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第3回草の根バイオカフェレポート「チョコレートとポリフェノール〜バレンタインチョコを科学する」

2010年2月6日(土)、三鷹ネットワーク大学にて草の根バイオカフェを開きました。 初めにココアパウダーを使って、デビルスフードケーキを作り、それからお話を伺いました。お話は、明治製菓㈱お客様相談センター梶睦さんの「チョコレートとポリフェノール〜バレンタインチョコを科学する」でした。

お話をする梶睦さん 会場風景
調理実習風景1 調理実習風景2

お話の主な内容

「チョコレートを運ぶ娘」という有名な絵にあるように、チョコレートは液体で用いられた歴史が長く、固形になってからは150年ほど。アステカ時代には強壮剤として使われたが、やがて欧州では砂糖が加わり女性ではマリー・アントワネットが好んだことは有名。日本人では、支倉常長(伊達政宗家臣の遣欧使節団の長だった)が、チョコレートのおもてなしを受けた初めて日本人だったろうと想像される。
チョコレートは、カカオポッドから殻を取り除いてすりつぶしたカカオマスにココアバター、砂糖、粉乳などを加えて作られ、温度調節が難しい。同じ重さで比べると、赤ワインの3-4倍、緑茶の5-6倍のポリフェノールが含まれる。ポリフェノールは、酸化したLDLコレステロール(悪玉コレステロール)を無害化する働き(抗酸化作用)があり、注目されている。
バレンタインデーの起こりは、聖バレンタイン(ローマの皇帝が兵士の結婚を禁止したとき、兵士たちの結婚を助けた)が2月14日に処刑されたことから、モロゾフが1936年、聖バレンタインデーにチョコレートを贈ろうと宣伝したのが始まり。1960年代になって、森永製菓、明治製菓など大手菓子メーカーが女性から男性へチョコレートを贈るように広告をうった。その後、義理チョコなどが流行ったりしたが、阪神淡路大震災で少し低調になった。今は、手作りチョコ、友チョコ、逆チョコ、自分チョコなどが流行で、チョコレート業界も工夫している。年間売上げ3000億円のうち、バレンタインデーの売上げは500億円(2か月分がこの短期間に売れる)。今年のように、2月14日が日曜日に重なると、売上げに響くようだ。
参考ページ: topics231.html  


