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第7回バイオカフェ(茅場町リリー)開催報告

7月15日(金)茅場町リリーにて第7回バイオカフェ「ジョンウェインはなぜ死んだ〜ガンと遺伝子」が開かれました。スピーカーはNPO法人くらしとバイオプラザ21専務理事真山武志さん。始まりは大方寛子さんのチェロ。あまりの蒸し暑さに、事務所で調弦したのに、途中で調弦をしなおすハプニング。「生きているチェロ」を相手に迫力ある演奏をしていただきました。


会場にはジョンウェインを知らない若者もいて 大方さんの力強い演奏


真山さんのお話の概要

1.ガンには、いくつかの原因があると考えられている
@ 放射能による
A 化学物質による
18世紀、イギリスには煙突のある家が多く、煙突掃除人がススの中に含まれる化学物質が原因でガンになることから、はじめて「職業病」として報告された。
1915年、山極勝三郎先生はウサギにコールタールを塗ってガンを作る実験に、世界で初めて成功した。後に、化学物質によってガンができることが証明された。
B ウィルスによる
ガンになったトリの腫瘍をすりつぶし、陶磁器でこし、別のトリに注射するとガンになることから、ウィルス説がラウス先生によって唱えられた。
C 遺伝による
 リンチ博士はガン患者が多く出た家系を研究して、腺ガンといわれる種類のガンには家族性のものがあることを発見した。これはガンの中では例外で、生殖細胞(卵子、精子)に関わる遺伝子に傷があり、ガンが受け継がれていることになる。

2.ガンはなぜできるのか
@〜Bなどの原因によりDNAの配列に変化がおきる。すなわち、DNAに傷がつくために、ATGCの並び方がかわって、作られるべきアミノ酸が作られなくなったり、他のアミノ酸が作られ、アミノ酸が連なってできているたんぱく質が作られなくなり、ガンの原因になる。
岐阜大学長黒木先生のご説明をお借りして説明してみる。
1つのアミノ酸は4種類の文字からなるDNAの3文字で表させる。1文字がかわると、
「バラガ サイタ バラガ サイタ」という歌詞が「バカガ サイタ バラガ サイタ」と変化してしまうようなもの。このように1字だけ変わってしまうのが点突然変異。「バラガサ イタバ ラガサ イタア・・・」とずれてしまうのはフレームシフトといわれる変異。
私たちはガン遺伝子を持っているが、ガン抑制遺伝子ももっており、DNAに傷がついたからといって、必ずガンになるわけではない。がん細胞を見つけ出し殺す免疫細胞も私たちは持っているから。

3.遺伝子は万能ではない
ショウジョウバエ(発酵物にたかる小さいハエで、猩猩とは大酒飲みの意味)のアシにヒトのレンズ目の遺伝子を入れると、複眼ができる。これはレンズ目の遺伝子が支配するのでなく、遺伝子の入った細胞の方が働いて、複眼になったことがわかる。
ということは、最近は遺伝子万能のような考え方が流行しているが、細胞が持っている生命のシステムが重要であることがわかる。遺伝子はその一部でしかない。

4.ガンにならないために(国立ガンセンター津金先生のデータより)
@たばこはすわない Aお酒は1日1合まで B適度な運動をする C果物、野菜など緑黄色野菜をよくとる(400-800g/日) D人生を楽しく過ごす



「ガンにならないためには人生を楽しく過ごす!」に全員納得

会場のお話し合い
(→はスピーカーの発言)

・たばこをすうと、本人は楽しくなるかもしれませんが、そばの人にはガンの可能性しか残されないのですね→他の人の煙からは逃げた方がいいでしょうね
・繊維質の多い食品を食べたからといって大腸がんは減らないというニュースを見ましたが→疫学研究によると野菜をよくとると大腸がんは減りもしないが、増えもしないという発表がされて報道されました。原因はわかっていないが、肉食の人に大腸がんが多い、脂肪を多くとる人に乳がんが多いというデータが得られている
・疫学研究とはどんなものですか→易学とは違いますよ(笑)。疫学研究は病気の原因を集団で考えるものです。有名な例は、明治時代、日本兵の脚気が問題になったときにイギリスに留学させた海軍軍医局長高木兼寛は疫学的な視点から、白米食をやめて、脚気患者を減らした。しかし、ドイツに留学させた陸軍軍医総監森鴎外はいつまでも白米食を行っていた。ドイツはコッホの細菌の研究のように原因を究明する考え方を中心としていたため。軍医として最高位にのぼった森鴎外はドイツ式の考え方をとっていたので、脚気と白米の関係を認めず、この論戦は「白い航跡」(吉村昭著)に記されている。
・見つかりやすいガンはどんなガン→集団検診があるので、胃がん、子宮ガンは早期に見つかりやすい。すい臓がんは沈黙する臓器といわれ、すい臓がんは自覚症状がないので、発見が遅れ、手遅れになりやすい。
・コレラが発生したときに、汚い水のある井戸を確定して、拡大をおさえることができます。コレラのケースは原因が単純だが、ガンは複雑な原因が働きあうので、疫学研究で扱うのは難しいのではありませんか→疫学研究には難しい問題があり、津金昌一郎先生(国立ガンセンター)の研究では、思い出しバイアス(調査方法そのものが偏りを生じる。例えば人は過去を思い出すときに大きな出来事は思い出しても小さいことは忘れやすいなど)、交絡(調査方法そのものでなく、第3の因子による偏り。たとえば高所得者ほど心筋梗塞を起こしやすいなど)など、バイアスを消す工夫がなされている。調査数を多くすることはバイアスを消すことに役立つ。
・ハワイに移住した人達に大腸がんが、日本にいる人に比べて多いのは肉食のせいだと思われていましたが、今日のお話で、別な考えを持ちました。ハワイは常夏でストレスがない所だと思われていますが、実際に移住をした人達は異なる環境で苦労されたのではないかと思いました。
・人は持って生まれた酵素の量が決まっていて、DNAの傷を修復するときにその酵素が使われ、それを使い切るとガンになるという話を聞いたことがありますが→確かにDNAに傷がついても修復する働きを人間は持っているので、すべてガンになるわけではない。
・日本は先進国の中ではレントゲン検査が多くされていて被爆が多いそうですね。
・どうして死因の第1位がガンになったのでしょう→一番の理由は寿命がのびたから。年をとるとガン細胞が増えても抑えられなくなる。検査で今まで見つけられなかったガンが見つかるようになった。けれど、検査のお陰で全体としてはガンは減っていることになる
・ジョンウェインの死んだ理由が仮説にとどまっているのはなぜですか。原因究明のための研究はされなかったのですか→ロケ地についての疫学調査は行われていない。母集団は映画関係者ということになるので、数が小さすぎるのか。国として行わなかったのかはわからない。
・「ジョンウェインはなぜ死んだか」の英訳を米国は許可しなかったそうです。ジョンウェインは国民的英雄なので、国の政策である核実験に関係があるというと、政治的な力が働いたのでしょうか。→核実験によるガンの発生について行われた代表的な調査は、第5福竜丸の船員やビキニ諸島の島民ではないか。


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