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ナノテクノロジー国際会議アジア会議(ICON-ASIA)が開かれました

2006年11月30日(木)〜12月1日(金)、日本のナノテクノロジービジネス推進協議会(NBCI)の協力を得て、三菱商事ビル会議室(丸の内オフィス)において、標記会議が開かれました。アメリカ、オーストラリア、アジアから科学者、行政官、NPOなど約80名が出席し、ナノテクノロジーの人間や環境への影響について話し合いました。ここでは、ナノテクノロジーの環境、健康、安全に及ぼす影響(Environmental Health and Safety : EHS)が、議論の中心になっています。技術的には、その評価方法に関する研究やその体制整備が議論されました。同時に市民への情報提供、教育をどうするかということもとりあげられていました。国境を超えて利害の一致しない立場の人たちが、講演の間のコーヒーブレークでも、熱心に議論したり談笑したりしていたことが印象的でした。日本から参加したNPOは、私たちNPO法人くらしとバイオプラザ21をはじめ化学物質の安全性を考えるグループでした。

http://icon.rice.edu/centersandinst/icon/events.cfm?doc_id=10005

ナノテクノロジーとは
1ナノメートル(10-9m)は10億分の1メートルのこと。水分子は0.3nm、DNAの幅は2nmです。今、ナノメートルで測定するような超微小な構造の物質や粒子が作れるようになり、産業利用が始まっています。実際には、化粧品の微粒子、建築機材、ナノチューブなどで私たちの暮らしの中ですでに利用されているものもあります。果たしてそんな小さいモノを人間が作って利用したら、生物や環境にどんな影響が起きるのでしょう。私たちには、これらの利用の経験がありません。そこで、既に利用が始まってはいるものの、この新しい技術を上手に利用するために、まず、このナノ材料の環境やヒトへの影響について研究し、その評価方法なども開発しながら利用していきましょう、という動きが国内外で始まっています。

参考サイト 当サイト談話会レポート「ナナメから見たナノテクノロジー」

ICON(International Council on Nanotechnology:国際ナノテクノロジー会議)とは
ICONはナノテクノロジーの利点を最大限に利用し、リスクを最小限にとどめることを目標とする産・学・官・NGOから構成される組織です。具体的には、工業用ナノ粒子のリスク評価管理が検討されており、関係する文献のデータベースの構築、様々な利害関係者との議論の場作りを行っています。本部は米国ライス大学バイオ・環境ナノテクノロジーセンター(CBEN)におかれています。
http://www.icon.rice.edu/



アジア会議のスケジュール

第1日(11月30日)

  • 「国際的な視野から見たナノテクノロジーの評価の必要性」インテル梶@M.ガーナー氏
  • 「ナノテクノロジーのEHSのための日本の政策」(独)物質・材料研究機構 国際・広報室 竹村 誠洋氏
  • 「日本の企業におけるナノクノロジーEHS評価のための研究〜暴露評価の研究」国立環境研究所 小林隆弘氏
  • 「日本の大学におけるナノテクノロジーEHS評価のための研究」(独)産業技術総合研究所・化学物質リスク管理研究センター長 中西準子氏ほか
  • 「ナノ材料の安全な取り扱いに関するベストプラクティス(最良実施例)の開発」USCB P.ホールデン氏
  • 「ブレークアウトセッション」
  • ナノ材料の安全な取り扱いに関するベストプラクティスを開発・向上させていくための既存の仕組みにどのようなものがあるか
  • 世界に受け入れられるベストプラクティスの開発を加速するためにはどのような取り組みが必要か

第2日(12月1日)
  • 「オーストラリア・アジア太平洋ナノテクノロジーフォーラム(ASNF)の紹介」ASNFJ.シュルツ氏
  • 「台湾におけるナノテクノロジーEHSプログラムとナノマークの開始」台湾技術研究院 T.T. スウ氏
  • 「シンガポールのナノテクノロジーEHSプログラム」ASTAR科学工学会議 K.W.リン氏
  • 「アジア太平洋地域におけるナニテクノロジーに対するNGOの取り組み」地球の友 G.ミラー氏
  • 「まとめと次のステップへ」 ICON事務局



主な発表の内容

日本からの発表

国の政策として
第3次科学技術基本計画の基本的な考え方として「市民の信頼と参加」が掲げられています。これにはナノテクノロジーも対象となっており、主に経済産業省、文部科学省、厚生労働省、環境省が研究開発と併せてEHSに関する取り組みにあたっています。
現在の取り組みは2004年8月に産業技術総合研究所が開始した討論会「ナノテクノロジーと社会」に端を発しています。それ以前にも、フラーレン、カーボンナノチューブ、金属・セラミックスナノ粒子の生物への影響に関する研究は国内においても行われていましたが、個別の研究者の努力によるものでした。この討論会での議論をもとに、この新しい技術が市民に受け入れられるよう、健康・環境・社会に関する課題に取り組む総合的なプロジェクトが立ち上がりました。国際討論にも積極的に関わり、例えば2006年6月には第2回「責任あるナノテクノロジーの開発と研究」という国際会議を日本で開催しました。
参考文献「ナノテクノロジーの社会受容促進に関する調査研究」 2006.3.31
ヒトや環境への影響について
中西準子さんから「(1)ナノテクノロジーのリスクを理解することの重要性を確認すること、(2)ナノテクノロジーの倫理的な問題への取り組みは簡単ではないが重要であること」が説明され、「産業におけるナノテクノロジーのリスク評価」というプロジェクトが紹介されました。具体的には空気中で酸化ニッケルと二酸化チタンがどのように拡散していくかなどのナノ粒子の挙動、産業利用されるナノ粒子の大きさと挙動の関係、ラットを用いた暴露実験に関する研究発表が行われました。

アジアの状況
今回のワークショップでは、IT(情報科学技術)やBT(バイオテクノロジー)では、欧米に先行されたけれどナノテクノロジーでは!というアジアの国々の期待と意気込みが強く感じられました。
タイでは、早くも2006年、ナノテクノロジーEHSのガイドラインができる予定。
台湾では、ナノ・マークという認証を、EHSの審査に通過した製品に与えているそうです。ナノ・マークのついた製品は高いけれど、ナノテクノロジーEHSを理解して使ってほしいと担当官はいっていました。
中国は、国立ナノサイエンスセンターを設立し、日本円でおよそ3.5億円の大きな国家予算を与えて、国家の重要なテーマとしてナノテクノロジーの研究を推進しています。国際会議を招集し、積極的に海外との連携を図っています。
シンガポールでは、研究、開発、評価と並行して教育に力をいれています。科学館においで小学生、中学生向けのナノテクノロジーの理解を促す展示をしています。さらに、拡大するために、教師の研修を行ったり、ショッピングセンターでのナノテクノロジーの理解推進をはかるイベントも実施しているそうです。

地球の友(オーストラリア)
ナノテクノロジーの導入に懸念を示す立場をとるグループとして、ただひとり、G.ミラーさんが発表されました。主な内容は次の通りです。「ナノテクノロジーの導入に関して、政府機関が意思決定において市民参加を推進していないこと、ヒトと環境への安全性評価や倫理面に問題を感じている。ここに参加して研究者には、透明性のある評価を望み、NPOとは今後の連携を図りたいと希望している」

日本のナノテク関連機関は、ナノテクノロジーのEHSを広めようと活動しているICONと今後とも協力し、インターネット記事の日本語による紹介などを行い、今後も関係をより深めていくそうです。くらしとバイオプラザ21は今後、談話会やバイオカフェで、ナノバイオを中心とした学習と話しあいの機会をつくろうと考えています。どうぞご参加ください。



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