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第15回茅場町バイオカフェレポート
「食用にも薬にもなる薬用植物」

2月10日(金)、茅場町サン茶房でバイオカフェが開かれました。スピーカーは、薬用植物観察会でおなじみの飯田先生。いつものように、始まりは松本さんの「ビオラという楽器も木、動物の毛という自然の恵みからつくられており、今日の植物の恵みを受けるという話と共通ですね」という軽妙なお話とビオラ演奏。飯田先生がお持ちくださった、きれいな色の薬用植物の花の写真がふんだんにご披露され、目にも楽しいひと時でした。お話の主な内容は次の通りです。

ビオラの音が力強く響く 薬用植物資源研究センターの紹介から

全国の薬用植物資源研究センターの紹介

研究部が全国4箇所にあり、それぞれの施設で地域性を生かして栽培、研究を行っている。
筑波はセンターとして、幅広く栽培、収集、保存、新薬開発の基礎になるような研究、北海道は寒冷地の植物、種子島は亜熱帯性の植物の栽培と研究、和歌山では保存を行っている。
現在、日本で用いられている生薬の90%は輸入。国産品は価格が高く、製薬メーカーが利用しない。
北海道は機械化による大規模栽培により生産コストを下げ、国産品が使われるようにめざしている。筑波は遺伝子資源の収集を行い、種子を缶詰にして保存。外国の資源を勝手に持ち出し出来なくなっており、共同研究として外国の資源を相互交換により導入している(63カ国、420機関と交流)。種子島ではウコン、ガジュツはじめ、亜熱帯性植物の野外栽培化などの研究を行い、地域の特性を生かしている。

薬用植物とは何か

医薬品に求められることは有効性、安全性、継続性。
健康食品は法的規制がないので、毒性試験などはフリーパス。
食薬区分の線引きは難しい 例えばスイカに利尿作用があるが薬用植物には入らない。
薬用植物とは、「薬または薬の原料として用いられる植物」と定義されている。高等植物の種類は3−5万種、そのうちの1割が薬用植物といわれている。香辛料やハーブ類は、薬の原料にならないものがあるが、広く薬用植物として捉えることがある。
コメ、ジャガイモは薬用植物ではないが、それらのでんぷんは日本薬局方に入っている。
生薬:「薬として使うための調製をしたもの」で、薬用植物そのものが生薬として薬の原料になることもある。生薬には動物、鉱物もある。
民間薬:単品で伝統的に使われているもの。
例)どくだみ、せんぶり、げんのしょうこ
漢方薬:複数の薬草を組み合わせて混合して使う 何をどう組み合わせて処方するかが決まっている。単品での薬効のほか、混合による相互作用があるから、漢方薬の有効成分の解明は難しい。植物に含まれる成分の組成や量が時期や場所で異なることもあり、これは安全性や継続性に影響を与える。
例)ミシマサイコ、カンゾウ、トリカブオト、シャクヤク
医薬品原料植物とは、有効成分を抽出して使うもの。ケシのモルヒネなど。有効成分がはっきりしているため、含量が高いのがよい医薬品原料植物ということになる。

薬用植物の紹介

写真を交えて、薬用植物を紹介。
ハルウコン:春に花が咲く。春咲きのウコン(秋に花が咲く)でない。秋に花がさくウコンとは別な種類。
ガジュツ:最近ムラサキウコンとよばれることがあるが、これもウコンとは別の種類。
ダイウイキョウ:ダイウイキョウの実は中華料理で使うハッカクのこと。果実の持つシキミ酸はインフルエンザに効くタミフルの原料。地域により薬用成分が一定でないので、医薬品メーカーは特定地域のダイウイキョウのみ用いているといわれている。原料の確保が難しい。トリインフルエンザの発生地とダイウイキョウの自生地が一致しているが、これはたまたまの偶然であるが、興味深い。植物は暖かい地方のものであるが、種子島では野外で越冬している。
シキミ:ダイウイキョウに似ているが、劇物指定をうけている植物。アニサチンが植物体全部に入っていて猛毒。中枢神経を麻痺させ、死に至る。
コンフリー:健康にいいといわれていたが、コンフリーが原因と思われる病気が見つかり一般消費者に食を控えるように通達が出た。花がないとジキタリスと区別が困難。ジキタリスの葉をコンフリーと間違えて食べ、死者が出たこともある。
セイヨウアカネ:根から天然色素をとっていたが、ネズミの実験で発がん性が見つかった。ヒトに対してはわからないが、摂取しない方がいい。製造、販売、輸入の自粛とお願いが一時的措置として行われている。

最近話題になったもの

ダイズイソフラボン:妊婦とりすぎに注意。イソフラボンはがん予防や骨粗鬆症によいといわれていが、サプリとして過剰にとると害が出る可能性があるという警告が出された。30グラム以上とること、妊婦や乳幼児の追加摂取をすすめないとしている。

医薬品と食品の線引きは

昭和46年、 医薬品の範囲に関する基準。
健康食品では安全性審査を受けずに効能を述べた製品が売られ、問題になった。
平成13年、 医薬品の範囲基準改正。
医薬品と食品の分類は従来6段階で複雑だったので、口に入れるものを対象に2段階に整理された。
平成16年、 新しいリストが作成され、名称、利用する部位を限定した(薬用植物は部位が大事)。

