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第1回松柏軒バイオカフェ
「チョコレートの秘密〜ポリフェノールの科学」

9月11日(月)、3回シリーズバイオカフェの第1回「チョコレートの秘密〜ポリフェノールの科学」(明治製菓お客様相談センター梶睦さん)が開かれました。始まりは山形一恵さん、今村恭子さんによるフルートとバイオリンの演奏でした。チョコレートにちなんで、チョコレートの似合う国オーストリアやフランスの曲が演奏されました。
 宮田料理長からは、松柏軒は伊達公の下屋敷に水戸光圀公をお迎えしたときに賜った名前であるという、由来が紹介されました。

松柏軒の看板 音楽演奏
 
梶さんのお話  


お話の概要

99%ポリフェノールのチョコレートの試食
ポリフェノール99%のチョコレートを試食。これは、砂糖が入っていないので、苦い。これに比べて普通のミルクチョコレートのポリフェノールは25−40%。挙手したところ、会場参加者の3分の1は、99%もおいしいと回答。スピーカーも余り多くて、少し驚き・・・・・・

チョコレートの歴史
1521年、スペインのコルテスに滅ぼされた、マヤのアステカ文明の最後の王はチョコレートを滋養強壮のために、甘くしないで飲んでいた。
日本でチョコレートに初めて出会ったのは、伊達藩から使節団としてローマに派遣された支倉常長だと考えられている。7年間、日本を離れていた間に、日本は禁教、鎖国になってしまったので、洗礼を受けた支倉は記録を抹消した。そこに振舞われたであろうチョコレートに関する資料もあったかもしれない。この他にも、岩倉具視は明治時代に視察先でチョコレートを食べたとか、長崎の出島で遊女が外人から贈られたチョコレートを所持していたという記録がある。

カカオ豆
カカオの原産地はメキシコから中南米で、暑くて湿気が高い地域。カカオ豆は15−20センチくらいのフットボール型の実で幹に直接なっている。中からパルプに包まれた2センチほどの種を取出し、これをそのままバナナの皮で包んで、発酵させる。
品種には、クリオロ(マイルド。カカオ豆の原種で絶滅の危機にある)、フォラステロ(渋く、苦い。病気に強い品種)、トリニタリオ(交雑種)などがあり、新しい品種も作られている。

カカオ豆の生産地と消費地
生産高の順では、コートジボアール(世界の4割を占める)、ガーナ、インドネシア。日本は7割をガーナから輸入している(欧州はコートジボワールが好きで、日本人はガーナ産が好き。欧州と日本のチョコレートの味の違いは原産地によるのかもしれない)。
日本の消費量は一人当たり、1年に1.8キロ。これは1日1かけら(5g)。一番多いスイスは日本の6倍、アメリカは5倍。

チョコレートができるまで
発酵させたカカオ豆が工場に届くと、砕いて焙焼し、香りを引き出す。
ココアはここで圧搾して油(ココアバター)を絞って粉にしたもの。ココアバターはチョコレートで利用する。
チョコレートは、カカオ豆の粉に、牛乳、砂糖、ココアバターを加えて、更に20ミクロン(ミクロンは1000分の1ミリメートル))くらいに微粒化する。約1日練り上げる(精錬)。ここで芳香が出てくる。微粒化、精錬には装置が必要なので、家庭ではこの作業ができない。
テンパリングといって、温度調節をして滑らかにして、油の結晶をうまくつくる。冷蔵庫に入れておいたチョコレートが白っぽくなるのは、ブルーミングといって表面に油の結晶が出ること。風味は落ちるが品質は変わらない。最後に充填する(型に入れて固める)
熟成(充填から2−3週間置いたころがおいしい)

チョコレートの成分
チョコレートに含まれる油脂には次の3種類あるが、動物性脂肪でないので、コレステロールの心配はない。1)オレイン酸:オリーブオイルに多く含まれ、コレステロールを下げる、2)ステアリン酸:飽和脂肪酸で、コレステロールを上げも下げもしない(中立)。吸収されない。従って、チョコレートの脂肪の7割しか吸収されない、3)パルミチン酸 飽和脂肪酸 飽和脂肪酸でコレステロールには中立
食物繊維が17%と多い。カフェインがないので、眠れなくなる心配がない。
また、ポリフェノールが高い割合で含まれている。例えば、赤ワインのポリフェノールは100gあたり200−300mgだが、チョコレートは100gあたり800mg。ポリフェノールには多くの効用があるが、最大の特徴は動脈硬化によいこと。
血管中のLDL(低比重)コレステロール(悪玉コレステロール)は、酸化されると、酸化LDLになる。LDLの多い食物を多くとると、白血球のマクロファージが酸化LDLを取り込み、処理しようとするが、処理しきれなくなるとマクロファージがもりあがり(泡沫化)、死滅して血管をふぐ。これが動脈硬化の始まりで、血液の流動性が悪くなる。
チョコレートを食べるとLDLの酸化が遅れ、血管がつまるのを防ぐ。チョコ1枚で2−4時間、酸化を抑えることができるが、他に運動をする。野菜を食べるなどもLDLの酸化を抑える効果がある。レモンやチョコレートのポリフェノールを食べると、エノコミー症候群予防になる。

