼料安全法に従って行われている。カルタヘナ法では研究室などの屋内で実験をする第2種利用と、屋外で栽培する第1種使用に大別されている。
今日は野外試験栽培などを対象とする第1種使用について説明する。本研究所では、「第1種使用規程承認組換え作物栽培実験指針」という農林水産省の傘下にある研究所を対象とした指針に従って試験栽培を行うことで、一般作物への交雑・混入を防ぐ努力をしている。

生物多様性影響評価について
実験室での試験を終えた遺伝子組換え作物は、野外で野生生物に対して、競合の優位性、有害物質を産生する、生物多様性影響に影響を与える可能性が考えられるので、それらの項目について評価する。

質問1:実験室から野外に出したときにどんな野生生物に影響を与えるかは、やってみるまでわからないのか→導入した遺伝子ともとの作物の特性から、影響を与える野生動植物を想定し、さらに実験室で遺伝子組換え植物の特性を調べることで、隔離ほ場の周囲の野生生物への実際の影響を想定している。



スギ花粉症緩和米の昨年度の隔離ほ場の試験栽培結果と19年度の計画

遺伝子組換え作物改札センター 研究員 高木英典 氏

花粉症緩和米とは
現在のアレルギー治療方法はアレルゲン全体を注射して体を馴れさせていくものだが、治療期間が長く、ショック症状が出ることがあるというデメリットがある。花粉症緩和米ではアレルギーを起こす原因になるたんぱく質のなかで特にアレルゲンと認識されるごく短い配列7つだけを米に蓄積される。これを食べると、アレルギー症状が緩和される。花粉症緩和米は、キタアケ(ウルチ米)の中で7つの部分を合成させてつくる。

平成18年度試験の結果について
4月17日、8月18日の2回、田植えを行い、二期作を行い、233kg、164.5kgを収穫した。栽培中に次のような試験を行った。

  • 飛来昆虫の調査:キタアケとスギ花粉症緩和米の比較 昆虫数、昆虫種には差はなかった。スギ花粉症緩和米が虫を寄せつけない物質などを出していることはない
  • 花粉の比較:大きさ、花粉捻性に差はなかった
  • 1株当たりの粒数や籾の重さ、稔実率(実の入った種の割合):違いはなかった
  • 穂につく粒数、穂の長さ、穂の数、玄米のサイズ:統計処理をすると5%で有意差が生じた。
  • 生物多様性影響:競合における優位性をスギ花粉症緩和米と一般に栽培されているイネの穂の数、玄米のサイズなどで比較し、ほぼ同等であった。
  • 有害物質産生性:土壌微生物、飛来昆虫相、アレロパシー物質については調べたが、違いはなかった。
  • 飛散花粉による交雑のテスト:ハクチョウモチに白濁(キセニア)が生じることによって交雑を見つける方法で、1期目で28,000粒、2期目で12,000粒を調査したがキセニアはなかった。
  • 遺伝子、細胞、個体、生殖、発生における安全性について、マウス、サル、や培養細胞等を用いて試験を行ったがすべて異常なしで動物が食べても安全であることがわかった。
19年度の予定
6月に田植え(見学会開催予定)をして、9月に収穫の見通し。
セキュリティーの観点から隔離ほ場で行う予定
交雑・混入防止措置として以下のことを行う
  • 2箇所の試験栽培ほ場は研究所外の一般農家のイネほ場から750m離れており、開花期が1ヶ月半ずれている
  • 野鳥による摂取を防鳥網で防止する
  • 研究所と外部の境界近くで、もち米を用いた交雑のモニタリングをする
  • 種子は密閉容器に入れて持ち出し、収穫種子はほ場無いで脱穀、精米などを行う。
第1種使用規程承認組換え作物栽培実験指針について

安全性に問題なしとして承認された組換え農作物であっても、非組換え農作物に混入することによる生産・流通上の混乱を避け、円滑な組換え農作物の栽培実験などを行うために農林水産省に関連する栽培を対象に定められた指針で、交雑防止措置、収穫物などの混入防止措置、情報提供のあり方などが細かく決められている。

