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メディアとの情報交換会「食肉の表示のありかたについて」

 2010年12月7日(火)、食の信頼向上をめざす会主催の第10回メディアとの情報交換会がベルサール八重洲にて開かれました。テーマは「食肉の表示のありかたについて」でした。消費者庁で議論されている「食肉の表示」の問題を受けて、このテーマが選ばれました。


「食肉の表示のありかたについて」      消費者庁表示対策課長 笠原宏氏

焼き肉の料理名における表示、消費者庁での検討について報告する。

景品表示法とは
 景品表示法の目的は不当な表示による顧客の誘因によって合理的選択の阻害を防止し、消費者の利益を保護すること。
JAS法、食品衛生法は表示内容と表示方法、表示の場所を定めるもの。コマーシャル映像などはJAS法適用外。これに対して景品表示法では商品包装だけでなくテレビコマーシャル、インターネットなどあらゆる方法が含まれ、商品名や料理名も対象となる。

禁止されている表示
 サービスや商品の内容に関するもの、取引に関するもの、その他の3つがある。
競合商品やサービス、競合会社の取引条件より著しくよいと思わせること、具体的な表現が実際と異なっていて、顧客を不当に誘因することは、違反になる。
違反の内容は、①優良誤認、②有利誤認表示、③不当表示に分けられる。

焼肉メニュー表示で問題になったこと
 ロースと表示しているのに、ランプや外腿肉が使用されているという情報提供があった。
ロースとは、肩ロース、サーロインの総称であるが、実際には料理名としてはロース以外を使っても「○○ロース」と示してきた歴史と認識が長年あった。
 消費者庁としては、焼き肉業者におけるこのような表示が、長年の慣行として行われてきたことから、表示の適正化のためには、特定事業者の問題として処分をするというよりは、業界としての認識を見直してもらうことが重要であり、このために、当面、指導しながら周知期間を置いて対応していきたい。
 事業者からの問い合わせが多く、問題意識を持っている事業者が多いことを感じているが、使い慣れた料理名を変えることに抵抗感を示す事業者も少なくない。このような中で、まずは、表示の適正化に一歩でも進めていくために、まずは、例えば、料理名は「○○ロース」としたまま「モモ肉を使用しています」とメニューに併記したり、店内に掲示するなどの対応を進めていただきたいと考えている。そのような対応では消費者から、紛らわしい等の声が出てくるようであれば、料理名自体の変更を求めていくこととなる。  


「食肉の部位に関する基礎知識」  ㈱マオ・インターナショナル 代表取締役 毛見信秀氏

 2005年に食肉の消費量が魚のそれを越えた。2001年のBSE問題で牛肉の消費が落ちたが、食肉全体では盛り返している。BSE問題からトレーサビリティが厳しくなり、食肉業者は真面目に表示に取り組むようになった。
汚いイメージだったホルモンが女性に人気になったり、食肉の部位名をよく知っていることをステータスと思うような消費者も増えてきている。

食肉の部位と名前
 牛は、肩はカタ系、背中はロイン系、おなかはバラ系、脚はモモ系と分けられるが、部位の境目はどうするのか、韓国の呼び名も使われているなど、食肉部位の名前は複雑。
 例えば、カルビという呼び名はおいしい料理のイメージが強く、バラ系の肉というよりも顧客に好まれている。
 ロース焼き肉というメニュー表示は、赤身の肉の上手な使い方を促すもので、「モモ肉使用」と併記していればいいと思う。
 最近は希少部位が人気で、肩ロースの中の座布団という美味しい部位、腕の肉のミスジ(1頭の数%)などを焼肉屋さんで宣伝したりしている。こういうやり方も、お客さんに肉の部位への関心を高めたり、正確な名前を知らせる効果があるのではないか。
 一般に、骨についている肉は霜降りがはいりやすく、余り動かさないので柔らかく食べやすい。硬い肉は切り落として、薄切りで食べやすくしたり、イカの松かさ焼きのようなカットを入れて工夫している。あくまでも使っている部位の正しい名前を併記すれば、かたい肉がおいしい料理名で供されてもいいのではないか。
 トップサーロインについて、日本でランプというが、米国はニューヨークカットなどと呼ぶ。肉食の歴史が長く、消費者もよく知っているからだろう。
牛内臓肉もホルモンとして関心が高まり、よく使っていただけるようになった。内臓肉に関する情報を提供することで、どの部位も使われるようになるのはよいことだと思う

豚肉
 体が小さいので牛ほど名前は複雑でない。牛でも豚でも、アメリカは背骨の2-3本目が肩ロースとロースの境界だが、日本は4-5本目。
 バラという名前が人気になると、その付近の肉もバラと呼んで売ることもある。
 料理の韓国名が人気になったときにはそれを利用し、使っている部位の正しい名前を併記していればいいのではないか。
 最後に、食肉に関わる事業者で協力して正しい名称を使い、食肉についても周知し、事業者はきちんとやっているというイメージを持ってもらいたいと思う。