料理長からの説明 会場風景


話し合い
  • は参加者、→はスピーカーの発言
    • チョコレート1枚は何グラム?→大体、1枚が50−70グラム。
    • チョコレートを食べるのによい時期は→食間、食後。食前に食べると食欲が抑えられ、ダイエット効果があるらしい。
    • こういう話をNHKのテレビ番組でやってください→民放ですでに取り上げられたので、難しいのですが、できるといいですね
    • 市販されている物で純度が高いのは→カカオの含量ならば、今、試食されたのが99%で一番高い。海外ではリンツという会社のがある。わが社のものより値段が高い。ピュアココアはどこの物も同じ。飲むときに自分で砂糖や牛乳を入れないといけないので、調整ココアの方がお湯で溶かすだけで簡単。
    • 生チョコはおいしいと思うのですが、糖尿病にはどうですか→本来、チョコレートは生モノではない。「生チョコ」という表現は日本のもの。チョコレートは水分を嫌い、普通は粉乳を使うので水分は1%以下。生チョコは粉乳の代わりに生クリームを使い、水分は10%にもなる。このために賞味期限が極めて短く、値段も高くなる。
    • チョコレートは値段の高いものを少し食べるのがよい、といわれた先生がおられる。高値だと、純度が高くなるのか→ゴディバだからといってカカオの含有量が高いのではない。味と値段の判断やブランドのイメージによるのではないか。目隠しテストをすると値段と味の差はないが、味には特徴はそれぞれにある。健康のためのポリフェノールなら、ミルクチョコレートからで摂取できるし、ピュアチョコレートの健康への効果にも差はない。「準チョコレート」といわれる非常に安いものはカカオバターの代わりに植物油脂を使っている。これはチョコレートとしては、ランクが落ちる。
    • チョコレートの保存によい温度は?→20−25度くらいなら冷蔵庫より室温でよい。冷蔵庫から出し入れすると、結露して、また冷やされてというような温度変化を受け、味が落ちる。
    • ビターチョコレートというのはどういうものか→日本ではブラックチョコレートと呼ぶ。カカオ豆をすりつぶしたものに多くの砂糖を入れ、ミルク成分を入れていない
    • 砂糖を使わないチョコレートが販売されていた気がするが、今なら売れてのではないか→5年ほど前、砂糖不使用チョコレートが話題になったが、現在、大手で残っているのはロッテだけではないか。
    • チョコレートのカロリーが気になるが→チョコレートの脂肪のうち、吸収されてカロリーになるのは表示の8割がけ。
    • ホワイトチョコレートはどうやって作るのか→ココアバターと砂糖とミルクだけで作るので、カカオマスを使っていない。だからポリフェノールは全くない。味はいいが、ポリフェノールによる健康上のメリットはない
    • 子供がポリフェノール99%チョコレートを買ってきたが、苦くて食べられない。他に使い道はないか→カレーに入れるとコクが出る。お好みによりますが、5人前で2−5かけらくらい。削ってヨーグルトにかける。ケーキの飾りに使うなど。
    • 原料のカカオを日本は輸入しているが、カカオの輸入は将来、安定か。→余り心配ないと思う。カカオの相場はロンドン、ニューヨーク市場で決まる。たとえ、抑えられて、今日、輸入ができなくなっても、わが社は来年ぐらいの原料は確保している。こうして、リスクを避けている。
    • チョコの専門店は市販の板チョコのように成分表示がなくて、内容がわからない→チョコレートの生地は、装置がないと作れないので、どこかの会社から買わなくてはならない。わが社も卸している。チョコレート生地の値段や生地の成分にはそんなに違いがないので、成分が専門店ごとでそんなに違っていることはないと思う。
    • チョコレートとアレルギーの関係は→チョコレートはアレルギーを治すことはできないが、症状を緩和する働きがある。チョコレートのポリフェノールの量とアトピー、喘息のデータはあるが、科学的な結論が導き出せるものではない。
    • 花粉症には効くか→カカオと花粉症の関係は調べていない。ブルベリー、紫蘇のポリフェノールが効くらしい。
    • 賞味期限のめやすは?→賞味期限は1年としているが、経験上、見て問題がなく、味が変でなければ大丈夫。
    • 夏の保存方法は?→20−25度の保存が理想だが、家庭では難しい。ブルーミング、冷蔵庫のにおいを吸うとまずくなるが品質には問題はない
    • ココアの保存方法は→ココアそのものは変質しない。缶に入れて冷蔵庫がよい。ココアには虫がつきやすい。 出し入れのときに胞子が入ったり、スプーンがぬれていたりすることが原因。
    • チョコレート中毒はあるのか→イギリスの研究で、ある食物への渇望感を持つことが調べられている。どういう食品に渇望感を持つかというと、第一位はチョコレートで、しかも女性。渇望感は好きで止めれないが、これでいいのかという葛藤があるそうだ
    • 使いきりココアを作ってください。あまって捨てないほうがいいので→小袋で割高になるが、参考にします。
    • チョコを食べると鼻血が出るといわれたが本当?→欧米にこういう話はない。チョコレートが高い時代に、日本では子供に余り食べさせたくないと思って、大人が言い出したことではないかと思う・・・・・・
    • チョコレートとにきびの関係は→米国の政府の研究報告がある。米国でも実験したが、科学的に関係ないとデータが出た
    • 喘息で食べていけないものとしてチョコが入っていたが→チョコレートがアレルギーの原因であるという説を唱えた先生がいて、その文献を引用する人がいて、一部に伝わっている。食品とアレルギーの関係は非常に微妙な難しい問題で、簡単には決められない。



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