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新津市教育委員会「新しい生物科学体験学習」
(2002年秋)が終わって


新潟薬科大学応用生命科学部  藤 井 智 幸
 一般新聞紙上で「DNA」「ゲノム」や「遺伝子治療」「遺伝子組換え植物」というトピックスが日常的となり、テレビ番組のタイトルに「遺伝子」という言葉が使われたり、経済人の口から「○○社のDNA」というフレーズを耳にするようになりました。DNAや遺伝子技術が身近になってきている時代の流れを感じます。このような時代背景から、2002年秋、「新しい生物科学体験学習」プログラムとして、中学校理科教員による中学3年生を対象にした組換えDNA実験が新津市内の6つの中学校で実施されました。中学校の教育現場で「教育目的組換えDNA実験(文部科学省)」が実施されたのは全国で初めてのことでした。
 新津市の教育関係者で、「新しい生物科学体験学習」プログラムについて最初に協議が持たれたのは、2001年10月20日のことでした。市学校教育課と市中学校校長会、新潟薬科大学応用生命科学部の3者が集まりました。新潟薬科大学では、その年の8月23〜24日に高校理科教員対象の組換えDNA実験講習会を実施した経験を既に有しており、教育現場での導入に当たっての問題点をある程度把握していました。まず、理科教員の研修の問題。これは新潟薬科大学応用生命科学部が担当し、会場は中学校理科室とし組換えDNA実験と併せて事前準備も研修することになりました。実施を念頭においてできるだけ現場で研修しようという意図です。今回の実験は組換えDNA実験の中では極めて初歩的なもので、米国の教育現場で広く使われている実験キットを使うこととしました。次に、キット以外の備品を揃える予算の問題。中学校にはオートクレーブも恒温槽もありませんので、新規購入ということになります。3セット購入して、2つの中学校で1つのセットを共用することにしました。結果的に、中学校の通常経費とは別枠の予算を用意していただくことができました。第3に、教育内容とのすりあわせ。中学3年生の第1学期で「細胞」および「形質」を学習するので、その後ということで実施時期は秋となりました。米国で実績のあるキットを使うのでマニュアル通りに作業を進めていけば予想された結果が得られるであろうが、教育的効果を上げるには事前に準備(学習)が必要という考えで一致し、実験も含めて6学校時間からなるプログラムが固まりました。第4に実験指導体制の問題。40人での実験を安全性を確保しながら行うには1人の理科教員ではなかなか困難です。実験の日にはチーム・ティーチングの形式をとり大学教員2名が実験補助者としてサポートすることが打ち合わされました。
 2002年2月26日に発表された新津市02年度予算案の中に、中学3年生対象の「教育目的組換えDNA実験」実施のための予算が盛り込まれ、市議会の承認をいただくことができました。
 中学校理科教員に対する講習会は、7月29〜31日に小合中学校理科実験室で行われました。キットのマニュアルに従って、培地の準備から形質転換実験、そしてオートクレーブによる滅菌まで一連の流れを実習していただきました。実験後、中学3年生に対して実施していくに当たっての問題点や課題について議論していただきました。

使う用語が中学3年生には難しすぎる。わかりやすい言葉に置き換える必要がある。
内容をすべて理解させるのは不可能である。減らさなければならないが、どう減らすか。
実験をどのように位置づけるか。ただやってみたというだけでは教育的効果は残らない。
キットの生徒用マニュアルはそのままでは使えない。テキストをどう準備するのか。

 中学校理科教員ならではの現実的な指摘がなされ、クリアすべき課題が明確になりました。また、中学3年生ですと大腸菌のコロニーを見たことがないので、スタータープレートも生徒自身で作成し、自分で育てた大腸菌に形質転換を施すようにすると実験に対する興味が増すだろうという建設的な提案も出ました。



 体験実習を終えた生徒の感想を拾ってみます。

・ 難しかった。神秘的だった。また、実験したい。楽しかった。光ってきれいだった。いいことをしたんだなあと思った。

・ ループを使った作業が面白かった。溶液をきちんと取れたときはうれしかった。紫外線に照らして発光したときはとても感動した。成功してうれしかった。

・ 何もかもが初めてで緊張した。薬品の分量調整に一番努力した。終わった時には感動した。3日間の実験で疲れた。まさに燃え尽きた。

・ 最初は難しい実験と思っていた。始まると楽しかった。実験が成功し、班員とも協力できて良かった。

・ 始めてなので緊張した大腸菌が育つのが楽しみだった。成功するのか心配だったが光ったのでびっくりした。頑張った分光った瞬間うれしかった。遺伝子組換えに興味を持った。

