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観環居バイオカフェ「お庭の花を健やかに育てるコツ」

 2013年11月17日、観環居バイオカフェを開きました。お話は住友化学園芸(株)研究開発部草間祐輔さんの「お庭の花を健やかに育てるコツ~困った病気と害虫の対策」でした。観環居は3年前に総務省の事業の実験ハウスとして東工大、積水ハウスなどで建築された、環境に配慮したモデルハウスです。くらしとバイオは観環居で、これまでにバイオカフェやキッチンサイエンスを行ってきました。

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セキスイハウス 高田美紀さんによる開会 草間祐輔さん

お話の主な内容

植物の病害虫について知っていただき、ガーデニングのお手伝いをしたいと思っている。寄せられる質問を聞いていると、病気のようにみえても問題はないこともあり、症状の見方を知っていただきたい。
 
病気に発生に影響する3つの原因
病気は次に3つがそろったときに発症する。ヒトの病気と同じ。
・病原→病原菌やウイルスがいる場所で遭遇する。
・環境条件→病原菌やウイルスが増えやすい環境。
・植物の状態→栽培管理がよくない。ヒトなら体調がよくないとき。
3つの条件がそろうことがないように、一つ以上の条件が欠けるようにすると症状はよくなる。
さらに、病気の葉や害虫のついた葉を処分すると、病気の広がり、害虫が増えるのを防げる。
 
よくある害虫の被害
・ツバキのチャドクガ
チャドクガは幼虫、卵、脱皮した抜け殻に触れてもかぶれる。触れてしまった時は患部にガムテープをはり、毒針毛(どくしんもう)を取り除く方法がある。着ていた服はお湯につけて毒針毛(タンパク質)を変性させてから洗濯すればいい。
チャドクガは5月連休のころに現れる。目印は葉が黄色く変色し、裏返すと越冬した卵から出た毛に包まれた幼虫が見つかる。幼虫は葉裏だけを食べる。このタイミングに長そで、手袋を装着して枝ごと切ってごみ袋に入れてしまえば100から200匹を駆除できる。殺虫剤を使わなくて済む。これはヒトと同じで、早期発見すればくすりを使う前の対策が効く。
・ウメのカイガラムシ
いろいろなカイガラムシがいるが、梅につくのはウメシロカイガラムシ。カイガラムシがつくと、排泄物で葉がテカテカする。排泄物に糖がふくまれるので、すす病菌がついて、ゲッケイジュの葉はすすがついたように黒くなる。
サルスベリの葉が黒く汚れるのはサルスベリフクロカイガラムシ。その排泄物で葉がテカテカし、排泄物の甘み成分にすす病菌がつき、すす病となる。
カイガラムシは脚が退化して動けないので、見つけたらブラシやヘラでけずり落とすと、地面に落ちて餓死する。これも殺虫剤を使わずにすむ方法。
ウメにつくタマガタカイガラムシは、4-5月ごろ、幹について茶色になる。カイガラムシの天敵のハチは空気が汚れているところに来ないので、ガレージの横などのウメで増えやすい。
イセリアカイガラムシはかんきつ類やミモザにつく。
・アブラムシ
1匹のアブラムシは、春から秋までメスしかいなくて、尾から小さいメス幼虫がでてきて、10日で成虫になり、また小さいメスの幼虫を産む(単為生殖)。寒くなるとオスが出て交尾をして卵をうみ、越冬する。普通に増え続けると秋には2億匹になる。
また、アブラムシは葉の上の存在密度が増すと、羽のあるアブラムシが生まれてきて他の場所に移動する。アブラムシは増えやすく、どこからでもくる。タイワンヒゲナガアブラムシは30年くらい前、偏西風に乗って台湾からやってきた。
アブラムシは黄色(トマト、キュウリの花)が好きだから、黄色の粘着テープをぶらさげて駆除することもできる。
殺虫と殺菌ができて、1か月アブラムシを抑えるスプレイタイプが適している。これは「浸透移行性」によって、有効成分が植物体内に入り1か月はとどまるためで、吸汁すると害虫は死んでしまう。
例えば、トマトに散布して3日たてば食用に利用できると書いてあることがある。これは医薬品と同じように安全性を審査しており、3日たてば食べても大丈夫な量まで減っていることを示している。
・ナメクジ
夜出て活動し、朝には光る道が残っている。夜の8時から明け方3時ごろまでが活動時間。光る道が途切れているのは、もと来た道を戻るため。毎晩8時に懐中電灯で庭を周りナメクジを見つけて退治することを1週間行えば、かなり減らせる。
ナメクジ駆除の薬剤を雨がふらない夕方にまくといい。ナメクジはグレープフルーツやバナナの皮、ビールが好きで集まってくる。少量のビールをキャップに注いでそれを地面と同じレベルに埋め込み、そこに駆除剤を加えておくと駆除できる。
・ヨトウムシ
蛾の幼虫で夜だけ出てくるので「夜盗虫」という。昼間は、落葉の下や土の浅いところにいる。ヨトウムシの食べ跡を見たら、近くの土の浅いところや落ち葉の下で3センチくらいの茶色の芋虫を見つけられる。ダイコンなどの葉の裏に成虫が卵を産むので、苗を育てるときに防虫ネットをかけるとヨトウムシやモンシロチョウに卵を産ませなくすることができる。ダンゴムシ、ネキリムシ、ヨトウムシ退治のために根元にまくタイプの農薬が適している。
・ダニ
マリーゴールドの葉が白くなることがある。葉の裏でダニが吸汁し、葉緑体がぬけて白く見える。ダニがついたら、葉の裏に水を霧吹きする(葉水)と、ダニにとっては大洪水だから卵を産まなくなる。
ダニの害がひどくなったらスプレイタイプの農薬を使い、ダニを退治する。また。観葉植物のハダニがヒトのアトピー性皮膚炎の原因になると心配する人がいるが、これは植物につくダニなので大丈夫。
 
