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米国視察レポートNO.4「先端研究の現場で」

セントルイスでは、モンサント社チェスターフィールト研究所、ダンフォース研究センターを訪問しました。今、これだけ話題になっている遺伝子組換え農作物がはじめて誕生した場所なので、バイオテクノロジーの歴史上で意義のある研究所だと感慨深く見学しました。

多様な気候を再現できる栽培室が122室も並んでいる迫力ある景色、廊下のところどころには見学者用の研究の作業を紹介するビデオや、害虫のついた非組換え農作物と害虫のつかない組換え農作物が入れられたガラスケースなど写真を交えてご紹介したいのですが、チェスターフィールト研究所では写真撮影ばかりか、担当者以外に話しかけることも禁止されていたためにそれができなくて大変残念です。(民間企業だから仕方がないのかも知れませんね。)それに反して、ダンフォース研究センターでは、撮影、取材は何でもOK。各国の研究者が交流しやすいように、中央が吹き抜けになっている研究施設の雰囲気そのままのご対応をいただきました。先端技術開発における人的交流の重要性を感じました。

バートさん(モンサント広報室で) すべての研究室が施設中央が吹き抜けに通じているダンフォース植物科学研究センター

1.モンサント社チェスターフィールド研究所

広報担当バートンさんが説明とラボツアーの案内をしてくださいました。
主な歴史
1901 化学製品会社として、モンサント発足
1979 生物学に社の方向を転換。100人以上の生物の専門家を採用。農業分野でのバイオテクノロジーに乗り出す。
1982 植物の遺伝子を組み換えることに成功。(交配以外の方法で品種改良が可能になる)
1984 26種類のグロスチェンバー(温度、湿度、日照条件を調整できる環境制御室)を作った。現在は122種類の世界の気候が作り出せる。
1987 連邦政府から許可を得て、屋外で遺伝子組換え植物の栽培が可能に。イリノイ州で組換えトマトを栽培した。
1990 知見という形(トライアル)でトウモロコシ、ナタネ、ダイズ、ワタの栽培を米国各地で実施
1996 トウモロコシ、ワタ、ダイズのデータを米国当局に提出し、種子の販売ができるようになった(毎年新品種を紹介)。1979年から17年目に売り上げをあげられたことになる。


現在
モンサント社は豊かな食料と健全な環境を目指している。
2002年、売り上げは農業関連製品が20%、種子やバイオテクオロジーが80%になった。バイオの同業企業では、7割は農業関連化学製品で、3割が種子・バイオテクノロジー種子であることから考え、この分野でモンサントはリーダー的存在だといえる。
新品種の開発には8年の余裕をみなくてはならないので、現在研究中のものがうまく商品化されると2014年ごろに店頭に並ぶだろう。年間の研究開発費用は5億ドルを使っている。新農薬の開発には5000万ドルの費用と8年の期間がかかる。
2004年、米国内のワタの74%、トウモロコシの45%、ダイズの90%が組換えになっている。世界では18カ国(この人口は世界の総人口の半分に該当する)が栽培している。農家が「高い生産性、コスト低減、環境にやさしい」など、これだけの恩恵を感じ、選択していることは劇的なことだと考えている
モンサント社は種子開発会社で種子販売はせず、新品種の種と交雑させて種をつくることを許す契約を種子会社と行う。米国では約200社が毎年ダイズの新品種を発表するので、毎年ほぼ200種類の新品種ができて、販売されることになる。エリート(優れた品種の上位ランク)にラウンドアップ除草剤耐性種子が常にも入っている。

農作物に付加する形質
害虫抵抗性農作物の対象になる害虫には、根を食べてしまうルートワームや茎の中に入り込んでしまうコーンボーラーなどがいる。両方とも、外から殺虫剤を散布しても、害虫駆除ができない。
除草剤抵抗性種子は、散布する除草剤(化学製品)と組み合わせて用いる。

商品化までの道のり
有用遺伝子を発見して導入→組織培養→環境制御室、温室試験圃場試験→人気品種への交配→政府の認可(FDA、NIH、EPA)→商品化

ラボツアー
日照、温度、湿度の管理されているグロスチェンバー(環境制御室)のドアがずらっと並んでいるところを見学。順調に作動していないと扉に赤いランプが点灯する。
遺伝子銃(トウモロコシでは胚に、タバコでは葉片に、金に挿入遺伝子をまぶして貫通させて遺伝子を組み換える装置)、組織培養を行っている部屋を見学。多種多数の植物体はバーコードで管理されている。
幼虫を用いたハイスループット・スクリーニング法では、プラスティックの板にウエルといわれるくぼみがあり、そこに害虫の卵とあらゆるタンパクを入れて、孵化させ、幼虫が成長しなかったウエルに入っていたタンパク質を農薬候補として選び出す。



2.ドナルド・ダンフォース植物科学研究センター
(Donald Danforth Plant Science Center)

広報担当ローズさんのお話の後、ラボツアー(研究所内の見学)に出発。

研究センターの概要
1998年設立された非営利の研究センターで建物は2001年に完成。ダンフォース財団、モンサント財団、ミズーリ州経済開発部の資金によりスタート。モンサント社が敷地を寄贈。現在は財団などからの内部助成金と、米国厚生省(NIH)、全米科学財団(NSF)の公募の研究助成金で運営。

使命
基礎的な植物バイオの理解を進める
植物バイオにより、安全な食料の供給、薬開発などで人類に貢献する
持続可能な人類に貢献できる農業
途上国へのプログラム(途上国内での開発した技術の応用、人材の養成)

ラボツアーの案内をしてくれたキャサリンさんはウィルス抵抗性キャッサバの研究者 キャッサバの温室。キャッサバは東南アジアの重要な食料でタピオカの原料でもある 研究中でもビデオ撮影OK

センターの研究員の構成

生物化学、農学、分子生物学の研究者、技術者115名が常勤。植物育種、組織培養、遺伝子組換えなど15の研究室がある。
研究員の採用基準は、実験室にこもらないで農場に赴き、世界にその成果を伝えたいと思う人、起業家精神のある人、世界の科学者と情報を共有していく人。

連携
大学関係では、ワシントン大学、ミズーリ州立大学農学部、ミズーリ植物園など。協力企業では、モンサント、クロロゲン、ボーイング(飛行機会社。アジアのお米の研究の資金援助も行っている)、TIGRなど

知的財産権に関する方針
ダンフォースが発見した技術や知的所有権で人道的なものは自由に使えるようにする

研究の内容
・植物工場を用いた新素材(植物由来の燃料、飼料)
・各地域の要望に応えられるような国際的な研究協力と人材育成
・食の安全の推進(アレルギーやカビ毒など)
・薬として不足した栄養を補う(食事療法、サプリメント)より、栄養豊富や果物で摂取できるように農作物の栄養価を生物学的に高める(biofortification)
・病害虫(カビ、ウィルス、線虫などを含む)に強い植物をつくる





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