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第9回コンシューマーズカフェレポート「GM作物の誤解」

2013年7月11日、筑波大学東京キャンパス文京校舎で、筑波大学形質転換植物デザイン研究拠点(研究代表 鎌田博教授)との共催でコンシューマーズカフェを開きました。毎日新聞 小島正美さんの提案で完成した「メディアの方にしっていただきたいこと」3部作の完成を記念したお話「GM作物の誤解」を頂き、参加者全員で話し合いを行いました。
https://www.life-bio.or.jp/topics/topics542.html

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小島正美さん グループディスカッション

お話の主な内容

報道からうける印象
子宮頸がんワクチンで10万人に1人くらいで起こる副作用が問題になっている。インターネットなどで、女子高生が痙攣を起こしている動画がアップされている。対象年齢の女子やその保護者は大変、不安になっており、4月から無料で接種が受けられるようになったが、接種希望者は激減している。
テレビのあるコメントでは、「子宮頸がんの原因になる15種類のウイルスのうち2種類にだけ有効」と言っていた。この2種類のウイルスが子宮頸がんの原因の5-7割をしめることは伝えていない。
また、動画に登場する女子高生に取材したところ、時々、痙攣が起こることはあるが、普通に暮らしており、インタビューにも応じてくれた。
一方、子宮頸がんの患者さんの取材をしたら、子宮を全摘し、ひどいむくみや排尿障害に苦しまれていて、手術をしてもかなり厳しい症状が残るがんであると感じた。
副作用として記憶力が落ちるなど、今まで見たことがない症状は出ていることは事実だが、繰り返される動画やコメントからは、ワクチンの副作用に偏っていて、子宮頸がん患者の悲惨さは伝わっていないと思った。
またくすりの営業担当(MR)の話では、厚生労働省が子宮頸がんワクチン接種の勧奨中止のプリントを配布しており、医者が子宮頸がんの実態を説明しても、ワクチンを受ける人はいなくなってしまったという。そして、保護者も接種の是非について深刻に悩んでいる。
ワクチン接種を考えている人のための判断材料を提供できるようなサイトが必要であると思った。
 
報道の偏り
微小粒子状物質PM2.5は日本では2009年に基準がつくられていて、新しい物ではない。自動車や喫煙からも常時排出される。しかし、中国から飛来したとたんメディアは報道し始めた。PM2.5の硝酸と硫酸化合物の割合は日本由来と中国由来で異なっており、関東のPM2.5は日本由来だった。
温暖化で氷が溶けてシロクマが絶滅するという印象を与えるニュースが繰り返し流された。地球物理学者の赤祖父先生は1800年代初めから温暖化ははじまっていたといわれており、地球の気温に影響を与えているのは、主に二酸化炭素ではなく太陽活動の変化。それでも温暖化のニュースにさらされていると温暖化の原因は二酸化炭素しかないと思うようになってしまう。これは偏った報道の影響ではないか。
耕作放棄地で太陽光発電を行うという記事がよくある。ドイツでは太陽光発電の電気を国が高く買い取らなくなったとたん、メーカーが倒産したりしている。世界中の太陽光発電が破綻しているのに、まるで将来性があるかのごとく放棄地で太陽光発電を行うという記事を出すと、誤解を与えるのではないだろうか。
マクドナルドの中国産鶏肉は抗生物質漬けという週刊誌の記事もあった。マクドナルドはHPで反論した。こういう週刊誌を買うことが、このような報道を支えていることになる。驚かせて、買わせるのが戦略。危ないという評論家はいつも同じで、記者は危ないといってくれる科学者リストを持っている。

私の経験から
2000年以前、私は遺伝子組換え作物・食品に疑問を感じていた。米国のベンブルック氏のレポートをもとにして書いていたが、社内で支持され、第1面に出たこともある。ところが、あるとき、アメリカを視察したら、今までの認識が間違っていたことがわかり、今に至っている。理由は「客観的な情報の不足」。
間違った記事を書いた記者を批判するより、記者に事実を伝えるのが大事だと思う。
4月17日、石原慎太郎氏は「アメリカは表示に圧力をかけている」と発言した。これは間違いであるが、正す人はいない。共同通信が、雑草から組換え遺伝子を発見というニュースを3年前に書いた。この誤解はその後も解決されていない。同じように東京新聞も同じ間違った記事を書いている。誰かが正さなければ、永遠に気づかず、繰り返し間違い報道が行われる。
 
