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談話会レポート「薬事法改定〜コンビニでくすりが買えるっていいなあ」

2009年2月20日(金)、第31回談話会を開きました。6月の薬事法改正を前に、くすりの適正使用協議会理事長海老原格さんに「薬事法改定〜コンビニでくすりが買えるっていいなあ」というお話をしていただきました。主なお話の内容は次のとおりです。

お話の主な内容

はじめに 私は厚生労働省出身で薬剤師です。大学では有機化合物を作っていたが、大学を出てから実験はしていない。「くすりの適正使用協議会」という団体の創立に立会い、今ここにいる。くすりを正しく使ってもらい、製薬企業のスタンスをあげたいと思って、この活動を始めて12年。
くすりの適正使用協議会

海老原格さん 真剣に聞く参加者

気になった新聞記事「中川財務相辞任」
中川財務大臣が辞任された新聞記事を見ていたら、「腰痛持ちの中川大臣は風邪薬、鎮痛剤、解熱剤を多量に飲んだから酩酊状態になった」と書かれていたが、問題が多くある。主治医の指示で薬は服用するので薬を悪者にするのはおかしい。薬は多量にのむものではない。こういう記事に製薬会社はなぜ反論しないのか。体調不調といいながら公式の記者会見を誰も止められなかったのもおかしい。このように薬を誤解させる記事が出ることは残念だと思う。

医薬品と医薬部外品
薬事法では医薬品(効き目と副作用がはっきりしている、専門家がいないと売れない)と医薬部外品(作用が緩和で効き目が弱い、副作用がない、専門家がいなくても売れる)を分けている。薬とは体内にない物質を利用するもので、自分によい影響があることを効果があるという。効かない、効きすぎ、良くない効果があるときすべてを副作用という。
平成11年と16年の2回で、医薬品の一部が医薬部外品に移行し(例:リポビタンD)、こうすれば専門家がいないところでも売れるから、もっと広く売れるようになる(医薬部外品)。

医薬品の種類
医薬品の中の医療用医薬品(企業がつくる 薬価基準に載っていて医者が処方する)には、処方箋医薬品(厚生労働大臣が認めているので、薬事法49条に定義がある)とそうでないものがある。医薬品は薬事法で承認されるが、お医者が使うときには(国民)健康保険法に従う。更に日本で承認されていない抗がん剤を用いてがん治療を行う場合、がんの手術は保険で認められているのに、薬価基準に載っていない薬を使うと、保険がきかず全部自費。つまり、健康保険で認められていない(薬価基準にのっていない)処方箋医薬品もある。
医療用医薬品とは、成分がひとつ(単味)のものが圧倒的であり、添付文書(能書)はPMI(Patient Medication Instruction 医者が患者を指導するのに用いるもの)の性質を持っている。とても詳細な内容である。
これに対して、一般用医薬品(これも企業がつくる)は、一般の人が買えるもので、OTC(Over The Counter)医薬品という。医療用医薬品以外のものである。一般の人の判断で用いられるものであり添付文書はPPI(Patient Package Insert)の性格である。内容は平易である。なお、一般用医薬品は成分が複数のもの。この他に、薬剤師が作る薬局製造販売医薬品もある。

医薬品の種類成分効果使い方
医療用医薬品 1種類効果と副作用のデータがある医師の監督下
一般用医薬品複数効果と副作用のデータが少ない自己判断(薬剤師の指導)
薬局製造販売医薬品複数効果と副作用のデータが少ない薬剤師の指導

一般用医薬品とは
薬事法が改正されると、一般用医薬品が医薬部外品のように扱われるようになる。
一般用医薬品にも、効果と副作用を裏付ける情報がなければいけないが、大多数ものには、存在しない。また昔から長い間、使ってきているものある。江戸時代に、医師である「くすし」が薬(漢方薬、秘薬)を与えて医療を施していたときから使われ続けているものもある。現在も結構市場は大きい。一般用医薬品は、おし並べて医療医薬品のように、市場に出てから十分に科学的に追跡(PMS :Post Market Surveillance)されていないから情報が少ない。薬局で買った人は添付文書(PPI Patient Package Insert)を読んで使うことになる。

