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拡大談話会 “コンシューマーズカフェ” 開かれる

 消費者庁ができて1年。2010年10月26日(火)、NPO法人くらしとバイオプラザ21では、私たちはどんな消費者であるべきなのかを共に考えることめざして、拡大談話会“コンシュシューマーズカフェ”をベルサール飯田橋で開きました。消団連事務局長阿南久さんから消団連の真摯な歩みと取り組みについてお話し頂き、いろいろな立場の人間がそれぞれに出来ること考え、話し合う場となりました。

阿南久さんのお話 会場風景

1.「消費者庁における情報の一元化の現状と課題」
               全国消費者団体連絡会事務局長 阿南久さん

はじめに
 消費者庁ができて一年。
 消費者からのさまざまな相談や事故情報を一元的に集めて、分析し、消費者に注意喚起したり、各省庁等に対応を促していくことが消費者庁の最大の使命。しかし情報はたくさん集まり、定期的に公表はされているが、それが消費者に分かりやすく注意を促すものになっているかという点では十分とは言えない。
 また消費者への注意喚起と同様に重要なのが、消費者が情報を共有し、自らを守っていく力をつけるための場づくりであるが、これまで食品安全委員会が担っていた食に関するリスクコミュニケーションは、消費者庁に引き継がれたけれども、まだ具体的なことは行われておらず、課題。

全国消団連の歩み
1957年 設立 消費者宣言
「消費者大衆こそ経済繁栄の母であり、商業繁栄の支柱であり、私たち消費者大衆こそ主権者」として、適正価格で品質のよいものを消費者が選び、にせものを排除していく権利を主張した。市場における対等な主役としての消費者の位置付け。
 会員団体は、現在45団体(中央団体23と地方消費者連絡組織22)。普段はそれぞれ、くらしに根ざしたさまざまなテーマで活動をしている。
 共通のテーマを掲げた運動も積極的に進めてきたが、PL法、消費者契約法、食品安全基本法の制定などがその成果と言える。食品安全基本法制定の取り組みのきっかけは、食品衛生法の抜本的改正を求めた運動であった。この運動では全国で1360万筆の署名を集めたが、国会は通らなかった。しかし、2001年に国内でBSE感染牛が発見されたことで、あらためて法制度の確立を求める世論が高まり、食品安全基本法が制定され、同時に食品衛生法が改正された。農薬ポジティブリスト制度もこのときにできた。食品添加物のポジティブリスト制度はその前の改正時に導入されている。

消費者行政一元化に向けて
 2007年、消費者被害の増加と食品偽装事件の多発が社会問題となる中、当時の福田元総理が“行政の総点検”を指示され、消費者行政一元化の取り組みが始まった。私たちは、これを千載一遇のチャンスととらえ、必死の取り組みを開始した。そして、2009年9月にようやく消費者庁ができた。
 全国消団連では、2009年7月に消費者行政充実検討委員会を設置。現在は、「これからの消費者団体のあり方」や「食品安全行政の充実」をテーマに検討を進めているほか、「地方消費者行政支援ワーキンググループ」、「不当収益剥奪と被害救済制度検討ワーキンググループ」を設け独自の検討も進めている。また「消費者基本計画」策定にあたっては、分野ごとに9チームに分かれて意見をまとめてきたが、これからの「検証・評価・監視」についても取り組む予定である。

私たちの取り組み
 食品安全行政の充実強化については、消費者行政充実検討委員会での学習、検討とともに、オープンな学習会も行っている。「本当のことを知りたい学習会」では、中西準子先生、高橋久仁子先生をお招きした。
 その他、ロビー活動、意見書提出、世論形成のための活動もしている。全国各地の消費者団体に呼ばれることが多いが、消費者庁について十分に知らない消費者も多く、理解を広げてもらうための場になっている。
 また企業や事業者団体からの講演依頼も増えており、事業者と消費者団体が対立するのでなく理解し合い、“協働”を創りあげていく場にしたいと考えている。

いろいろな形の情報提供と情報の共有
○中国食品工場では、食品加工工場、畑、農薬配送センター、検疫局を見学した。農薬配送センターに日本のポジティブリストが張ってあり、政府が指導して農薬を使っていることがわかった。中国側からは、食品の検査、製造に気を使っていることを日本の消費者に伝えてほしいと言われた。こういう見学会も情報提供のひとつの方法だと思う。
○関東農政局 エコフィード(残さや食べ残しから飼料を作る)推進シンポ
○トクホとエコナの学習会 
ホントのこと知りたい学習シリーズで取り上げた。「買い置きエコナをどうすればいいのかが一番知りたい」、「食べていいものなら、回収しなくてもよかったのではないの」などの意見が出た。1回目の質問に答えられなかった質問の回答を含めて2回目の学習会を行った。花王の担当者は、EUまで出かけて調べた情報を説明してくれたが、参加した消費者からはこういう姿勢への評価も高かった。信頼回復につながるのではないかと思った。企業のやっている具体的なことを知ることが大事だと思う。
○HACCP認定工場の勉強会
明治乳業工場、キューピー工場、つくばファーム(卵の生産工場)の見学を実施。実際に製造現場を見ることが大変ためになる。それぞれの食品を家庭でどのように保管し、調理すればいいのかをつなげて考えられる。そのような暮らしに活かせる情報が大事で、リスク低減にも役立つ。