・ 難しいと思ったが面白かった。光った細胞がきれいだった。成功してうれしかった。遺伝子組換えに興味を持った。

・ 最初は見たことのない実験器具なので恐る恐る実験をしていた。内容が多くて大変だった。大腸菌がひかるかどうか決まるのでひとつひとつ慎重にした。光るかどうか心配でドキドキした。紫外線に当てると緑色に発光してうれしかった。とてもいい体験ができた。

・ 自分にできるのか心配だった。コロニーができるか心配した。次の日コロニーにいろんな薬品を塗ったり、冷やしたり、温めたりして発光するのが楽しみになってきた。緑色に発光して今までやったことが実ったと思い感動した。高校へ行く前に生物学が体験できて本当に良かった。

・ においが臭かった。光るはずのない大腸菌を光らせたのがすごく良かった。

・ 難しい用語が出てきたが、3日間やっていると内容が分かってきたのですごく良かった。一番の思い出は2日目の実験です。3日目はちゃんと発光しているのが確認できてとてもいい思い出ができた。

・ 不安だったけれど楽しかった。失敗するかと思った。光った時は感動した。普段体験できないことができて良かった。大学の先生がやさしくて安心したし、分かりやすかった。話し合いがうまくできてうれしかった。

・ いつもと雰囲気が違い緊張した。実験中に液体をこぼしてしまったが成功して安心した。失敗しても実験に参加していたしるしなので許してもらいたいと思った。3日目の実験では自分たちの班が一番多く光っていたのでうれしかった。遺伝子組換えは私たちの身の回りに深く関連していることも分かった。遺伝子組換えの意味も次第に分かった。

・ 絶対失敗すると思ったけど、実際にやってみて成功したことはとてもうれしかった。2日目はとても緊張した。時間をできるだけピッタリにするために気を抜けずとてもドキドキした。でも、3日目に大腸菌がちゃんと発光してくれて感動したし、うれしかった。もし、発光しなかったら実験が大嫌いになっていたと思いますが、成功したおかげで前よりも実験が好きになれてよかった。

・ 3日間に渡って遺伝子組換えについて説明や難しい実験をしましたが、こんな体験は二度とできないと思っています。説明はメモを取ったりでそれなりに楽しかったが、なんと言っても実験がとてもすごかった。薬品を入れて、また違うところに入れるとき、ループやピペットを全て変えなければいけなくて「本格的だなあ」と思った。しっかり班員と協力してできたと思う。しっかり発光してくれて良かった。

・ 3日間の実験は少しつらかったけど、とてもよい体験になった。寒天培地でコロニーを増やして作るので、ちゃんとできているか気になっていたが、できていて良かった。2日目の実験はいろんなことをやって疲れた。3日目は大腸菌が光るかどうか気になっていたけど、光ってよかった。本当にいい経験になった。

・ この組換えDNA実験をして色々なことを学んだ。微生物だからちょっと汚いイメージがありますが、今回使った大腸菌はいい菌だとわかった。人体に無害な菌を使うということと別に、大腸菌は色々な物質をつくるのに役立つことです。

・ 1日目の説明でどのような菌類が存在しているのか分かったし、バイオテクノロジーの歴史も少し分かった。大腸菌がどのように変化するのかも気になった。2日目、正確に時間を守りながらチューブを冷やしたり温めたりするのは大変だった。3日目、今までの努力がどうなるのか不安だった。結果は53個のコロニーが紫外線で発光したのでうれしかった。

・ 分かったことがいっぱいあった。聞いたことのない言葉が多かった。コロニーがあるプレートとないプレートがあった。紫外線に反応するものとしないものがあり、すごくきれいに光った。3日間貴重な体験をさせてもらった。

・ 紫外線に当てたとき光ってすごかった。もっと実験をしてみたい。難しい言葉がわかららなかったが、次第に面白くなってきた。

・ 増えた大腸菌を見たときには気持ち悪かった。実験は難しかった。紫外線を当て、きれいな緑にびっくりした。実験は難しかったが、最後に光ったときすごくうれしかった。

・ 遺伝子というのはとても神秘的でよくわからないものだった。とても楽しい授業だった。この経験を忘れないようにしたい。

・ 専門用語やその意味を知ることができ今後活用できたらいいと思う。ほんとうに発光するのか少し不安だった。本当に光ったので凄いと一瞬自分の目を疑った。実験は想像していたより分かりやすかった。