遺伝子組換えの危険報道にはパターンがある
このように遺伝子組換えは危険だとする報道の内容は同じで、以下のパターンで何回も繰り返されている。
○GMは長期の環境への影響がわかっていない→環境影響の試験の実態が知られていない。
○ラウンドアップ(除草剤の名前)は欧州で禁止されている→使われている。
○除草剤の主成分グリホサートには発がん性がある→発がん性はない。
○インドでBt綿を栽培した農民が高いライセンス料と農薬代が払えず自殺している。
→ドイツのカイムという経済学者が無作為試験。Bt栽培をした人としない人へのアンケート調査をした。インドの自殺率より日本の方が高い。インドの自殺率をみると農民は低い。

遺伝子組換え技術に特化したサイトがあってもいいのではないか。食品安全委員会の審査には不備があるといいながら、そのサイトを読もうとしない。
このようなさまざまな誤解には一つひとつ丁寧に反論するしかない。特にまちがいやすい項目を分かりやすく解説する必要がある。人の目に触れるあらゆる所で発信していかなくてはならない。
誤解だらけの組み換え作物について誤解を解く本を作ろう!遺伝子組み換えに特化したサイトが必要。
いろいろなパターン化されたリスク情報があるが、最終的な不安は、種の壁をこえて組み入れられた遺伝子を食べてよいのかの疑問に集約されると思う。
iPS細胞は遺伝子組換え技術を使っているのに、そのことは書かれず、iPS細胞の研究を応援する人は多い。これらは良くも悪くも報道の現実!だと思う。
英国の環境保護団体のメンバーであるマークライナス氏は、遺伝子組換え技術に対して誤解していたと講演した。韓国は招聘して講演してもらっているので、日本でも招聘してほしいと思う。
一方、バンダジェフスキー氏(ロシア人病理学者)は、放射性セシウムを摂取すると心臓疾患をおこすといっている人で、日本のあるグループが呼んできて、PR会社がついて全国で講演させている。一方、反論したい人はいても黙っている。反対派は活動量が多く、メディア向け活動もうまい。
放射性セシウムの基準値は、日本が一番厳しいのに、給食に不安を持ってお弁当を持参するひとりの子どもをメディアは取り上げる。残りの大部分のこどもは給食を食べているのに。
リスク報道にはこのように非対称性がある。接種して副作用が起きるとビッグニュースだが、接種して子宮頸がんにならない場合にはニュースにならない。
いろいろなリスク情報がでているが、健康の秘訣は、①禁煙、②適度な運動、③睡眠
を実行して、いろいろなものを食べること。楽天的になってよく笑うこと。ストレスの少ないよく笑う人は認知症にならないらしい。
 
ではどうしたらよいか
アルミニウム協会では、ある新聞社に出した質問と回答をほかの新聞社にも送っていた。メディアへのこういう情報発信活動が大事。GMのメリットを数字で示せば記事になることもあると思う。「メディアをチェックするメディア」をつくって、間違いのある報道へのコメントが常時見られるようにして、そのような間違い情報が繰り返し書かれないようにするのも一案だと思う。


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「メディアのメディアが必要」  

質疑応答
  • は参加者、→はスピーカーの発言

    • マークライナス氏の変化のきっかけは→(鎌田)環境保護に関して数値が必要になり、自分で勉強していて、組換えの数値をみたら気づいたようだ。遺伝子組換えに慎重だった生態学者が、放射能汚染を調べるようになって、世の中では科学は理解してもらえない苦労がわかったといっている。
    • 研究者は反論をしないというが→科学者は自分の研究が否定されるのでなければ、反論しなくてはならないという自覚がない。(鎌田)
    • 合成洗剤への誤解を解く運動を協会としてきたが、そこに人々はアクセスしてこない。アクセスしやすくするようにするのが大事だと思う。
    • 記者は自ら訂正記事は出さないので、あの記事はおかしいという記事が他から出るのがいい。
    • メディアのメディア 分野別にどの記事のどこがおかしいという一覧がみられたらいい。他社の間違いが分かる。
    • ネオニコチノイド系農薬で蜂が死ぬという報道を記者は判断できないといわれた→ネオニコが欧州で使用禁止になったことで、ハチが死ぬからだと関係づけるだろう。実験に不備ありと科学的に批判しても、動物実験でがんになった事実は市民にどう受け止められるか。ニュースはどちらかに肩入れするかよりも、それを取り上げるというところに大きい価値判断が働く。
    • まちがった報道を堂々と繰り返すメディアがある→本人のイメージや主観の問題。そういう発言を繰り返す人は「趣味」なのだからまきこまれないようにするために知っておくことが必要!
    • アメリカには、科学者が間違った報道に対してコメントを出すしくみがある。イギリスやオーストラリアのサイエンスメディアセンターは反応が早い。日本でも設立されたが、スポンサーがなくて終わってしまった。間違った報道をただす活字媒体が日本にはない。
    • スポンサーがついてやることに中立はなく、メディアだから中立というのは戦略。
    • 自動的に入ってくる情報が多い状況の中で能動的に情報をとるのはハードルが高い。
    • 科学に参加するしくみは時間をかけてつくっていくしかない。 
    • 日本は文系優位の社会で、理系の人もあまり反論しない。サイエンスコミュニケーションでは、バックボーンのしっかりした人より、タレントのように話し方の技術を持っている人が目立つ。
    • 理系の人の給料をあげると、理系に社会が傾くようにする。
    • 組換えと放射線は注目をあつめる。
    • 北海道の条例に対し、学会で声明を出したこともある。学会は見解を出しにくい。
    • アメリカは変な科学論文がでると、学会はすぐに見解を出す。日本の学術会議は3年かかる。アメリカは有志だけで出すことがあるが、日本の研究者は公的機関に属していると組織内の調整が難しい。
    • 研究者に意見表明のマニュアルをつくってもらえたら、もっと研究者も情報発信をできるようになるかもしれない。

