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「知ってる?育種の最先端」開かれる

 2015年5月17日、筑波大学の国際植物の日のイベントとして参加型トーク「知ってる?育種の最先端」が、筑波大学総合A棟で行われました。はじめにファシリテーター笹川由紀さん(NPO法人くらしとバイオプラザ21)から、クイズが出されました。それから、筑波大学 大澤良教授の話題提供があり、江面浩教授、佐藤忍教授、渡邉和男教授が加わってパネリストとなり、会場との全体討論を行いました。

国際植物の日のサイト

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大澤良教授の話題提供 YES・NOカードを掲げる参加者

クイズ1「農作物は自然なものでしょうか」
参加者のほとんどがNOカードを掲げました。農作物は人の手で品種改良を繰り返されているので、自然な野生種ではないとファシリテーターが解説しました。
 
クイズ2「4つの花の写真(ケール、キャベツ、コールラビ、カリフラワー)があります。この中に仲間はずれはあるでしょうか」
YES・NOカードを比べると、YESがやや多いようでした。
ファシリテーターから「この4つは、ブラシカオレラシアという同じグループで仲間外れはいません。ケール→キャベツとなり、根が大きくなったのがコールラビ、花がおおきくなったのがカリフラワー。全部の花が黄色で4枚に花びらの形だから同じ仲間であることがわかります」という説明がありました。


話題提供
          「知ってる?育種の最先端」筑波大学  教授 大澤良さん

栽培化とは
私は1年かけて「育種学」の講義をしているが、今日は15分でエッセンスを話します。
人間は自然突然変異を利用して人間に有益な作物・家畜を作ってきたと、ダーウィンは「種の起源」の中に書いています。彼は「作物とは、野生種が巨大化して過食部分が増えたものだ」と言っています。
手のひらくらいの大きさのハマダイキンが今あるダイコンになったり、小さなツルマメがダイズ、エノコログサがアワやヒエに、テオシンテ(トウモロコシの祖先。小さい実がつく)がトウモロコシとなるなど、巨大化していることがわかります。
育種と混同されやすいものに栽培化があります。栽培化とは野生種が作物になることで、それは巨大化することでもあるのです。
 
消費者のメリットと生産者のメリット
イネには3.2万の遺伝子があり、野生と栽培種の遺伝子を比べると、300か所くらい異なる場所(変異)があります。トマトには3.5万の遺伝子がありますが、栽培化された後、色、大きさ、形が改良されてきましたが300-1000個の遺伝変異が利用され、トマトの多様な品種がスーパーマーケットに並んでいます。このようなメリットは私たちにもよく見えます。イチゴにもいろいろな名前のものが登場していて、品種改良のメリットがみえやすいです。これに比べて、イネの変化は小さくて地味で見えにくいものです。
耐病性は、消費者には色や形の変化のようには見えませんが、生産者には利点です。いろいろな色のカリフラワー、橙色、緑のカリフラワーの彩りは消費者メリットです。
また、消費者にとってブロッコリーは1種類にみえますが、栽培時期が異なる多様な品種があるお陰で一年中食べられるようになっています。1年中食べられることは消費者メリットで、言い換えれば、いつでも作れる「生産者メリット」でもあります。
熊本1号、熊本2号ができるなど、北海道と九州のお米がおいしくなりました。高温に強く、暑い場所でも栽培できれば、消費者にとって、温暖化する前と同じように米を買えることが消費者メリットといえます。
遺伝子組換えで作られた除草剤耐性作物も、品種改良の成果のひとつです。同様に遺伝子組み換え作物の害虫抵抗性トウモロコシは生産者には大きなメリットですが、消費者には見えにくいメリットです。
 
