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  • 科学ジャーナリスト賞が決まりました

    2020年6月6日、日本科学技術ジャーナリスト会議(JASTJ)はプレスセンターで「科学ジャーナリスト賞」の選考委員会を開き、2020年度受賞作品を決定しました。賞の候補となった作品は、新聞3、映像13、書籍50、ウェブ3、企画・展示4の合計73作品でした。ここから1次選考で選ばれた、新聞2、映像3、書籍4、ウェブ・企画・展示2の合計11作品に対して、選考が行われました。新型コロナウイルス感染症予防のために、間をあけて委員が着席し、遠隔地の委員はオンラインで参加するなど、審査委員にとっても初めて経験でしたが、とても充実した話し合いを行うことができました。毎年5月に行われております「科学ジャーナリスト賞」授賞式が行われませんので、最終選考会に参加したひとりとして、ご報告いたします。

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    選考会 会場風景(撮影 日本科学技術ジャーナリスト会議会長 佐藤年緒氏)

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    選考会 次第

    「科学ジャーナリスト賞」

    今回は、大賞該当作品はありませんでしたが、次の3つの作品が「科学ジャーナリスト賞」に選ばれました。

    • 新聞連載「南海トラフ80%の内幕(2019/10/20〜12/1、7回連載)」

      中日新聞編集局社会部記者 小沢慧一氏
      南海トラフ地震の発生確率は80%で、ほかの地域に比べて特にリスクが高いと思っている人は多いのではないでしょう。しかし、確率の算出方法がひとつでないこと、研究者によって必ずしも考えは一致していないこと、地震学の視点と防災の視点では対策の方向性が異なってくることが報告されています。読者は、自然科学の解明と科学行政の働きの違いを考えるという課題を、切れ味のよい刃物で切りこまれるように、突き付けられます。
    • 書籍「誰が科学を殺すのか 科学技術立国『崩壊』の衝撃」

      毎日新聞「幻の科学技術立国」取材班(代表・須田桃子)
      毎日新聞に長く連載されている「幻の科学技術立国」の取材班が、再検討、加筆し、書籍としてまとめました。多様な分野の多くの人に取材し、詳細な調査をもとに書かれており、一昨年度も、新聞記事として高く注目、評価されていました。
      基礎研究が重要だという提言があちこちで行われても、研究の現場はすぐに目に見える成果と社会への貢献を強く求められ、苦しんでいます。日本の科学研究の現場は危機的状況にあることが、説得力をもって述べられています。
    • 書籍「ルポ 人は科学が苦手 アメリカ『科学不信』の現場から」

      読売新聞東京本社編集局科学部次長 三井誠氏
      アメリカで行われている進化論を否定する人たち、地球温暖化に懐疑的な人々の活動、それを裏付ける宗教や考え方が、実際に現場の声が丹念に拾われて、紹介されています。また、最近よく取り上げられる確証バイアス(人は事実や根拠よりも、自分の初めから持っていた信念に沿った情報を集め、その結果、自分の信念をサポートする情報に囲まれることになる)など、“人の持つ考え方の癖”について触れられており、リスクコミュニケーションに関わる者に大きな学びをもたらす作品です。

    「科学ジャーナリスト賞特別賞」

    ウェブ展示「科学映像館」の取り組み http://www.kagakueizo.org/

    NPO法人「科学映像館を支える会」理事長、明海大学名誉教授 久米川正好氏
    貴重な科学映像作品をデジタル化し無償でウェブ公開する、地道な取り組みに対して、選考委員会は大きな敬意をもって「特別賞」を贈ることを決定しました。1,102作品におよぶ映画作品がより広く配信されるように、多くの人にこの価値に触れていただきたいと思いました。

    科学ジャーナリスト賞 一次選考通過作品から

    一次選考通過作品はどれも魅力的な作品で、審査員一同、悩ましい思いをしました。ことに、以下の作品が素晴らしいと筆者は思いました。

    • 新聞連載企画「気候変貌 とちぎ・適応への模索」(横松敏史氏 下野新聞2019/1/1~6/13、随時掲載)栃木県における気候変動について、膨大な取材を黙々と積み上げて考察されており、読む者に「自分にとっても温暖化対策」を考えさせる説得力がありました。
    • 書籍「手でみるいのち〜ある不思議な授業の力」(柳楽未来氏 岩波書店)では、視覚障害をもつ生徒たちが骨を触って生物、生命を学ぶ姿、この授業を生み出してきた教師の姿が感動的に描かれていました。
    • 映像「NHK首都直下型地震8日間の大キャンペーン全番組」(2019/12/1〜12/7 井出真也氏ほかNHK)は、数日間にわたって、地震に見舞われた首都とそれを報道する放送局が仮想的に設けられるという前代未聞の試みです。観る者に地震が起きたらどうなるのかを自分のこととしてリアルに地震、防災を考えさせようという強い、制作者のメッセージを感じるものでした。
    • WEBサイト「まてりある’s eye」(小林隆司氏 物質・材料研究機構)は、同機構の研究者が子どもたちに科学の面白さを伝えようという熱いメッセージがいっぱい詰まっていました。3月からは休校中の子どもたちにこのサイトは多くの元気を与えたことと思います。 

    <科学ジャーナリスト賞選考委員(50音順、敬称略)>

    〔有識者委員〕

    相澤益男(国立研究開発法人科学技術振興機構顧問)
    浅島誠(東京大学名誉教授、帝京大学特任教授)
    大隅典子(東北大学副学長)
    白川英樹(筑波大学名誉教授)
    村上陽一郎(東京大学名誉教授、国際基督教大学名誉教授)

    〔JASTJ委員〕

    大池淳一(JASTJ理事)
    佐々義子(同)
    滝順一(同)
    林勝彦(同)
    元村有希子(同、選考委員長)

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