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講演会レポート
「あらためて。企業にとっての危機管理〜事故や事件を起こさないために。
             でも起きてしまったら」

5月16日(金)、NPO法人くらしとバイオプラザ21総会とあわせて講演会を開きました。
お話は電通パブリックリレーションズ青木浩一さんによる「あらためて。企業にとっての危機管理〜事故や事件を起こさないために。でも起きてしまったら」でした。

青木浩一さんのお話 会場風景


お話の主な内容

期限切れ原料使用がもたらしたこと
期限が切れた牛乳を使った洋菓子で老舗の菓子ブランドが失墜し、ライバル会社の傘下に入ることで存続するという事件があった。危機管理の失敗が組織存続を脅かす時代となり、マスコミや社会の目の厳しさが認識された。
このようなことは起こらないにこしたことはないが、予防のためには内部統制とコンプライアンスが重要。起こってしまったときの対応は、情報開示と説明責任ということになる。
結果的には、まずい報道対応が不信を拡げたといえる。
実際には期限切れ原料を使っても加熱した加工品なので、健康被害はなかった(後日わかったこと)が、不正確な情報開示は隠蔽体質への過剰反応を招き、必要以上に大事件に発展させてしまう。

安全と安心
安全は科学的に説明できるが、安心は心の部分の納得が重要になり、危機管理から考えると難しいところ。背景には厳しくなった生活者や社会の目がある。
「法的に問題ない(社会的な問題は?)」、「必要悪(だから許されるのか?)」、「かつては許されていた(組織内の常識を疑う)」、「業者がやった(管理責任をどう考えるのか?)」、こういう発言は致命傷になる。
法的責任はなくても道義的責任があることを肝に銘じておかなくてはならない。

偽装表示
血で赤くしたハンバーグでは、社長の記者会見で、発言の内容を一転し、否定から肯定に転じた。このような発言はマスコミで面白く扱われてしまう。
老舗和菓子では、社長が何度も引っ張り出される場面があった。何度も社長記者会見をすると、繰り返し記事にされてしまう結果を招く。度重なる社長記者会見は、情報の出し方にも問題があることを示している。
「比内鶏の廃鶏を利用」、「残飯使い回し」などの報道では、「漢字のイメージ」の怖さが現れた。
取締役が雇用者に責任を押し付けていたという背景があったときには、「シークレット会見」が行われ、悪い印象は消費者に深く焼きつく。
現実には「素材がもったいない」と「社内基準」のせめぎあいがある。

内部告発
このような報道の背景には内部告発がある。このごろ、新聞社の社会部には1日数十の内部告発が寄せられているという。高度成長期には一丸となって働いていた社員が、バブル崩壊後、リストラにあい会社の求心力が弱まってしまった。
農林水産省の表示窓口には告発のラッシュ。
インターネットの告発、書き込みも事件を引き起こす。悪意のない書き込みから風評が拡がることもある。
正論で攻めてくるクレーマーが増加しており、どう対処するか。教育や医療分野でも「モンスターぺアレント」、「モンスターペーシェント」が問題になっている。

では、どうすればいいのか
違う業界、違う会社の事件は対岸の火事と感じがち。しかし、人の振り見て我が振りなおせ、普段からの備えが大事。日々の新聞報道やニュース番組は危機管理の教科書といえる。
リスクマネージメントとは、リスクへの感度を全組織的に高める!こと。
危機の発生を未然に防止するには、1)コンプライアンス(法令遵守)意識の徹底、2)お客さん、取引先、従業員との間で守るべき法律を守る、3)法律だけでなく、就業規定、社内規定、さらに社会倫理・常識を逸脱しないこと、4)社会の期待に応える、裏切らないこと。
 企業の法令違反に対して、社会は失望し、批判する。企業に対して市民が抱く期待値に応えないと、法令違反でなくても不信、不安、不快を生む。顧客満足度を満たせなくなる。ブランドが高いほど、落胆も大きい
「絶対はない」という意識がコンプライアンスの基礎。その中で内部犯は、悩みの種。即ち絶対はないことを肝に銘じるべし。

