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アグリバイオカフェ「生産者が語る、おいしい野菜の作り方」を開きました

 2013年11月19日、三鷹ネットワーク大学と共催でアグリバイオカフェ(協力 社団法人全国農業青年経営者会議)を開きました。お話は株式会社しゅん・あぐり 代表取締役社長臼倉正浩さんによる「生産者が語る、おいしい野菜の作り方」でした。臼倉さんがつくられたプチトマト、コマツナ、カブ、ブロッコリーの試食があり、楽しく、おいしい一時となりました。

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臼倉さんのお話 会場風景1
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アヤメユキ(カブの品種)、コマツナ、
ミニトマト、ダイナマイトブロッコリー
本日のメユーは「コマツナの塩もみ」「カブのスライス」
「ミニトマト」「茹でたブロッコリー」

お話の主な内容

はじめに
農学部卒業後、実家の農家で農業を始めたところ、1年目の売上が200万円で、農学部を卒業した意味がないと思った。お金がとれる農業をしようと、いろいろなことを試みた。根つきのコマツナを束ねる手間を省きたかったが、根がないコマツナはコマツナでないといわれ、きれいに束ねる技術習得に時間がかかった。当時は「せり」だったので、見た目が重要視された。そんな中でコマツナを袋詰めで出すことを始めた。
親世代は自分の土地で家族経営がいいと思っていたが、私は規模を拡大したかった。家を出て、裸一貫で土地を探し株式会社を設立。今は実家にも協力してもらっている。
 
おいしい野菜とは
甘みがあり、外見がみずみずしい野菜をおいしいという人が多いが、実は鮮度が重要。収穫後、野菜の甘みは時間とともに減少する。だから農家の人はうちの取れたてのエダマメが一番おいしいという。お湯をわかしてから収穫に行け!というぐらい鮮度は大事。
おいしい野菜は健康に育つ!ヒトの健康で考えると、元気で顔色がいいこと。植物も病気にならないことが大事。
水分量も重要。節の間が長すぎると実に栄養が届かず水っぽくなる。トマトの原産地はロッキー山脈で水が少ない場所。だからトマトの葉に毛が生えていて空気中の水分をつかまえる。トマトには水やりを1回にして、枯れる寸前まで水をあげない方がおいしくなる。
人は病気予防のために何をするか。運動、バランスのとれた食事、睡眠。それでも病気になったらくすりを使い、病気予防にサプリを使うこともある。病気になったときに薬をのむが、くすりはだろうか。毒は体に害を及ぼすが、砂糖も使いようでは毒になる。
私は、特別栽培(有機栽培の一歩手前)をしており、農薬は少なくしている。私は自家製のの有機肥料と堆肥を使い、薬散は1回。しかし、JAS有機をとるつもりはない。ビジネスとして欠品しないことを優先しているので、もしも天候などによりJAS有機の基準内で納まらない農薬を使ったときにも納品できるようにすることを優先する。
 
農薬は量が重要
農薬のイメージというと枯れ葉剤の印象が強く、毒だと思っている人が多いが、日本の農薬はすごく安全になった。問題は量。散布後に土壌に残ったり、体内に残ったりすることが危険視される。つまり、農薬の残効性。除草剤は数時間で植物体内にとりこまれると、土壌では分解が始まる。駐車場用の除草剤は少し残効性があるものもあるが、食べる作物用はかなり安全。
私たちは農薬散布のとき、マスク、長袖などを着用する。少し口に入っていると思うが、健康被害はない。正しく使っていれば、農薬による害はない。農薬には、散布回数、収穫前のいつまで使っていいかなどの使い方が瓶に書かれていて、指示に従って利用する。市場では抜き取り検査をして残効性を調べる。2週間前まで使っていい農薬を3日前にかけたら、基準値を超えてしまう。
しかし、農家の平均年齢は65歳。農薬の用法は細かい字でよく見えないという生産者もある。一握りの人の不適切な農薬の利用で、生産者への不信につながるのは残念。多くの生産者は、農協の指導のもとでちゃんと栽培しているので、出回っている野菜は安全。
今日は、「毒は量が大事!」ということを覚えて帰ってください。
 
作物が健康でいるための環境づくり
人は蚊に刺されないように蚊取線香をつけたり、さされたら薬をつける。野菜も網戸で防虫したり、除草して害虫が増えないようにする。ビニールハウスのサイド、入口にネットをはって虫を入れず、農薬を余り使わなくて良いようにしている。
野菜には施設栽培と露地栽培がある。私は露地栽培で小トンネルにネットをはる。ネット代はかかるが防虫できる。ネットは5年位使えるので、農薬の量が減り、農薬散布の作業が楽になり、3年で初期投資はとれるだろう。
 