    グループディスカッション

    3つのグループに分かれて、グループディスカッションを行いました。

    第1班の報告
    情報発信側からの立場で話し合った。
    間違った新聞記事に物申すことは、企業の立場からは難しい。それぞれのメディアに対して何かを言えば喧嘩になってしまう。できるとすれば、マイコメントをウェブに上げるとかが限界であろう。またメディアに関しては、社会部と科学部では取扱いが違う。それ以前に最近ではデスクの方の能力が乏しくなっていると思われる。メディアに対して1つの企業、個人の立場では言いにくいので、できれば学会から公的立場で客観的情報を突きつけるといった働きかけが功を奏してくるのではないか。また教育現場でもなかなか科学的な議論になりにくいので、できるだけ事実を積み重ねながら地道にやってゆくことが重要である。最終的には「メディアのメディア」の形が良いのではと思っている。
     
    第2班の報告
    新聞記事が公平と思わない方が良い。公平であってほしいのだが、やはり企業というスポンサーがついているので、偏ってしまうのだろう。記事の誤りがあった時、研究者が個人的にタイムリーなコメントを出すのは、なかなか難しい。学会の中でいろんな意見があって合意を得るのが難しく、そのため時間も掛かってしまう。ならば、誰か新聞にコメントを出した時に、どこにどうアクセスしたらわかるのかが重要なことである。食の安全については、誤った情報をネガティブに信じてしまっている人がいるが、そういう人へのアプローチが難しい。クチコミで広まっている事象にどう対処するかである。最終的には「メディアのメディア」をどうするのかが重要である。我々がメディアを利用する(協力を得る)という方法もあるのではないか。
    第3班の報告 ・消費者意識で言えば、現状必ずしもGMが関心事ではなく、TPPの話が主流となっている。
    ・食の安全性に関する教育が構築されていない。先生への情報提供ができておらず、先生を介して間違った情報が増幅されている場面もある。
    ・「メディアのメディア」を設けるならば、信用される場でなければならない。企業色が出ないような工夫が必要。

    質疑応答

    グループごとの意見が発表され、小島正美さん、鎌田博教授から、まとめのコメントを頂きました。
    鎌田先生コメント
    誤った情報に対し、科学者からアクセスせよというのは、時間がなく、無理がある。ならば、アクセスできるマニュアルがあり、例えば石原氏のコメントにどうすればアクセスできてコメントできるのか、そのルートがわかればよい。また、食の安全性は、子供の頃に正しく理解してくれていないと何をやってもダメ。やはり、日本においては初等中等教育での構築が必要で、現状家庭科の先生がGMはダメだと信じ込んでいるベースがある限り前進はない。やはり、教育をなんとかしなければ…。
    先般、アルゼンチンに行ったが、とうもろこしは100%GMである。しばらく前までは、反対運動もあったが、国家としての必要性から、いつのまにか反対運動がなくなってしまった。農家のみんなでGMをつくることが国益に繋がるという意識が当たり前となってしまい、もはや反対運動も意味をなさなくなったと思われる。
    日本にとって遺伝子組換えはどういうものかという情報を周知したうえで考えていくしかない。日本の反対派はゼロにならないだろうが、正しい知識を伝え考える場が必要だと思う。メディアと上手につきあう方法がわかると研究者も発信するようになると思う。
     
    小島さんのコメント
    よく理解できる記者を集めていくしかないと思う。
    風しんワクチンの情報発信を、NHK、千葉大学の医師など5人くらいで戦略会議をやった。その会議が拡大して自治体、国会議員、タレントとひろげていき、ワクチンが足りなくなるまで普及した。やる気のある人が集まって本気で動けば、このようになるのだと感じた。