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第11回バイオカフェ(茅場町リリー)レポート
「ダイズで走る自動車」

11月4日(金)茅場町リリーにおいて第11回バイオカフェが開かれました。 スピーカーはアメリカ大豆協会川原鏡子さん、タイトルは「ダイズで走る自動車〜ダイズは高騰する石油に代われるか」でした。
はじめに松本さんによるビオラで、名古屋の木遣り歌と子守歌から作曲されたという曲の演奏がありました。木遣り歌とは、農作業などをするときに心を合わせるための歌。秋は収穫の季節なので、このような歌も人とバイオテクノロジーのひとつである農業とのかかわりから生まれたのかもしれないというお話がありました。



「歌は心を合わせる」ビオラ演奏 わかりやすく話される川原さん
大豆の用途の広さに皆、関心


川原さんのお話

アメリカ大豆協会は米国ダイズ生産者で構成される団体で全米24箇所の事務所、海外には9箇所。100カ国で活動。

日本のダイズ需要:ダイズの用途には、食用(食用油、ダイズ加工品、飼料用ダイズ粕、たんぱく質原料)と工業用がある。日本の需要は460万トンだが、自給は4%。8割が油として利用され、2割が食品。

世界のダイズ:生産の40%は米国が、24%はブラジル、18%アルゼンチン、8%中国など。('04年度)
油糧種子(油をとるための種)はダイズが57%、ナタネ12%、ワタ12%、ピーナッツ9%など
需要の伸びはダイズ、コーン、小麦、ワタ、コメの順。

ダイズ由来製品開発の背景:米国の主要農産物で、製品開発援助やバイオ製品優先調達などの法的な保護が行われている。ダイズは再生可能原料であり、農業経済を発展させたい、環境保全を目指したいという背景がある。

ダイズ燃料の利点:二酸化炭素削減につながり(植物油を燃やしても、つぎに植えた大豆が二酸化炭素を吸収する)、燃費は化石燃料にくらべ若干劣るかほぼ同等で化石燃料を使わずにすむ。エネルギーの安全保障(安定した供給)につながる。
ダイズ油、原油、天然ガスの価格を比べるとダイズ油は安定している。現在24セントだが、過去十年平均は21.7セント。バイオディーゼルの需要は2004年は3000万ガロン、2005年は2倍以上に拡大する。
タバコやピーナッツの休耕地がダイズ生産に利用されたり、ダイズは食料とエネルギーの自給率向上に貢献。

各国の状況:フランスで販売されている全軽油に5%のバイオディーゼルが混入。ドイツは1500軒のガソリンスタンドで販売。 ブラジルでは輸送量燃料の41%が植物エタノール。
タイ、マレーシア、インドネシアではパームバイオディーゼル製造プラント建設中。米国のバイオディーゼルは2010年までに10億ガロンに増大の見込み。 年間20億ポンドの廃食油も対象に検討している。

化学反応:
植物油+メタノール→メチルエステル+グリセリン
グリセリンには脂肪酸が三個ついていて、これにエタノールが3個反応すると、脂肪酸とメタノールがメチルエステルをつくりグリセリンが出てくる。

課題:
副生成物のグリセリンの処理
全米大豆基金財団はダイズ新規用途開発の研究・開発援助も行っている。
ダイズからいろいろなモノが作られる:
プラスチック製品(カーペットバッキング、荷台用ライナー、コンバインの合成パネル、断熱材、シートクッション、自動車パーツ、洗浄剤、家具など)、潤滑油、変圧器油、ろうそく、屋根コーティング、印刷インキ(現在、オフセット印刷インキの60%以上が大豆インキ)
ポリマー原料として使える大豆油由来の新化学分子、高品質の不飽和油をつくるダイズの開発などの技術面での改良も行われている。

米国における法律による支援:
米国農業法 バイオベース製品優先調達 2005年1月に施行 優先調達品目リスト 142種類

すべての連邦政府機関は、化学及び性能に基づいて考慮した場合に実用的であり、入手に問題がなければバイオ手ベース製品を優先して購入しなければならない
政府機関は「bio based product」のロゴ入り製品でとりくみをPRするなど一歩一歩すすめている



質疑応答
(〇は参加者、→はスピーカー)