その他害虫や病気
・ハモグリバエ 
絵描き虫といわれる。葉の中を動き回るので線が描かれている。線の先には幼虫がいるので、見つけてつぶす。
・ホコリダニ インパチェンスの葉が縮んだりする。
・ドウガネブイブイ コガネムシのこと。温暖地域の緑色のコガネムシが増えた。
・ハイイロカビビョウ ペチュニアの枯れた花から入ってくるから、花がらは早く取り除く。
病原菌や胞子が広がらないようにすることが大事。また、病気のでやすい環境を改善する(剪定して風通しをよくする。場所を換えて日当たりをよくするなど)。
草花の葉が赤くなるのは紅葉で病気ではない。
ゼラニウムの葉が白く色が薄くなるのは陽ざしに強いための白化現象で、強い日差しに対応しているだけで病気ではない。


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「こんな葉を見たことはないですか」 会場風景

話し合い 
  • は参加者、→はスピーカーの発言

    • バラの病気→殺菌剤で病気が出る前から予防。耐性が出ないように3種類の殺菌剤を10日に1回ずつ、交代に散布する。
    • バラを鉢植えで育てている。花が長い枝の先にしかつかない。キンモクセイの上部には葉がつかない。 →様々な要因がある。鉢植えは根のスペースが限られているので、適当な高さに剪定する必要がある。鉢にみあった葉や根の量、高さがある。バラは花のあとに剪定し、わき芽を育てる。10年たったら、鉢からだして、3分の1の根を切り、土をいれかえる
    • 柿の葉に黒い斑点が出て実がならなくなった→柿の葉の斑点が出る病気で葉が早く落ちると、葉でつくられる糖分がたりず実ができなくなる。早めに殺菌剤を使って防除する。
    • 庭で使える除草剤はないか。 →ない。庭の木の下に使える除草剤はある。大事な植物にかけないように注意する。有効成分は土中ですぐに分解する。
    • 5月から6月頃、モモの葉が虫食い→ハモグリバエが疑われる。葉の外にはでないので、浸透移行性のくすりがいい。