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茅場町バイオカフェレポート
「アロマテラピーに用いられるハーブについて」

2007年12月14日(金)、茅場町サン茶房にてバイオカフェを開きました。お話は、東洋大学下村講一郎さんによる「アロマテラピーに用いられるハーブについて」でした。アロマの香りに誘われて、常連さんに初めての方も加わり、香りの体験をしながらお話をうかがいました。目黒裕子さんによるフルートの演奏で始まりました。

目黒さんのフルートの演奏 下村先生のお話


お話の主な内容

私たちの周りの香り
甘いおいしそうな匂いのするお菓子の香料のバニラは、ランの仲間にできるササゲのような実を発酵させて作る。クローブは鎮痛・殺菌の万能薬で、以前は歯医者に行くとこの匂いがよくした。カレー粉はキッチンハーブと呼べるくらい、いろいろな漢方薬を混ぜて作られている。このように私たちの周りには多くの漢方薬の材料が利用されている。漢方薬、薬用植物のほとんどがハーブと考えていい。ハーブには病気治療だけでなく、楽しみの効果があり、薬と食の重なり合って働いている(医食同源)。基本は自分の好きな香りを選ぶこと。私はビャクダンの香りが好き。
ハーブを医薬的に初めて利用したのはギリシャで活躍したディオスコルデス。彼は植物学者で、同時に医者でもあった。

香りと脳の働き
よい香りをかぐのも、音楽を聴くのも、情報を理解するのもすべては脳の働き。
匂いを感じるのは、五感(聴覚、視覚、触覚、臭覚、味覚)のひとつ。味覚の場合には、味覚 甘み 塩、酸、苦味、うまみの5つの要素がある。辛味は痛点で感じているので、からしは痛みであって味覚には入らない。また、わさびは舌でなく鼻で感じている。このように、私たちは食べ物を味、におい、テクスチャー(歯ごたえ)で総合的に捉えており、プリンの写真をみると、バニラの香り、食感、味を思い浮かべることができる。
ヒトは2万ほどの全遺伝子のうち約1%が匂いを感じるのに関係していると考えられている。
リラックスするとアルファ波が出て、覚醒したときはベータ波がでることがわかっている。レモンやバジルの匂いをかぐと脳が覚醒されてベータ波が検出され、ラベンダーなどの精油のにおいをかぐとリラックスしてアルファ波が検出される。これらの脳波を観察して香りと脳の働きの関係や香りの効果について研究されている。
例えば、10〜10.5Hzの周波数帯域を調べると、個人差はあるが、コーヒー豆の焙煎度が高いほどがリラックスし、ガテマラだとアルファ波が出現することが報告されている。
そこで、有機栽培と化学肥料で同じ野菜の種子を同じ土壌で育てて、脳波を測定する研究したいと思っている。

アロマテラピー学
1937年ガットフォッセというフランスの調香師が作った造語。
これは、ガットフォッセが火傷にラベンダー製油を塗ってきれいに治ったことがきっかけ。しかし、彼はこれをイギリスでは、医者でなく理容師に教えたために、未だにアロマテラピーは、国よって医療行為でないとする見方もある。

いろいろな香り
私たちのくらしの中のいろいろな香りは、薬用植物の香りであることが多い。
ジュニパ:ヒノキ科の樹木の果実を使う。お酒のジンの香りつけに用いる
イランイラン:「花の中の花」といわれる。消毒作用、鎮静作用がある。
Tea Tree:フトモモ科の植物の葉を用い、殺菌効果がある。欧米ホテルのにおい
ブルガリアンローズ:マリーアントワネットが好んだバラ。香水の原料。ローズオイル1`を得るには、3トン以上の花が必要。ブルガリアのバラ祭りは有名。ちなみにローズオイル1`は100万円位と言われている。
カモミール:キク科のカミツレの花を用いる 
スイートバジル:原産地はインドだが、地中海沿岸やタイなど東南アジアでも栽培され、150種の変種がある。日本へは江戸時代に漢方薬として伝えられ、目のゴミ取りに使ったので「目帚木(メボウキ)」と呼ばれた。

香水
初めは水につけて香りを取っていたが、腐りやすいので、西アジアではエタノールで抽出する方法が使われた。10世紀ペルシャの医師アヴィセンナは、水蒸気蒸留法を発明した。蒸し器に冷却管をつけて花の油(製油:エッセンシャルオイル)と水(芳香蒸留水:フローラルオイル)が効率よく分離されるようにした。香水は、これら2つの技術が融合してできた。16世紀から香水の製造がヨーロッパで始まった。日本は香水でなく香道が発達した。
香水作りには植物だけでなく、動物性の原料も用いる。ただし、アロマテラピーでは植物の製油を用いる。香水にはいろいろな香りが混ぜられていて、例えば、シャネルの5番には微量だがスカトール(便のにおい)も含まれている。

