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薬用植物シンポジウムが開催されました
―自然のめぐみ薬用植物を次の世代に―

 6月7日(土)に茨城県科学技術振興財団つくば国際会議場で講演会、8日(日)筑波山で植物観察会が行われました。主催は、国立医薬品食品衛生研究所 筑波薬用植物栽培試験場、共催は、当NPO法人「くらしとバイオプラザ21」でした。

講演会の演題は以下の3題で、主な内容は以下のとおりでした。


東北大学の西野先生
「バイオテクノロジー入門---ポストゲノム時代の我々の生活---」

 ワトソンとクリックによるDNAの二重らせん構造の発見から50年しか経過していないのに、組換え技術の開発、この4月にはヒトゲノムの完全解読が終了するなど遺伝子を取り巻く分子生物学は目覚しく進みました。
 DNAの構造は、たとえば、縄梯子(なわはしご)を使って説明できます。即ち、縄梯子を用意し、その上端をそのままにし、下の端をねじったその状態がまさに二重らせん構造であります。縄の部分が遺伝子であり、はしご段には4種類があり、その並び方で、遺伝子が決まり、ホルモンを作ったり、各種タンパク質を作ったりします。
 ゲノムは百科事典にたとえられます。ヒトゲノムは22対の常染色体と性染色体2本(男性:X+Y、女性:X+X))です。ゲノムを百科事典にたとえると、ゲノムを構成する各染色体が百科事典の巻数(ヒトゲノムでは24巻のどれか)に対応します。染色体上にある遺伝子は、百科事典で言えば項目の説明文に相当します。遺伝子は、それを構成する4つの塩基(A:アデニン、G:グアニン、C:シトシン、T:チミン)の並ぶ順序で決まります。百科辞典で言いますと文字(あ、い、う、---、数字、漢字、カナ)の並び順に相当します。
 さて、遺伝子組換え技術については、1977年に始めてヒトの遺伝子としてソマトスタチン(末端肥大病の治療薬)が大腸菌で作られています。羊50万頭の脳から5mgしか取り出せませんでしたが、バイテク技術では9Lの培養ですみます。いまや国民の1割が糖尿病を患うといわれていますが、その治療薬であるインシュリンの生産は1992年以降においては、全て、遺伝子組換え技術によって製造されていることや、組換え技術で生産されたインターフェロンがC型肝炎、B型肝炎の治療薬として使われています。今後、ヒト遺伝子解読データを利用した遺伝子治療とか遺伝子診断が進む時代となります。植物では、組換え作物以外に、土壌環境中に有害物質があると花の色が変わるなどの工夫をした植物センサーとしての活用などが検討されていること、コレラ菌や病原性大腸菌に対する食べるワクチンの開発は、発展途上国などでは注目されています。
 これらの例から組換え技術を我々の生活の中で活かしていくのは良いことであり、組換え技術を推進する過程では、倫理上の問題の理解、指針に定められたルールを遵守することはいうまでもありません。
 クローンに関することでは、80歳以上の240組の一卵双生児を調査した結果、一卵双生児は遺伝子が同じですが、生活するうえでは、遺伝子の関与が62%、経験が38%支配しており、遺伝子で全てが決まることではなく、環境とか個人の生き方で変わるということが示されています。
 また、OECDの科学知識に関する調査で、日本人では、深い知識がある人が1%、ある程度が17%と低いのに比較して、イギリスでは、それぞれ14%、50%と高く格段の差があること、及び、調査された国の中で、知識度が最後の2番目に低かったということでありました。日本人の科学知識が伸びて、たとえば、遺伝子組み換え等への理解ができるようになってほしいと思います。

質問:  ゲノムを決めたのは誰の遺伝子だったのでしょうか?
回答:  ヒトとチンパンジーでの塩基配列の違いは、約1.23%といわれています。ヒトとチンパンジーでもたったこれしかないので個人個人の違いはほとんど問題ありません。この先、その違いが遺伝病や遺伝子診断として重要になるがそれはこれからのポストゲノムの問題です。

お茶の水女子大学の佐竹元吉先生
「茨城県の薬用植物(身近な薬用植物)」

 あまり知られていませんが、身の回りにある植物の1割以上は薬用植物です。茨城県で現在栽培されている薬用植物についての紹介しましょう。
1)八郷の大図宏之進さんは、国立衛生試験所春日部薬用植物園の藤田早苗之助研究員の指導のもと、近隣の農家の方と常陸生薬組合を結成し、トウキ、ミシマサイコ、タマザキツズラフジ、アカジオウ、キバナオオギ、ゴシツ、ボタン等を栽培、出荷しました。また、薬学者である山口清太郎先生も薬用植物の栽培に力をかけ、大図さんを応援、台湾の薬用植物のタマザキツズラフジ(白楽子)を導入されました。昭和40年ごろにはセンブリ(植物研究家、科研生薬の赤須さんの指導)、昭和50年ごろには韓国からキバナオウギ(下村猛先生の指導)、昭和60年ごろ、フクチヤマジオウ(武田薬品の川西さんの指導)の栽培をそれぞれ成功させています。
2)稲敷郡阿見にあるツムラ研究所では、ブクリョウの栽培に成功しています。ブクリョウはマツの根に着く腐生菌(きのこ類)です。生薬から菌糸を取り出し、培養後に、アカマツの材に埋め込む方法で栽培に成功しています。
3)金砂郷町の篤農家川俣さんは、栽培試験場の栗原作業長と飯田室長の指導を受け、金砂郷町の山間部を生薬の生産地にされました。
4)北茨城市の薬剤師田畑さんは薬局漢方を経営され、ミシマサイコの無農薬栽培を手がけられました。
最後に、2000年4月に香港で世界の31カ国が参加したWHOの世界伝統薬会議が開催され、21世紀の健康管理には薬用植物を如何に上手に使うかが大切となるので、資源確保や有効性の証明がされており、日本の民間薬や漢方薬を上手に使って行きたいものです。

