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ミニシンポジウム「英国と日本のサイエンスカフェについて」

 2008年2月23日(土)、国立科学博物館地球館講義室において国立科学博物館主催、ブリティシュカウンシル共催により、ミニシンポジウムが開かれました。初め同館展示・学習部前田克彦部長より開会の挨拶があり、同館人材育成推進室長亀井修氏の楽しい司会のもと、サイエンスコミュニーター養成講座の紹介、英国と日本のサイエンスカフェに関する講演が行われました。


「サイエンスコミュニケーター養成実践講座」

展示・学習部 学習課長 小川義和氏
サイエンスコミュニケーションのキーワードは「つなぐ」。そこでは、研究者、市民、政府、教育関係者、メディア、企業等がいつ、どこで、誰と誰を、何を、どのように、何のためにを考えなければならない。そこで、サイエンスコミュニケーターにはコミュニケーション能力の他に、科学技術への専門性、コーディネート能力が必要だと考え、大学院生を対象にして、これらを基礎にサイエンスコミュニケータ養成実践講座を1年にSC1とSC2の2期を行っている。


「イギリスのサイエンスカフェ」

ジュニアカフェプロジェクトオーガナイザーメアリー・アーバー氏

 英国では、ダンカン・ダラス氏らが大人用カフェを始め、私はアン・グラント氏とジュニアカフェプロジェクトを行っている。ジュニアカフェは、理念も形式も大人と同じで、対象が子供だということ。子供といっても、十代の若者を対象にしており、「ジュニア」ということばは少々問題。なぜなら、「ジュニア」は権威的威圧感が含まれる。また、カフェシアンティフィクと、なぜ、フランス語を使うのかという疑問も生徒たちは持つので、「カフェサイ(Cafe Sci. , SciはScienceの略)」と呼ぶことにした。こういうところからもギャップを埋めていき、生徒を置き去りにしたネーミングをしてはいけない。
 私は法律が専門でコミュニケーションを勉強し、教育の仕事をしていたので、「科学に興味を持っている素人」です。学生時代は、科学は退屈だと思っていたが、今は、科学について知り、倫理についても一緒に考えたいと思うようになった。学校で習う科学と日常生活とをつなげて考えられず、科学は私の好きな議論の要素に満ちていることを知らなかった。だからこそ、科学者でない私が今、このプロジェクトに情熱を感じている。
 若者と科学を結びつけ、国民の科学リテラシーを高めることは重要で、そこでは、暗記よりも対話が大事になる。私たちの周りには、幹細胞、気候変動、組換え植物、クローンなど、事実を学ぶより討論してしなくてはいけないことが沢山ある。
 十代の若者の文化と「科学」のギャップは大きい。15歳になるまでに半分以上の人が科学はつまらない、科学は役立たないと認識してしまうのは世界共通のようだ。それには、学習方法の選択肢が少ない、学生の興味に応えていないなどの理由がある。とにかく、彼らに、科学への関心を持ってほしい!
カフェサイでは若者が関心を持っているトピックスを見つけ、そこから出発する。

カフェサイの特徴
・若者が毎日通う学校で行う。ただし、授業でないので教室以外の場所
・教科書や試験にとらわれず彼らの関心事について話し合う。
・実生活に結び付けて話し合う。
・生徒による運営
・対等な立場

方法
・お話は科学者が10分位の導入になるお話しをする。講義形式はだめ。
・内容は、生徒の専攻教科や年齢に関係なく参加できるもの
 子供が選んだトピック例には、「ロボットに感情はあるか」「動物実験は必要か悪か」「男性は妊娠可能か」「幹細胞とデザイナーベビー」「並行宇宙(パラレルワールド)」など。
自分たちがアプローチしやすいこと。来てくれる科学者の専門分野も生かす。

最終目標
 優秀な生徒だけを対象にしない理由は、多くの人が科学を勉強したくなるようにすることが重要だからで、生徒が将来、科学を選ばなくてもかまわない。最終的に、科学を文化の中に取り戻せればよい。若者は生活と科学の接点を見つけ、最新の科学と自分の暮らしを近づけ、自分の皮膚感覚として科学を捉える。自分の関心事を自由に話すと自分の生活にも結びつけやすくなる。
 カフェサイは点数に関係ないので、先生も指導要領にとらわれずに生徒たちに議論させられる。
 現役の科学者と直接に会ってみると、意外と若くて普通の人だと知って驚くこともあり、カフェサイ科学を目指さない生徒にも有効なプログラムである。
 21世紀の科学の進歩はどんどん早まっている。科学技術をどのように応用していくのか、厳しい決断を市民は求められている。市民は意思決定プロセスに参加する資格があるが、それには基本知識と対等に話せる環境整備も必要である。カフェサイはそのような多くの選択肢のひとつである。

まとめ
・教室では講義だが、カフェでは会話
・若者の見解からスタートし、教科横断的に進める。
・学校においては反体制的な魅力がある(生徒主導のプロジェクトは学校では革新的)
・民主的プログラム(行きたい人が参加、先生、科学者、生徒は成績によらずみんな対等)
・自由がある(参加者は評価されない)

