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米国視察レポートNO.3「流通の現場で」

セントルイスでは流通施設としてカーギル社とミシシッピー川上流のゲートウェイ社、スーパーマーケット「シュナックス」を見学しました。
前回のレポートNO.2でもご報告しましたが、ここでも農家のコストに関する考え方の厳しさを感じました。出荷先やその時期は、農家はいつも相場とにらめっこだそうです。
そして、とにかく、貯蔵するサイロでも、運搬に使うバージと呼ばれる船も規模が大きくて、私達が「一粒の組換えトウモロコシの混入が・・・・・・」などといっていることの非現実性を強く感じました。日本の消費者は、規模が大きすぎて扱えないという言い分を「やる気がない、お客の要求を無視している」と解釈することが多いように思いますが、EPA、USDA,FDAの安全性審査を通過し信頼されている穀物の一粒に対して、とてもこだわれる状況(規模)ではありませんでした。全員が現場を見ることは難しいので、写真からその様子を感じとっていただけるといいのですが。
以下に写真を交えて詳しくご報告します。


1.カーギル社
貯蔵庫にはトラックと鉄道で収穫物が運び込まれ、ミシシッピー川を下ってメキシコ湾へ(向かって左はカジノのネオン) 群立する大サイロ。円柱の円柱の間が隙間サイロとして利用されている。こぼれた穀物をついばみに来る鳥を追い払うために、鳥の悲鳴のようなテープが流れている


トラック(イリノイ、ミズーリ州)や鉄道(オハイオ、インディアナ、ウィスコンシン、ノースダコタ、アイオワ、ミネソタ州)で小麦、ダイズ、トウモロコシ、コーリャンが運び込まれてきます。セントルイスは1年中操業できる最北の港で、西部開拓史や文化の拠点でもあるが、米国の交通の要。
運び込まれた穀物の98%はバージと呼ばれる大きな船でメキシコ湾に面した港に運ばれ、アジアに向けて輸出されていく。
バージには2000−2500トンの穀物が積載され、1日に2−3バージ出る日もあれば13−14バージ積み出す日もあり、荷積みには1バージあたり2−3時間かかります。農家は、相場を見ながら自分の貯蔵庫から穀物を運び込んでくるので、収穫時以外でも一年中忙しいそうだ。

作業の内容

  1. 全トラックの写真をとる
  2. 一部を粉末にして品質テストをする(一般的にはカーギルで行うが、公的な証明が必要なときは米国農務省などが監査を行う。そのための部屋が、トラックが横付けされる横にある)
  3. 荷おろしする(おろし方は荷台を傾ける。ダンプごと吊り上げる)
  4. 容器に入れる
  5. 必要に応じてドライヤーで乾燥する→貯蔵庫にいれる
買い取り費用:1ブッシェル当たり15−20セントから30−40セント


非組換え穀物の扱いについて

扱うダイズやトウモロコシのそれぞれ、70−80%、20−30%が遺伝子組換え。
非組換え穀物などを扱うスペシャルプログラムは日本、南米市場、アジア向け。スペシャルプログラムの内訳は95%がコーン、残りの5%がダイズ。
非組換え原料に対して組換えの混入率は、アジア向けの場合(指定によって異なるが)、99−97%の非組換え率(とういことは、組換えが1−3%混入する可能性を認めている)
非組換えの仕分けをするとサイロの稼働率が悪くなるので、コストとして、30%上乗せしている。
IPハンドリングの証明書は、生産者、セントルイス、メキシコ湾とそれぞれに署名をし1枚の証明書を作成。カーギルではセントルイスの段階でのコピーを残す。書名はチェック項目を確認して行う。


貯蔵庫の数と規模
それぞれのサイロの内容物をビーンボードというホワイトボードで管理。来月コンピューター管理になる(いつ、どのサイロに何がどれだけ入ったかが記入されている)
大サイロ 33本 4.8万トン(200万ブッシェル:1ブッシェルは24キロ)
中サイロ 22本 1.7万トン
隙間サイロ 18本 7000−8000トン
この他にも予備のサイロもある。サイロ内での作業の安全管理には万全を期している



