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コーデックス・バイオテクノロジー応用食品特別部会
第4回会議が開かれました

 コーデックス・バイオテクノロジー応用食品特別部会の最終回となる第4回会議が3月11〜14日にパシフィコ横浜国際会議センターで開催されました。同特別部会では遺伝子組換え食品の安全性に対する考え方が議論されてきましたので、今回日本で開かれたバイオテクロノジー応用食品特別部会で議論されたことについてまとめてみました。

会場風景。前方中央は吉倉議長。手前のテーブルには英語、フランス語、スペイン語の資料が会議の進行に従って次々に並べられていきます。
会場風景。前方中央は吉倉議長。手前のテーブルには英語、フランス語、スペイン語の資料が会議の進行に従って次々に並べられていきます。

コーデックス委員会とは?

 コーデックス委員会とは正式にはコーデックス・アリメンタリウス(Codex Alimentarius)というラテン語からきた言葉で、食品規格という意味をもち、国連の専門機関である国連食糧農業機関(FAO)と世界保健機関(WHO)の合同食品規格計画の実施機関として設立され、現在、世界的に通用する食品規格を策定しています。国際食品規格の策定を通して消費者の健康を守るとともに、公正な食品貿易の確保(※)を目的としています。

バイオテクノロジー応用食品特別部会の誕生

 遺伝子組換え食品の安全性に対する国際的な関心が高まっている中、1999年のコーデックス総会で「バイオテクノロジー応用食品特別部会」が4年間の期限付きで日本の提案により設置されました。23のコーデックス部会(特別部会を含む)がありますが、アジアの国の中で議長国になったのは日本が初めてです。



 設置の目的は、「バイオテクノロジー応用食品について、あるいはバイオテクノロジーにより食品に導入された特性について、科学的な知見及びリスク分析に基づき、消費者の健康及び公正な貿易の促進などを考慮し、必要な基準、指針あるいは勧告を策定すること」です。以上の最終報告を2003年のコーデックス総会に提出する計画のもとで特別部会が設置され、議長は吉倉廣氏(国立感染症研究所長)が務めることになりました。

今までのバイオテクノロジー応用食品特別部会の流れ

第1回会議(2000年3月14〜17日 千葉・幕張メッセ)

 「リスクアナリシス(危険度の分析)の広範な一般原則などに関する作業部会(日本が議長を務める)」と「分析法のガイドライン作成のための作業部会(ドイツが議長を務める)」の設置が決まりました。トレーサビリティ(追跡可能性)とファミリアリティ(精通度。たとえば食物の場合、長く食べてきた歴史の中で知られている度合い)の議論も行われましたが、理解を深める検討資料を次回までに作成することになりました。



第2回会議(2001年3月25〜29日 千葉・幕張メッセ)

 「アレルギー性評価に関する章の完成度を高めるために作業部会(カナダが議長を務める)」、「組換えDNA微生物由来食品の安全性評価に関するガイドライン案を準備する作業部会(米国が議長を務める)」の設置が決まりました。



第3回会議(2002年3月4〜8日 神奈川・横浜パシフィコ)

 「バイオ応用食品のリスクアナリシスのための原則」中で、安全性に問題が生じた場合の製品回収や上市後のモニタリング(追跡調査)のためには製品の追跡がリスクマネージメントのひとつの有用な手法である旨をトレーサビリティという言葉を使わずに原則案に取り込むことで合意されました。「組換えDNA植物由来食品の安全性評価の実施に関するガイドライン」(付属文書「アレルギー誘発性の評価」)も合意されました。一方、遺伝子組換え食品の検知法のリストが分析法のワーキンググループにより作成され、コーデックス委員会の分析・サンプリング部会で検討されることになりました。



第4回会議(2003年3月11〜14日 神奈川・横浜パシフィコ)

 主として「組換えDNA微生物利用食品の実施に関するガイドライン」について検討が行われました。対象となるのは、酵母や糸状菌を用いて製造される食品(ヨーグルト、チーズ、納豆、ビール、ワイン等)で、組換えDNA微生物は、生きたまま摂取される場合が想定されることや組換え微生物及びその生成物が食品中でほかの食品成分に影響を及ぼす可能性があるなど、これまでに合意した「組換え植物のガイドライン」とは異なる点について詳しく議論されました。また植物の場合と異なり微生物の場合は生きたまま食品に含まれる可能性があるため、ヒトの消化管に対する影響や遺伝子組換えの目印として使われている抗生物質耐性遺伝子の評価等についても多くの議論がなされました。
 この会議では、NGOとして参加していた日本子孫基金が厚生労働省の了解を得て、会議全体をインターネット中継したことが話題になりました。
 4年間という期限付きのバイオ応用食品特別部会で付属文書を含む4つの文書が合意されたことに対して、議長を務めた吉倉廣氏の活躍及び日本政府の準備、運営が高く評価されました。この間に合意された文書は「バイオテクノロジー応用食品のリスクアナリシスに関する原則」、「組換えDNA植物由来食品の安全性評価の実施に関するガイドライン」、付属文書「アレルギー誘発性の評価」及び「組換えDNA微生物利用食品の安全性評価の実施に関するガイドライン」です。



 日本がアジアで初めて議長国を務めたバイオテクノロジー応用食品特別部会の成果が参加各国から高く評価されたことは、市民である私たちにとってもうれしいことですし、私たちもこのような国際的な会議に対して関心を持ってひとりひとりが考えていかなくてはならないこと、生物学的な技術ばかりでなく、公平な貿易や多面的農業(農作物の生産ばかりでなく、農業には環境や水源、景観の保全などの多面的な機能や利点があること)の意味をあわせて学んで考えていかなくてはならないことを知るよい機会になったと思います。


※ コーデックス委員会とWTO(世界貿易機構)の関係

 コーデックス基準は、必ず守らなければいけないという拘束力はありませんが、ほとんどの場合、国内の基準は、コーデックス基準に整合化されます。なぜなら、コーデックス基準に従っていない場合、非関税障壁(製品の規格など関税以外のもので貿易の障壁となるもの)として、貿易相手国からWTOに提訴される可能性があるからです。この背景には2つの国際協定(「貿易の技術的障壁に関する協定」と「衛生及び植物検疫措置の適用に関する協定」)があって、食品の安全性や技術的なことに関する国内基準は、原則として国際基準に整合化することが規定されています。貿易紛争になれば、WTOの紛争処理パネルで敗訴する可能性が高く、事実上、各国はコーデックス基準に従わざるをえないのです。たとえば日本の焼酎の税率が低いことウィスキーの販売を不利にしている米国に訴えられて日本はWTOで敗訴した経験があり、このため税率を是正し、焼酎が値上がりし、ウィスキーが値下がりしました。コーデックス委員会で各国が一言一句まで細かく検討するには、このようなWTOとの関係があるからです。










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