現状と結果
 これは3年間のパイロット計画の間に、約70箇所で開催。スピーカーはのべ100人以上。
非公式の調査でのフィードバックはポジティブ。生徒たちはカフェサイが大好きだと答え、先生も授業をせずにすむ、科学者も楽しんでいて自分の研究への考え方が変わったという人さえいる。スピーカーのメリットが大きいことは見落とせない利点。
 近い将来、イギリスの国家プロジェクトにやがては大人のカフェのネットワーク(33カ国)に追いつき、国際プロジェクトになればと思っている。すでに、アメリカ、ギリシャ、ニュージーランドでもサイカフェが進んでいる。私自身はリーズ大学の博士課程に入り、カフェサイの評価をしている。他の科目にも応用できるはずだと考えている。
 カフェサイはcreative trespass(創造的侵略:創造的に境界を踏み越えていくと)で、新しいことが見えてくる。カフェサイでは、知らない環境の中で口に出して表現することで、自分の考えを精査する姿勢も生まれる。科学は継続的発見のプロセスで、人間の独創性の表現であり、カフェサイは独創的な活動。
参考最後:http://www.juniorcafesci.orog.uk



質疑応答
  • は参加者、→はスピーカーの発言
    • ジュニアカフェの資金は→飲食は学校、科学者の交通費はスピーカーの所属する研究所が負担することが多い。
    • 科学だけでなく、科学と周囲のことについてやりたいと思うが、どんなバランスがいいのか→いいスピーカーを見つけると周辺のことも話せることもある。
    • 科学以外のトピックとはどんなもの→カフェカルチャーでは、本、映画、演劇を扱っており、哲学を語り合うカフェフィロソフィーなどがある。若者に対しては科学以外ではやっていない。
    • 50分では話し合いが中断することがあると思うが、どのように終わったらよいか→50分は確かに短かく、会話が活発になったところで時間切れとなることもある。司会者には時間枠内でまとめる能力が大事。いわゆる正解がないことはあらかじめ伝えておく。
    • 研究者で考え方が変化したというのは、どんなことか→幹細胞の研究者は社会的インパクトにおいて認識が変わったといい、若者への見方が変わったといった研究者もいた。
    • 私は民間の立場で学校への支援活動をしているが→カフェサイは公共部門から独立しているが、革新的なことをしているおり、良い関係ができている。それは隙間の時間を利用しているからだと思う。自分の理念を守り教育とは別のアプローチをしたいので独立的な立場を保ちたいと思う。
    • カフェサイをしたいという生徒の変化は→直接はわからないが、カフェサイの長期的効果は今後も調べたい。
    • 小学生の母です。小学生対象のサイカフェについてはどう思うか→私も小学生の母です。小学生の質問は奇想天外。小学生の世界観は教科を超えているので、カフェサイの教科横断的な側面は小学生向けカフェサイにあっていると思う。やってみてください。
    • 千葉市科学館の科学コミュニケーターとして,実験教室をしている。授業っぽくなりやすい。10分間で生徒をひきつける導入はどんな風に行われているのか→難しいが重要な質問。子供にオープンに接し聴く耳を持ち、上から教える態度をとらない。子供の知りたいことを引きだす。人間として距離感を縮める努力。オープンマインドになる、これは難しい。
    • カフェサイの適した規模は→多人数は会話が生まれにくい。若者は恥ずかしがり屋だから、20−30人が限界。50人のときもあったが、講義っぽくなってしまった。
    • 参加する子供は事前登録するのか→任意で思い立ったときに来る。
    • 失敗したときはどうしますか→またやってみる

    科学文化育成を目指して、市民とのリサーチコミュニケーション「アストロミーパブ」の評価

    自然科学研究機構 国立天文台 縣秀彦氏

     国によるPUR(Public Understanding of Reserch)文化への意識の違いは、欧州はdialog(対話)、米国はunderstanding(理解)、日本はinterest(興味)とawareness(参加意識)です。そこで、日本で欧州型双方向コミュニケーションが成立するかどうかわからなかったので、日本には「居酒屋の飲み会」がいいと思い、アストロノミーパブを始めました。

    目的:科学者の社会リテラシーを高め、市民の科学リテラシーを高める。

    方法:30名以内、アルコールが入る、第一ステージで40分間の対談(トークショウとして、どちらかに参加者は感情移入する)、第二ステージは立食パーティでひとり5分以上スピーカーを独占しない、気の利いた料理と飲み物を提供、駅から徒歩1分
    まとめの10分 研究者とゲストが言い残したことをいう、歌を歌うこともある

    現状:抽選で20名選抜。競争率2-3倍。天文台関係者は10名までとし、トークする2名以外は自腹で参加し市民に対応する。20名しか参加できないので、テープおこしと映像を公開。パブの終わる9時頃には、入り口に抽選漏れした常連が2次会のためにやってくる。アスメン(アストロノミーパブのメンバー)という掲示板が始まり、ハイキングをしたり、個人的な相談ごとをしたりしている。星のソムリエ養成講座などにも発展。地元の関係も強まっている。

    評価:カフェやパフには講演会より若い人が参加している。講演会、カフェ、パブの順で有意差をもって満足度が高かった。

    改良:はじめは不満だという意見がアンケートに見られた。これは、講演会を期待していた人にはミスマッチだったためで、市民広報で内容をよく説明し、質問用紙を配って質問に答える準備を丁寧にして、改良を行った。その結果、質問の中には研究者への立ち入った質問もでてきた。これは、市民と科学者が対等になったためだと思う。アストロパブは説明でなく、つなぎ、広めることが目標なのでこれでよいと思っている。スピーカーとの直接、会話した時間と満足度の相関関係はない。

    まとめ:パブは有効な双方向コミュニケーションで、気さくで和やかな環境が大事

    課題:今後は、本当に対話が成立したかどうかの測定をしたい。

    最終目標:予約なしであの店に行くと科学者がいておしゃべりできるようにしたい。科学研究を酒の肴にしたサイエンスパブが広まり、科学が文化として定着するのに役立つことを希望する。科学好きを作ろうと頑張り過ぎて科学嫌いを作っているのではないか。



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