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「経済産業分野における個人遺伝情報保護ガイドライン」の意見募集開始

「個人情報の保護に関する法律」が来年4月本格施行されるにあたり、経済産業省産業構造審議会化学・バイオ部会個人遺伝情報保護小委員会が10月1日(金)、10月22日(金)に単独で開かれたので、出席しました。同委員会では、平成16年6月に示された「個人情報の保護に関する法律についての経済産業分野を対象とするガイドライン」(以下、経済産業分野ガイドラインとする)の中の個人の遺伝に関わる場合に必要な配慮に関する新しいガイドラインを作ることを決めた上で、「経済産業分野のうち個人遺伝情報を用いた事業分野における個人情報保護ガイドライン(案)」を作成しました。このガイドライン案の意見募集が始まりました。どうぞご意見をお寄せください
(締め切り11月19日(金)18:00)。
http://www.meti.go.jp/feedback/data/i41025aj.html

「経済産業分野のうち個人遺伝情報を用いた事業分野における個人情報保護ガイドライン(案)」http://www.meti.go.jp/feedback/downloadfiles/i41025bj.pdf


経済産業省単独で行われた議論が三省(文部科学省、厚生労働省、経済産業省)の議論と異なるのは、事業として個人遺伝情報を扱っている事業者を対象にしていることで、具体的には、ゲノム研究が進むにつれて様々なサービスも生まれてきていることから、検査会社、研究機器会社、受託解析情報処理会社、DNA鑑定、DNA保存サービス会社、エステ、通販、健康サービス会社などのサンプルを取り次いで、さらに検査、健康カウンセリング等を行う業種が対象です。
三省合同委員会と同様に、こちらでも遺伝カウンセラーの体制が整っていないことや、小さい施設における倫理審査委員会設置が可能かどうかなど、現状を踏まえた根本的な手当てが必要であることが、議論されました。特に問題になったのは、親子鑑定や太りやすさなどの体質検査が、本人の同意などの手続きを踏まずに行われ、情報が漏洩して差別を受ける人が出てきたり、個人遺伝情報の意味がよく理解されていないために、検査結果が正しく利用されないような事態を起こさないための議論でした(例えば、親子鑑定の結果が必ずしも子供の幸福のためにならないようなケースも生じるかもしれないなど)。検討した主な項目は以下の通りです。ガイドライン案に反映された項目を→で示しました。

1. 親子鑑定をどう考えるか→ガイドライン案 2ページI. 14ページ2−3)
・このような業界は、指針を持っている学会に属さないこともあり、学会指針では取り締まることが難しい。
・親子鑑定が広まっている現実がある以上はまず、本ガイドラインで対応するしかない。
・親子鑑定を行う場合は、両親両方の同意が必要という文書を加えたほうがいいではないか。父親と子供だけの試料が提出されるケースでは、当事者を父と子と解釈している。母親に知らせず鑑定を受けるようなことがないように、両親の試料が提供できない理由を明記することにしてはどうか(法医学会のガイドラインではこれを定めている)。
・法的なカウンセリング(話し合いを努力してもらうべき)を行い、調停などで同意をとるようにすることはできる。
・親子鑑定の場合には子供の福祉ということばをガイドラインに加えてはどうか。

2.体質検査について→ガイドライン 案2ページI.
・体質検査を行う場合には、目的や範囲根拠、意義などを明確に示すように求めるべき。
・本来、体質検査も医療機関のみで行うべきだが、医療機関以外での体質検査が存在している状態で、他の省が所管しないならば、ここを経済産業省の指針でむしろカバーしたらどうか。単なる禁止は営業の自由を侵すことになる。
・体質検査の医学的な評価が定まった後ならば、体質検査を認めてもいいと思う。
・体質検査を国内衛生検査所以外で実施する場合、検査は主に海外に企業が試料を送って行っている。安全管理措置がきちんと行われているかどうかが懸念される。

3.個人遺伝情報の定義と扱い→ガイドライン案 3ページ1−1
・個人情報:生存する個人に関する情報であって、特定の個人を識別することができるもの。
・遺伝情報:子孫に受け継がれるヒトの遺伝的特徴や体質を示し、個人を識別できない情報。
・個人遺伝情報:遺伝的特徴や体質を示し、個人を識別できる情報。
・匿名化された情報だけを委託されて扱っている企業は、たとえDNAを扱っていてもガイドラインの対象にならないことになる。
・米国のDNA鑑定会社に試料を送って検査を依頼する場合は、検査結果の報告書を日本で翻訳することになるが、その時に翻訳の間違いや、個人情報の漏洩等の問題がおきる可能性がある。
・試料(血液、毛髪など)も、ユネスコの宣言に沿って個人遺伝情報と解釈する。
・連結不可能匿名化された情報は遺伝情報の扱いにする。

