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第4回医食同源バイオカフェ「食と健康を総合的に考えるクセ」

 2013年12月1日、神奈川工科大学ITエクステンションセンターで第4回医食同源バイオカフェを行いました。お話は慶応義塾大学客員教授 柴崎敏昭先生による「食と健康を総合的に考えるクセ」でした。はじめに神奈川工科大学飯田泰弘准教授から同大の応用バイオ科学科におけるアクティブラーニングという取り組みについて紹介がありました。アクティブラーニングでは、学生が積極的に学び、行動を起こすことを奨励しており、バイオコンテストというバイオ教材作成や自主テーマ実験ポスター発表会などが行われているとのことでした。

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飯田泰弘先生のお話 柴崎敏昭先生のお話

主なお話の内容

はじめに
100歳以上が5万人をこえた日本。国民の5分の1が65歳以上。人はみんな健康で長生きしたい。私は、豊な人生を暮らすために高齢健康推進者(アンチエイジニスト)という提案をしたい。人間のかかる病気は4万種類あり、一見元気そうな高齢者でもかかるのは、高血圧、肥満などの生活習慣病、ロモコーティブ症候群(関節障害と骨粗鬆症などで患者数は400万人)、認知症である。また100歳以上で認知症のない人はいない。今日は、運動と食事を中心にお話します。
 
生活習慣病とメタボリックシンドロームの違い
日野原先生は、成人病は若くてもなるということで、生活習慣病(糖尿病、肥満、高血圧、脂質代謝異常)という提案をされた。日本の死因の第一位はがんだが、死因の多くを占める糖尿病、脳卒中、心筋梗塞などの生活習慣病で、がんとほぼ同数である。
高血圧とは、場所と時間をかえても上が140mmHg(収縮期血圧)、下が90mmHg(拡張期血圧)以上。原因は過剰塩分、肥満、ストレスなどで、脳卒中発症の予測指標になる。
糖尿病では、インスリンが枯渇して高血糖となり、微小血管症(失明など)、大血管症(足の壊死など)が起こる。日本には患者や予備軍あわせて2000万人位がいる。
 
脂質代謝異常症と動脈硬化症
コレステロールや中性脂肪が増えると、動脈硬化を起こす。太い血管でアテローム形成というこぶができて血管が狭くなる。
これらの疾患を俯瞰すると、顕著な肥満が全死因死亡と関連することがわかる。肥満はBMIが25以上。アメリカは25以上が69%だが日本は25%(25-35のほうが少し長生きするというデータも出ているが)。日本の死因第1位ががん、2位は心疾患。アメリカとは順番が逆なのは、アメリカ人はがんになる前に肥満による心疾患で死ぬ人が多いのではないか。
これらの疾病は、喫煙、高血圧、運動不足、高血糖などが要因なので、これらを努力で克服すると死ぬ理由はかなり減るのかもしれない。
 
加齢(Aging)とは
ヒトは80年に5回ほど、全細胞が入れ替わると考えられる。加齢で免疫能低下、臓器の機能が下がる。外傷(骨折)、感染症、認知症、皮膚疾患が起こりやすくなる。鬱にもなりやすくなる。
男性は加齢で中性化するが、女性は閉経後男性化する(例えば、女性ホルモンがなくなると痛風などの男性のかかる病気になりやすくなるなど)。
 
生体の細胞障害機序
体に入った酸素は体の異物を攻撃するが、過剰な酸素は活性酸素になって動脈硬化、がん、細胞障害、各種の病気を起こす。
活性酸素は、過酸化脂質(ポテトチップなどの脂肪を多量に含んだ食物)をとると増える。これに対して、活性酸素を除去するものとしてフコダイン(コンブ、モズクなど粘り気がある海藻類に含まれる)などが注目されている。
また、ポーラ化成工業㈱は、「見た目の若さと血管状態は相関する」という報告をしており、3歳若く見える人は血管状態がよく、8歳若く見える人は基礎代謝が高く、集中力があり、肌の保湿状態もよいとしている。
 
健康維持のための三原則

健康維持のための三原則は、適正な睡眠、適切な食事、適度な運動
普通の歩き方だと時速4キロくらいだが、パワーウォーキング(時速4マイル=6.4キロ)を取り入れると、運動効果が大きいといわれている。
食物摂取では、加齢で基礎代謝量はさがるので、若い時と同じように食べると太る。
炭水化物、タンパク質、脂肪は 6:2:2の重量比でとるといい。
高タンパクが重要で、若い時は牛と豚がいいが、50-60歳を過ぎたら、魚、大豆がいい。
ビタミンも重要なので、生野菜からビタミンCをとるのがよい。ビタミンA、ビタミンDは肉からもとれる。カルシウムは普通の食事で600mgはとれるが、牛乳とヨーグルト500mlで、合計して1000mg確保できる。
正しい食事は、朝しっかりで夕食は就寝3時間前までに軽くするのがいい。これは脂質の合成は夜中に行われるため。よくかんで、ながら食べをしないなどの注意も必要。
 
食塩:塩分摂取と血圧はよく相関している。ブラジルの原住民とエスキモーは食塩をほとんどとらず、動脈硬化が起こらない。厚労省は食塩9g以下としているが、WHOは食塩6g以下を提唱(アメリカ人は平均して9gはとっている)、米国循環器学会は3.75gを提唱している。アメリカ人は肉の加工食品(ベーコンなど)から塩分をとってしまう。米国の心疾患コストは4,000億ドルなので、国策としてさらなる減塩を奨励している。
カリウム:カリウム3gをとると脳卒中も減る。カリウム摂取は重要。
 
