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                        |  | 「日本農業の担い手の遺伝子組換え技術についての考え方と現状」 〜農業経営の課題と新技術の導入についての調査結果より〜
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2006年9月21日(木)ホテル・ヴィラフォンテーヌ汐留にて、バイテク情報普及会主催による第7回メディアセミナーが開催されました。初めに、(株)農業技術通信社 代表取締役社長 昆吉則氏より、「日本農業の担い手の遺伝子組換え技術についての考え方と現状」というタイトルで、同社が農業経営者に対して実施した「遺伝子組換え技術を含む技術革新」に関するアンケート結果の報告がありました。次に農業経営者2名、会場を交えたでディスカッションが行われました。農業経営者から直接意見が聞くことができ、意義あるセミナーでした。
 
 
     
       |   | 主なアンケート結果 |  
農業経営者2004人のアンケート結果遺伝子組換え技術が必要:約44%、必要でない:約48%
 遺伝子組換えの栽培をしたい:約40%、栽培したくない:約49%
 数字的には否定的な見方が若干多いが、肯定をしている農業経営者も多い。
有機栽培農家710人のアンケート遺伝子組換え技術が必要:約32%、必要でない:約60%
 遺伝子組換えの栽培をしたい:約34%、栽培したくない:約58%
 有機栽培農家は遺伝子組換え技術を全く否定しているかに思えたが、意外に肯定をしている農家の多いことが判った。
 
詳細:http://www.farm-biz.co.jp/datademand/document.pdf
 
 
 
     
       |   | パネルディスカッションより |  
田中さん、大舘さんのおふたりの生産者を迎えて、ディスカッションが行われました。
 田中正保氏(鳥取県):92ha(190戸の農家からの借地が約90ha、1.8haが自営)の田畑でダイズと米を中心に栽培。従業員9名の有限会社。農繁期にはパートを5-6人雇用。
 
 大舘国昭氏(北海道):60haの畑で、米、ダイズ、ビートを中心に栽培。夫婦と息子夫婦で経営。農繁期には20-30人のバイトを雇用。
 
1)遺伝子組換え技術について田中さん:米栽培では、農薬や化学肥料はできるだけ使わないようにし、有機農法のスタイルで栽培。水を張る方法で除草をしているが一部に除草剤も使用。
 一方、ダイズ栽培では、水はり法で現状は除草剤を使う必要はない。しかし、遺伝子組換え技術、生産性、コストを良く考えてみたい。
 遺伝子組換え技術については現在理解しておらず、安全か否か良くわからない。実際には栽培している現状があるのに、危険のみが一人歩きしているようだ。聞いたことをしゃべっている状態。重要性、広がりについてきちんと捉える必要があり、情報がきちんと流れていないことを感じる。
 大舘さん:除草剤ラウンドアップを使用すれば相乗効果は見出せる。
 麦とダイズを間作栽培して麦を収穫している。除草剤耐性ダイズを使えば効率が良い。省力化と除草ができると品質の良い麦を収穫できる。間作(ある作物の収穫前にその畝の間に他の作物を栽培すること)を行うで連作ができるメリットがある。
 除草剤ラウンドアップ耐性ダイズを栽培すれば、除草剤の使用を5回から1回に減らすことができ、草取りの人件費(1万円/日)の節約になる。
 農業をする上では、除草、虫対策、病気対策の3つがある。除草のみが機械化できていない。除草作業を軽減できれば2-3倍の栽培ができる。
 
 2)規制について
 大舘さん:北海道の条例はすばらしい条例であるが、大変作りづらい条例である。お墨付きを与える規制は良い。栽培するにもマナーやルールを守るための規制があったほうが良い。
 田中さん:規制は国がきちんとするべきで、都道府県ごとに異なるのはおかしい。農業経営者にもきちんと情報を与えてほしい。国が責任を持って情報を出してほしいし、国民に訴えてほしい。交雑しても刈り取ってしまえばスーパー雑草はなくなる。だれが言えば信用してくれるのか。メディアは情報を科学的に伝えてほしい。
 
 3)交雑について
 大舘さん:交雑防止の基準を作ってほしい。翌年の種子の自家採取はしないので問題はない。種まきの日をずらして交雑を防ぐということはしたくない。
 田中さん:7mの規制があれば10mにして交雑を避けるようにする。種まきの日がずらせることで解決できるなら、ずらして栽培をしても良い。
 
