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くらしとバイオプラザ21とは


第2回ヒトゲノムを使った実験教室「私たちのDNA」を開きました

10月27日(土)、東京農工大学遺伝子実験施設との共催により、同施設で標記実験教室を行い、16名の社会人が参加しました(協力:東京テクニカルカレッジ、日本製粉株式会社中央研究所)。
初めに、このこの実験教室の内容、自分のゲノムDNAを使って実験することの意味の説明が行われました。そして、参加者は自分のゲノムDNAについて学習した上でこれを用いた実験に参加することに対する同意書に署名をしました。これは、個人遺伝情報が他の個人情報(学歴、職業、年齢など)に比べ、自分の将来の健康や兄弟や子孫の健康にも関連した情報を含む幅広いものであるために、個人遺伝情報に対しては特別の配慮が必要であることによっています。この実験教室プログラムは、多くの人々に個人遺伝情報に関心を持っていただこうと、くらしとバイプラザ21のオリジナルメニューとして、昨年より実施されております。今年も、東京農工大学のヒトを対象とする研究に関する倫理委員会で検討され、承認されて行われました。今後も、より良い実施方法を模索し、本教室を継続する予定です。

参考サイト https://www.life-bio.or.jp/topics/topics213.html

この実験教室では大きく分けて、ふたつの実験を行いました。
実験1 口腔粘膜からとった細胞からゲノムDNAを取り出して、目視にて観察する
実験2 取り出したゲノムDNAの中にあるLDH2遺伝子というお酒の代謝に関係する酵素の遺伝子について調べる。最後には、皆で実験結果について話し合いをしました。

丹生谷博先生による開会の挨拶 大藤道衛先生のお話

実験1.自分のDNAを見る

0.9%食塩水でクチュクチュすすぎ、口腔粘膜の細胞をとる。細胞膜や核膜を溶かす試薬を加え暖めて溶解します。DNAはエタノールに溶けないので、出てきたゲノムDNAにエタノールを加えることで目視にて観察する。(細胞溶解液の主成分は界面活性剤です)

大藤道衛先生による実験の説明 微量な溶液はマイクロピペッターで扱う
マイクロピペッター練習1 マイクロピペッター練習2
ただいま、クチュクチュすすいでいる 遠心分離機で細胞を集める
エタノールを静かに注入すると
雲のようなDNAが出現する1
エタノールを静かに注入すると
雲のようなDNAが出現する2


実験2.自分のALDH2遺伝子を検出する

食塩水でクチュクチュすすいで取った口腔粘膜の細胞を遠心分離機で集めてから細胞を壊しゲノムDNAを取り出します。取り出したゲノムDNAからPCRという方法で、ALDH2遺伝子を増やして調べました。PCR法は、少ない試料からでも調べたい遺伝子を増やして検査できるため、DNA鑑定などでも広く利用されている方法です。
増えた遺伝子を電気泳動によって分析し、ALDH2遺伝子の個人個人による違いとアルコール代謝の関係を調べました。ALDH2遺伝子にはアルコール代謝が活発なGG型、活性がないAA型、中間のGA型の3つの型があり、電気泳動の結果から自分がどの型かを調べることができます。

実験を指導する三浦由雄さん 実験を指導する須田亙さん
実験を指導する藤沼俊則さん 遺伝子を増幅するPCR(polymerase chain reaction)装置
TA(teaching assistant)がアプライ(試料を注入)
の手本を示す
 アプライする緊張の一瞬
周りもドキドキ 電気泳動を終えて


ラボツアー

丹生谷博先生に案内をしていただき、施設の設備や機器についての説明がありました。

「ここがセンター長室です」 それぞれの微生物にあった温度を保って培養する装置


講義「NatureとNurture(生まれと育ち)」

大藤道衛先生から、ゲノム、DNA、遺伝子の違いやそもそも遺伝子はどんな物質でどのように働くのかを、私たちの健康に関係づけながらお話していただきました。主な内容は次の通りです。
病気には遺伝要因の影響によるものと、生活習慣などの環境要因の影響によるもの、それらが複雑に関係しあって起こるものがある。この関係は、生まれと育ちに似ているかもしれない。生活習慣病はその名の通り、遺伝要因だけでなく生活習慣でよくも悪くもなるもの。
遺伝要因(遺伝子変異)だけで起こる有名な病気に、鎌形赤血球症がある。この病気は赤血球の形により貧血が起こりやすくなるものでアフリカの人々にみられる。そのような人々の分布はマラリア発生の地域と重なり、この病気は、貧血を起こしやすいがマラリアへの耐性に繋がることがわかり、人間が進化の中で環境に適応するために獲得した性質であると考えられる。このように、遺伝子の研究は環境に適応し生き残るための人類の進化の歴史にもつながっていることを教えてくれる。


バイオカフェ

実験終了後、全員で実験を振り返り話し合いをしました。電気泳動ゲルの写真が手元に届き、結果の見方について説明を受けました。

バイオカフェ風景1 バイオカフェ風景2
電気泳動ゲルの写真の説明 実験教室の参加者


参加者の声
  • ALDH2の電気泳動はすごいと思った。
  • 面倒な実験をほとんど手間無くさせていただいて、大変うれしく思いました。
  • 学校での実践を進めていきたいと思った。
  • 遺伝、環境、病気の関係がよくわかって、よかった。自分の遺伝子と体質の関係もわかった。
  • 生物、遺伝子工学等の知識が全く無い私にも分かりやすい講義でした。
  • 遺伝子、体質、薬等の因果関係が興味深かった。
  • SNPの話、大変勉強になりました。
  • 大学で生命倫理について関係していても、実際にこうして体験して考える機会はあまりないので参加してよかった。
  • 両親がお酒を飲まないので、自分も飲めないものと思っていたが、予想外の結果だった。

ことばの説明

Nature→ 遺伝子の配列で決まること(例えば、遺伝子の変異など)
Nurture→ 遺伝子の発現状況で決まること
遺伝要因→ 遺伝病のように1つあるいは限られた遺伝子の変異による要因
環境要因→生活習慣を含めた分子レベルの環境により複数の遺伝子の発現が複雑に変化する要因



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