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講演会「健康食品の安全・安心」が開かれました

 2010年11月5日、日本教育会館において食品衛生学会主催公開講演会「健康食品の安全・安心」が開かれました。
初めに、行政の動き、健康食品を製造販売する企業の取り組み方について、
「健康食品の表示の課題と今後の方向性」消費者庁食品表示課 課長補佐 平中隆司氏、
「健康食品の安全性確保のための自主基準」日本健康・栄養食品協会 事務局長 加藤博氏、両氏の講演がありました。その後、
「医薬品成分が検出された健康食品」 東京安全研究センター 主任研究員 箕輪佳子氏
より、健康食品から医薬品成分が検出されることがあるが、これは違法な医薬品であり、健康被害も出ていることが報告されました。
最後に、消費者はどんな態度で、健康食品を利用するのがよいか、次のように2名の講師の講演がありました。


「消費者が健康食品を適切に利用するために」
       日本消費生活アドバイザー・コンサルタント協会 食生活特別委員会副委員長 蒲生恵美氏

はじめに
 健康食品に係る問題には、安全性や治療妨害(医師に利用している健康食品について伝えず過剰摂取してしまったなど)の他に、悪質商法による経済被害などがある。これらの対策には規制強化や消費者保護の充実が必要だ。一方、あいまいな表示による消費者の過度な期待や企業の誇大広告の問題には、表示制度の見直しや消費者教育の充実が必要となる。消費者が健康食品を適切に利用するためには、商品を正しく判断できる情報と、消費者がその情報を判断する力の両方が必要である。
 健康食品はバランスの良い食生活へのきっかけならば有効であるが、食べれば健康増進、一般食品より優れている、薬でないから使いやすいなどの誤解を生むのは問題。健康食品という名前にも問題がある。
薬事法に触れないようなあいまい表現「血圧が気になる方へ」は高血圧の人に期待をさせている。医薬品は医師の指導のもと用量用法を守るが、健康食品は過剰摂取しやすい危険がある。このような状況で、食薬区分はできているだろうか。
 むしろあいまいな表現規制こそが食薬区分の妨げになっているのではないか。医薬品と食品が混在されている売り場や通信販売のWEBサイト。

どんな表示がいいのか
 あいまいな表現規制をやめて、効果的な消費者教育を行う。
どんな人が対象で、どのように使えば、どの程度期待できるのかをエビデンスのレベルをつけて表示する。
病気の人が対象でないことを示し、自分は対象かどうかを判断できる情報をのせる。
健康食品を利用するには、自分の食生活に何が不足・過剰か知ることが大切。栄養成分表示が充実化して、食事バランスを意識させるツールの1つになると良いと思う。充実化といっても数字の羅列だけではわかりにくいので、わかりやすい表示の工夫も望まれる。 例えば、FSA(food safety agency英国食品基準庁)では、「traffic light labeling(交通信号ラベル))といって、交通信号のマークを利用して適正な摂取を促す取り組みなどがある。
 参考サイト http://www.eatwell.gov.uk/foodlabels/trafficlights/
用法に関する表示については、タイミング、量、期間をきちんと知らせ、食品には即効性がないことを知らせる。「○週間使って効果がなかったらやめてください」というコメントや、こういう体格の人がどのくらい使ってどうなったかを示す数字を含む事例を掲載するとわかりやすい。
 長い摂取期間をわかりやすく示すと、食品には即効性がないと食品の程度を理解する人も現れれば、効果を求めて同じ健康食品ばかりを摂る人も現れるだろう。1つの食品で健康になることはありえない。バランスのとれた食生活の重要性をきちんと伝えることが大切。
バランスのとれた食生活ができて、科学的根拠を基に判断できる消費者を育て、科学的根拠を持つ誠実な企業を応援し、誇大広告をする企業を排除する方向付けが重要。

これから
 EFSA(European Food Safety Authority:食品や飼料のリスク評価、安全性に関する欧州委員会への科学的助言を行う)は事業者と一緒に考えて進めていく場を作ろうとしている。日本にもそのような場ができることを期待する。
このような方向性を支える規制を整備すれば、グローバリゼーション、ハーモナイゼーションにも貢献できるのではないか。
・行政にはあいまいな表現の見直し、危険商品・悪徳商品の排除を求める。
・企業には有効性について、科学的根拠を基にわかりやすく表示してほしい。
・消費者団体はメディアリテラシー教育、健康食品の有効性・安全性に関する情報提供に取り組む。


「健康食品」と医薬品の相互作用」          鈴鹿医療科学大学 長村洋一氏

 健康食品管理士認定協会(http://www.ffcci.jp/)を立ち上げ、40の大学・学部で健康食品について学んだ認定者が、今では7000人誕生している。
 健康食品の明確な定義がないことが問題。中国、韓国には定義がある。日本の健康食品のラベルに表示されている含量に対して著しい不足が国民生活センターで指摘されているが、「効き目に個人差がある」と但し書きがあるので、個人差のせいだと思う人もいるだろう。
 健康食品はある段階で壊れないといけないもので崩壊度試験を行うが、壊れないものがあったりするもの、体内でちゃんと溶けないといけないものは不都合である。
いわゆる健康食品で、329人に健康被害があり、ひとりの死者が出ているというデータがある。(厚労省「いわゆる健康食品」による健康被害事例 平成19年3月」)安全性、医薬品との相互作用が評価されなければならないが、それが進んでいない。そして、それ以前に品質が悪過ぎる。

健康食品の問題
・広告が不適切
・効果がない
・表記されている量が入っていない
・吸収されないかもしれない
・医薬品が混入している

医薬品と健康食品の相互作用
 常識問題を整理しよう。健康食品と医薬品の作用が同じだと作用が増強するし、拮抗するときには効果がなくなる。
 医薬品は腸管で吸収されて肝臓に運ばれ、肝臓の酵素で変化させられる。吸収の段階と代謝の段階で、食品の影響を受ける可能性がある。
 例えば、乳製品とテトラサイクリン系抗生物質は複合体を作って、吸収されにくくなり、効果が減少する。脂肪分の多い食品とグリセオフルビンなどの抗真菌薬は複合体を作って吸収が促進され副作用の恐れが生じる。コーラなどの酸性飲料はイトラコナゾールなどの抗真菌剤の溶解性を増し吸収性が高まり、これも副作用の可能性が出てくる。
 グレープフルーツジュースが肝臓の酵素の作用を弱めてしまうのでフェロジビンなどの高血圧薬の効果が強まり、血圧が急に降下しふらついたりする。食品の中のピリドキシン(ビタミンB6)が肝臓の分解酵素の作用を強めて、レボドパの効果を元弱する。ビタミンKはプロトロンビンを活性化し、血液凝固を進めたり、オステオカルシンの生成を促し骨代謝を活性化したりするので、ワーファリンを投与されている人がビタミンKが豊富な納豆を多く食べると薬の効果が減少してしまう。血栓ができないようにワーファリンを服用している人が納豆を取りすぎないように注意されても、納豆は血をサラサラにすると聞こうとしないこともあった。このような偏った知識は危険。
 吸収過程、代謝過程における相互作用が起こり、医薬品と健康食品の相互作用は専門家にも未知のことが多い。
 そこで「健康食品 ポケットマニュアル」を健康食品管理士認定協会で作成した。意識向上をはかっていきたい。