一般医薬品が第1〜3類に分類された
一般用医薬品には長い利用経験があるが、医薬品である以上に副作用の可能性は否定し得ない。今回、副作用の程度で第1〜3類に分けられた。第3類は医薬部外品に近い。

 副作用の程度販売資格  成分数 市場規模
(億円)
第1類副作用、相互作用で安全性上
注意が必要
薬剤師約30400 一部の胃腸薬
毛髪用薬
第2類まれに支障をきたす
注意が必要
薬剤師
登録販売者
6995600主な風邪薬
解熱鎮痛剤
第3類ほぼ支障はない
少し注意が必要
薬剤師
登録販売者
7464700主な洗眼薬
ビタミン剤

市場が大きいのは第2類と第3類。第1類はお医者のもとで安全に医療医薬品として使われた実績に基づき一般用医薬品にスイッチした。「スイッチOTC薬」といわれるものが多い。ガスター10がその一例である。スイッチOTCは有効性と安全性を調査する(PMS)機関プラス1年後に2-3類に移せるかどうか決めることになる。スイッチOTC薬以外に、ダイレクトOTCがある。リアップ(毛髪用剤)のように医療用医薬品で利用された経験を経ずに一般用医薬品(第一類)になったもの。
第2類は成分として副作用が懸念されるものがおもである。本当に危ないイコール効くことでもある。第2類と第3類の大衆薬は登録販売者も売ることできる。薬剤師でない個人も勉強して自治体の試験に合格すれば登録販売者になれる。登録販売者は増加中。

インターネット販売及びカタログ販売
今回、第3類はネット販売ができることになった。
医薬食品局長の諮問機関である検討会における8回の検討の後、一部の一般用医薬品を除いてネット販売を禁止。しかし、今、全ステークホルダーの意見が入っていないという反対意見も出ている。
薬局の少ない地域での利便性や安全性が問題になっている。これまでは、薬事法の法的根拠はないが、同局監視指導・麻薬対策課長通知でネット販売していい医薬品が示されていた。

薬事法の改正の前と後で販売業はどう変化するのか
25条で、医薬品販売業の許可の種類(店舗販売業、配置販売業、卸販売業)が定義された(一般用医薬品の定義「症状緩和」も初めてできた)。
改正前は、薬種商販売業の許可は店舗に与えられていたが、改正後は、都道府県知事が行う試験に合格して登録する登録販売者(個人)にまとめられた。登録販売者は第2類と第3類を販売できる。一方、薬の専門家である薬剤師は6年勉強して国家試験を受ける。
現在の大手の製薬会社のいくつかは、歴史をたどるともとは薬種商。
ところで薬局でも業として一般用医薬品を販売できるが、薬局では主に処方箋医薬品を扱っていることから、置いてある一般用医薬品の種類は少なく量販店のように安価で仕入れができないなどの課題がある。

第1〜3類の分類の根拠
医薬品販売制度改正検討部会で、一般用医薬品成分について薬効群ごとに分けた。成分の評価は医療用医薬品の添付文書に基づいて行った。相互作用、副作用、効果・効能などの6項目を基にリスクを評価した。そこで、大体3つに分けられた。
第1類は一般用医薬品としての安全性評価が確立していない成分やリスクが特に高いと考えられる成分を含むものである。
一般用医薬品に使われている成分が医療用医薬品には見当たらない場合や、医療用医薬品では注射薬でしか用いられていない場合などがあり、一定の割り切りで分類せざるを得ないものがあった。
漢方薬、生薬、消毒薬、殺虫薬は第2類と第3類に入れ、特に漢方薬には副作用があるので、2類になった。
さておき、保険で認められている漢方薬は210種。成分としてべっ甲、蝉退(ゼンタイ 蝉の抜け殻)のような動物由来、滑石、石膏などの鉱物由来、柿蔕(シテイ 柿のヘタ)などの植物由来のものなど様々だが、有効性を示す臨床情報(医薬品として評価ようなデータ)はなく、文献情報で補っているのが実情である。西洋薬は、患部を銃でうつイメージだが、漢方薬はホールボディを対象としており、観点が異なる。
いずれにせよ、科学データがないものがあったが、第1〜3類を決めた。

