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北見で栽培中の組換え大豆畑の見学記(開花前に処分)
元気に育つ組換え大豆と除草剤で枯れた雑草 〜「くらしとバイオプラザ21」
 スタッフのレポート〜

 7月28日、国内で1ヘクタールも遺伝子組換え大豆を栽培している角田農場(北海道・北見)を見学に行きました。この日は、栽培中の遺伝子組換え大豆畑を耕運機で耕しながら、遺伝子組換え大豆を粉砕・攪拌して土壌に入れ込んでしまう「すきこみ作業」が行われるというので、網走市役所、ホクレン農業協同組合連合会、日本モンサント梶A北海道立北見農業試験場などからあわせて10数名が集まりました。
 現在、日本には遺伝子組換え農作物の花粉が飛ぶことによる環境への影響に懸念を持つ消費者も多いので、開花前に作物を処分することを条件に、日本モンサント鰍ゥらバイオ作物懇談会(遺伝子組換え作物などバイオ作物栽培に取り組む農家600人のネットワーク)を通じて角田農場に種子が提供されました。今回栽培されたのは「ラウンドアップレディ大豆」といって、「ラウンドアップ」という除草剤をかけても枯れないように遺伝子を組み換えられた品種です。

1. 角田さんのお話
 今回の目的は「ラウンドアップ」で除草ができ、大豆が枯れないことを確認することでした。7月初めに除草剤をまき、その効果をこの目で確かめることができました。今日処分してしまって収穫はできなくても、十分に目的を果たすことができたと考えています。

除草の苦労
 北海道の農家では、雑草が生えると農作物の収量が落ちるという、明らかな被害を実感してきました。今までは、栽培している農作物に余り効かない種類の除草剤を選んで何回か散布してきました。たとえば双子葉植物(双葉がでる植物、ジャガイモなど)の農作物を栽培しているときには、単子葉植物(双葉が出ない植物、ヒエなど)の雑草にだけ効く除草剤をまいたり、複数の除草剤を組み合わせて用いるなど。それでも肝心な農作物にも除草剤の効果が出てしまい、除草剤散布後は農作物も弱り、成長が遅れたり、後々、斑点の出る病気になりやすくなったりして、結局は収量が落ちてしまいます。ですから育ちが悪いときには、使用した除草剤やその量をさかのぼって考えてみるようにしています。
近くのトウモロコシ畑(どれがトウモロコシがわからないほど背の高い雑草が生えている) 農作物の種類によって異なりますが、農作物には病虫害に弱い時期があります。除草剤耐性農作物はその時期に除草剤の障害を受けないので、今日すきこんだ大豆の収量もこのまま収穫まで栽培すればきっとよくなったことだろうと思います。
 日本の農業は除草剤なしにはやっていかれない、という事実を消費者にわかってもらうべきだと思っています。畑の規模から考えて除草は人や機械でできるものではありません。
安全性
 遺伝子組換え大豆の安全性については、食品としての安全性は厚生労働省、環境への安全性は農林水産省が行った安全性審査の結果のとおり、問題はないと受けとめています。

農作物の除草剤への耐性
 ラウンドアップをまいた後も、遺伝子組換え大豆がずんずん生長することに驚きました。1回散布した所と、2回散布して倍量使用した所とを比べてみても、大豆の元気は変わりませんでした。

見学者と報道
 種まき、除草剤散布前、除草剤散布後、すきこみの時など、多くの農家、農業普及センターの農業普及員、マスメディアの人達が見学にやってきました。いくつか新聞などでも報道されました。農業従事者は顕著な除草効果に驚いて帰っていきました。自分としては国が認可したものを耕作してどうしてこんなに注目されるのか、不思議な気持ちがしています。

角田さんの感想
 農家として除草効果と組換え大豆の生長を確認でき、よい経験ができました。人的ネットワークも広がりました。除草の苦労がこれだけ楽になるなら、除草剤耐性を持つビートやジャガイモができたらどんなにいいだろうと家族で話しました。このような除草をはじめとする農業の実態を、消費者に理解してもらいたいと思います。組換え農作物なしに今後の日本の農業は考えられないことを消費者に知らせていくべきだと思います。除草剤耐性農作物は北海道の農業、大きく考えれば北海道の経済を変える可能性を持つものだと思っています。

2.浅野先生(北海道大学農学部)のお話

除草剤の働き
 植物は体内で生育に必要なアミノ酸をすべて合成することができます。その代謝回路をとめることで植物を枯らしてしまうのが、ラウンドアップという除草剤の仕組みです。この除草剤は土壌で短期間に水と炭酸ガスに分解するので、土壌に残留して他に影響を及ぼすことはありません。

3.「くらしとバイオプラザ21」スタッフの感想

 〜組換え大豆のすきこみを見学して〜
組換え大豆を耕運機ですきこんでいるところ 角田さんの畑には「雑草を仇と思っている」といわれる奥さまのご努力で、見つけるのが難しいくらい雑草がありません。この組換え大豆畑だけは効果を調べるために、雑草をわざと抜かないでおいたそうです。ラウンドアップの効果で、高さ20センチ弱くらいの雑草が所々、茶色く立ち枯れているのを見ることができました。大豆は背丈30センチほどに生長し、青々としてほんの一部つぼみを持つものもありました。
 30分もしない間に、角田さんの運転される大きな耕運機が往復しながら、1ヘクタール(幅が30数メートル、長さ270メートル)の畑の青々とした大豆を切り刻んで柔らかい土の中にすきこんでしまいました。あたりは一瞬にして青臭い若い草のにおいでいっぱいになりました。今日まで大切に栽培してこられた角田さんは、どんな気持ちで耕運機を運転していらっしゃるのでしょうか。
 消費だけをしている私達は、除草の苦労をはじめとする生産の現場を全く知らずに暮らしていることに気づかされました。消費者と生産者がお互いによく知り合い、話し合うためにも、このような現場での体験は大切だと思いました。






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