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はこだて国際科学祭2010、開かれる

 2010年8月21日(土)から29日(日)、はこだて国際科学祭が開かれました。西部地区、五稜郭地区、湯の川地区の市内3地区でサイエンスショーやサイエンスカフェなどのいろいろな科学イベントが開催されました。全27イベントに、1万人強の参加者があり、多様な分野の関係者が全国から集まりました。

参考サイト http://www.sciencefestival.jp/festival/

サイエンスライブ「ビールを科学し、JAZZを味わう」

 8月21日(土)17時より、五稜郭タワー1階でジャズとビールの試飲とお話を聞くサイエンスライブが開かれました。始めに4種類のビールを試飲し、ジャズを楽しみ、サッポロホールディングス 金田弘挙さんから試飲の答えあわせとビールのコクとキレをいかに科学的に数値化するかというお話をうかがいました。

金田弘挙さんのお話 ジャズの演奏


主なお話の内容

ビールのおいしさの中から6つの要素を①苦味の強さ、②コク、③キレ、④のど越し、⑤ホップ、草原の香り、⑥フルーツ、花の香りについて、4種類のビールの官能テストを行った。
  ビールAは、6つの要素がバランスよくそろっている→黒ラベル サッポロ
  ビールBは、キレがとりわけ強い、のど越しスッキリ→ドラフト ワン
  ビールCは、フルーツや花のかおり、苦味、コク 飲み応えがある→エビス
  ビールDは、フルーツや花の香り、草原やホップの香り、飲み応えがある→エビスザホップ

ビールの作り方
 大麦は糖にしないと、後の発酵工程で酵母がアルコールを生産できないので、「製麦」と言って麦を発芽させて、麦の蛋白質、脂質、でんぷん等を分解する酵素を生産させる。これが麦芽。麦芽は水分を含んでおり腐りやすいので、乾燥させてビール工場に運ばれる。その乾燥工程にて焙煎(ロースト)し、独特の香りを持たせる。焙煎程度によりビールのタイプ(色)が異なり、黒ビールは強く焙煎した麦芽を用いる。送られてきた麦芽は粉砕され、温水にて酵素を働かせでんぷんを糖に、蛋白質をアミノ酸に、脂質を脂肪酸等に分解させて、酵母の栄養成分を豊富に含んだ麦汁を製造する(仕込工程)。
 仕込み工程は徐々に加温していくが、最終段階で煮沸する。煮沸の際にホップを加え、ビール独特の苦味と香り等を付与する。その後、一気に冷やし、酵母、酸素(空気)を加えて発酵させる。国内で一般的な下面発酵ビールの場合、その後さらに冷やして貯酒と言われる工程にて香味を整え、ビールが出来上がる。

おいしさの要素
 基本味(甘い、すっぱい、苦い、塩味 うまみ)に、渋味、辛味といった味(触感)、そして香りをあわせて風味とし、風味に触感(炭酸ガス、冷、温)、環境、体調等の要因からおいしさが評価されると言われている。のどごし、キレはどこに入るのか。
 ビール学会ではコクを濃醇、BODY、ビールを飲んだ時の風味や食感の豊かさと定義しているが、キレには定義がなく、各社で決めている。
キレとは、ビールを飲み終わった後にすーと香味が消失する。香味がいつまでも残らない、爽快感だと定義して研究を進めている。Smoothness, crispiness, cleaness, refreshmentをあてている。

コク、キレを数値化したい
 ビールを飲んでいるときに舌や口の中にいっぱい味や香り等の刺激を与える場合「コクがある」と評価し、飲んでいるときに舌や口の中に味や香りの刺激がない時(感じられない時)、「コクがない」と評価する。飲み終わった後いつまでも口の中に味や香りが残ると、「キレが悪い」と評価するとの仮説を立ててセンサー開発を行った。
 舌の味蕾の細胞膜を人工的に作ったセンサーを用い、ビール成分の吸着性、残存性を測定した。人工膜センサーに触れるように、水→ビール→水を流した。水だと刺激が無いので数値はゼロになる。水からビールに切り替えると、ビール成分がセンサーに付着しセンサー値が上昇する。一定レベルの付着量(吸着量)を測ることでコクを計測する。ビールから再び水に切り替えると、センサーに吸着していたビール成分が洗われ値はゼロに近づく。その値の落ち方(減少速度)が速いとキレがいいということになる。
 脂質膜への吸着性と残存性の測定値と、キレとコクの官能評価結果はよく一致した。この数値でキレ、コクが記述できそうだ!例えば、ドラフトワンは、きわめて良いキレの数値を示した。

