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食品安全委員会がスタートしました

7月1日食品安全委員会がスタートしました。食品安全委員会はO157、BSE、食品偽装表示などの出来事から食の安全への信頼が失われつつある中、市民の視点に軸足を置いたリスク評価を行うことを目指しています。

 食品安全委員会

背景

 昨年4月の「BSE問題に関する調査検討委員会」(厚生労働大臣及び農林水産大臣の諮問機関)の報告書の提言を受けて、政府として「食品安全行政に関する関係閣僚会議」を開催し、6月11日、「今後の食品安全行政のあり方について」とりまとめが行われ、

  • 食品の安全に関するリスク評価を行う食品安全委員会(仮称)を新たに内閣府に設置する
  • 緊急時に内閣全体として対応する危機管理の仕組みを整備する
  • 消費者の保護を基本とした包括的な食品の安全を確保するための法律として食品安全基本法(仮称)を制定する

ことになり内閣官房に準備室が設置され、発足に至りました。

 首相官邸 食品安全行政に関する関係閣僚会議

食品安全基本法

 今年5月16日、食品の安全性の確保に関する施策を総合的に推進することを目的とする「食品安全基本法」が国会で可決され、成立しました。同法は第三条で「食品の安全性の確保は、国民の健康の保護が最も重要であるという基本的認識で行わなければならない」と「生産者寄り」と批判された役所の対応などを見通し、消費者保護を前面に打ち出しました。
 この基本法によりリスク管理を行う機関から分離して食品健康影響評価が行われるように内閣府の食品安全委員会が新設されたのです。

※5月には食品衛生法も改正されました。改正前は「飲食に起因する衛生上の危害の発生を防止し、公衆衛生の向上及び増進に寄与する」のが目的でしたが、改正法では第一条の冒頭に食品の安全性の確保を目的として定め、「国民の健康の保護を図る」としました。

 内閣府 食品安全基本法

食品安全委員会の役目

 同委員会は安全性についての科学的な知見だけでなく、食品を摂取する国民の安全を確保するために総合的な判断を行うもので、具体的には食品添加物や遺伝子組換え食品、健康食品、家畜の飼料、米の肥料、農薬の安全基準などを検討します。食品の科学的な分析・評価結果を農水、厚労省に伝え、必要な政策を勧告します。これまで両省で各々行っていた安全性に関する判断は、委員会に一元化し、両省は勧告内容に基づき、省令や通知などを作成、畜産家や食品メーカーなどを監視することになります。
 BSE感染牛の発見など、国内外で突然発生した食の危機に対応できるよう、緊急を要する場合は委員会が暫定的に対処方法を策定できます。当面は体細胞クローン牛を食品として流通させるかどうかなどを順次判断していくとみられます。
 この委員会は一般に公開されており、傍聴することもできます。

 食品安全委員会 開催状況

食品安全委員会の構成

 同委員会は委員会、専門調査会、事務局からなり、委員会は寺田雅昭氏(元国立がんセンター総長)を委員長とする7分野(毒性学、微生物学、有機化学、公衆衛生学、食品の生産・流通システム、消費者意識・消費者行動、情報交換)の専門家で構成されます。

 食品安全委員会 委員

 専門調査会は企画、緊急時対応、リスクコミュニケーションと評価チーム(化学物質系、生物系、新食品など)に分かれ、専門委員の数は延べ200名。リスクコミュニケーションに関する専門委員として消費者の代表も委員として加えることになっており、現在、一般募集を行っています。事務局は局員54人、非常勤の技術参与25人。

農林水産省、厚生労働省の取り組み

 農林水産省、厚生労働省とも食品安全委員会スタートを受けてリスク管理強化のため、組織を改正し、対応を図りました。具体的には農林水産省では消費・安全局を新設し、各地域農政局にも同様の組織をつくりました。厚生労働省は医薬局を医薬食品局とし、その中の食品保健部を食品安全部として食品分野に力を入れることにしました。

自治体の取り組み

 食品安全行政に、より効果的に、より効率的に取り組むためには、全国の地方自治体による知恵と情報の連携がぜひ必要という考えのもと、全国食品安全自治ネットワーク構想も動き出しています。昨年11月には43都道府県の出席を得て会合が持たれ、各都道府県の組織(検討中含む)の特色と現在の課題について話し合われ、施策の連携に係る意見や情報が交換されました。次のサイトでは各都道府県の食品安全に関わる取り組みが紹介されています。

 全国の食品安全委員会ネット

企業の動き

 食品業界でも全社的に製品の安全対策に取り組む動きが本格化しています。食品メーカーや小売業界は安全に関わる恐れのある場合には早期に自主的に市場から製品を回収するように努めており、生産履歴を追跡できるトレーサビリティー(履歴管理)の仕組みに力を入れ、 海外生産や水産物にも対象を広げています。

食品安全委員会の特徴

 「リスク管理と分離して、科学的知見を基にリスク評価をし、リスクを制御する」ことが食品安全委員会の基本的な姿勢です。リスクとは「健康への悪影響が生じる確率とその程度」のことで、リスク評価は「食品の危険性や安全性を科学的に分析、人体への影響を数値などで示す」ことです。その評価に基づいて食品添加物の摂取基準などの目安を作ったり、基準が守られているかどうかを監視、指導、規制するは行政のリスク管理です。評価は委員会、管理は農林水産省、厚生労働省と役割が分担されています。
 今後、新しい食品や添加物、農薬などのリスク評価が必要になったときは、委員会はその評価結果を両省に伝え、場合によってはリスク管理の強化などの勧告を行います。委員会、農林水産省、厚生労働省は情報交換を密にしながら活動していきます。つまり、今までは縦割り行政のために連携が悪くリスク評価に関わる問題が生じることがありましたが、この点を改善すべく一貫性のあるリスク評価と独立性を保つために内閣府に同委員会が新設されたのです。


 食品安全基本法が制定され、やっと市民の立場に目を向けられたとこれを評価する声明を出した消費者団体も多数ありますが、現状の食品安全委員会の体制では国民の食の安全確保には不十分であるとする声もあります。
 たとえば、食品安全委員会の中に市民の視点がないことがあげられています。リスク評価は科学的知見をもとに、専門家によって行われるべきですが、委員会のもう一つの役割であるリスクコミュニケーションは情報を正確、迅速、公平に消費者に提供し対話し、市民の理解と合意を得ることで、このような分野には市民の意見の反映が必要だという意見もあります。地道なリスクコミュニケーションの積み重ねから新しい展開が生まれることを期待し、市民も食の安全のことを自分のこととして考えていきたいものです。







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