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「女子学生と考える遺伝子組換え食品」フォーラム開かれる

2008年2月19日(火)、武庫川女子大学メディアホールにて標記フォーラムが開かれました。神戸女学院大学、神戸女子大学、武庫川女子大学の学生による研究発表が行われ、会場参加者も含めた話し合いをしました。秋田県農林水産技術センター総合食品研究所主席研究員高橋砂織さんによる「おこめのDNA鑑定」のお話もうかがいました。講演の間には、武庫川女子大学食物栄養学科学生有志による「お米大好き」というダンスとコーラス 「amazing grace」があり、会場は楽しい雰囲気になりました。

神戸女子大学の発表 神戸女学院大学の発表
武庫川女子大学の発表 ダンス「お米大好き」


学生による発表
1.「遺伝子組換え食品の現在、未来」 神戸女子大学学生

遺伝子組換え食品は、将来、栄養士になる上で勉強しておきたいと考え、作り方、問題点、安全性評価、現状、将来について調べ、考えた。
安全性は食品衛生法で定めた項目、食品安全委員会が示している安全性基準項目によって審査される。審査を通過したものが厚生労働大臣に認可されるので、安全だと思った。
生態系への影響では、近縁のチョウ類への影響を問題視した研究(コーネル大学)があったが、これは結果が予想できる実験だったことがわかった。農薬に耐性をもつ害虫の誕生も懸念されているが、遺伝子組換えトウモロコシの畑の周囲に2-5割の緩衝地帯を作って対応している。薬剤耐性遺伝子の雑草への伝播についても、他の除草剤は効くので問題ないことがわかった。
現在、国内で流通しているのは、害虫抵抗性や除草剤耐性のトウモロコシ、ダイズ、ナタネ、ワタなどで、市民が食べたいものがないのが不安や懸念の理由のひとつだと思った。
研究中のものには、食糧分野(光合成能力アップ、病虫害に強い)、エネルギー分野(バイオエタノールの原料)、環境改善(リンや窒素の除去、高温乾燥に強い、カドミウムの除去)、環境保全(生分解性プラの原料を生産する作物)、その他(ワクチン、ゴールデンライスなどの栄養強化、カフェインの少ないコーヒー)などがある。私たちは、そばアレルギーのヒトが食べられるそば、ミネラルが豊富な米などができたらいいと思った。

まとめ
遺伝子組換え作物は、ヒト、生態系に影響がないことがわかった。それなのに広まらない理由は、遺伝子組換え食品に魅力がないから、偏見があるからだと思う。
会場からの質問:Btタンパクはどうして虫を殺すのか→害虫には殺虫成分であるBtたんぱく質の受容体を持っているから、害虫は死んで当然だが、ヒトには問題はない


2.「遺伝子組換え作物―よその国はではどうなっているの」神戸女学院大学学生

インターネットや文献調査をもとに海外の状況を調査した。

EUの国々の状況
食の安全は大事な課題で、「ファームとフォーク」が合言葉になっている。欧州食品安全機関が設立され、BSE規則、遺伝子組換え体への規制、共通農業政策(CAP)に取り組み、BSEは減少している。GMOの表示にはルールがあり、消費者には選択できる。
EU共通農業政策の結果、生産者の生活水準の適正化と消費者に良質な食品を公正価格で提供し、質の向上、生物多様性や伝統的景観の保全、農村経済の存続ができている。そして、消費者には適性価格で安全な食品が提供されつつある。
フランス:商業栽培が再開された。Btトウモロコシ導入でトウモロコシの収量が増加しカビ毒被害が減った。
スペイン:商業栽培では害虫被害があり、Btトウモロコシを導入しコスト削減を図る。
ドイツ:規制がある中で、遺伝子組換えナタネ混入が見つかった。ミツバチの腸内バクテリアに除草剤耐性遺伝子が見つかった。