・ 最初は興味がなくてわけがわからなかったが、成功してよかった。楽しかった。ドキドキした。

・ 大腸菌がちゃんと光るか心配だったけれど、班のみんなが実験の手順を確認しあって頑張った。班の大腸菌がちゃんと光ってくれてうれしかった。紫外線に当てると緑に光ってすごくきれいだった。

・ GFPタンパクの入ったビンに紫外線を当てたら蛍光グリーンに変色したので驚きと感動をした。言葉で聞くのと見るのとでは全く違った。それを自分の手で成功させたらもっと感動すると思い頑張った。3日目に大腸菌の塊が見事に光り自分も班員もとても喜んだ。

・ バイオテクノロジーという言葉にすごく引かれた。実験が好きなのでこの日が楽しみだった。pGLOが既につくられていて心底の喜びはなかったが、いい勉強になった。白衣のおかげでとてもやりづらかった。

・ 実験をやる前はやる気がなかった。始めてみると面白くなってきた。班員が二人だったので大変だった。ひとつしか光らなかったけどいい体験ができた。

・ アラビノースを入れたら大腸菌が光ったことや、LB培地に塗っただけで数え切れないほどの大腸菌が生えたことが勉強になった。大腸菌を最初に見たとき表面に粒があったので僕はそれを大腸菌だと思いました。だけど大腸菌って顕微鏡じゃないとほんとは見えないんですよね。

・ 本当に光ったのですごいと思った。今の科学技術はすごいんだなと実感した。専門用語が少し難しかった。

・ 今まで細菌はとても小さいとしか知りませんでしたが、この実験の説明のなかで実は細胞壁があるのだと知りました。今までは何故人体には無害なのか不思議でしたが、抗生物質がどのように細菌に働くか知り、納得できました。今まで遺伝子組換え実験は、大学の先生が専用の研究室で行う、とても難しく一般の人にはわからないような実験だと思っていました。しかし、先生が用語やしくみを細かく、わかりやすく説明してくれたので、実験の準備を行っていくうちに、だんだんわかるようになりました。実験をし終わったときに手順は正しかったか、うまくできたか心配でしたが、自分たちで作った大腸菌が光ったのを見て、自分たちも形質転換実験を成功させることができ、少し感動しました。

・ 実験は好きなので楽しくできました。たくさん光る大腸菌が出来たときには本当に嬉しかったです。そしてこの実験で出来た光る大腸菌は人間に害が無くとも他の生物になんらかの影響が出てしまう恐れがあるため持ち出してはいけない、という事が勉強になった。

・ 自分の手で大腸菌形質転換をして、別の遺伝子を別の細胞に転換できるなんて最初は信じられない反面、本当にできるのかという不安がありました。しかし、実験をしてみるとそんな不安もなくなり、実験がだんだん楽しく思えるようになってきました。また、こういった実験を行う機会があるときには、この実験で学んだことを生かしさらにいろいろなことを、学んでいきたいと思っています。

・ 今までに聞いたことのないたくさんの用語や、作業があり、最初は形質転換がどういうことなのかということすら分かっていませんでした。しかし、今回の実験を通していろんなことが学べたと思います。また、オワンクラゲの遺伝子が作らせたタンパク質は、とてもきれいに光るということがよくわかりました。

・ ピペットなどの1回使った器具を洗って再利用せずに、1回1回捨てながら実験を進めていったことに驚きました。それだけ正確に進めていかないといけないんだなと思いました。次にすごいと思ったことは、全部終わった次の日にみんなで見た、光る大腸菌です。これを見たときすごく感動しました。光り方がすごかったです。

・ 今回の実験の様々な器具はとても扱いづらいものばかりでした。あと、実験に必要な用語を覚えるのも大変でした。全体的に難しかったけど、とても自分自身のためになり、すごくおもしろかったです。

・ 無菌操作のため机・手は70%エタノールで消毒する、実験中は出入り禁止などのきまりや、水槽を密封しているところを見てこの実験の厳粛さを知りました。

・ なにもわからずに始めた実験でした。でも、遺伝子組換え実験のことを勉強しているうちにDNAのことや、細菌のこと、遺伝子のことなどわからないことをこの実験でおそわりました。

