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バイオカフェレポート
「スギ花粉症の食べる免疫療法〜花粉症緩和米について」

7月28日(金)、茅場町サン茶房にて、バイオカフェを開きました。お話は慈恵医大の斎藤三郎さんによる「スギ花粉症の食べる免疫療法〜花粉症緩和米について」。
始まりは、馬渡郁美さんと西村泉さんによるフルート二重奏。ボッケリーニのメヌエットなど、耳慣れた曲にまじって、セバスチャンバッハの息子、エマニュエルバッハのソナタが演奏されました。


斎藤三郎先生の主なお話

3060mのある山岳ボランティアによって運営されている槍ヶ岳の診療所のマネージメントをしています。今年、この診療所は57回目の夏を迎えています。先週の豪雨の山から苦労して下りてきました。

参考サイト:第19回談話会レポート


フルートの演奏 斎藤先生のお話は、「山」から始まる


話し合い
  • は参加者、→はスピーカーの発言
  • ペプチド療法とは

    • アレルギーの引き金になるというペプチドを7種類、連結したときの長さは?→アミノ酸100個くらい
    • ペプチドは架橋を作らなくても、花粉が飛んでくると結局、架橋ができてしまうのではないか→ペプチドを投与するとT細胞の反応が抑制され、その結果IgE抗体ができにくいので、肥満細胞での架橋は起こりにくい。花粉症でない人はIgEがないために架橋されない。花粉に反応するT細胞もないため。
    • お米以外で、有用成分を作れるものはないか→葉の中に合成できるのもいいと考えたこともあるが、米は保存しやすい。葉は鮮度を保つのが難しい。しかしペプチドは乾燥、過熱に強いので葉の粉も利用できる
    • 花粉症のペプチド入り食品が普通に出回るのはいつ→医者を通じて出したいと思う。米だと安くできるが、スーパーに置きたくないと思う。それは子供など胃腸の粘膜の未熟な者も食べるかもしれないからで、医療機関を通じて出したい。対象になる人が多いので、素人の判断で子供に食べさせる人がいたら困る。
    • 作ったお米の次世代では、ペプチドの生成量は減ったりしないのか→安定しています。

    アレルギーについて
    • 年をとることと、アレルギーになるのは関係があるのではないか→感作はある程度、年齢にも関係があるかもしれない
    • ヨーグルトは花粉症に効くか→ヨーグルトを毎日食べていても花粉症には効かない。しかし、ヨーグルトで胃腸の調子はよくなるかもしれない。花粉症そのものに有効かどうかは証明がない。

    会場風景 「学生が、花粉緩和米を、“サイトウのコメ”というTシャツにデザインしてくれたんですよ」と恥ずかしそうな斎藤先生

    槍ヶ岳の診療所

    • 斎藤先生は山がお好きだということですが、槍ヶ岳の診療所はどんなことをしているのですか→診療所でドクターがいないときの遠隔医療のために、山と研究室はテレビ会議室でつながっている。
    • 診療所には何人くらいいるのか→最低3人で、ドクター、看護士と学生。無料奉仕で交通費も自腹。医者はヘリコプターで行くと思っている人がいるが、医者も下から登る。食料は小屋が提供してくれる。
    • 何人の医者がメンバーになっているのか→ドクターは20人くらいで交代している。山上では2−3泊するためには、途中の小屋で泊まって登る。病院を5日以上は休むのはしんどい。ボランティア休暇が認められるといいと思っている。診療所の仕事は社会貢献活動として考えてもらいたい
    • 医者なのに研究をしているのですか→医学部を出ていない(笑)。山岳部を卒業した。ヒマラヤに登ったことで、長く勉強することになってしまい、他の大学で免疫の研究室に行った。研究は山の世界と全く同じ。自由で、自分で考える世界は、山と同じだと感激した。私はいわば「ペーパードクター」だが、臨床につながる研究がしたい。研究の世界は魅力的。研究も山登りと同じで、とても難しく、何をしていいかわからない気持ちになることがある
    • 頂上がわからなくなるのですか→厳しい指摘ですね。研究は難しい道のり。今は花粉症緩和米の研究という山を登りはじめたのだから、どんどんのぼっていきたい。基礎研究が臨床につながるのが嬉しい。

    花粉症緩和米について
    • 安全性が重要だから、前臨床試験をしているというが、遺伝子組換え食品の安全性審査と比べてどちらが厳しいのか→花粉症緩和米では一般的な薬と同じような審査を踏んでいきたい。薬と食品の中間だが、しっかり慎重にやりたい。お米という作物を利用するのは、よくわかっていて便利だから、今後のためにも、最初の一例として大事に進めたい。安全性試験にやりすぎはないので、安全性をしっかりやりたい。まず動物を用いた前臨床試験を行う。
    • 一般に花粉症緩和米が出回るのはいつ→健康人対象の試験が18年度に行う予定。専門機関で少人数の健常人で観察する。効果はもっと後 第三者が行う
    • 花粉症緩和米の知的所有権は日本のもの→花粉のアレルゲンのアミノ酸配列は特許がとられている。あと1年で切れる。ペプチドは日本に特許がある→みんなに公開すべき。いろんな人が欲をかくと商品にならないので。
    • 花粉症緩和米を作るのに、いくつもの特許が関係していると思うが、遺伝子導入の特許はどこの国が持っているのか→マーカーフリーの技術の特許は日本が持っている
    • マーカーフリーとは→抗生物質耐性遺伝子を目印の遺伝子をはずす。→私たち研究者は素人の10倍くらいは一生懸命に考えて苦しんでがんばっていると思う。簡単に、「遺伝子組換えは使いません」といってしまうのはいかがなものか。研究者のアピールの仕方にも問題はあると思う。遺伝子組換えの研究者たちは、伝統育種により交配させた産物より遺伝子組換え作物の方が安全です、と言い切るので、これはすごいと思った。彼らに言わせると、交配によりどんな遺伝子が入ってくるかわからないが、遺伝子組換えでは何が入っているか分かっているので調べることが可能という。
    • 花粉症緩和米の価格は→お米なみの値段。
    • 加工したパック米は食品として出回るのか→医者を介して出る食品にする予定
    • 処方箋がないと入手できないのか→そうです。花粉症と診断された人に限定する
    • 透析の患者用の食事みたいになるのですね。→ そうですね。


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