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「カフェ・シアンティフィーク(サイエンスカフェ)−その現状と可能性−」

4月29日(金:祝)、STS Network Japan2004 春のシンポジウムが東京大学先端科学技術研究センター 4号館2階講堂で開かれました。
http://stsnj.org/nj/schedule/sympo04s.html#A

タイトルにあるカフェ・シアンティフィークは1998 年に英国リーズで始まった活動。カフェやバーで科学者・技術者と市民が科学技術について語り合おうというもので,博物館や大学で行われる講演会やシンポジウムとは違って小規模な対話集会であることが特徴。平成16 年版『科学技術白書』でも紹介され日本でも注目が集まっています。
くらしとバイオプラザ21では談話会を2003年2月から開き、双方向性のある催しを心がけており、そのカジュアル版として今年の3月8日からはバイオカフェを開催しています。(談話会、バイオカフェの報告書はくらしとバイオニュースに掲載されています。)

https://www.life-bio.or.jp/topics/index.html

バイオを題材としたカフェ・シアンティフィークを開催していることから、本シンポに参加したので報告します。 なお、「カフェ・シアンティフィーク」は、日本では「サイエンスカフェ」とも呼ばれています。




1. 海外のカフェ・シアンティフィークについて

Tom HOPE「The Coffee Taste Different: Forms and Issues of World-wide Cafe Scientifique(カフェ・シアンティフィークとは何か)」

各国のカフェ・シアンティフィークの紹介

イギリス:スピーカーはひとり。参加者に科学について議論させることを目的とする
フランス:スピーカーは複数で、科学以外の分野も扱う。スピーチの時間が短く、議論の時間が長い
デンマーク:人文、芸術分野も扱い、友好的な議論を行う。カフェのオーガナイズに関する本が出版されている
ポーランド:市民のサイエンスリテラシーが低いことを前提にしており、パワーポイントは使わず、身近な雰囲気を作り出す。
アルゼンチン:カフェの議論の記録を出版することを目的としている。対象をしぼって行っている。対象を政治家のグループしたケースでは余り成功しなかったそうだ。
カナダ、アメリカ:大学のアウトリーチとしての位置づけ。教育モデルに近い

新しい動きとこれから

British CouncilによるInternational Cafeがシンガポール、インド、中国で英語のサイエンスカフェを開催する活動、ジュニアカフェといって中高校の生徒に企画・実施される活動などがある。
サイエンスカフェの今後を考えると、どんなコンセプト(英語でするのかどうか、それぞれが自分流で開くのか)で開いていくのか、コントロールは誰がするのか(政治や宗教に利用されないように)という問題がある。
日本ではすでに大学などを中心としたサロンや、カルチャースクールがあり、その上にカフェは必要なのか。どんなカフェがいいのかという問題があると思う。 


薗田恵美 東京大学 修士2年「英国カフェ・シアンティフィーク参加報告」
イギリス4箇所のカフェの報告(昨年11月に開催されたものを視察)

オックスフォード:大学の中の書店。20−70歳代の参加者65名、休憩で参加者の寄付を募り、スピーカーの交通費にあてる。スピーカーの本を販売する。2000年11月から1回/月。大学教員数名が主催。
セトル:人口2700人の小さな観光地。シニアばかり23名。900円の前売り券は行列が出来るほど人気。大学教員と友人(カフェ経営者を含む)で主催。地理学者が地元の火山について話し、石を割ってみせるなど、楽しい雰囲気
リバプール:大学助手と院生が主催。場所は書店。大学関係者など70名が参加。スピーカーはカフェ・ネットワークから紹介してもらう
ノッティンガム:毎晩、音楽や芸術のイベントをしているカフェバーで、月曜日のお客さんを増やすためにカフェ・シアンティフィークを組み込んだ形。カフェバー経営者が主催。資金援助を受けて偏った議論にはしたくない。
ダナ・センター:科学博物館、自然史博物館の隣。カフェで週2−4回、科学や文化のイベントを開催。