香りの力 
昔から人は香りに「力」があると考えていた。例えば、ネアンデルタール人は、埋葬時に花を用い、死への恐れ、悪霊に香りで対抗したことが分かっている。
香りには安堵感を与えリラックスさせる効果がある。そこで、悪臭は霊を不快にするので、香りを供え、霊を鎮めるようにした。自分達を心地よくする香りで、見えない神や霊を喜ばせられると考えた。
香料植物を火に入れて香煙をたてると強い香りが発生する。これは宗教に広く用いられている。
エジプト、古代オリエントでは4000年前から焚香料がさかんに用いられた。
教会で荘厳さを出すために使われる乳香は白いミルクのような煙をあげ、ミルクの豊かさを象徴すると考えられ大切にされた。アラビア半島南西部とアフリカ北東部のソマリランドの乾燥地帯に自生するカンラン科の植物(Boswellia darterii)から得られる。
ミイラを作るには、防腐剤や臭い消しとしてミルラ(没薬もつやく)、乳香、シナモンが大量に使われた。ミルラはマミー(ミイラ)の語源。日本でも江戸時代に粉にして薬としても使われた。

揮発性成分の分析
現在は、ドイツで開発されたSAFE「高真空蒸留法(Solvent Assisted Flavor Evaporation)」というシステムを用いて揮発性成分を瞬時に凍結して分解しないようにして集め、分析している。例えば、バジルをガスクロマトグラフィで調べるといろんな匂い成分が入っていることがわかった。

〜香り体験〜
全員で、いろいろなバジルの香りを試し、同じバジルでも産地により香りが異なることを体験しました。バジルエジプシャン(エジプトタイプ)は、すっきりする香り。インドタイプのバジルは重い感じ。この他にもヨーロピアンタイプ、エキゾチックタイプなどがあるそうです。


会場風景1 香りを比べる
 
会場風景2  


話し合い
  • は参加者、→はスピーカーの発言
    • 香りと免疫系についてはどうやって調べるのか→抗体値で測定している研究者もいる。匂いは大脳辺縁系という古い脳で感じている。それは、下等動物にとって匂いは危険回避のために大事だったから。
    • 植物は香りで情報伝達をしているのか→カレンソウは蚊をよせつけない。ジャスモン酸を出してシグナルを出す。葉を針で突くと、ポリフェノールを出して茶色になりその細胞は死んで、他に影響を及ぼさないようにする。このように、植物は分泌物で対話している。また、風をあてたのとあてないのでは、植物の構造や味も変化する。
    • エチレンの作用は→成熟を進める。バナナ、りんごはエチレンで成熟させている。柿の渋抜きには焼酎を用いる。
    • 肥料の差で味は変わるか→有機肥料と化学肥料で同じ種子を栽培すると、抗酸化活性や味が異なる。人工の脂質膜を使って最近開発された味認識装置では、味覚(酸味、うまみとこく、塩味等)分析ができる。「うまみ」と「こく」は有機栽培だと数値で違いが現れ、堆肥によっても異なってくる。化学肥料は苦味が増えてうまみが減り、有機栽培はうまみが高く苦味が減る。
    • アロマテラピーに入門したいが、どこから始めたらよいか→入門書がいろいろある。アロマテラピストの試験もあります。
    • この部屋のにおいで頭がすっきりしてきた気がする。→中にいると気づかないが、この部屋には香りが充満しているので、脳が活性化してくるはず。さらに、コーヒーを飲んでいるからカフェインでより活性化するはず。
    • アロマテラピーの勉強は、科学的根拠に基づいているのか→アロマテラピー協会があり、アロマテラピー学を教えている。
    • 化学出身なので、香りの話も化学に関係するので好き。
    • 同じバジルを畑、プランター、キッチンプランターで栽培したら成分は変化するのか。キッチンプランターで上手に栽培するコツは→よい堆肥を使うこと。高くても完熟堆肥がいい。それから水はけをよくすること
    • バイオカフェに初めて参加した。物理出身。脳波はどうやって測るのか→64の電極をつけた帽子をかぶって測定する。今回はバンド式でアルファ、ベータ、シータ波を観察した。
    • 脳に欠損があっても、においを感じられるのか。どの部位で感じるのか→海馬で感じている。一般に脳の一部が欠けていても他の部分が代替する。味を感じるには、においも大事で、鼻をつまむと味がわからないことがある。また年をとると味蕾も減り、匂いにも鈍くなる。
    • 人によって匂いの好みは異なるが、今日は、自分に好きな匂いがいいということがわかった。リラックスするにはどんな香りがいいのか→ラベンダーが一番ですが、嫌いな人もいる。 
    • 自分で勉強して鍼灸師をしながらアロマテラピーも行っている。アロマテラピーの製油は植物の一番いい時期に収穫するのがいいと思う。例えば、バラは花が咲いているとき、ゼラニウムは育っているときがいいと思う。いつ収穫したかを調べられるのか。漢方薬は局方で決まっているが製油の成分はばらばらなのではないか→いいものを自分で選ぶしかないと思う。同じバジルでも違う。
    • 合成した香りも効力はあるのか→単品の香りならあるはずだが、製油というものはいくつかの成分がバランスよく入っており、中には微量成分もある。香料を分析すると機器で検出できないのに、ヒトの鼻で隠れた匂いを見つけることもある。
    • ランジャタイ(蘭奢待)(正倉院の沈香)は分析されているのか→水より重い香木で、「沈香(ジンコウ)」という。正倉院御物は何度か調査されてますが、これを分析したかどうかは、分かりません。
    • 昭和26年からコーヒー一筋。コーヒーの香りにこだわって、コーヒーの香りを壊す食事は出さず、喫茶店をしている。(サン茶房のママさん)。
    • 我が家は匂いに敏感な家族で、化粧水にも気を使うこともある。


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