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食品の表示の検討が始まります

 2011年9月30日より消費者庁で、食品表示一元化検討会が発足します。食品化学の専門家、食品メーカー、流通、消費者のグループなどがメンバーとして参加します。同庁はこれに先立ち、8月「食品表示をめぐる主要な論点」を公開しており、市民に直接、情報を提供し、影響力も大きい「表示」のあり方を、多くの人々と検討していく姿勢を示しています。これに対して現場の立場から食品業界や一部の消費者のグループなどが意見や要望を送っています。私たちひとりひとりも、それぞれの立場で考え、話し合い、意見を表明する機会には自分の考えを述べられるようになりたいと思います。
食品表示をめぐる主要な論点 http://www.caa.go.jp/foods/pdf/syokuhin679.pdf


食品表示をめぐる主要な論点

主要な論点では以下の6つの項目が掲げられており、すでに検討会が走っているものもあります。

  1. 原料原産地表示(消費者委員会食品表示部会 2010年10月から検討)
    従来、原産地による原料の品質の差が加工食品に大きく影響すると認識されていて、それが重量で50%以上の商品が義務対象品目の選定要件とされている。義務表示拡大にむけて消費者・事業者の意見をもとに、「黒糖および黒糖の加工品」「こんぶ巻き」の義務化(2013年4月から表示開始)が決まり、現在、22食品群の加工食品が対象となっている。原料原産地表示拡大の進め方に関する調査会報告書(2011年7月6日)では、選定要件についてさらに検討を進めるとされている。
  2. トランス脂肪酸の含有量表示(トランス脂肪酸に係る情報の収集・提供に関する関係省庁等担当課長会議 2010年1月から)
  3. トランス脂肪酸の過剰摂取は心疾患のリスクを高めるという報告から、「トランス脂肪酸の情報開示に関する指針」が今年3月に発表され、食品事業者による自主的な情報開示が促されている。日本人の平均的な摂取量は低く、トランス脂肪酸の表示義務化は本当に意味があるのか、100gあたり0.3g未満含まれている場合「無」「ノン」などの表示ができることにより「ゼロ」と誤解されるのではないかなどを含めて、栄養成分表示と関連づけて検討されている。
  4. 栄養成分表示(栄養成分表示検討会 2010年12月から)
    栄養強調表示(○○控えめ、○○ゼロなど)がされる場合等を除いて、含有量表示(含まれる栄養成分やカロリー)は義務化されていない。海外では栄養成分表示が進んでおり、海外の状況を鑑み、日本人の食生活にふさわしい栄養成分表示のあり方について、2010年12月より検討が始まっている。
  5. 遺伝子組換え食品(食品表示一元化検討会で扱う予定 2011年9月から検討)
    分別生産流通管理(IPハンドリング)された作物やその加工品は「不使用」と任意表示でき、混入の可能性のあるものには「使用」「不分別」の義務表示が行われている。不使用表示は含有ゼロと認識する消費者も少なくない。海外では、食品組成が変化しないものには表示不要とする米国流と、トレーサビリティ制度により遺伝子組換え農作物に由来する食品にも表示を義務付ける欧州流があり、対立している。
  6. 食品の期限表示(食品の期限表示制度に関する意見交換会を2009年9月より開始)
    消費期限と賞味期限の意味の違いが理解されておらず、食べられる食品が捨てられたり、開封した食品が適切に保存されてなかったりしている。食品の保存に関する情報の共有化と理解の促進が必要。
  7. 食品表示に関する一元的な法体系のあり方の検討(食品表示一元化検討会 2011年9月から検討)
    食品の表示には農林物資の規格化及び品質表示の適正化に関する法律(JAS法)、食品衛生法、健康増進法など複数の法律が関係している。国際的なルールも鑑み、効果的な執行体制の在り方とあわせて、統一的に解釈・運用にできるように検討する。



私たちも考えましょう

消費者や食の専門家が共に学び、考えて、意見表明をしている個人やグループが、次に示すように、いくつもあります。
FOOCOM.NET 科学的根拠に基づく食情報を提供する消費者団体 http://www.foocom.net/
FOOD WATCH JAPAN 食べるをもっとよく知る http://www.foodwatch.jp/
食品安全情報ネットワーク(FSIN)http://sites.google.com/site/fsinetwork/
食の信頼向上をめざす会 http://www.shoku-no-shinrai.org/
食のリスクコミュニケーション円卓会議 http://food-entaku.org/

「食品添加物表示を考える会」もそのひとつです。食品添加物や遺伝子組換え食品等のリスクコミュニケーションに携わってきたメンバーが個人の資格で加入しているグループで、表示のルールがわかりやすくなり、それを学ぶ機会を増やすことを要望し、7月25日に意見書を消費者庁長官宛に提出しています。

「食品添加物表示を考える」の意見書(pdf) PDF

私たちの食生活において、最重要事項は「安全な食糧の安定供給」です。このことを余りに恵まれた食生活の中で忘れてしまうと、世界には飢餓に苦しむ人がいたり、被災地では限られた選択肢の中で食生活を営まなくてはならない人がいるというのに、食品を無駄にしたり、不要なコストを上乗せしてしまう状況もでてきます。
食品の表示は、消費者にとって食品を選択する指標であるばかりか、食品に関する重要な情報源であり、消費者にとっては学習の機会にもなっています。「○○は使用していません」と書いてあると、○○は身体によくないものであると感じる消費者もいるでしょうし、○○を使わずに作られている食品は他より優れていると思う人も出てくるでしょう。食品をめぐるビジネスの世界では、表示を使って、ある食品の利点が強調されたり、他社製品の不利点を利用した差別化が行われることもあります。その利点・不利点の考え方は、生産者、加工業者、流通、消費者のそれぞれの立場で異なってきます。私たちの「食」の基本は安全の食料の安定供給であり、最も避けなければいけないのはアレルギーや食中毒による健康被害と食品を無駄にすることです。この実現のために多くの科学・技術が利用されています。
今後、これらの検討会でパブリックコメントが求められるときのために、くらしとバイオプラザ21も、「コンシューマーズカフェ」を開催するなど、共に考え、話し合う場を提供していきたいと考えています。