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バイオカフェレポート「意外と身近な食品添加物〜食品添加物って安全なの?リスク評価、役割、機能など」

2009年6月28日(日)、千葉県立現代産業科学館にてバイオカフェを開きました。お話は三栄源エフ・エフ・アイ㈱山崎彰さんと浜崎孝治さんによる「意外と身近な食品添加物〜食品添加物って安全なの?リスク評価、役割、機能など」でした。梅雨の晴れ間、大人や子ども20名が参加して、お話をうかがったり、フレーバーあて体験クイズを楽しんだりしました。初めに高橋晴香さんによるバイオリン演奏でした。

高橋晴香さんの演奏 山崎彰さんのお話

お話の主な内容

第一部 「お話」 山チャンこと山崎彰さん

食品添加物とは
食品添加物は嫌だなと思う人が多く、自分もそうだったが、食品化学を学んでそう思わなくなった。食品添加物は次に示すように、実は身近にある。
炭酸水素ナトリウムはクッキーを膨らますために使う。膨らし粉という名前は知られている。硫酸アルミニウムカリウムはナスの漬物の色止めに使い、みょうばんと呼ばれている。粗製海水塩化マグネシウムは豆腐のにがり。アシッドレッドは手毬麩の赤線の色で食紅。
食品添加物には、指定添加物(398種類)、既存添加物(418種)、天然香料(天然の動植物からとった香料、約600種)、一般飲食物添加物(例えば、ウコンは普段は食品だが黄色づけに使うときだけ着色料として添加物と分類される、約100種)。
みんなが気にする化学的に合成された添加物は指定添加物に分類され、指定制度という厳しい仕組みを通過したものだけ認可されている。

食品添加物の使い方による分類
1.栄養成分を補充、強化する添加物
ビタミン、ミネラル、アミノ酸など栄養素だが、その多くが添加物として食品に使用されていると認識している人は意外と少ない。

2.食品製造に欠くことのできない添加物
豆腐用凝固剤 豆腐のにがり 塩化マグネシウムがないとただの豆乳。
中華麺 かんすい 独特のコシと黄色の色がつく。入れないとウドンと同じ。
水酸化カルシウム コンニャクを作るときに固めるのに使う。

3.食品を魅力的なものにし、品質を良くする添加物 
着色料、調味料、甘味料、香料、酸味料など。五感(見る、聞く、触る、におう、味わう:生きるために大事)にアピールする添加物。
味覚はヒトが進化してくる間に、自己防衛に必要なものだった。
甘味は糖類で、エネルギーの素。
塩味はミネラルで、生理活動を円滑にする。
うま味はアミノ酸だからタンパク質。タンパク質は食べると肉になり、体を強くする。
エネルギー源である糖質と体をつくるアミノ酸は生きるために比較的多くとる必要がある。甘味とうま味は食べると脳内にベーターエンドルフインという物質が分泌されて幸せな気分になる。だから、生きるために必要なものを一生懸命に食べるようになる。
苦味は、アルカロイドのような毒の味なので、危険回避のために、人間は苦味に関しては非常に濃度が低くても感知できる。酸味は、腐敗の味なので、すっぱいものを嫌うのも腐敗したものを避ける意味がある。赤ちゃんは苦味を顔をしかめて嫌がる。しかし大人になると食経験から苦味や酸味も好むようになる。
スクラロースという添加物はカロリーゼロの甘味料として、肥満・高血圧の人には有用。

4.食品の保存性をよくし、食中毒を防止する添加物
保存料の役割がこれから重要視されると思っている。ノーベル受賞者ワンガリ・マータイさんは「モッタイナイ」という日本の考え方を世界に伝えているが、保存料は食品ロスを減らすのに役立つかもしれない。日本の食品ロスは年間500〜900万トンで、保存料をもっとうまく使えば日持ちして、捨てる食品を減らせるのではないか。

食品添加物に対するイメージ
多くの人が食品添加物の安全性に不安を持っている。不安に思う理由はいろいろあるが、テレビや新聞などによる「危険だ」という報道が大きい影響を与えていると思う。保存料・着色料不使用という表示が添加物に対し誤解を招いていることもあるのではないか。確かに、戦前戦後の混乱期にはズルチンという甘味料による死亡事故や砒素ミルク事件があった。その印象を強く持っている人もいるが、今は厳しい動物実験を経て安全性が確認され、厚生労働省が許可したものしか使われていない。

安全性審査の方法
マウスやラット等の実験動物にある物質を与えて行き、毒性が始まる一歩手前の量を「無毒性量」とする。これに100分の1をかけて、毎日食べ続けても安全な量(1日摂取許容量 ADI)を決める。
食品添加物の利用はそれぞれの人の価値観によって選べばいいが、食品添加物はADIを基準にして安全な使い方が法律で決められ守られている。実際に我々が食べている添加物はADIに対して非常に少ない量であるので、安心して使ってほしい。消費者が選択しやすいように色々な情報提供しており、いっぱい参考サイトがあるので自分でも勉強してみてほしい。