これからの問題
制度を変えたのなら、患者にとって改正後によいことがあったという評価が必要!
登録販売者と薬剤師の違いが明らかでない、専門家が提供すべき情報を企業が用意する構造になっている、第2・3類にした根拠が十分でない等の問題もある。
薬の利用者に本当に利益になるかどうか、これから真価が問われる。


会場風景 集合写真

話し合い 
  • は参加者、→はスピーカーの発言

    • 症状を聞いた後、薬屋が薬を勧めると不信感を持つ。ほしくない薬を進められる。登録販売者は売りたい薬をもっと勧めるのではないだろうか→可能性がないとはいえない。
    • 医療用医薬品は単味だから評価できるが、複数成分の場合はどう評価するのか→基本は成分が複数の場合、効果が効く成分の相加になるのではなくて相乗になることを求められる。ただ元々抽出物のように成分的には複数だが、一成分と看做されるものがある。ワクチンや減感作療法薬は一成分ずつ分離できないが一成分として扱う。輸液(塩、アミノ酸等を含有)、総合消化酵素製剤(デンプン、脂質、タンパクの分解酵素)は成分として分離できるが、単味成分として用いることは意味がないので、理論的にOKならば認められている。
    • 私はスギ花粉症緩和米の研究者。米の全成分の規格づくりから始めろと厚生労働省でいわれた。漢方薬は経験があるということなので、お米の従来成分は長期の利用実績でそのままOKとし、新しく合成された部分だけ評価するわけにはいかないだろうか。それならば花粉症緩和米の認可の可能性があるではないかと思うのだが→医薬品には規格があり、決まった成分が決まった量だけ入っていなくてはいけない。食品成分は天候で変化するが、規格を決められるのだろうか。
    • 天候で成分は±2割変化する。最大量でも副作用がでず、最少量でも効果がでるラインを決めたい→漢方薬は単味を足し算する考え方。サプリは成分が入っていることが条件。その点、健康食品は幅が許されているといえよう。でも、薬として用いられる量をはるかに超えているものがある。たとえば、Q10。
    • 花粉症緩和米が認められるようには、どうしたらいいのか
    • 食品にワクチン成分を持たせるものが研究されていても世界の製品になっていない
    • 花粉症緩和米の審査がマラリアバナナの審査などの世界貢献になるはずなので、審査の仕方を厚生労働省に考えてほしいと思っている→審査管理課が審査する。新しい医薬品が出て来るものだから、互いの勉強として頑張って挑戦してもらいたい。
    • 辛抱強くデータを提供して、フレーバーセーバートマトの議論みたいに頑張って下さい→動物で効いても人間で効かないことも多いので注意しないといけない
    • バイオで開発されたものの成功例を残してもらいたい→一部のワクチンは例外として、日本では予防薬で保険は使えない。薬事法を通っても保険で認められないこともあるので、保険で認められるようにがんばってください。
    • 治療費削減と言いつつ、予防薬に保険が使えないのは矛盾していると思う。
    • コンビニで売るとき売り場はどうなるのか→薬剤師や登録販売者が説明できるカウンターが必要なはず。
    • 喘息の子どもがいる。妻は医者よりも与える薬で選んでいるので、母親へのくすり教育をしてほしい。バイオカフェでもやってもらいたい→中・高の学校教育の中にくすり教育を入れられた。くすり教育は子供から高齢者まで全世代で必要。くすり教育を広めたい。