ヒヤリハット
ヒヤリとした、ハッとした、即ち、危なかったと思った経験を共有することが大事。
ハインリッヒはアメリカの労働災害事故を分析した。1件の重大な事故の背景には29件の軽微な事故があり、異変や予兆が300件あったと報告している。
重大事件を頂点とすると、これを防止するには300件の予兆をつぶしておかなくてはならないこをとハインリッヒの法則は教えている。
視点の客観性の必要、会社のモノサシでなく、社会、お客さんのモノサシで捉えることが、早期発見と早期対応につながる。また、早期発見と早期対応が出来る体制かどうかを定期的にチェックすることが重要。
事故や事件に共通する背景には、社内の風通しの悪さがある。同族経営が裏目にでることもある。会社は、縦方向には強いが、横方向の団結も強くないと危機には備えられない。
社内の動脈(中心からのきれいな血)と静脈(現場からのやかましい声)が両方から、情報が届くように、ホウレンソウ(報告連絡相談)や「見える化(トヨタは工場内でトラブルがあるとランプが点灯する)」が重要。

リスク未然防止のアプローチ
 どんなリスクの芽があるのか、どこにあるのか、どのくらいそれが起こるのかを把握して予防策を検討しマニュアル化しておく(平時の危機管理)。
キーワードは「意識」。「今回だけだから」「昔からずっとやっていた」「誰かがやってくれる」「見てみぬふり」「この程度なら」の蓄積でヒューマンエラーが起きる。
必要条件に意識が加わってこそ、作った仏像に魂が入るように、危機管理は機能するようになる。
企業危機を4つ分けると、1)第1線部署の危機意識の欠如、2)上層部の情報抱え込み、3)誤った収益やコストへの意識、4)問題を指摘しにくい企業体質。
社員間のコミュニケーションと信頼関係強化、継続した危機管理、“地道で定期的で継続的な努力“が重要。
日本ハムでは8月6日をハムの日として自らを振り返るそうだ。ブリジストンは大火事発生の日に毎年、思い出す行事を続けている。
黄色信号では必ず立ち止まろう!という意識を全員がもつこと、明確な行動基準の提示が大事。

クライシスコミュニケーション「おきてしまったらどう動くか」
不祥事を起こしたことより、それにどう企業が対応したかが問われる。すなわち、不始末の後始末の方が大事。
不祥事における初期対応(第一報→状況把握→状況判断→対応)のミスをしないこと。
第一報(5W1H)が遅れないこと。上司がいなかったら、その上の上司にでも伝える。大げさにいうと、世界中から情報がとまらずにあがってくる体制を作っておくべきで、事件を起こしたところの動きを勉強するとよい。
注意すべきことは、
過小報告の防止
聴く耳を持つ(怒らないで報告をしっかり聞こう!)
スピード
最悪の事態を想定して対策を立てて迅速に行動する
目先の対応だけでなく最悪の事態まで突っ込んで考えられるか
記者会見で記者にストレスをためさせないためには、
先入観に惑わされずにまっさらな頭で客観的に事実を報告する(列車は単独では脱線しないはずという先入観がわざわい)
事故に対する被害者意識と責任転嫁したくなる気持ちを絶つ
謝罪する
過小報告をしない

マスコミ対応
マスコミは企業不祥事をニュース仕立てにしてみせようとする。例えば、企業性悪説、針小棒大など。これらに対抗するには、次のことに注意する。
情報の出し惜しみ(情報の二転三転)や隠蔽をしないこと
事態の情報収集を行い先手必勝で情報を出すこと(後手の悪印象は大きい。原因が分からなくても、いち早く情報を出すべき)
正義を見せること(いかに好印象を与えるか)
誠実で精確な言動から納得感を獲得すること
情報錯綜や誤報をさけ、わかりやすく情報を出すこと
マスコミにつっこまれそうな対応をしないこと

まとめ
日本のウエットな社会にはまず謝罪することが必須。ここでは、情と理(補償の絡む問題など)の配分(理屈で100%はおせない)に注意する。
まず原因説明を行い、再発防止策を説明し、責任をとることを伝える。
記者会見の数台のカメラの後ろには日本全国の視聴者がいることをしっかり自覚すること!
当事者意識やメディア認識が欠如していると大きな問題に発展しやすい。日常の安全管理の再点検を怠らないようにし、全員の意識を高め、企業内でのリスクに対する感度を高めることが重要。
不幸にして、事故が起こってしまったら、スピードをもって情報開示し、社会的視点から行動すること。
伝える努力が問われるので、わかりやすく説明し(正確、明快、誠実に)、納得と好印象を得るようにする。それには普段からのリスクマネジメントが重要!



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