質問1:マウスの実験は2世代までするようだが、それで十分なのか。2世代より長いデータの積み重ねはあるのか→動物実験のやり方は厚生労働省が次世代以降にも悪影響がないか確認する方法を定めていて、その方法に従って行うので、ご心配はない。
質問2:やきそばはかんすいを入れると聞いたが→やきそばや中華麺にはかんすいが添加されている。うどんはかんすいを入れなくてもできるが、うどんを工業的に大量に作るときには、保存期間、味、コストなどを考えて添加物を入れることもある。
質問3:ガムベースは何に使うのか→ガムベースの原料は主にチクルという植物の樹脂からとったものでガムに使われる。ガムベースがないとガムはできない。風船ガムにはチクル以外の別な高分子を使う。
質問4:アメリカから輸入されるオレンジにはポストハーベスト(収穫後の農薬)が使われていると聞いたが、果物や野菜の残留農薬の基準はどうやって決めるのか。国ごとで異なるのか→残留農薬や添加物の基準値が国ごとに違うのは国によって、食生活が異なるから。例えばりんごを一杯食べる国とそうでない国ではりんごの残留農薬の基準値は変えてあるはず。


第二部 「実験と試飲」 浜ちゃんこと浜崎孝治さん

梅干の写真を見ると、口がすっぱくなるのは、食べた経験や色の効果
食品の機能には次の3つがある。
・一次機能 栄養面での機能
・ニ次機能 嗜好面での機能 色、味、香り、食感
・三次機能 病気などを予防する機能
美味しさを感じる五感の中の割合は、視覚の影響が8割と断然高い。次は聴覚。
色と食欲の関係を見ると、食欲が増すのは赤・橙・黄色などの暖かい色、食欲が減るのは黄緑、紫など冷たい色。紫は人気がなかったが、紫芋を使った食品・飲料など発売されこのルールを打破した。
スパイスやハーブは香りや色で食欲を増進させる(パエリアのサフラン、カレーのターメリック、キムチのパプリカ、赤飯のアズキなど)。
食経験から、食品とその色は関連付けられており、生理的・心理的な反応が起きる(牛乳は白、イチゴは赤、レモンは黄色)。

シャーベットの官能試験の結果
オレンジ香料のシャーベットに、オレンジ色をつけると、「オレンジの香料」と正解した人は99%、無色だと正解率は47%、紫色をつけたら正解率21%。
このことから、味覚に対して色が与える効果の大きさがわかる。

実験1 試飲
青い糖水に4種類の果物の香料をつけたものを15名の参加者が飲みました。
正解は、ピーチ、レモン、ブドウ、イチゴで、正答率は、次の通り。 

 正解正解者(人)正答率(%)
Aピーチ1173
Bレモン1493
Cブドウ15100
Dイチゴ1387


試飲の準備 浜崎孝治さんのお話
青い色のシロップの4つの香がついている 会場のみなさん


食物の色
植物はそれぞれ色素を持っていて、それは食物の着色料として使われる。例えば、トマトの赤はリコピン、紫トウモコロシの紫はアントシアニン。クチナシで栗きんとんを黄色にすることは、家庭でも行われている。また、ベニバナからは黄色と赤色の2種類の色素がとれる。食べ物の着色料を混ぜて別な色を作ることもできる。例えば赤と青で紫。
食物の色は食べることを楽しくする役目を果たしている。色や香りがないと、存在価値がなくなってしまう食品があるといってもいいかもしれない。

実験2 色とpH
紫キャベツの色素をpH(液体が酸性か、アルカリ性かを表す単位)の異なる水溶液に入れると色が変わる。 紫キャベツは弱酸性だと、安定したきれいなピンク色が得られるが、アルカリ性の青は不安定で分解してしまい、残らない。

「トマトの赤い色素はリコピン」 安全に使えるいろいろな食品用の色素


話し合い 

質問1 紫の食品・飲料は人気がなかったのか→紫のジュースなどのきつい色には抵抗感があったが、紫芋コロッケ、紫野菜のジュースで紫は体にいい!というイメージが広がった。
質問2 黒い食べ物は体にいいというが余り見かけない→クロゴマの色素はアントシアニン。薄めると赤色。アントシアニンは抗酸化作用のあり、体にいい。コーラの黒色は薄めるとカラメル色素の茶色。赤青黄を加えると黒になるが、3つの色素を使うとコストが上がる。
質問3 白砂糖などの白が危険という考え方はどうか→白砂糖も黒砂糖も精製の違いなので安全性は同じ。黒砂糖を精製するときに、大事な微量のミネラルなどがなくなってしまうと考えられるようだ。安全性に変わりはない。もし微量成分が減っても、それは他の食品で補っている。大事なことをいろいろな種類の食品をバランスよく食べること!