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バイオ&薬用植物観察会

2008年5月31日(土)、(独)医薬基盤研究所薬用植物資源研究センターにおいて、バイオ&薬用植物観察会を開きました。当日は雨でしたが、見学の時だけ小雨になるという幸運に恵まれ、とても充実した一日となりました。
初めに木内文之センター長よりご挨拶がありました。育種生理研究室長吉松嘉代先生からお話をうかがいました。そして、標本室、薬用植物園を見学しました。

木内先生と吉松先生 組織培養の標本の説明をする吉松先生
 
瓶の中で育つオタネニンジン  


「植物バイオテクノロジーによる新しい薬用植物資源の開発」お話の主な内容

薬用植物は必要なときに少量あればいいというもので産業化に向かず、天然資源に頼っていた。自然資源保全の国際条約などで中国からのマオウのように輸入が難しくなっているものがあり、薬用植物の国産化と原料の確保が課題になっている。

1.薬用植物と医薬品
植物は有機化合物の生産工場。ヒトもホルモンなどを合成できるが、植物に比べて合成能力はずっと低い。植物は一次代謝物だけでなく、酵素を用いて二次代謝物も作り出せる。
二次代謝物の中には他の生物には毒になる成分もあり、これは植物の戦略だといえる
200年前までの薬は全て生薬で、乾燥でしか保存できなかったが、現在は生の薬用植物から成分抽出も可能になり、新しい機能が見つかることもある。

薬用植物の3つの使い方

  1. 生薬を漢方薬、民間薬に使う(有効成分は必ずしも明確ではない、必ずしも高含量である必要はなく、一定した品質が望ましい)
  2. 抽出した成分を使う(モルヒネなど、有効成分が高含量かつ抽出方法が簡便であることが重要)
  3. 抽出成分を使って医薬品をつくる(植物のシキミ酸からタミフルを作るなど。含量が多く、抽出方法が簡便であることが重要)
日本の薬用植物の自給率は10%以下。中国からのマオウ輸出が規制され、現在研究中。

2.植物組織培養とは
植物には様々な器官に分化する力がある(分化全能性)。種子や組織を殺菌して無菌状態で栽培する(クリーンベンチで植え付け、培養室(温度・日長を調整)で育て、グロースチェンバーで温度、日照を管理して栽培する)。サイトカイニン(芽や花をふやすホルモン)やオーキシン(根を形成したり増やしたりする化学物質)を使い植物体に育て上げていく。

3.トコンの大量増殖とアルカロイド生産
トコン(吐根)は、去痰薬や催吐剤としてアメーバ赤痢の特効薬として使用する。たんを切るのに、のど飴に入っていることもある。セファエリン(アメーバ赤痢に有効な物質)とエメチン(痰を切る物質)を含んでいる。
輸入されたトコンの分析をするとアルカロイド含量やエメチン、セファエリンの成分比も異なるので、そのまま使用すると安定した効果が期待できない。
トコンはアマゾンで自生していたが、熱帯雨林の減少で絶滅の危機。日本では種子が出来ないので年間数本しか増やせない。そこで、シュート(芽のこと、茎があって葉がある)を多く出させるように節間をとってシュートを多く出させ、サイトカイニン濃度を調整し、1年に1000本以上、無菌状態なら4万本以上に増やせるようになった。 また、培養苗を用いた栽培試験の結果、日本でのビニールハウスでのトコン栽培が可能であることがわかった。 薬用植物においても遺伝子組換え技術を使って、遺伝子組換えオウレンなどの研究もしている。




質疑応答
  • は参加者、→はスピーカーの発言
    • 研究期間はどのくらいですか→トコンは5年間、組換えオウレンは2年間。いくつかの研究は並行して進めている。プロジェクトは3年で終わっても、実際は3年でめどがたって、論文になるときには5−6年かかっていることが多い。
    • 親株の選び方→トコンは1種類しかなかった。薬用植物は有効成分が大事なので、よい品質のもの、再分化しやすいものを材料に選ぶことが重要。