 4)遺伝子組換え作物を生産しても消費者メリットが見えてこないが
 大舘さん:これまで農業をしてきて生産者のみにメリットがあって、消費者にメリットがないということはなかった。だから、遺伝子組換え作物を栽培しても生産者へのメリットしかないということはないと思う。
 田中さん:生産効率が上がれば、国レベルでのメリットが出る。安定生産のほか、技術的価値、経済的価値も出てくる。
 
 
     
       |   | アンケート結果報告 |  
1)遺伝子組換え技術は日本の農業にとって必要だと思いますか?
全体では「必要」と「どちらかと言えば必要」をあわせると生産者の43.8%が必要な技術と回答した。1000万円以上の販売額のある経営者では、45.6%が必要と回答した。
 
                  |  | 販売額 |  |  | 全体 | 1000万円以上 | 1000万円未満 |  | 必要 | 15.3% | 16.0% | 14.2% |  | どちらかといえば必要 | 28.5% | 29.6% | 28.2% |  | どちらかといえば必要でない | 26.8% | 27.1% | 26.3% |  | 必要でない | 21.4% | 19.6% | 24.4% |  | 無回答 | 7.9% | 7.8% | 7.0% |  2)生産者としてみた場合、遺伝子組換え栽培について、どうお考えですか?
「栽培して見たい」「条件が整えば栽培したい」を合わせると生産者の40.2%が栽培に関心を持っていた。販売額の多い生産者は43.2%であった。
 
 
                  |  | 販売額 |  |  | 全体 | 1000万円以上 | 1000万円未満 |  | 栽培してみたい | 4.8% | 5.1% | 4.5% |  
                    | 条件が整えば栽培したい | 35.4% | 38.1% | 32.7% |  | 栽培したいと思わない | 48.8% | 45.8% | 53.2% |  | 無回答 | 11.0% | 10.9% | 9.7% |  3)栽培の条件は、どのようなものですか?
 (「条件が整えば栽培したい」と回答した710人に対して複数回答)
 
 
| マーケットの支持が得られれば | 54.4% |  | 農薬や除草剤などの使用を減らすことができれば | 45.5% |  | 技術が安定して栽培しやすくなったら | 37.5% |  | 生産コストが低減できれば | 33.8% |  | 食味や機能性など、食品としての品質が向上したら | 32.3% |  | 風評被害が起きなければ | 30.7% |  4)JAS有機認証を受けた有機栽培農家164人に対して
 
 (1)遺伝子組換え技術は、日本の農業にとって必要だと思いますか?
 「必要」「どちらかといえば必要」を合わせて、有機栽培農家の31.7%が栽培したいと回答した。
 
 
| 必要 | 12.2% |  | どちらかといえば必要 | 19.5% |  
                    | どちらかといえば必要でない | 25.0% |  | 必要でない | 34.8% |  | 無回答 | 8.5% |  (2)生産者としてみた場合、遺伝子組換え栽培について、どうお考えですか?
 「栽培してみたい」「条件が整えば栽培してみたい」を合わせて有機栽培農家の34.2%が栽培したいと回答した。
 
 
| 栽培してみたい | 4.9% |  
                    | 条件が整えば栽培してみたい | 29.3% |  | 栽培したいとは思わない | 57.9% |  | 無回答 | 7.9% |  
 5)現在、遺伝子組換え作物の栽培は、国が認可していますが、風評被害等を懸念して国が認可したものの栽培を独自に規制する動きが自治体等であります。これについて農業を経営する立場からどうお考えになりますか
 「望ましい」「どちらかといえば望ましい」が50.5%で約半数が規制を望んでいる。
 
 
| 望ましい | 24.2% |  | どちらかといえば望ましい | 26.3% |  
                    | どちらかといえば望ましくない | 26.1% |  | 望ましくない | 10.5% |  | 無回答 | 12.9% |  6)「望ましい」「どちらかといえば望ましい」と回答された方に、その理由は何ですか?
 規制を望む理由は、「国が安全性を認めていても安全性に不安がある」が約53%、「風評被害などで地域の農産物が売れなくなる」が17%であった。
 
 
| 風評被害などで地域の農産物が売れなくなる | 17.0% |  
                    | 国が安全性を認めていても安全性に不安がある | 52.9% |  | 地域との関係維持が先ず大事 | 7.2% |  | 地方分権の時代だから | 1.0% |  | その他 | 2.7% |  | 無回答 | 19.3% |  |