ゲイト・ウエイ
            
トラックごと測る大きな秤(黒い縁取りのある部分)。積み下ろし前後の重さから運び込んだ穀物量を計算する トウモロコシはトラックから網目の間へと積みおろされる
集荷された穀物は長い管の中をベルトコンベアーでミシシッピー川に浮かぶバージに積み込まれていく 左写真のベルトコンベアーの中。ダイズもトウモロコシも同じベルトコンベアーで運ばれる


カーギル社と異なり、3000人の主に農家を会員とする協同組合のような組織。見学したのはゲイト・ウェイの10ある施設のうちのひとつ。施設としては最新。貯蔵、共同出荷の他に種子販売もしている。扱っているのは、6000万袋のトウモロコシ(約15万トン)、6500万袋のダイズ(約16.3万トン)。取り扱い金額は、農薬で700万ドル、種子で200万ドル。残念ながら、会員でもすべてここから購入しているわけではない。ここでも大型のドライヤーで乾燥させて貯蔵する。
扱うダイズのうちの除草剤耐性組換えは85%、トウモロコシでは、除草剤耐性組換えが15%、害虫抵抗性組換えが35−40%。残りは非組換え
サイロの規模は10万トン規模が2箇所、2万トン規模が2箇所

参考サイト「トウモロコシが輸出されるまで」(このサイトの写真の方がずっと上手です)



スーパーマーケット(シュナックス)

スーパーマーケット「シュナックス」(この店舗は24時間営業) 食用油の種類は多いが、組換えの表示はない

オーガニックのいちごは通常のイチゴの2倍の価格 「栽培方法がどうかより、色や艶を見て自分の目で選びます!」


セントルイス郊外のスーパーマーケットのチェーン店の中の一店舗で、お客の層は中流以上。店員や買い物客に話を聞くと組換えに関しては、表示もなく、市民は関心を持っていない。オーガニックは通常品より高いので、ここではほとんど扱われていない。(規模はここより少し小さいがオーガニック専門のスーパーマーケットもあるそうだ)
プレミヤ商品と書いてあるのは、オーガニックなどの栽培方法ではなく、すぐ調理できるようにいろいろな切り方がされているにんじんなど、ある程度調理された食品だった。




おわりに

日本では、公的機関などの行ってきたアンケートで「遺伝子組換え食品は絶対、またはできるだけ食べたくない」市民が8割であるという結果がいつも出てくるので、それを根拠のひとつとして北海道のように試験栽培も厳しく規制すべきだたいと考える自治体も現れてきています。そこには、IPハンドリング(非組換えと組換えを分別して扱う仕組み)のコストを誰かが負担し、5%未満の非意図的混入(JAS法では知らずに混ざってしまった5%以下の組換え原料は処罰の対象にならない)に眼をつぶれば、「多分、組換え食品を食べないで済む!」という一般的な認識があるからでしょう。しかし、前回の農家で目の当たりにした非組換え農作物栽培の手間や費用、土壌や作業者への影響、また今回の流通施設の規模の巨大さを見ると、IPハンドリングが今のようなコストで行われ続けることが可能なのか疑問を感じました。現在、これらの農家や流通施設の得ている利益は数%増し程度のものです。いつまでもこの程度の割り増しで、面倒な作業を続けてもらえるのでしょうか。それが、私たちが店頭で見る価格に直接跳ね返ってきていないのは、日本の食品メーカーが体力の限り、その分をカバーして市民が慣れるのを待ってくれているためか、日本の食品の価格の大部分は加工、流通過程で上乗せされるもので、原料価格は大して響いてこないのか、生産者がしわ寄せを被っているのかのいずれかなのでしょう。





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