育種技術の重要性
品種改良ではこれまでの作物に変異を引き起こす必要があります。その方法には、交雑、遺伝子組換え技術、ゲノム編集などの技術があります。交雑育種ではひとつ品種が世に出るまでに平均して20年ほどかかりますので、育種の期間の短縮は非常に重要です。
品種改良をするとき、耐病性に関わる遺伝子、収量に関わる遺伝子、味や栄養に関わる遺伝子が「鍵」になることがわかってきました。結果からさかのぼって、品種改良に関係していたのはこの遺伝子だったと、解明されてきています。同時に遺伝情報を使って品種改良がうまくできるようになってきています。メンデルの再発見から120年。近代育種は遺伝情報を利用して行われています。収量増加など、さまざまな食料に関する要望に応える縁の下の力持ちが育種技術です!いろいろな場所で栽培できること、毎年安定して食べられること、いろいろな種類の作物が食べられること、安全な食物が手に入ること、これらはすべて育種技術に支えられています。早め早めに研究や開発を始めなくては意味がありません。温暖化のために九州で稲作ができなくなってから高温耐性の米を開発するのでは遅いのです。


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パネルディスカッション パネリストの皆さま

パネルディスカッション

大澤良教授、江面浩教授、佐藤忍教授、渡邉和男教授が登壇しパネルディスカッションを行いました。新しい育種に関するパネル発表のコーナーで「どんな作物があったらいいと思うか」という参加者の意見を集めました。23名からのリクエストカードをもとに話し合いをしました。
 
リクエスト1「金がとれるイネがあるといいと思う」
佐藤:金を集めるには、金が土中に予め埋まっていなくてはならない。金が溶けている溶液の中で金を集める遺伝子をもった藻類をつくって育てるのはできそうな気がする。
鈴木:藻類だとできるかもしれない。
笹川:金以外で特定の物質を集める植物はありますか
渡邉:十字花植物は汚染土壌の浄化に利用する。カドミウム、コバルトを集める研究は行われている。金属を集めるにはダイズが向いているが、大豆アレルギーも配慮しなくてはならない。
参加者:植物は金属中毒にならないのか。
佐藤:輸送体を操作すれば植物が金属中毒にならないようにできるのではないか。
江面:特定な物質を集めるのはその輸送体があればできるはず。根から上には重金属が来ないようにすれば、重金属を含む土地で食物になる作物ができる。シダ植物に金属を濃縮させて刈り取って浄化するという研究もある。刈り取ったものの処分費がかかったとしても、物理化学的手法よりコストが安くなり、作業も簡単。
 
リクエスト2「モヤシやキュウリに栄養を持たせることはできるか」
江面:モヤシの種を暗いところで発芽させるとギャバというアミノ酸を貯める。ギャバには降圧作用がある。トマトにギャバをためさせて、高血圧ネズミに食べさせたら血圧が下がった。キュウリの9割は水。ウリ化の野菜には利尿効果がある。食品の栄養機能がわかってきているので、一見、栄養がないように見えても機能が見つかったりする。
ファシリテーター:栄養価の高い胡瓜の品種はあるか。
渡辺:東南アジアのウリにはメロンのようなキュウリもある。在来品種からはいろんなものが出てくる。
 
リクエスト3「食べても太らないお米があるといいです」
佐藤:コンニャク成分を持つお米ならカロリーが低い。
大澤:消化しにくいデンプンを持つお米をつくれば吸収されない。野菜に主食なみのカロリーを持たせるか。
江面:デンプンを食べる。野菜の繊維。
大澤:人間がセルロースを消化できるようになるというのもあるのか。
渡邉:植物はわかっているもので8万種くらいあるが私たちが食用にしているのは1000種で利用できていないものが多い。アワは低カロリー高タンパクで見直されている。食べ方の考え方では30種類の食材を食べるとバランスがいいとされているが、利用できていない作物の種類はずっと多い。90億人を支えるためにはどんな方向性が必要かを考えなければならない。
大澤:単位面積当たりの収量は伸すのが大事だが、単位面積当たりの収量はかなりいいところまですでにきている。害虫、病気、環境でのマイナス要因を減らす方が有望だと思う。
江面:食糧問題には流通の改善も必要。日持ちの悪い野菜は3-4割を廃棄している。今の生産量で捨てる量を減らすのもいいと思う。藻類が食用になるという考えもある。

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「知ってる?育種の最先端」パネル展示 参加者からのリクエストカード