4.5,000件以下の個人情報を取り扱う場合→ガイドライン案 6ページ(12)、(13)
・遺伝情報の特質を踏まえ、5,000件以下でも注意して扱うべき。
・5,000件を超えて、規制の対象にならないように、蓄積データを捨ててしまう逃げ道もあるのではないか。
・調査によると10件以下の所もあり、守らせようとするのは実効性がないかもしれない。

5.遺伝情報取り扱審査委員会の設置について→ガイドライン案 7ページ(16)、15ページ(8)
・三省指針に定める倫理審査委員会を作る努力をし、それができないときに公的機関に設置するようにとなっているが、その公的機関を増やすが必要。この業界が発展することが大事だと経済省が思うなら、倫理審査委員会設置などには、経済省のサポートが必要。
・チェック体制も必要だと思う。ガイドラインで当面はきちんと遵守しているかをみていく。
・海外に委託するときにも本ガイドラインを遵守してもらいたい。

6.遺伝カウンセリングについて→ガイドライン案7ページ(17)、14ページ2−2)
・遺伝カウンセリングは重要なのに、制度や人材が整っていないのだから、これを行う体制つくりが早急に必要。人類遺伝学会においても働きかけを行っている。
・遺伝カウンセリングの実態は、医師のボランティアで行われてきており、現在は臨床医療専門医として、3年の研修後、筆記、面接試験を受けて500数名の遺伝カウンセラーが誕生している。非医師の認定遺伝カウンセラー制度が信州大学、北里大、お茶の水女子大で現在スタートしている。厚生労働省だけでなく、経済省の指針でも位置づけてもらえると企業での就職も広がると思う。
・病院の診療の現場のでは医療従事者が個人プレーで頑張っているのが現状。

7.匿名化について→ガイドライン案 11ページ
・実際には、病院で取り違えの間違いをなくすために匿名化しないこともあるし、匿名化が技術的に難しいこともある。取り違いの可能性があることを前提にしたら、システムからしっかり作り変えるべき。

8.学会ガイドライン遵守→ガイドライン案 17ページV.
・DNA鑑定や体質検査を行う事業者は、本ガイドラインでカバーできない部分に関しては、学会指針に従えばよく、学会指針が本指針と齟齬がなければいいのではないか。
・対象として考えられる企業は、学会員でない場合が多い。
・10学会のガイドラインには、医療以外で検査をしないことが示されているので、体質検査を認める文書が初めから入っている本ガイドラインとは整合性がとれないのではないか。

9.ガイドラインの見直しについて→ガイドライン案 17ページIV
・これからどんどん大きくなる分野に入っていくガイドラインなので、見直しは2−3年後は遅すぎる。本体になっている経済産業分野ガイドラインは1年ごとに見直される。

10.そのほか
消費者保護の立場、契約について
・ゲノム指針は無償で検体を提供するが、個人が検査を依頼する場合には有償契約となる。しかし検査前後の説明を丁寧に行うのは研究もビジネスも同じであるべき。
・モデル約款までいかなくてもいいが、ビジネスとして考慮すべき項目はガイドラインの中で示すべき。そのときの契約者が誰かも考慮すべき。
・本ガイドラインばかりでなく、刑法、特定商取引法(通信販売、誇大広告)、消費者契約法(重要事項を告知しない取引を禁止など)でも、ふさわしくない企業は取り締まることができる。本指針は事業者対象だが、消費者保護の法律は他にもある。
・医師が全くかかわらないビジネスの場合、個人が関わる状況への規制が難しい。
・扱うデータが個人遺伝情報の対象になるどうかの分け方を、クリアにしないと民間企業はやりにくく、不合理に産業が制限されてしまう恐れがある。

法律の必要性
・ユネスコの国際宣言では、刑事犯罪の捜査、親子鑑定は国内法に従うこととしている。
・ガイドラインではカバーしきれないかもしれないので、DNA鑑定法を作らないといけないのではないか。早晩対応は困難になるのではないか。たとえばイギリスには法律がある。

個人遺伝情報を適正に扱う事業者が増えるようにするには
・経済省の対象になる機関の中でも、実際に検査をする場所にライセンスを与えてそこで、管理するのが現実的ではないか。

裁判、警察関係
・裁判所、警察からの検査依頼を民間企業が受託することはないと思うが、警察にはDNA鑑定法ができていない。刑事訴訟法を援用しているのが現実。このような法整備が必要であることは法務省にお願いするしかない。企業が警察から検査を依頼されたときには法務省の指針に従うように、法整備が整うとよい。ユネスコでは国内法をつくるようにいっている。
・探偵業がDNA鑑定を行っている実態があるが、これは経済産業省の指針に従うことになるだろう。



参考資料




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