ケーキをカップに入れる デビルスフードケーキ

話し合い 
  • は参加者、→はスピーカーの発言

    • テンパリング(カカオバターの結晶を安定した結晶型を中心に固化させる為に行う温度調整のこと)について→チョコレートを湯せん(約50℃)でかき混ぜながら溶かし、次に温度を27〜28℃に下げて固まらせると結晶が析出する。最初は荒い結晶もあることから少なくする必要がある。そこで、高温(約50℃)で溶かし、低温で(27〜28℃)結晶安定化させることを繰返し、油分の結晶を均一に細かくしていく。  
    • 明治製菓(株)のホームページに掲載の手作りチョコレシピを参照ください。初級者用、中級者用と上級者用があります。温度管理するには、ヘラに温度計をつけてかき混ぜるのも良いと思います。湯せんの蒸気がチョコレートに入るとダマダマになりますので、水分が入らないように工夫します。
       www.choco-recipe.jp/milk/
    • 電子レンジを使うのはいかがですか→温度調節が難しくお勧めしません。
    • チョコレートを食べると強い刺激を感じる→カカオ豆はもともとにがい。砂糖とミルクを入れてにがみをまろやかにします。
    • チョコレートを食べると鼻血が出るというのは本当ですか→アメリカやヨーロッパでもこのような話を聞いたことがなく日本のみでの話であり、デマです。お母さんの知恵で、その当時、子供に高いチョコレートを食べさせられず、やめさせるための口実ではないかと思われます。
    • チョコレートを食べて頭痛がしたことがありますが→チョコレートに含まれるチラミンという物質が原因かもしれません。
    • 高級チョコレートと普通のチョコレートの差について→味の差以上に、値段の幅の方が大きいように思える。実際のところ、それほど違いがあるとは思えない。あるとしたら、練り上げる時間をかけているということ、練っている間にアロマが出てくる。
    • ゴディバのチョコレートはなぜ高いのか?→ブランド信用度が高く、並んでも買いたいと思う人が多いからか?
    • 湯せんで温度を高くしたり低くしたりするテンパリングの話があったが、味との関係は→見た感じと食感が良くなる。
    • チョコレートと赤ワインのポリフェノールの違いについて→ポリフェノールの種類が違う。チェコレートはカテキンやエピカテキン、またはアントシアニンが複数からなるアントシアニジンが多く、抗酸化作用が強い。赤ワインはフラボノール、アントシアニン、カテキン他多数成分からなる。
    • ワインを飲んでいる人は、ポリフェノールで心臓には良いが、飲み過ぎで肝臓を患う人も多い。
    • 職人の人がヘラを使うのはなぜか→混ぜやすく、万遍なくいきわたり、均一にすることができる。
    • 生チョコについて→チョコレートは粉乳を使うが、生チョコは粉乳の代わりに生クリームを使う。やわらかめとなるが賞味期限は短くなる。因みに、通常のチョコレートの賞味期限は1-2年。
    • 試験勉強とチョコレートとの関係→数字を使う並べ方について、チョコレートを食べた人と食べない人とを比較すると正確性が上がったというデータがある。チョコレートに含まれる砂糖がブドウ糖になり、脳に運ばれたことによると思う。チョコレートでなくとも砂糖やブドウ糖が含まれるキャンディでも同じ効果があると思う。疲れた時は血糖値が下がるので、血糖値をあげるようにすればよい。
    • カカオ80%とか90%のにがいチョコレートについて→カカオ分が多い分、砂糖が少なくなっている。ポリフェノールは2~3倍含まれている。味はにがいが、個人差もある。ホワイトチョコにはポリフェノールは含まれていない。
    • チョコレートはコレステロールを下げる?飽和脂肪酸であるステアリン酸やパルミチン酸が多いとコレステロールを上げる悪影響があるのでは→かっての栄養学では、ステアリン酸やパルミチン酸がコレステロールを上げるといっていたが今では否定され、ココアバターはコレステロールを下げる。チョコレートに含まれる脂肪酸は、上記脂肪酸ンにオレイン酸をふくむ3つが主である。
    • ココアとチョコレートのポリフェノール含量について→ココアの方が重さあたりではチョコレートより多いが、飲むとき薄まるので摂取量としてはほぼ同じぐらい。
    • チョコレートには習慣性があるか→イギリスで心理学での研究があり、習慣性ありとの報告がある。女性の方が年齢に関係なく習慣性があり、はまるようだ。男性は年齢とともに食べなくなる。
    • チョコレートと虫歯の関係について→スウェーデンで子供に菓子を食べさせる実験をした。キャンディやタフィは虫歯を増やしたが、チョコレートでは虫歯は増えなかった。
    • 白くなったチョコレートを見たことがあるが→ブルーミング(花が開く)という現象で、これはチョコレートが熱により溶けたことにより油分が浮いてきたため。28℃以上のところで溶け、固まることにより油分が浮いてきて起こる。味や食感を悪くする。温めて元のように戻すこともできる。チョコレートは油分が多いことと水分が少ないためにカビや微生物は生育しない。
    • ディスカウント品や安いチョコレートの味は雑なような気がするが、なぜか→店の管理が悪いか、賞味期限が切れているか、ココアバターの使用量が少ないことなどが考えられる。パッケージの表示を見ると準チョコレートと書かれている場合があり、準チョコレートはココアバターが少なく、他の油(例えばパーム油、植物油)が使われている。一方、純チョコレートは、ココアバターしか使っていない。又、香料(匂いつけ)としてバニリンが使われている場合がある。本来は、練っているときに出てくるアロマがチョコレートの匂いである。
    • カカオ豆は発酵しているということですが→発酵は現地で行っている。収穫されたカカオポッドから取り出したパルプに包まれたカカオ豆をバナナでくるみ、3日から4日発酵させる。その後、天日干しなどによりカカオ豆を乾燥させている。
    • 赤道直下のインドネシアでもカカオを栽培していますか→栽培面積は広く、カカオ豆の酸味が強い特徴があります。
    • カカオ豆の生産は安定しているか→安定していない。先物買いで、取り引きが行われていて、価格は大幅に変動する。
    • 外国のチョコレートは甘さが強いように思えるが→砂糖の量が多いのではと思う。砂糖の含量についてのルールはなく各メーカーによって異なっている。