肥満
アメリカでは、肥満児対策で加糖飲料が制限されている。世界一の肥満国はメキシコで、その次にアメリカ、シリアの順で続く。
日本でも加糖飲料摂取で脳卒中やうつ病が増えているという報告もある。
加工肉(ベーコンなど)とバター過食は、男性の動脈硬化の原因になっている。
アルコールは飲める人はある程度のみましょう。
 
世界的な長生きする食事
心疾患によいのは地中海食といわれる。オリーブ油、ナッツ、魚介類、野菜は体にいい。主に糖尿病患者のためだが、糖質制限食も重要。
アメリカは医療費削減のためにサプリメントが推奨されているが、その合格条件は厳しい。日本でのサプリメントは美容ダイエットが中心になっているように思えるが、健康維持・増進に役立つ視点が強まるといいと思う。
 
運動
運動には、無酸素運動(呼吸せずに運動する。運動の5%をしめる)と有酸素運動(95%にあたる)がある。運動は肥満の弊害のすべてを解決するのでとても大事。しかし、無酸素運動は工夫して行わなくてはならない。
ウオーキングのときは、姿勢を正す。体の側面と全面でまっすぐであるかを調べてみる。側面の場合、耳介から糸をたらして、腰椎を通って前にまっすぐに下肢まで落ちていればよい。 
少し大股速歩で1週間に合計して150分歩く。
体操/ストレッチでは、きちんと背中を伸ばして座っていると、腰筋がリラックスして腹筋がはたらくために腰痛の原因になりやすい。
ストレッチにはラジオ体操が最適。「これだけ体操」という腰痛対策の体操もある。
蹲踞を20回、イス(キャスターなし)に座って片足での立ち上がりを5回、片足立ち(膝を直角にして)を1〜3分。
加齢とともに背中が曲がる。これは背中の筋肉が弱くなるからで、背中や胸の何種類もある筋肉に刺激を与えていないと痛くなったり、背中が曲がったりする。体を動かし、弱くなる筋肉を鍛えましょう。
 
健康の判断(確認の仕方)
適正体重が守られているか。食べた量と運動のバランスがとれているかがわかる。BMIは25未満。筋肉量は体重の30%。食塩は6g/日以下がいい。コレステロールを減らした食事にする。
三原則は、睡眠、食事、運動だが、具体的には、食塩を減らし、適正体重を維持すること!


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会場風景 長澤夏美さんのお話

5分間スピーチ「アイジェム(iGEM)のこと」
               神奈川工科大学 4年生 長澤夏美さん

「アイジェムは遺伝子組換え技術のロボコンといわれる。遺伝子組換え技術でオワンクラゲの遺伝子を入れた光る大腸菌をつくり、その生物の品評会を行う。大会事務所から遺伝子が届き、夏の間に遺伝子組換え生物をつくる。
例えば、北大は「最小の注射針となる大腸菌」、東京農工大学は「重金属を回収する大腸菌」、私たちは「コロニー(大腸菌の塊)に上にコロニを載せる大腸菌」を作ろうとした。
2012年は「がんを破壊する大腸菌」をつくり、地区大会で銅メダルをとった。日本の私立大学では、初の快挙だった。ガンを破壊するアズリンという物質を持った大腸菌が、がん細胞と結合することでがん細胞を破壊するというものだった。
2013年はアレルギーを治す大腸菌を計画したが、完成に至らなかった。
神奈川工科大学iGEM https://sites.google.com/site/kaitjapan/home

話し合い 
  • は参加者、→はスピーカーの発言

    • 遺伝子組換えダイズを食べたネズミにがんができたというNHKの番組を見てみてて、体によいダイズだが、食べるのがこわくなった → 日本には遺伝子組換えダイズが輸入されている。医薬品は試験管内で、マウス、サルなどの動物、ヒト、患者と試験をして作られる。ラットにも種類があるので、この実験ではガンになりやすいマウスを使っただろうと予測する。その番組の意図がわからないが、ダイズ以外の飼料も食べさせるべきだし、動物実験から人を予測するのはおかしいのではないか。
    • 減塩しているが、実際に摂取している食塩量がよくわからない。血圧の推移で判断するしかないのか → 血圧は気候などでも変化する。食塩摂取量は、普通は尿中のナトリウム排泄量で測る。摂取食塩のうち排泄されるのは30%といわれる。食塩摂取量の調査もこの方法で行われている。6g以下のクリアには、家庭用の食塩濃度測定器もある。
    • そばやでつゆをそば湯で割って飲むときは半分残すとか、天ぷらは薄味でするなど、普段から自分の味覚を薄味にするのがいい。
    • ピロリ菌は除去したが委縮性胃炎といわれた → これはなおらない。なるまえに除去するとよかった。食事などピロリ菌に関係しない生まれつきの委縮性胃炎がある。
    • 検査の前に食事に気をつけたら、かえって血圧が高くなってしまった。血圧はストレスで上がりますか → 上は120-139くらいが正常。メンタルは影響するはず。
    • どのくらい歩くのが望ましいのか → ただ漫然と歩いているだけはだめ。10〜15分間、時速3.5Km/hで3〜4回歩くのも血糖値にはよいというデータは出た。コマ切れもよい。
    • 一気に長くやっては負荷がかかる ジムに1週間1回通って、頑張るのはよくない。筋肉、間節は少しずつ鍛えていくことが大事。
    • テレビ体操はどうか → 運動にはエネルギー消費とストレッチの役割があり、体操はストレッチに役立つ。
    • 水泳はどうですか → 関節を守りながら運動できるので、水泳、自転車はいい。
    • 野菜は、加熱して容量を減らせば多く食べられるというが → 野菜摂取の目的であるビタミンCは、1分ゆでると半減する。ミネラル摂取のためには、生野菜がいい。温野菜は便秘対策に繊維をとるためならいい。電子レンジだと、煮こぼしがないのでカリウムを逃がさないですむ。