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「放射線照射食品をめぐる国際的な状況」開かれる

9月3日(月)、東京ウィメンズプラザ(渋谷)において食品安全委員会主催、食品に関するリスクコミュニケーションが行われ、約300名が参加しました。初めに、食品安全委員会委員長見上彪氏より開会にあたり、同委員会としては、「食品照射は自ら評価をせずに情報収集を続ける」ことにしたという説明がありました。モイ博士のお話の後に行われた話し合いの時、食品安全委員会委員などの日本の関係者も壇上にあがり、日本と世界の状況が会場の参加者と共に議論されたら、もっと市民にとって有意義なコミュニケーションになったのではないかと思いました。


ジェラルド・モイ博士(世界保健機関(WHO))のお話の概要

はじめに
私はWHOで食品照射について研究をする事務局に属している。WHOの見解は報告書にまとめている通り。化学物質の安全性の立場から、照射によって新しい化学物質ができたかどうか、それが安全かどうかの検討をしている。
放射線の利用に対して消費者団体などが反対を唱えている。そこで、放射線照射irradiationより、電磁的殺菌electric pasteurizationということばを使いたがる人もアメリカにはいる。ロゴについても、ドクロマークにしろという消費者団体もいるほどだ。

食品照射とは
電磁スペクトルの中の波長の短い一部の波長(ガンマ線、エックス線)を利用。長い波長は私たちの体を通り過ぎる。マイクロ波利用の歴史は長くないが、携帯電話や電子電磁ではよく使われている。
国際協力体制としては、3つの組織が協力して安全性や効果を検討している。国際原子力機関(IAEA)が照射施設・設備、国際食糧農業機関(FAO)が効果、国際保健機構(WHO)が安全性の検討を行っている。

照射施設
最も多く使われているのは医療機器への照射(滅菌)で、食品照射の歴史は約40年。今まで環境に対して問題を残してはいない。起こった事故は人的な運用を誤った場合で、火力発電所の被害より小さい。
コバルト60を線源としている。原子力発電所の副産物であるセシウム137を使ったこともあるが今は使っていない。電子線加速器を利用することで放射性物質を使わずに済めばテロを想定したときに利点。

適用
日本ではジャガイモの芽止めのみで認可しているが、発展途上国の食物の貯蔵には重要な技術。欧州では日持ちの悪いイチゴへの照射が一般的で、照射により農薬の利用が減る。スパイスの微生物の殺菌に利用すると、香りを残して、化学的残さ物が残らない。
生肉の病原菌(サルモネラ、カンピロバクターなど)殺菌にも利用され、米国では、約半分の食肉で利用。免疫低下した患者の病人食では、品質を損なわずに殺菌できる。
放射線はあるエネルギーを透過させて、バクテリアのDNAを破損する。低い線量でよく、殺菌してもほとんど温度上昇がないという利点がある(10キログレイで2度程度)。
世界では50万トンの食糧に照射を行っているが、先進国ではドイツと日本が受け入れていない。

安全性
そもそも完全に安全な食品は存在しないが、食品の安全性は高まり、公衆衛生のゴールデンエイジと言え、その成果で寿命も延びていると考えられる。我々の安全で豊かな食卓は食品科学者の努力の賜物ではないか。
食品照射の研究も非常に進んでおり、1983年コーデックス委員会(国際食品規格委員会)が照射食品の一般規格(コーデックス規格)を採択した。報告書で、平均10Gyまでの照射は栄養素などに変化を起こさないことがわかり、利用してよいことになった。
食品照射は加熱殺菌ミルクの導入と似たケースで、加熱殺菌ミルクを飲むようになって100年経っていないが、事故はない。むしろ、ミルクのサルモネラ汚染による事故は減った。政府や公衆衛生研究者への不信から加熱殺菌ミルクを飲まない人達には公衆衛生の立場でのリスクコミュニケーションが必要。

照射実験の結果
0,5,10,25,30,70キログレイの照射実験をした。(1キログレイは1Kgあたりに吸収された放射線のエネルギーが1000ジュールであることを示す)など
(1) 栄養素
病原菌や害虫のDNAを破壊するだけで、栄養素、ビタミン、必須脂肪酸については変化なし。
(2) 副産物の産生
脂肪酸は照射によって、2-アルキルシクロブタノン類ができる。放射線照射に特異的な分解産物であることは確かで、発がん物質を同時に投与した場合にその発がん性を促進する可能性が動物実験で指摘されている。しかし、実際の照射食品中の生成量は極微量であり、さらにこの分子は不安定で普通の調理でも分解しているので、委員会としては問題視しないと決めた。 (3) 低線量で、殺菌、殺害虫、殺酵母、カビに有効
ウイルスはターゲットが小さく、高線量が必要だが、他の技術(加熱処理の併用)と併用して使う方法もある。ウイルス除去には照射以外の有効な方法があるかもしれない。
(4) 毒性試験の結果
慢性毒性、発ガン性、生殖毒性、催寄形性試験等を実施。現在まで問題は起きていない。

結論
照射は食品にほとんど変化を起こさず、高線量にしても違いは見つからない。特異的に産生される2-アルキルシクロブタノン類について、高線量照射した鶏肉を用いて動物飼育試験をしたが問題はなく、毒性も全く見つかっていない。
適正な照射(good irradiation practice)をすることが大事。照射しすぎても調理しすぎと似た状況になるだけ。照射後に包装材などから汚染しないような管理も重要。
包装材に入れたまま照射する場合には、溶出した物質の安全性も調べる必要があるが、10キログレイ以上の照射においても、包装材も安全だったと報告されている。