EU以外の国々の状況
米国:世界で最大の栽培国で、全耕作面積の53%が組換え。農薬の散布回数を減らすことができている。規制はUSDA,EPA,FDAなどが入り組んでいて複雑。栽培しているのは、アルファルファ(75%が日本の飼料として輸出)、トウモロコシとダイズ(コーンベルトで2年輪作)、パパイヤ(ハワイはウイルス被害で壊滅状態になったが組換えで復活。反対者もいる)など。ラトガース大学クックカレッジの食品政策研究所の調査によると、アメリカ人1,200人では、賛成が49%、表示を求める人は94%だった。
中国:栽培面積は世界で第6位。害虫抵抗性ワタに集中して商業栽培をしている。研究はさかんで期待も大きい。安全性審査も実施されており、表示制度もある。
フィリピン:国際イネ研究所があり、ゴールデンライスを研究。国家バイオセーフティ委員会による規制に従っている。
インド:世界第5位の遺伝子組換え作物栽培刻。中心の作物は遺伝子組換えワタ。

遺伝子組換え食品への抵抗感
日本では、農林水産省政策研究所の電話調査によると、69%が抵抗感をもっていた。一般に女性の方が強いようだ。
海外の印象はアメリカは人種も様々で自由な感じで、欧州では遺伝子組換え食品を目にする機会もなく規制が厳しい。遺伝子組換え作物への抵抗感が日本ほど強くない理由として、@農家が身近、A経済的に余裕がないので気にせずに食べるがあると思う。しかし、外国でも組換え技術への認識は低く、抵抗感は強いという共通した側面も見られた。
〜会場で挙手したところ、抵抗の有無はほぼ半々だった〜


武庫川女子大学 「クローン牛について」

クローン牛の出生頭数は、平成18年、受精卵クローン700頭。死産と生後直死・病死が28%。43%が食肉出荷されている。体細胞クローンは平成11年から去年までで、470頭で、病死と生後直死と死産が多い。食肉はない。
遺伝子操作していない、染色体に影響を及ぼす可能性がほとんどない、病理学的調査がされている、国際的にも安全性への指摘なしから、安全性については問題なし。
この技術には、食糧の安定供給、実験用動物の革新、希少動物保護再生、移植用臓器製作、医薬品製造における応用などの可能性がある。

アンケート結果(一般市民対象に実施)
○クローン牛が市場に出ていることを知っているか はい17人 いいえ120人
○クローン牛が出たら食べたいか 食べる34人 食べない103人
食べる理由:興味本位、国際生産が増えると思う、気にならない、危険視する気持ちがわからない
食べたくない理由:人体に害がある、倫理的にだめ、知識不足で安心できない、気持ち悪い、安全性が不明

まとめ
任意表示なので、知らない人がいて当然で、クローン表示を見たこともないがほとんどだが、実際には受精卵クローン牛は食肉出荷されており、体細胞クローン牛も近く出荷されるだろう。知識がないと、よくわからず、危ないから食べたくないと思うが、知識があれば、理解でき、選べるようになる。クローン牛表示を義務付け、消費者も学ぶべきだと思った。
クローン牛が出回っていることを知っているかという問いに数人が挙手(多いですね)
会場から質問:「クローンの牛の比率は」→1%以下です。


伊藤潤子さん(コープこうべ参与)のコメント

神戸女子大:要領よくまとめられていた。オオカバマダラの死は想定されるという考え方のバランスがいいと思った。農家の採算という視点もあったほうがいい。GMOに魅力がないのは、消費者メリットがないためといわれているが、低価格や農薬が少ないのも消費者メリットだという考え方も必要でないか。率直で科学的でよかったと思う。 神戸女学院大学:海外の状況は貴重な情報だった。EUが積極的だということを再認識した。 ウイルス蔓延の中でハワイは日本向けの非組換えパパイヤを作っていることもわかった。発表した3人にはGMOへの抵抗感はありますか(まだ少しありますとうい回答) 武庫川女子大:体細胞クローンの国内流通はOKになっている。食べない理由のアンケート結果が遺伝子組換えの理由と同じだったが、知らないものに対する抵抗感は同じですね。未知のものをどう伝えていくかを次に学ぶと面白いのではないか。生命観についても考えておくべきだと思う。クローン羊ではテロメアが短いことが問題になったが、牛は2-3年で食べるからいいのでしょうか。


会場の話し合い

会場からはクローン牛の発表に対する発言が多く、「クローン牛のことを知らなかった」、「説明を聞いて安心した」という人もいましたが、「説明を聞いて病死が多いので不安になった」という声もありました。



