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  • バイオ基礎教室:野菜からDNAを抽出してみよう

     DNAとは生きものの遺伝を支配している遺伝子が含まれる物質です。DNAは私たち人間を含めて、すべての動植物を構成している細胞に含まれる細胞核の中にあります。ここでは家庭で手に入るものを使って、野菜からDNAを取り出す簡単な実験を紹介します。

    洗剤が入っているので、ここで作った物は絶対に食べたり飲んだりしないで下さい。

    実験に使うもの

     この実験では、家庭にあるもの、あるいは、100円ショップ、スーパーストア、薬屋さんで購入できるものだけを使います。

    器具と薬品
    1 器具と薬品

    器具

    • すり鉢とすりこぎ
    • メジャーカップ (約200mlを量り取るためなので普通のコップでもよい)
    • 計量スプーン (普通の大さじ、小さじでもよい)
    • 茶こし
    • 透明プラスティックカップ数個 (できれば小さい物。普通のサイズでも可。ガラスコップでもよい)
    • 割り箸か竹串
    • 包丁かナイフ

    薬品

    • 野菜、食器洗浄用洗剤 (除菌などいろいろな効果のついていない洗う機能だけの簡単なものがよい。100円ショップのものなど)
    • 食塩 (高級品でなく、塩化ナトリウム以外の物質を含まないものか少ないものを使って下さい)
    • 消毒用エタノール (薬屋さんで売っています)

    DNAを抽出する材料

     いつでも手に入り、扱いやすい材料はブロッコリーです。なるべく新鮮なもの。学校などで実験する場合は冷凍保存しておくとよいでしょう。タマネギからもとりやすい。DNAは通常、細胞中1個の細胞核に含まれるので、細胞が小さい方が全体の細胞核の数が多い。ブロッコリーの花芽は小さく沢山あるので使いやすいのです。果物などは細胞が大きく液をたっぷり含み細胞核の割合が少ないので不向きです。ここではブロッコリーを例にして示します。

    DNA抽出液を作る

    メジャーカップに食塩を小さじ1.5杯(約7.5ml)、洗剤を小さじ1杯(約5ml)を入れて、水を加えて攪拌し200mlにします。やや、白濁した液になります。

    ブロッコリーをつぶす

    ブロッコリーをつぶす
    2 ブロッコリーをつぶす

    先の花芽の部分をその柄を含めて、むしるか、ナイフ、包丁でそぎ落とします。冷凍したものはむしりとり易いでしょう。茶こしに軽く1杯分をすり鉢に入れます(図2左)。

    何も加えずに、最初はすりこぎで押しつぶすようにして、すりつぶします。大きいすり鉢の場合、3分〜5分、15cm以下の小さい場合は力が入りにくいので、5分〜10分均等にすりつぶしてください(図2右)。大きいすり鉢の場合は、中身が少ないので、次の操作をやりやすくするため中身をカップに移すとよいでしょう。

    DNAを抽出する

    抽出液を加えて放置
    3 抽出液を加えて放置
    抽出物を濾す
    4 抽出物を濾す

    DNA抽出液を大さじ2杯分(約30ml)加えます。抽出液を加えたら、1度軽くかき混ぜ、その後は中身に触ることを避けてください(図3)。
    DNAは非常にもろいからです。

    5分ないし30分間放置した後、中身を茶こしに移します。緑色の抽出液が濾されて出てきます(図4)。

    DNAの沈殿を作る

    DNAの沈殿が現れる
    5 DNAの沈殿が現れる

    濾し終わったら、何回か実験するために、抽出された液を2、3個の透明プラスティックカップに取り分けてください。
    別のカップにエタノールを取り分けた液の約3倍量入れます。抽出液の液面近くの容器の壁に割り箸を付け、エタノールを割り箸を伝わらせて静かに加えて抽出液の上にエタノールの透明な層を作ります。

    放置しておくと下の液面からDNAの白い沈殿が浮き上がってくるのが見えます(図5)。

    DNAを巻き取る

    DNAを巻き取る
    6 DNAを巻き取る

    上手にDNAを抽出できた場合は、エタノールの液面に白い沈殿の塊ができるので、これに割り箸、竹串、楊枝などを静かに挿して回し、巻き取るようにするとねばねばした半透明のDNAを巻き取ることができます(図6)。

     液面から離し、しばらくしてまた沈殿を巻き取るようにすると多く巻き付いてきます。これが遺伝子を含むDNAです。この沈殿を含むエタノール層をさじなどで小さな瓶に移しておくとDNAを保存しておくことができます。
     DNAはきわめてもろいのでエタノールを加える前、あるいは加えたものを軽くかき混ぜてしまうと、細かく切れてもう巻き付きません。実験してみて下さい。うまくDNA沈殿が作れなかった場合は途中でDNAが千切れてしまった場合が多いので、すりつぶしからやり直し、抽出液を加えてからできる限り中身に触れずに静かに処理してみて下さい。

    解説

     DNAはカセットテープやビデオカセットの中のテープのような物だと考えて下さい。上に述べたようにDNAは細胞中の細胞核の中に仕舞われています。細胞や細胞核は油の膜に包まれています。そこで、先ず機械的に細胞をすりつぶして壊してから、抽出液を入れると洗剤には油を溶かす成分が含まれているので、これによって細胞や、細胞核の膜が壊れて、カセットからテープを引きだしたような状態になります。

     DNAのテープの巾はさセットテープの巾に較べると、とてもとても小さいので、カセットから引き出したテープを広場に置き飛行機から眺めているような感じで、肉眼で見ることはできません。しかし、数十万本のテープを山積みすれば飛行機からでもテープの塊が見えますね。そのような状態が最後のDNAの沈殿です。

     カセットのテープと異なり,DNAはマイナスイオンを持っていますので、隣同士のテープがマイナスとマイナスで反発して集まってきません。そこで、塩を入れて、プラスのナトリウムイオン、マイナスの塩素イオンを多くしてやるとDNA同士のイオンの反発が少なくなり、集まりやすくなります。

     それでも、水中では溶けていますが、エタノールには溶けにくいので、エタノールを加えるのです。するとエタノールに溶けにくいDNAが集まり沈殿ができますが、エタノール中ではこの沈殿が軽いため浮き上がってきて、DNAだけを集めることができるのです。

     研究用には、もっと洗練された方法でごく少量のDNAでも集めますが、原理は似たようなものです。自分で実験してみて、生きものにはどれにでもDNAがあるのだと実感してみて下さい。工夫すれば、他の植物や、ニワトリの肝臓などの動物組織などいろいろな生きものの部分からこの方法でDNAを取ることができます。

     カセットテープには何曲もの音楽が、ビデオテープにはいくつものテレビ番組が録音されたりして、それを利用できますね。DNAというテープにはいくつもの遺伝子という音楽、あるいは番組にあたるものが記録されて、生きものの記録を細胞から細胞へ、親から子供へと伝えているのです。

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