国立医薬品食品衛生研究所 筑波薬用植物栽培試験場の関田場長
「サプリメントとその安全性」

 わが国は長寿国になりましたが、最近では、たとえば生活習慣病(糖尿病、高血圧、心臓病、脳卒中、高脂血症、腎臓病)が問題になっています。このような背景から、健康への関心が深まり、特に疾病の「予防」に重点が置かれ、生薬を食事に取り込んだ「薬膳料理」の普及や食べ物の機能を疾病の予防に役立てようとする「保健機能食品」の誕生など様々な動きがあります。
 日本では漢方薬、中国では中成薬、韓国では韓薬、欧州ではハーブと天然物が使いこなされてきていますが、最近、アメリカにおいても天然物を健康維持に利用しようとの試みが大きくなり、薬と食べ物の中間にダイエッタリーサプリメントという新しい分野を設け、今では巨大産業に成長しています。
 近年の情報革命により、アメリカのサプリメントや中国の生薬製剤などを簡単に入手できるようになりました。一方、これらの製品の中には有害作用をもたらすものが出てきました。「イチョウ葉(痴呆症予防に使用)」製品中のアレルギー成分、「セントジョーンズワート(セイヨウオトギリソウ)(抗うつに使用)」の光過敏作用や薬物相互作用、世界各国で多数の重篤な腎臓障害を引き起こした「関木通、広防已のアストロキア酸」などがあります。現在製品の回収が命じられている「カワカワ」は、肝臓障害患者を出しています。
 こうした事態に対応するために、WHOは、"Safety Assessment of Herbal Medicines"(生薬の安全性評価)のガイドライン作成を企画していて今年の7月に準備委員会が発足する予定です。
 マスメディアの動きも活発化しており、氾濫する情報の中からいかにして本当に自分に必要な情報を選び出すかが重要な時代となっており、健康を管理する方法の一つとして、薬用植物・生薬を上手に利用し、そのための知識を深めていくことが大切です。


 西野先生からは、わかりやすいバイオテクノロジーの紹介を受けたのと新技術をうまく活用、応用することは非常に意義のあることで、そのために、科学的知識を高めていくことが必須であることを教わり、共感しました。
 佐竹先生からは、茨城県で薬用植物を栽培の導入に中心となったヒト、指導するヒト、補佐するヒトが協力して進められたことを知りました。
 関田先生からは、簡単に手に入れることができる天然物を中心としたサプリメントや健康に関する情報について、上手に使いたいことを学びました。
 いづれにしても、一方では、科学的な情報を提供すること、他方では、科学的に考えようとすることの両輪が常にうまく回ることが大切であることを教えられた講演会でした。


筑波山の植物観察会

 6月8日(日)好天に恵まれた筑波山神社本殿前に9時に集合した一行約30人は、20代の学生さんから70歳近いご夫婦、海外からの研究者など多彩な顔触れで、早速本殿横の名樹・丸葉楠と寄生するシダのように見える2種類のラン(ヨウラクラン、カヤラン)の説明を佐竹先生(お茶の水女子大学)より伺いながら、2班に分かれて筑波山の植物観察を行いました。
 まず麓で良く見る植物として、ハルジオン、イヌムギ、オドリコソウ、ニワトコ、ゲンノショウコ、筑波だけに自生するホシザキユキノシタ等を観察した後、ケーブルカーを利用し山頂の自然研究路全長1471mを中心にゆっくりと観察しました。普段は景色の中の草花としてぼんやりと見ている野草や木々について、昼食のお弁当をはさんで約4時間、その見分け方、特徴など講師から細かく説明を受けました。、特に自然研究路は山頂にも近く標高も約800m、暑い下界に比し少しひんやりするぐらいで、ミズナラ、ツクバネウツギ、シイ、ホウ、そして小さな卵が4つも入っている野鳥の巣を発見したり…、新緑の中での貴重な一日を過ごしました。

境内を見下ろすようにそびえたつマルバクス つくば特有の植物ホシザキユキノシタ
境内を見下ろすようにそびえたつマルバクス つくば特有の植物
ホシザキユキノシタ
つくばねの形の花をつけたツクバネソウ 親鳥が岩のくぼみから飛び立った後にはとベージュ色の卵がありました
つくばねの形の花をつけた
ツクバネソウ
親鳥が岩のくぼみから飛び立った後にはベージュ色の卵がありました
他の植物に寄生するので葉緑素を持たないギンリョウソウ トチバニンジンは、薬用植物の王者といわれるチョウセンニンジンと同じ仲間
他の植物に寄生するので葉緑素を持たないギンリョウソウ トチバニンジンは、薬用植物の王者といわれるチョウセンニンジンと同じ仲間







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