 
高橋砂織さんのお話  

「お米のDNA鑑定」

秋田県農林水産技術センター総合食品研究所 主席研究員 高橋砂織さん

お米の重要性
日本の米の産地は北海道1位、新潟2位、秋田3位。日本の食糧事情と自給率は、カロリーベースで40%を切ったが、お米の自給率は100%。問題は麦と肉で、小麦が値上りすると、そば、パスタ、パンも値上がりすることになる。 
 宮沢賢治の「アメニモマケズ」に「1日に玄米4合と味噌と少しの野菜を食べ」という1節があるが、玄米4合(600g)は2100calだから活動レベル2の人なら生きられる熱量。

秋田のお米

イネは南方系植物なのに秋田でとれるのは、秋田は水が豊かで、夏はとても暑く(日本海側でフェーン現象が起こる)、稲作の条件である水と温度が満たされるから。以前は多収穫米を作っていたが、おいしいお米を目指し品種改良を行った。そこで、多収穫で冷めてもおいしい秋田31号が誕生。秋田生まれの小野小町から、「あきたこまち」とした。
現在、日本で作られているのは、北海道はきらら397、青森はつがるロマン、宮城と山形はひとめぼれ、秋田はあきたこまちと県ごとに違っている。

品種の分布
関東と近畿はコシヒカリが多い。その中で、奈良はヒノヒカリ、和歌山はキヌヒカリ。
どこでどの品種を作るかは、日較差、降水量により、JAが作付け指導をしている。リスク管理上、ひとつの県でつくる品種が偏るのはよくない。秋田は85%が作りやすく冷えてもおいしいあきたこまちを栽培しており、本当は3種類、3等分くらいにしたいところ。

お米の鑑定
現在、日本で生産されるあきたこまちの6割が秋田県産。しかし、足し算したら出荷量より多く、ニセあきたこまちが出回っているという危機感をもった。ブランド確保のために、お米のDNA鑑定を行うことになった。それまでの判定は熟練した検査官が「ノゲ」というとトゲのついたモミを見て判定していたが、判定できる検査官が少ないのが難点。酵素を使う方法などもあるが、2−3日かかったりする。
イネは日本に350種ほどもあるが、農林1号と農林22号からできているので、遺伝的に近縁で、電気泳動という方法で調べても特徴的なバンドが沢山生じて、判別にしにくい。そこで、特徴的なバンドだけが現れる手法を開発し、300種のプライマーから出発して、1粒のお米でもできるようになった。使っている分析キットは宝酒造製で、そこにロッシュ社への特許料が含まれている。
センターで検定した米には、DNA鑑定マークをつけて出荷。

今後の展望
これからは、有用な遺伝子を使った作物を作出し、高齢化、食糧・人口問題、環境問題に役立てなければならない。
遺伝子組換え技術は基礎研究では、タンパク・酵素の研究、病態解析、万能細胞作製に役立つ。応用研究では、医薬品、ホルモン、酵素の生産、レンネット(チーズを固める酵素)やセルラーゼ(木綿加工用酵素)の合成、遺伝子組換え作物の開発など。
私の研究テーマは血圧調節機構への応用。レニンの阻害物質を食物から探し、大腸菌に組みいれ、レニンを作らせたい。食物ではある種のきのこ、海藻やダイズに多く含まれていることがわかってきた。



質疑応答
  • は参加者、→はスピーカーの発言
    • イネゲノム解析研究は今?→終了し、詳細を詰めている状況。
    • あきたこまちのこれからの研究は→あきたこまちを脱却し次を目指している。リスク管理上からは、あきたこまちの作付けを6割以内におさえたい。
    • 大吟醸にしたときにお米を削ってできる米粉は→米焼酎の原料にしている。米粉パンやパウンドケーキに開発中。
    • 偽のあきたこまちが見つかったことはあるのか。そのときはどうしたのか→あるサンプルを調べたら、6割、9割があきたこまち以外の米だった。鑑定をすると、そのサンプルを使ってしまうので証拠はない。DNA鑑定実施を公表し、抑止力に期待している。
    • 北海道以北で米作は可能か→北海道は北限。今も水温管理や夏の低温で苦労している。
    • 将来、遺伝子組換え米は出回るだろうか→世界人口増加にむけて、遺伝子組換え技術に向かって行くだろう。コムギやトウモロコシを燃料するならば、米をもっと作るしかなくなると思う。多収穫米や陸稲の研究が進むと思う。
    最後に伊藤潤子さんから「学生さん、高橋先生、ともに遺伝子組換え技術には経済の視点が大事であることが示された」というコメントをいただきました。

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