消費者庁
 消費者庁2009年9月スタート、消費者安全法と消費生活用製品安全法に基づいて事故を公表している。食品関係は、食中毒が多い。消費者ホットラインは2010年1月12日からスタート。事故情報データバンクシステムは2010年4月1日からスタート。その他に「工程表」、「地方消費者行政の充実と強化ためのプラン」、「消費者基本計画」、「消費者安全の確保に関する基本的な方針」の策定などをしている。
 事故情報データバンクには、2009年9月から現在までに、20,032件の事故情報が登録されている。食料関連は3,238件(そのうち食中毒は1,631)。最大は家電製品による事故で3,859件。高齢者の事故は874件(「健康食品」が131件と多い)。子どもの事故は450件で建物設備に関わる事故が多い。2009年9月から2010年3月までの重大事故(死亡事故)は318件。食以外だと、自動車事故が多い。病院の多剤耐性感染症、アレルギーなどの情報も寄せられている。

消費者庁・消費者委員会創設の背景
 縦割りと行政の無為の反省から始まる。政府の様々な事件に対応する力を向上させ、明治以来の仕事の仕方(消費者保護が産業振興の二の次に位置づけられていた)を見直そう。安心安全で良質な市場を創り、消費者・事業者に長期的な利益をもたらす、行政改革の拠点としての位置付け!
 一元化構想のポイントとは、①政策立案と規制の一元化を実現し、総合調整権限と勧告権を持つ司令塔とする。②情報の一元化を実現し、他省庁や様々な機関から出た情報を消費者庁が取りまとめる。③相談窓口の一元化によって、相談窓口をたくさんつくって、それらをつなごうということ。
 消費者庁の仕事は、基本的には以上のようなことだが、地方自治体の消費者行政を充実・強化していくことも重要な役割。7月には地方協力課ができ、地方行政強化の方向。消費生活センター、保健所などをどう連携するかも課題。
消費者基本法の目的は「消費者の権利の尊重と自立の支援を基本理念とし、国、地方公共団体、事業者の責務を明らかにし、消費者の利益の擁護・増進に関する総合的な施策を推進し、国民の消費生活の安定と向上を確保する(略)」こと。
 2004年に改正されたときに、消費者の権利、①安全、②選べる、③知らされる、④消費者教育、⑤意見を反映される、⑥救済(保障)される、以上6つの権利が明記された。
しかし、日本で消費者の権利が守られていると思っている人は6.9%で欧州に比べて著しく低い。
 消費者基本法には、国、事業者の責務が多く定められている。消費者にも自主的に学び、合理的に行動するという役割があることが書かれている。
消費者庁は、消費者の権利行使を支え、保障すると同時に、消費者が正しく権利を行使し、社会を良くする行動ができるように教育・啓発を促進し、自立を助ける。
 消費者力とは、選択力(情報管理)と管理力(安全に使う知識・スキル、これが非常に低下している。ちゃんと製品を使いこなせない)。これに市民力(思いやりをもって行動し、連帯する)が加わって消費者市民力が発揮される。
 2010年3月には、消費者基本計画が策定され、リスコミの推進、事業者と消費者意見のリスク管理措置への反映、リスク評価機関の機能強化とリスク管理機関を一元化した「食品安全庁」の検討、米トレーサビリティ法の運用、農業生産工程管理(GAP)の共通基盤づくり、HACCPの導入促進、食品関係事業者のコンプライアンスの徹底促進、食品表示の適正化に向けた施策づくりなどが盛り込まれている。

これからのリスクコミュニケーション
 施策づくりのためのリスクコミュニケーションが大事!
 企業は商品提供と情報提供(説明)に責任がある。消費者は提供された情報に基づいて選択して購買する。消費者庁は寄せられたトラブル・相談情報に基づいて消費者の立場で強力な指導力を発揮する。
・企業、マスコミは正しい情報提供に努める。
・消費者庁はリスク評価をする食品安全委員会、リスクを管理する農林水産省、厚生労働省、と情報を交換し、科学的な根拠に基づく説明を受けたり、勧告を与えたりする。
・みんなで対等に話し合えること、普段のコミュニケーションが大事。
その中で、コミュニケーションにのってこない悪質事業者の排除も可能になると考える。