植物由来の医薬品

生薬名と植物名が異なることも多い。以下にいろいろなものを写真とあわせて紹介。
ケシ:ケシ(植物名)から抽出されるのはアヘンで痛み止め。種子は食品で利用(七味唐辛子には加熱して発芽しないようにして使われている)。
イチイ:乳がんの薬(北米産)として使われており、果肉は食用であるが、種子は有毒。
ゲンノショウコ:日本特有なので漢字名はない。作用が強い、地上部(根を含まず)を利用。関東地方は白花、中部以西は赤い花。
クコ:クコの根は地骨皮(ジコッピ)と呼ばれ医薬品扱い。
シテイ:シテイ(柿蔕)とはカキのヘタのことで、効能はしゃっくり止め 。
センナ:葉と実、葉軸に下剤作用があり、ダイエット茶として売られたものに葉軸が入ったものがあり問題になった。その後、葉軸も医薬品扱いに改正された。
トチュウ:医薬品としての部位は木の皮。葉はお茶にする。
トリカブト:トリカブトは根の芋の部分に毒性が強い。
ゴオウ:牛の胆嚢のこと。現在はBSEの発生国から輸入できなくなった。
ゴレイシ:ムササビ科動物のフン。
ジャコウ:ワシントン条約により輸入できない動物。
パパイン:パパイヤの酵素。
アロイン:アロエの成分。
ガマの油、古代哺乳動物の骨の化石も生薬だが、貴重な恐竜の骨を収集することは禁止されている。

医薬品と判断されない成分

麻の実は食品扱い。ただし熱処理して発芽しないようにする(七味唐辛子に入っている)。
アロエの葉の液汁は医薬品だが、透明な葉肉は非医薬品。
イチョウはアルツハイマー改善の効果があるといわれて欧州で医薬品、日本ではまだ。イチョウにはアレルギー物質があるため、一般の利用には不適。
エキナケアは北米産植物で、免疫活性を高める薬理効果が高い。国内では健康食品として売られている。
ウコンの色素(クルクミン)は、カレーの色に使われている。色素は植物によって組成や含量の違いがみられる。ウコン属の分類は難しく、まだ学名が特定されていないものがあり、違いを研究中。
キハダは木の皮が薬用だが、アイヌの人達は実を食用としていた。
カンゾウ(甘草)は甘味料として食品としての利用も多い。副腎皮質ホルモンに似た働きをする成分があり過剰摂取に注意。
ベニバナはリノール酸が多い。
アリ、カイコ、動物の角も非医薬品扱い。

まとめ

薬用植物は正しく用いること。
部位、容量を守ること。
効能効果を過信しない、お茶として楽しむこと。


熱心にお話を聴く 満員御礼のサン茶房


質疑応答
(・は参加者、→はスピーカーの発言)

・植物が薬になる過程は、ねらいを定めて見つけて作ったのか、偶然か
→伝承的に用いられているものから探る方法と手当たり次第に探す方法がある。例えば、マラリアは現在もまだ難しい病気だが、抗マラリア薬として用いられている生薬「青蒿」は、伝承的に用いられていた。地元の伝承を調べるのもひとつ。抗ガン薬など新薬としての探索は、手当たり次第にスクリーニングテストで活性を調べる。
・カレーの色づけはウコンですね。
→カレーの香辛料でターメリックといわれている。ウコンの効能の一つには、悪酔いしなくていいようです。
・チョウセンニンジンの根は年数がたつほど効能があるのか。
→20〜30年産の半野生のニンジンの成分をみたところ、代表的な成分には年数の違いはなかった。ただ年代物には微量成分の蓄積があるのかもしれない。
・キキョウの根は年数で効果が異なるのか。
→キキョウの成分はサポニン等があり、痰切り効果がある。年数が経ったものが、痰の切れ味が鋭くなるのかは分からない。ダイオウには下剤効果をもつ成分があるが、3年以上たたないとその成分が蓄積されてこないといわれおり、3年以上のものを収穫し、用いられている。
・タミフルの原料のダイウイキョウの自生地が病気の発生地と一致したというが、動物が森に入って自分の病気をなおすものを探して食べるという話を聞いたり、シャーマンは近くの森に入って効くものを探すというが。
→サル、チンパンジーなど野生動物の薬草利用の研究がよく知られている。そこから新たな医薬品開発のヒントを探す研究も行われている。
・アンパンにはなぜ、けしの実をトッピングしたのだろうか。(※)
→ケシの実は食用。ただし、発芽しないような処理が必要。アンパンにけしの実が使われたいきさつについては知らない。
・野菜の成分の栄養が減ってきているので、サプリメントで補うのはどうか。
→旬のものを用いるのが基本。最近の野菜は味重視になり、また周年供給されており、栄養価が低下してきている。栄養のあるものを食べて運動するのがいい。


※木村屋のアンパンを向島でお花見をされる明治天皇に献上するにあたり、パンは舶来のイメージがあるので日本らしい季節感のあるものにしようと、パンの中央を十文字に切って八重桜の塩漬けをトッピングをしたのが、「桜アンパン」の始まりだそうです。今回、ケシのトッピングの起こりは調べられませんでした。



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