〇不耕起栽培とは何か。
〇漉き込んだり耕したりしないで種をまくので、表層土壌が失われず環境に優しい栽培法。雑草をすきこまないので、除草剤耐性作物で、よく用いられる。
〇雑草の生えているところの土をきるように溝を作り種をまく。除草剤耐性作物と雑草が伸びてきたところで除草剤をかけると、雑草だけが枯れる。全く耕さない場合と浅く耕す場合がある。種の表面は鳥の嫌う薬剤で包まれているので、食べられることはない。
〇除草剤耐性組換えダイズはバイオ燃料に適している。
イネの不耕起栽培を日本で行っている人がいて、レンゲなどをうえて他の雑草が生えないようにしている
〇米国でのバイオディーゼル混合について→軽油に20%のダイズメチルエステルを足す。トラックや農作業用トラックのディーゼルに使う。ガソリンの方が需要が高い。トウモロコシの生産の1割以上は燃料として使われている。米国も石油の4割を輸入しており、石油高騰の影響を受けている。
〇日本は揮発油税が高い。
〇電気は水素、車も電気というように水素が実用化するのはいつごろだろうか。米国は水素燃料へのつなぎとしてバイオ燃料を使っていると思う。
〇トウモロコシとダイズのバイオ燃料としての割合→トウモロコシエタノールはダイズディーゼルよりはるかに普及している。約30億ガロンのエタノールが製造されている。
〇日本で普及するにはどうしたらいいか→ 国の政策バックアップがないと厳しい。 自治体では滋賀県がナタネ油を使っている。休耕田を使えるといいと思う。
〇BDF(バイオ燃料)と廃油のリサイクルを比べると→廃油をきれいにする時に発生する二酸化炭素が多い。長野県では家庭の廃油を集めているが、コストがかかる。LCA(ライフサイクルアセスメント:製造から廃棄までのすべての工程で必要な燃料を評価する)が高くなる。
〇日本にバイオ燃料で走る車はあるのか→京都市のゴミ収集車、市バス等に使われている。
〇日本はハイブリッド車に移行する傾向があるのでは→ 石油の高騰が続けば、バイオ燃料は注目されるだろう。日本はエタノールが先行して施策が検討されている。
ハイブリッド車とはスタートはモーターで行い、充電したガソリンで走る。
ダイズをメチル化したものの輸入はできないのか→ 輸入できるが、日本にはバイオディーゼル燃料の規格がまだない。 バイオエタノールの方が有望かもしれない。
〇小学校で授業をされた時の子供の反応は→ダイズの需要と用途について教科書に掲載されていないので、授業を依頼された。組換えはどうなのかなどインターネットの知識を多くもっていた。ダイズは植物、環境、食料など広く学べるよい教材だと思う。
〇米国農業法について教えてほしい→国をあげてバイオ製品を利用するように定めている。日本のグリーン購入は省令で、力が弱い。ダイズ油で作ったプラスチックは生分解性がある。 愛知万博ではトウモロコシポリ乳酸からの生分解性プラスチック食器が使われた。
〇麻の油で作った部品を用いた車が走っているときいた。日本では→米国はダイズが多くとれるので、大豆油を燃料などに使うし、マレーシアやインドネシアはパーム油ということになる。
〇ダイズは豆類だから、根粒細菌が窒素固定をして土壌を肥えさせ、不耕起栽培で表層土壌を保全できると、土壌のために二重によいことになる。
〇農業用水で米国では地下水が枯渇すると聞いているが、燃料のためのダイズまで作って大丈夫?→大豆はトウモロコシと輪作で作付けされ、ディーゼル燃料の需要があれば大豆の作付面積は増える。劇的にこれらの作物の作付け面積が拡大するということではない。
〇日本で実用化が進むようになるには→国策として推進するために米国ではバイオ燃料を押し上げる団体の力が強い。
〇日本の環境保護団体には、日本でバイオ燃料をつくることには賛成しているところがあるが農林水産省はどのように考えているのか。
〇バイオ燃料などダイズを利用することは環境にもよいし、市民の関心も高い。
〇遺伝子組換え技術に着目して反対するグループがあるので、進まないのではないか。
→タクシーで話をしたら、ガソリンの高値から関心を示した運転手もいた。
〇米国は石油資源のあるのに、ダイズの燃料の使用の推進にも熱心。日本は資源がないのにどうして熱心にならないのか→米国は休耕地対策としても大豆生産を推進してきた。日本でバイオ燃料を推進する場合は、輸入作物にたよらざるをえない。状況が違う。
〇ダイズを燃料にする実験キットがあれば、バイオ燃料について伝えるのに利用できる。
〇日本はダイズを食べるので、燃料にするダイズと交雑したら嫌だという発想があるかもしれない。
〇今日はダイズの自給率が4%と知って驚いた。こんなみんながよく食べるものなのに。自給率は上がるだろうか。
〇石油ディーゼルとの割合は→ 米国のディーゼル消費量は年間650億ガロン。バイオディーゼルは0.1%くらいの割合。


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