2.グループディスカッション

3つの班に分かれて話し合い、各グループが話し合った事項を報告しあいました。

第1グループ
①消費者とのコミュニケーション
アンケートと消費行動は一致していないなどを踏まえて消費者とどうつきあうか? 一部の消費者に合わせると過剰品質になるので、企業はどこまでにするか迷いながら進めている。
科学的なことを話し合える共通なモノサシが必要。消費者庁に科学的な説明を今後期待したい。サイレントマジョリティへの対応も課題。
コミュニケーションにおける言葉の伝わり、受け取りで、言葉の翻訳(わかりやすく、正しく)がほしい。消費者にとっても、企業にとっても同じである。
正しい(わかりやすい)情報とは何か?正しい情報を出せば分かってくれる。如何に分かりやすくするかが大事で、消費者庁だけで対応するのは無理と思う。
② 地方行政への期待
判断材料だけで、何が正しいかを示さないと消費者は混乱する。
地方の自治体には科学的でないイベントを行う所もあったり、保健所によってものさしが違ったりすることもある。保健所では、担当者が変わるだけでも解釈が異なることがある。
食品行政一元化において、全体共通のルールが必要だと思う。

第2グループ
① エコナ回収を通じた消費者団体との意見交換を通じて、食の安全やサスティナビリティや食の安定供給のようなテーマについて事業者、マスコミ、行政による定期的な会合が必要だと思った。前向きな方向での議論が有効。
② 消費者庁はリスクコミュニケーションの一端として事故情報ホットラインを運営しているが、書きこみだけで終わっている。事業者などとの連携が必要ではないか。
③ 欧州のアクリルアミドの事例から学んだこと。アクリルアミドを巡る混乱で欧州の行政は信頼を失った。信頼回復を意識して欧州の関連機関(BFRとEFSA)はリーダーシップをとって、風評被害を起こさないようなリスクコミュニケーションを行っている。ある案件について、リリース1週前にマスコミにみせて質問にすべて答えて、1週間後にリリースする仕組みを作った。BFRでは食品中に遺伝毒性の発ガン毒性物質があったら、ハザードがあっただけで告知するが、セットでリスくコミュニケーションを行い、国民の信頼を得ている。BFRは行政の介入と経済的な介入は全く受け付けない中立でオープンな評価とコミュニケーションで消費者から信頼されている。

第3グループ
① 食品の回収、企業の謝罪から、消費者は法律違反の回収はすべて健康被害を及ぼすように認識してしまう。
② 食品安全委員会の説明は技術優先になり、消費者に安全かどうかが伝わりにくい。消費者庁は結論として安全かどうかを示すことにより、取り組みがわかりやすくなる。
③ 消費者庁は消費者への情報発信のルールづくりをすべきではないか。
例えば、情報は何でも出すべきなのか、出しすぎるとネガティブにとられないだろうかと企業は不安になる。
④ 消費者教育が最も大事である。


3.全体討論

全体を通じた意見がいくつか発表されました。
・ 流通の人も参加してほしい。
・ メディアには社会部と科学部があり考え方が違っているが、その影響力が大きいので、メディアには、どんな情報提供が必要なのか。
・ 消費者庁はどんな働きができるのか。
・ 人々は声が大きく行動する人に引きづられるもので、裏でひそひそ言っていてもだめ。例えば、ポジティブリストで廃棄している食品に関する特命プロジェクトを作り問題点を知らしめようとするなど、行動が必要である。ここに集まった人の声、意見を表に外部に発信しましょう。
・ 消費者委員会には、今後期待したい。


4.阿南さんのまとめ

・ 事業者が消費者団体をネガティブに感じるのも仕方ないと思う。どうしても、一部の声の大きい発言をする団体が目立ってしまい、消費者団体は本当に「消費者」の代表と言えるか疑問に感じていらっしゃる人も多いのではないか。そういうことも率直に言っていただきたい。
・ 企業、マスコミ、流通には情報が集まるはずだから、それら情報を公開していただかないと、問題は解決しないと思う。皆さんの協力がほしい
・ 科学的見識を持っている人が行政(各種委員会を含めて)に入るべき。消費者委員会でも科学的な立場で判断するには人材が足りていない。行政機関に科学的知見を持った人を入れてしっかり長く働いてもられるように声をあげること、支援の声をあげることも我々の務めである。
・ 国民の声は行政に反映されているだろうか。食品安全委員会が7年間育ててきた食品安全モニターが各地に育っている。リスクコミュニケーターも養成され、各地で活動している。こういう人たちの活動を通じた意見を安全行政に生かしていくことが必要。今年度、食品安全委員会が募集した「自ら評価」には、160件を上回る、これまでにない多くの候補案件が寄せられた。中には、すでに食品安全委員会がリスク評価を終えているものもあるが、このリストアップには食品安全モニターが大きな力を発揮した。こうした輪を広げていきたい。