検知法
食品照射によって食品に変化が生じないので、検知は難しい。アルキルブタノン類の発生を指標にする検知も難しい。


質疑応答
  • は参加者、→はスピーカーの発言
    • アルキルシクロブタノン類の健康影響について→私たちが2-アルキルシクロブタノンを放射による特異的産物として特定した。GMOと同じで主要栄養素に差はない。ラットに6キログレイの照射をした飼料を与え、安全性をカバーできた。ppmレベルでは何かがあるかも知れないが、有害性はなかった。照射食品の動物実験で有害な結果はなかった。種差、個体差の安全性係数をかけて100分の1の安全性係数をかけた。
    • 有害な動物実験の結果が反対の根拠になっている→今まで、有害事象は見つかっていない。有害事象に対しては、継続的な研究を行うが、より多くの対象を使って試験しても科学的に照射食品が危険かどうかを見つけられるかどうかはわからない。継続試験をしたら、初めの有害事象を見つけた試験そのものが不適切だったこともあった。
    • 不満を持つ人がいるのはなぜだと思うか→安全性に関するコミュニケーションに問題があったのではないか。安全であることの立証は難しい。科学的にはヒトの健康、安全に関する問題はないというコンセンサスが得られているが、必要なら再考もあり得る。
    • アルキルシクロブタノン類の更なる試験研究がオープンな形で進められるべきではないか。1980年の10キログレイ以上の照射に問題なしとしたときに集まらなかった科学者には反対だと思う者がいたのではないか→入手しているエビデンスからみて、再試験は必要ないと思うが、新しいデータが出てくればWHOは次の検討をするだろう。シクロブタンを摂取してもラットの内臓で早く代謝されることがわかっている。長期の飼料実験もした結果、食品照射は安全だと考えている。研究継続はよいと思うし、日本やドイツが試験を続けることに異論はない。しかし、WHOが要請するものではない。
    • 原子力関係の助成金を受けたことがない中立な研究者による試験実施が必要であると思う。
    • 1997年の報告書以降、新しい検知法は開発されているか→イエス。CODEXでは新しい検知方法を採用しつつある。
    • 日本はジャガイモの芽止めの照射しか認めていないが、それは発展途上国にどんな影響を与えるのか→米国では、温水の処理方法よりもよい品質保持ができるとわかり、発展途上国からの輸入品の検疫用に照射を認めた。日本が許可すると、途上国からの輸入の幅が広がるのではないか
    • ドイツの状況を教えてほしい→EUはスパイスの照射を許可している。ドイツは国内での照射は認めないが、国外で照射されたスパイスの輸入はできる。EUでスパイス以外の照射を認めたら、ドイツもそれに従わなくてはならないが、国内では照射することについての規制はできる。
    • 消費者の商品選択と再照射防止のために検知方法開発が大事。日本は輸入に頼っているので、検知方法開発が大事だと思う→日本への輸入品に違法な照射が行われていたのは、公衆衛生より経済の問題だと思う。再照射は市民の健康に被害を与えるものではなく、そういう場合は文書によるトレーシングを行い、販売時には照射食品のラベルをつければよい。これは有機食品の証明と似ている。生産から市場までのトレーシングにより、経済的な不正(ラベルによって差別化し不当に高く売る等)や照射の乱用を防止し、源を突き止められるようにする。検知方法開発よりトレーシングがよい場合もあるのではないか。
    • 照射はよい方法なのに普及されないが、WHOはどんなことをしていくのか→食品照射はニッチマーケットを持っていて、この方法しか適用できない狭い範囲がある。有効な技術なので各国に受け入れてもらうための努力をしている。各国政府は規則を設けて技術導入できるが、業界がこの技術を受け入れるかどうかを決めることになる。しかし、市民が不安を持っている現実があり、選ぶのは消費者。WHOは市民が間違った理解で照射食品を拒否しないでもらいたいと考えている。日本は原爆の経験から恐れが高いかもしれない。食品照射は味も香りも変わらず、エチレンオキサイドやメチルブロマイド等の化学処理法を使わずにすみ環境に優しい。全ての食品に照射を薦めているのではない。一定の対象に対して、照射の特性を活用していくことが大事だと思う。WHOはひとつの技術を推奨することはできない。この技術を広めるのは利用する分野の人たちだと思う。
    • 電子線照射試験について世界の状況はどうか→市民の受容は得やすいだろう。今はテキサスで研究しているが、どこが所管するか決まっていない。
    • 悪用と乱用が心配。日本では原料のダイズに照射があったかもしれないということで、自主回収された→食品照射の乱用・誤用には、どんな管理がよいか、より広範囲な検討が必要。米国では、2%の食品に照射が行われている。誤用の可能性はあるが、安全性の観点から見れば国民全体の健康問題にはならない。コスト面では、誤用・乱用防止に大金をかけるより、HACCPによるトレースを充実させるのがいいのではないか。
    • アルキルブタノン類の慢性毒性試験はなされていないのではないか→1984年の研究レポートによると、シクロブタノンは非常に微量で問題ないと考えられる。WHOは各国政府の資金による試験の結果が出れば、その結果をもとに検討したい。
    • コバルト60は原子力で作るのではないか→コバルト60は原子炉の中で作られる。現在はカナダで製造。施設の安全性も考えると、将来は電子線になるのではないか。

    参考サイト http://www.life-bio.or.jp/topics/topics235.html



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