    淵野先生の説明 標本室には生薬が一杯


    標本室の見学

    栽培研究室長 渕野裕之先生にご説明いただきました。

    生薬には植物由来、動物由来(ミミズ、カマキリの卵、ヘビ皮など)、鉱石由来のものがある。生薬を単体で用いるのが民間薬で、三大民間薬はドクダミ、ゲンノショウコ(すぐに下痢がとまるので、現の証拠と呼ばれた)、センブリ(千回振り出しても苦い)で、どれもおなかの調子が悪いときに用いる。例えば葛根湯は、葛根(葛の根)、麻黄(スギナに似ている)、大棗(タイソウ)、桂皮(トンキンニッケイの樹皮)、生姜(ショウキョウ)、芍薬(シャクヤク)、甘草(カンゾウ、甘味料として使われている)の7種類が処方されている。
    同じ植物でも生薬成分の含量が産地により異なる。
    南米のサシチョウバエ(吸血する小蝿)に媒介される「リューシュマニア」は厳しい疾患を起こし、ミイラなどを見ると、昔からある病気であることがわかる。フランスで、治療薬(注射)を開発したが、高価で、注射できる設備がないと使えない。地元の薬用植物で治せないかを研究してきたが、なかなか難しい。日本の古い軟膏である紫雲膏を皮膚型リューシマニアにためしたところ皮膚の炎症がなおった上に、傷の下の原虫もいなくなっていた。そこで、紫雲膏の成分であるシコニンに類似した成分を含む薬草が現地にないか調査をしているところ。



    植物園の見学

    木内文之先生、熊谷健夫先生、河野徳昭先生に筑波大学教授の鎌田博先生も加わってくださり、植物園の説明を聞きながら回りました。

    「キササゲから長い実が」河野先生 コウホネの花
    熊谷先生の説明 アジサイに似ているアマチャ
    立派なケシ坊主 強心剤になるジキタリス
    ジオウの花


    バイオカフェ

    帰りのバスでは、薬用植物の写真を見て、名前や効能のクイズを交えながら、今日の印象について話し合いました。

    多くの植物を見られてよかった

    • 生きた草を見られたのがよかった。
    • いろいろな薬草を一度に見られてよかった。
    • いろいろな花を多く見ることができて満足している。
    • たくさんの種類があり、感激した。説明もわかりやすくてよかった。
    • 乾燥した生薬ばかり見ていたので、生きた草を見られたのがよかった。
    • 珍しい草花を見られて感激。土曜日に開催してもられると勤めていても参加できて嬉しい。
    • 丁寧な説明をしていただき、感謝している。もっと見ていたいと思った。
    • ケシの花が見られてよかった。発芽しないように処理したケシの種がアンパンに乗っていると初めて知った。
    • 聞いたことのある植物の名前と実物が一致して興味深かった。
    職員の方の苦労がわかった
    • 職員の数が少なくて大変だと思った。
    • 管理が本当に大変だと思った。みんなで見学に来て、こういう現状を訴えたらどうだろうか。
    • 生の植物を見られてよかった。こうして生で見られるというのは管理が大変なのだと思う。
    • 見学しながら草取りが行き届いているなあと思った。今度は草取りボランティアを募集して、皆で協力したいと思った。
    珍しい植物を見られて感激
    • 実際にケシの花が見られてよかった。
    • 個人的には赤と黄色のふたつは一緒に見られなかったが、カイケイジオウが見られてよかった。
    • 先週、ルバーブ(食用のダイオウ)の入ったオーガニックワインがおいしいと思った。今日はルバーブのホンモノが見られてよかった。
    研究がすごい
    • リューシュマニアという厳しい風土病に薬用植物の研究が貢献していることを知った。
    • 南米などの厳しい感染症を知った。薬用植物を使って進められている感染症に効く薬が早くできるといいと思った。
    その他
    • ひさしぶりにたっぷり土の上を歩くことができた。
    • 盛りだくさんのプログラム。薬草をかじって苦味、甘味の体験もあり面白かった。
    • 植物の力を実感した一日だった。
    • 講義は少し難しいと思ったが、丁寧に説明していただきありがたかった。


    集合写真 バスの中もにぎやかに


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