まとめ:質問に参加者が答えたからといって双方向性があるとはいえない。カフェシアンテイフィークはそれぞれに多様。スピーカーやオーガナイザーはカフェ・シアンティフィークの性質に大きく影響する。地域にあったやり方をしているものが根付いていく。
日本では、早急にマニュアル化などはしないほうがいいと思う。


2.日本における取り組み

中村征樹 東京大学 助手「カフェ・シアンティフィークの日本での展開とその可能性」

平成16年度の科学技術白書は、科学と社会の関係に焦点をあてた今までものとは特徴のあるもので、今回の報告では日本での開催の実態を調べた。共通点は身近な場所、小規模、双方向、低予算、機動性の高さ。テーマには生活密着型と知的好奇心型の二極があり、進め方には交流志向(会話型)と議論志向(対話型)の二極がある。
自分のグループではカフェ・シアンティフィークを4月下北沢の「現代ハイツ」で開催した。テーマは海洋汚染。学生や院生など若いスピーカーを招くことで、スピーカーの優位性が生じないようにした。


 



大戸範雄 (財)武田計測先端地財団主催「カフェ・デ・サイエンスでの経験」
  http://www.takeda-foundation.jp/

生活者の視点に立って情報提供をすることにより、科学技術に親しんでもらう事業のひとつと位置づけ、3月に第1回を庭園美術館で堀田凱樹(遺伝研究所長)に脳をの話をしていただいた。40名ほどが参加し、参加費は寄付を募る。次の講師は、前回の講師が紹介する「友達の輪」方式で決める。


NPO法人サイエンスステーション主催 カフェサイエンスステーション
 http://sciencestation.jp/
東大5月祭で2日間に6回開催予定。スピーカーを学生がつとめ、スピーカー優位になることを避ける。


NPO法人くらしとバイオプラザ21主催バイオカフェ 
3月より3回開催。レポートはホームページで掲載。音楽演奏と手作りお菓子でホスピタリティを演出。金曜日の17時から事務所隣接喫茶店を貸切。


個人で開催する加藤順子さん(気象予報士)から場所の確保に苦労しているという報告がありました。



3.全体討論「サイエンス・カフェをどう理解するか」
(→は投げかけられた質問にスピーや参加者が回答した場合を示す)

コメンテーター小林信一氏を加えて、会場全体を交えた討論が行われました。

・どのようにカフェ・シアンティフィークの成功の度合いを測るのか
→成功度はカフェの開催目的によって異なる。アウトリーチ活動という位置づけだと参加者が多いだけで成功。会話型と目指すときは参加者同士の発言がかみあって発展するとき。社交の場作りやコミュニティの形成が目的になることもあり得る。

・友好的な参加者全員による会話型と議論を目的とする専門家との対話型だと前者の方が話題の発展に意外性が出てくる可能性がある

・政治・宗教との違いは→カフェ・シアンティフィークは政治や宗教の勧誘になる可能性はないわけではない。間違った情報の拡散やお金を集める仕組みになる可能性もあるかもしれない

・身近な話題ではつまらなくないか→話の発展のさせ方でどのようにも面白くなる

・カフェ・シアンティフィークの大事な要素はなにか 
 スピーカー、ファシリテーター、会場のもつ雰囲気、場作り、会場の選び方

・議論の習慣のない日本にのカフェ・シアンティフィークはあり得るのか。→日本人向けカフェ・シアンティフィークがあるのかもしれない。議論のきっかけつくりの小道具の必要性はあるのか

・スピーカーに有名人がいると、参加者は有名人の話を直接聞けたことで満足してしまう。これで、カフェ・シアンティフィークの目的達成といえるのか

・多様性の確保、地域性を守るが重要→カフェ・シアンティフィークにはいろいろやり方があり、その個性が守られることが大事

・参加者のニーズ→その地域のニーズを知ることが大事。イギリスのセトルは余り娯楽がなく、カフェ・シアンティフィークに社交の場を求めている。このような事例を生かすとカフェのないような日本の地方都市でも開催の可能性がある

・一番大事なことは継続性ではないか→継続性を前提にしなくても出来るときに出来る人が開催して、科学が身近な話題になればいいのではないか。街に天体望遠鏡を持ち出して通行人に見せているグループもある。
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