・ 最初は、大腸菌とか、遺伝子組換えとか、「うわぁ〜すごく難しそう」って思った。けどやってみると意外とアッサリしてた。大腸菌に、ブラックライトを照らして光ったときは、とても感動した。また機会があればやりたいです。

・ 人工的に作った菌・細菌は、自然界に存在している菌・細菌より「恐ろしいな」と、思いました。あと、実験器具にも、すごい注意を払わなければいけないと言うことが、わかって良かったです。菌・細菌は恐ろしいですが、使い方によっては人間を助けるものになったり、生物科学の研究の進歩に役立ったり、人間の食生活を支えたりしている。菌・細菌は「すごいな〜」と思いました。

・ 最初は大腸菌についてまったく知らなかったです。こんなんで実験大丈夫か?と思っていました。実験前にいろいろと用語、実験の練習をして、少しは大腸菌のことがわかりました。そして実験を始め大腸菌を培地にまいて1日インキュベーターにいれて待ちました。形質転換実験を終えた夜、どんなふうに出ているのか気になってなかなか寝つけませんでした。そして、大腸菌にブラックライトを当てて光ったのでちょっと感動しました。

・ 僕ははじめ大腸菌をちょっと危険なばい菌だろうと思っていました。でも、先生の話を聞いているうちにだんだん安心してきました。そして、実験が始まっていろいろな道具を渡されて、上手くできるか、けっこう心配でした。でも実験を進めていくうちにだんだんその不安はなくなっていき、道具の使い方にも慣れてきました。この形質転換実験で一番勉強になった事は、形質転換された大腸菌は人間や自然のものにとってまだ絶対に安全だとは言い切れないという事です。

・ 形質転換で生まれた生物は、見ているだけなら、科学の不思議、生物の不思議をかんじることができるけど、ひとたび自然界へ飛び出せばおそらく我々人間を脅かすほど恐るべき存在になるのだろうと思った。ただ、DNAには不思議がまだまだたくさんあると思うので、形質転換の技術はこれからも日々進歩し我々の生活にも多くの変化を与えてくれるのだろうと思った。

・ 組換えDNA実験なんて一生やらないと思っていました。この実験は未知の生物を生み出すという、とても難しい実験だったのですが、それにドキドキ感があり、手をアルコールで殺菌したり、初めてづくしでした。この勉強を自分のこれからに役立てていきたいと思います。

・ 大腸菌で、形質転換することによってそのものには無い能力をみにつけることができてビックリです。実験の前は菌類のこと知らなかったので、この実験をして日常的に触れることのできない菌というものを知ることができました。

・ いろいろな実験道具などを使って大腸菌の組み換えを初めてやりました。最初はどんなんだろうかわからなかったけど、やっているうちにこの実験がいろいろ楽しいものでした。わからない事もあったけど、実験が成功してよかったです。

・ それまで遺伝子組換えについてたいした知識がありませんでした。なので、この実験のことを聞いたときに、手で直接核に形質転換のための遺伝子を組み込むのだと思っていました。しかし、実際は特殊な溶液やヒートショックなどを加え、大腸菌の形質転換を行ったので、こういう方法があるのだなと思いました。それと、厳密に実験を行う姿勢も大変勉強になり、先生方のご指導により実験する場合にできるだけランダムな部分を取り除くということも簡単に理解することができました。それに、創られた生物が自然界に出て行ったときに、生態系に与える影響は人間のシミュレーションを超えたものであるという話も興味深いものでした。

・ 大腸菌の形質転換というと、すごく難しそうなイメージで「ちゃんと出来るかなあ」とか思っていたけど、大きな失敗も無くてよかったです。あと、形質転換後の大腸菌が光った時はちょっと感動でした。あんなにきれいに光るとは思ってなかったのでビックリしました。それと、プラスミド、アンピシリン(もちろん名前も知らなかったけど)などの働きや、役目も勉強になりました。貴重な体験ができて良かったです。


 中学3年生が有意義な体験を実感したことは間違いありません。改めて言うまでもなく、バイオテクノロジーや生命科学への探究心を育てることも大切ですが、倫理面、環境面、社会面に及ぼす影響を考える姿勢を養うことも必要です。単なる体験や知識の習得に留まらず、生徒が生態系への配慮に気づいたことは大きな収穫と考えられます。次年度に向けてクリアすべき問題はまだまだ残されていますが、巨いなる一歩が踏み出されたといってよいでしょう。





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