「新しい食文化“焼肉料理”―その形成過程と現在の課題」
                 事業協同組合全国焼肉協会 副会長 高木 勉氏

全国焼肉協会は平成20年設立。会員は478社、1402店舗。

焼肉料理の成立と由来
 戦後の食料難のとき、闇市で内臓肉を使って焼肉を提供し、広まったようだ。肉の統制が解かれたのは昭和24年でその後、韓国料理店や冷麺店、ホルモン焼きで財を成した人たちが30年代に焼肉店の出店をはじめ、焼肉メニューが広まった。焼肉料理は60年の歴史がある。肉は、ホルスタイン、交雑種が主で、どんな部位でも食べたのだろうと思う。
そのころから、赤身はロース、それに脂身がついていれば、カルビと呼び始めたようだ。
 現在の焼肉料理は韓国の伝統家庭料理に和の会席料理が融合して完成した。最近、韓国では日本料理といって韓国風日本料理が広まっている。食文化の日韓融合が進んでいる。

焼肉料理の中で生まれたメニュー
 日本ではカプサイシンと乳酸菌が健康にいいということで、キムチが大人気。一方、韓国では若い人が敬遠してキムチ人気は低下気味。マイナーなタンが塩焼きにするメニューでメジャー食材になった(タン塩にレモン汁)。内臓もヘルシー料理に進化した。
 内臓は臭くて、洗ったり、処理したり手間がかかる。ニンニク、トウガラシ、ごま油で今はおいしく食べられるようになった。

日本料理になった焼肉
 和を取り入れて、いろいろな工夫がなされて、日本食に定着した。
 小売が持て余す赤身のモモ肉を焼肉では、カット、たれを工夫して食べている。
皆で楽しく食べられる料理としての「焼肉」は人気。人気の秘密は、①美味しくする工夫(ニンニク、ごま、トウガラシ)、②脂と水気を直火・網焼きで落とし、旨味を凝縮、③リーズナブルな価格(安価なモモ肉を上手においしく使う。赤身の肉はロース肉として定着している)など

焼肉店の課題
 焼肉協会は、10月7日、消費者庁表示対策課長及び農林水産省食品産業振興課長から、「食肉小売品質表示基準に定める部位表示とメニュー表示が異なる場合」消費者に対し、焼肉料理のメニューにおける表示の適正化に向け、会員事業者に周知と指導を求められた。
 現在、関係機関と打合せを重ね、指導内容を詰めているところ。


「食品表示について」           食の信頼をめざす会 会長 唐木英明氏

 消費者は賢くて、常識を持っているし、表示や広告を目安に過ぎないと思っている。値段と品質を比較して考えて買い物もしている。何でも表示すればいいような風潮は無駄を生む。たとえばトレーサビリティについては実際には余り見ていない。

問題と課題
 小売店で「ロース」といえばロース部位をさしている。そして消費者庁は「ロースは最高の肉と消費者が認識している」と見ている。一方、焼肉店では過去数十年にわたって肉を赤身肉と脂身が多い肉の2つに分けて提供し、これらを「ロース」と「カルビ」と呼び習わしてきた。客もこれをおかしいとは思っていなかった。「ロース」も「カルビ」も「料理名」であり「部位名」ではないからだ。
 ○○ロースという料理名は本当に市民をミスリードしているのか。優良誤認なのか。


話し合い

パネリストからのまとめ
・消費者庁はすべての部位を表示させていようとしているわけではない。料理名と部位名は異なる(笠原)。
・モモ肉を外食で食べたほうが、自宅で料理するよりおいしいが。それは表示が不適切なのではなく、料理が上手だということ(毛見)。
・優良誤認をしたいと思っているわけではない(高木)。


会場との話し合い 

適切な表示
・ロースでない部位にロースと表記するのはよくないが、これはロースを人々は最上の肉だと思うだろうという憶測があるからではないか。そういう表記が出てくるのではないか。
・消費者は、ロースと名がつく料理に他の部位の肉が混じっていてだまされたと思うだろうか。めんたいはスケソウダラの卵だが、めんたいスパゲティ、めんたいソースなどは出回って、名前が定着している。

消費者の要望
・脂身の有無がわかり、自分の健康状態や好みに合った肉が食べられれる表示がいい。
・どんな状況で市民は騙されたと感じたり、不信に思ったりするのか。
・市民が本当に求めていることを調査して把握する必要がある。
・実態にあった表示が必要。表示と実態の開きについて調査する必要がある。JAS法の表示が実情に合わせて行われるべき。

その他
・焼き肉、外食で対象になる業者は20,000軒くらいだが、誤解のないメニューについて検討していきたい
・今日のような話をつき進めていくと、過剰規制になるのではないかと思う。消費者の納得は値段と味に対する満足を求めており、規制強化するとそれをくぐる別の動きも出てくる恐れがあるのではないか。
・焼肉の表示が問題になっていることをほとんどの消費者は知らない。消費者が「おかしい」と感じるのか、調べることが大事