肥料
人間も食べすぎがだめなように、植物も過剰な肥料はよくない。元肥(種まき前に土に肥料まぜておく)がいい。
植物の栄養というとリン、窒素、カリウムというが、発芽時に窒素はいらない。種には発芽と発芽後のための栄養は蓄えられているので、むしろ窒素は発芽抑制をする。保育所でプランターにコマツナを育てているが、こどもたちが肥料を大量にまぜ、コマツナの種もいっぱいまく。その結果、肥料が届かなかった所の芽がでる。野菜の苦みは窒素によるので、収穫前に土の窒素がなくなる位がいい。私は余分な窒素をあげない努力をしている。
コマツナの場合、甘くするには真冬につくる。コマツナは植物体が凍らないように水分を糖分で置き換えようとするから。このために真夏につくるコマツナに甘みは出せない。せめて窒素を減らして苦みをなくす。
おいしくするには追肥(発芽後にあげる肥料)がよい。肥料は月に1回。植物の近くに大量に与えるのはよくない。根が肥料でやけてしまう。肥料は遠くにあげて、植物に根を伸ばして肥料を探させる。根が張るとよい植物になる。作物から20-30cm離して肥料を与える。肥料を葉から吸収させる「葉面散布」より、根(植物の口)から食べさせる(取り込ませる)方がよい。根から取り込む液肥も少し離れたところにまく。
植物の成長には栄養成長と生殖成長がある。実を食べるものは生殖成長で、成長期のキャベツのように成長期を食べるものを栄養成長という。窒素は栄養成長に大事で、リン酸、カリウムは生殖成長に必要。ナス、トマト、枝豆のように実をつけるものは、カリウムやリン酸を後から上げたほうがいい。肥料にはあげるタイミングと成分が重要。
 
水の役割
水は人の体の血液にあたる。水をあげすぎると味が落ちる。植物体が小さいほうが水が少なく甘く感じさせ、身がしまっている。こぶりなトマトは甘く感じ、味が濃い。
また水のあげすぎは根腐れを起こし病気になる。水のコントロールが大事。
ビニール栽培の利点は、水のコントロールがしやすく、農家の知識を活かせる環境にできる。農家の力のみせどころでもある。
 
まとめ「ちょうどいいかげん」
ちょうどいい「加減」か、ちょうど「いいかげん」か。化学肥料を嫌がる理由に人工的だからというのがあるが、有機肥料は微調整ができない。土にどのくらい成分が残っているかを調べないで、農協のマニュアル通りに入れると障害が出る。私の畑を見に来る生産者で使っている肥料の袋を見ていく人がいるが、肥料そのものより、使い方が大事だと思う。
肥料の主成分は土。肥料を入れすぎで植物体の健康を損なっては意味がない。化学肥料を詳細に分析して上手に使えたら、それこそすごいと思う。水耕栽培は植物体をコントロールしやすい「進化した形」といえるのではないか。
有機肥料がいいというが、植物は有機質をとりこめず、分解して無機質にしてとりこむ。有機質はじわじわ無機質になるので、発芽後に窒素が効いてくるのでタイミングがいい。しかし、有機質は発酵するときにガスが出るので、これは植物の根に悪影響を及ぼす。植物の特性を知らずに有機肥料さえ入れていればいいというのは間違い。生ゴミは腐って虫がわく。有機肥料も上手く使わないと虫もつきやすい。化学肥料を少しずつあげるほうがいいこともある。私はたい肥作りから行い、肥料も注意して使う。
有機のお米でおいしくないのは窒素過剰。有機質を入れるとおいしくなるというわけではない。有機肥料は分解に時間がかかりすぐに効かないので、「いいかげん」な使い方で大丈夫だから、「ちょうどいいかげん」と言った。基本的には肥料のコスト削減のため、あまりあげたくないと思っているし、畑のほしがっている成分もそれぞれ違うはずだと思う。
「ミスターサンチュ」というレストランを新大久保に開いた。焼肉のメッカに、「しゅん・あぐり」の野菜で食べる焼き肉店を開き、みなさんに食べていただきたいと思っている。また、農業の実態を知ってもらうために見学も受け入れている。


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参加者全員でテーブルを囲んで 新鮮なお野菜はそれだけでおいしい!

話し合い 
  • は参加者、→はスピーカーの発言

    • ハクサイをつくりたい → ミニハクサイは葉の根元が厚くなりすぎず、つくりやすい。
    • 猫に困っている → 猫よけは難しい。
    • 有機肥料は何をつかっているか → 魚系を使っている
    • コマツナはなぜ冬がいいのか → 凍らないように植物が糖を蓄え、あまくなる。私はひとつの苗から2本仕立てにしている。
    • F1種子を使うのか → 育てる効率をよくするためにF1を利用している。
    • 得意分野は → ブロッコリー、キャベツ、コマツナなどアブラナ科のもの。ブロッコリーは凸凹せず、芽の詰まったものがいい。
    • コマツナは1年にどのくらいつくるのか → コマツナを40日で育てるので、年に6-7サイクル。真夏を抜けば、4-5サイクルになる。
    • 市民農園で、ニンシク、ラッキョウ、ハクサイ、タカナなどを作っている。12平米でゴマが1升とれた。他の人が作らない作物を選んで連作障害を防ぎ、農薬を使わずに作りたいと思っている。
    • 家庭菜園で、コマツナ、ミズナ、ホウレンソウ、夏は夏野菜を作っている。長野の実家で通い農業を始め、サトイモ、タマネギ、ニンニクを作っている。
    • 勤務している保育所で、ベランダでゴーヤの緑のカーテンを作っていた。今日はとても楽しみに参加した。

    自分で栽培している人も、これからしてみたいと思った人も、こんなにおいしい野菜を自分でつくるのは無理だなと思った人も、臼倉さんのお話に共感することが多く、今度はミスターサンチュでカフェをしましょう!という声があがりました。