質問2:19年度は一般ほ場栽培なのに隔離ほ場で栽培するのはなぜ→一般ほ場栽培として申請し認可されると、施設の中ならどこで栽培できるが、人の出入りなどのセキュリティー面から隔離ほ場を用いる。試験栽培といっても花粉症緩和効果が期待されると経済的な価値も考えられるので、盗難等に備えて24時間監視カメラも設置した。
質問3:隔離ほ場で栽培するのに一般ほ場栽培として申請した理由は→生物多様性の影響評価の試験を終えたので、一般ほ場で申請した。一般ほ場栽培とし認可を受けると、先ほど行ったように施設内どこでも栽培でき、期間が限定されないので、数年先に栽培しても再度申請はいらなくなる。日本は欧州と異なり期間限定なし。
質問4:食品から医薬品にかわって栽培計画はかわったか→安全性の手続きは変わるが栽培計画は変化なし。サンプルとしてどのくらいの花粉症緩和米が必要になるかわからないので、多めに確保した。1トン収穫予定。
質問5:医薬品だと安全性評価方法はどのように変わるのか→食品は食品衛生法で食品安全委員会の評価だったが、薬事法による評価になる。動物実験の手続きが異なったり、第1相、第2相、第3相など試験の段階も増えるなどいろいろな違いがある。
質問6:一般ほ場栽培で薬事法の試験のための試料生産作業をすると考えていいのか→そうです
質問7:今回の説明会はどのように市民に知らせたのか→3月6日 筑波市、茨城県庁、JA谷田部に概要説明を行い、4月26-27日 近隣住民に案内をし、4月28日常陽リビングに一般説明会の案内を掲載した。
質問8:今回の説明会のやり方に対する内外の反応は→少人数の説明会に対して特別な反応はなかった。少人数で発言しやすい状況作りを目指した。内部では何回も開催するのは大変だという意見はあったが、十分に情報提供ができて意見交換ができるためには、この方法がいいということになった。農林省でも少人数の形での説明会と認めると確認をとった。




除草剤耐性ダイズ、害虫抵抗性・除草剤耐性トウモロコシの展示栽培について

遺伝子組換え研究推進室長 田部井豊 氏
展示栽培は、納得を求めるものではなく、実物を見て本技術について考えるきっかけにしてもらうためと考えており、隣の隔離ほ場での花粉症緩和米も見学してもらえるといいと思っている。

栽培する作物

・除草剤耐性ダイズ AG3701  近くのダイズまでの距離は30m(指針は10m)で、種が完熟するまでに刈り取り焼却
・害虫抵抗性・除草剤耐性トウモロコシ N71−L7  開花前の除雄(雄花を取り除く)

市民参加型展示ほ場の提案
 
完全な計画はできていないが、一般の方を募集して除草作業などに参加してもらって、参加者と研究者が交流しながら双方向コミュニケーションを目指したいと考えている。  従来のアンケートで得られない参加者の声が研究者に届いたり、農作業の実態が一般市民により理解されるのではないかと期待している。このプロジェクトは「遺伝子組換え生物の産業利用における安全性確保総合研究」の一環として行い、アンケートなどを分析し、今後に活かしたい。


花粉症緩和米が栽培される隔離ほ場 この6枚の水田(まだ水が入れていない)で栽培される

質問9:参加者の対象、人数はどのように想定しているのか→メディエーターになれる人に一部参加してほしい。親子で体験したい人の参加も歓迎したい。社会科学系の研究者も巻き込んで現場を見てもらいたい。
質問10:
メディエーターとは何か→科学者が科学技術を一般の方に伝えると専門用語が多くわかりにくい。それを仲介するメディエーター養成が最近は方々で行われている。
質問11:
現在申請中ということは、今年予定通り栽培できない可能性もあるのか→展示栽培に用いる作物はすでに安全性評価がおわっているので、予定どおり栽培を始める。
質問12:
花粉症緩和米の栽培認可はいつおりるのか→これからパブリック・コメントなので6月ごろだろう。田植えには厳しい時期になる
質問13:
19年度の花粉症緩和米の栽培面積はどのくらいの広さか→主な試料生産は作物研究所(30アールの一部)で行い、生物資源研究所では、展示栽培ほ場の隣で、見学者に見てもらうことが目的。作物研究では20アールで1トン弱の収穫を予定している。生物資源研究所では展示目的で1−2アール栽培し、開花前に刈り取る。
質問14:
今年の花粉症緩和米の安全性評価試験は→試験はせず、モニタリングのみ。
質問15:今回の資料に野外栽培の試験を終えた作物のリストがあるが、自治体の規制に従えば、これらのものはいつでも商業栽培できると考えていいのか→トマト、イネ、メロンなどは場所が限定された認可であるのでどこでも栽培することはできない。現在はカルタヘナ法のもと第1種使用は出来ない。 外資系民間企業が開発し世界的に栽培されているトウモロコシやダイズなどは場所の限定がないので国内で商業栽培をしてもいいという認可を受けている。ただし、種と対で利用する除草剤が登録されていないために使えず、除草剤耐性ダイズ栽培のメリットがない。

隔離ほ場内の設備の説明をする田部井室長



説明会を終えて(田部井室長のインタビューから)

「参加者はジャーナリスト、近隣の農業者、市役所の職員、消費者団体など合計12名。例年(土曜日の午後開催)の約80名の参加から見ると参加者数は減ったが、研究者の参加が無かったことが大きい。反対する方の意見は変わりにくいと思うが、花粉症緩和米の商品化を期待する声の方が多かった。今回のような説明会は新しい良い試みだと思うが、8回(当初の予定)開催することは主催者の負担が大きく、よりよい方法を検討したい。人数が少ない立場の異なる人の発言する場を確保でき、その意義は大きい」とのことでした。説明会の後に希望者は隔離ほ場を見せていただき、参加者同士でも意見交換ができ、理解が進んだ説明会でした。



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