のど越しを測りたい
 ヒトがビールを飲んでいるときののど越し状況を捉えたいと思ったが、エックス線で飲み物の移動の様子を調べることはできないので、喉仏の動き、筋肉の動き、飲み込むときの音(ゴクゴクと鳴る音)でのど越しを測定した。実際には、甲状軟骨(のど仏)上下運動、舌骨上筋軍筋肉活動量、嚥下音時間周期を測定し、のど越しを把握しようとした。
酔っ払うと試験できないので、1日、1杯しか試験ができない。
 数値は、のど越し感、飲み応え、のど越しスッキリと合致していた。
 飲み応えのあるビールだと、のど仏がゆっくり動き、筋肉を多く使う、音の間隔もゆっくりする。市販のビール、発泡酒、第3のビールの値と官能検査結果は良い相関を示した。女性やのど仏が小さい人には光センサーで測定する。
のどごしセンサーの研究に対し、アメリカの醸造科学者学会より2010年度エリック・ニーン賞最優秀賞を頂いた。

参考サイト http://www.sapporobeer.jp/news_release/0000020022/index.html

脳の働き
 一般に苦い食べ物として、ビール、コーヒー、ゴーヤ、青汁、秋刀魚のはらわたなどが挙げられるが、本来、生き物である人間は苦味が嫌いなはずなのに、大人になるにつれて好きになったりする。なぜだろう?この謎を解こうとすることで、ビールのおいしさに近づけるかもしれないとの思いから脳機能の研究にもチャレンジした。
苦味を感じる脳部位場所を捉えるため(独)産業総合技術研究所の指導の下、脳磁場計測を行った。脳が活動すると、活動電流が流れ、磁場ができる。
 脳の磁場を測りながら、水の流れているチューブに一瞬だけビールを流し、一次味覚野と考えられている部位(頭頂弁蓋部と島皮質の間の領域)に活動が認められた。
 サッポロビールでは、さらにビールのおいしさ解明を目指して、ビールを飲んでいるときのヒトの心理変化を捉えようと、ビールを飲むときに脳波を測定、アルファ波に注目。リラックスしたか、リフレッシュ(覚醒)したかを調べた。その結果、ホップ、無臭、ラベンダーに対する右脳基礎律動波のリズム度をみると、匂いの強度が同じレベルであれば、ホップの匂いとラベンターでは同じくらいリラックス効果度があがることがわかった。ホップの匂いを嗅いだ経験の無い学生被験者は何の匂いか知らなかったが、ホップの匂いでリラックス状態にあることが示された。

ビールのTPO
 ピルスナー系ビールは、ホップの香り、苦味に特徴を持つビールであるが、ピルスナービールを嗅いだり、飲んだりするとリラックス感がアップすることが示された。一方、黒ビールでは、リフレッシュ感がアップすることが示された。
例えば、コーヒーは3時に飲むとリラックスするが、朝飲むと目が覚める。
 ビールの中のエステルには花やフルーツの主成分がある。ブランドによってエステル含量は2倍くらいの開きがあり、エステルが多いビールを嗅ぐと人はリラックスする。
 エビスはエステル成分が非常に多い、エビスザホップは、このエビスの花やフルーツの香りに、さらにホップの香りを豊富にしたビールである。
 心理状態に合わせたブランド提案 以上のような脳機能研究、嚥下研究、センサー研究を進めていくと、ヒトのその時の心理状態やどのような飲み方をしたいかに応じて、適したブランドがあるのではないかという考えにいたった。その結果を示しています。ビールの楽しみ方を探してください。


ジャズシンガーMIZUHOさんを迎えて 夜も更けて
サイエンスショー「ボウリングのボウルが宙に浮いた!」 赤い屋根の科学屋台


実験屋台2010とサイエンスショー

8月22日(日)、五稜郭タワー1階で、サイエンスショーが行われ、科学の鉄人決勝進出経験のある長嶋淳先生の「びっくり空気の力」、「太陽コピー」、「踊る濾ボット“IKABO”」が登場。科学屋台2010では、水産加工技術の実験体験が行われ、国内外の自由研究・科学コンクールがブースで紹介されました。


“おいしく、食べる”の科学展

函館市地域交流まちづくりセンターでは、日本科学未来館で好評だった展覧会の巡回展、函館臨海試験場で飼育しているチョウザメのリアルタイム上映(「チョウザメ・シアター」)、写真展などが開かれました。 同センターでは8月22日(日)から5回の科学夜話(サイエンスカフェ)も開かれました。くらしとバイオプラザ21は22日の科学夜話「バイオカフェ」を企画運営しました。

“おいしく、食べる”科学展入り口 フェルトの食品を使って、バランスの取れた組み合わせに挑戦
チョウザメのライブ映像 写真展